「水橋さん、お茶に砂糖入れるのね」
湯飲みの中の紅茶に数十個の角砂糖を投下しているのを見て、若干引いたように一輪が呟いた。
無造作に積み上げられる正方形に規則性などありやしない。
最早飲み物を埋める勢いの溢れんばかりの角砂糖。湯飲みからこんもりと山になっている。
今、一つ机に落ちて、辺が砕けた。
只の砂糖になってしまったそれらを右手でまとめて、左の手のひらを机の縁に当てて落とす。
少量の粉砂糖が、パルスィの手のひらに広がった。
「これ、使えるかしら」
「………いいんじゃない」
言ってもらったところで、角砂糖の山にそれを降り注いだ。さらに甘さがアップである。
パルスィは躊躇い無く湯飲みの縁に唇を当てて、流し込むように傾けた。
一輪は思わず悲鳴を上げる。
同時にコロンコロン、と何個かの角砂糖が落ちた。
小さくため息を付き、湯飲みを置く。
濡れた唇を人差し指で拭いながら今度はパルスィが顔をしかめる。
「人の事言うけど、あんたこそ饅頭に辛子付けてるじゃない」
一輪の手には辛子の入った小箱。それをこれでもかと言うほど饅頭に塗りたくっている。
元々真っ白だった外の皮は今、黄色く染まっていた。
「私は辛党なのよ」
見ているだけで何処と無く目が痛くなる。
「じゃあ饅頭買わないで煎餅でも買えばいいじゃない」
「それじゃ駄目なのよ。私は饅頭が食べたいのだから」
二つになった饅頭の片割れを、いるかと訊ねられたがパルスィは丁重にお断りした。
「残念だわ」
艶やかな粒餡の上に、黄色い暴力が落とされていく。
目の前の饅頭の末路に、嫉妬の妖怪はそのグリーンアイズをそっと逸らした。
「水橋さんもお饅頭食べない?」
「辛子付いてないでしょうね」
「付けたいならあげるわよ」
純粋に真っ白な饅頭を目の前に付き出される。
おずおずと受け取って、ちらりと一輪の顔を窺う。
彼女はこちらに笑顔を向けていた。
このじめじめした地底において彼女の笑顔は微妙に、本当に微妙ではあるが眩しかった。
その明るさをパルスィは妬ましく思う。
「……ふん」
一人鼻を鳴らして饅頭にかじりついた。
確かに甘かった。口の中で冷たい餡が蕩けていく。
そして、ふわふわの皮と餡が絡み合ってまろやかな味を生み出していた。
普段は味に頓着ないパルスィだが、この饅頭は美味しいと素直に思った。
どこで買ってきたのだろうか、思案しながらもさもさと口に運んでいく。
「そこの街で買ってきたの」
「……聞いてないわよ」
「顔に書いてるわ」
「嘘ばっかり」
半分程食べたところで、少し温くなった茶を手に取る。
また一輪が「げぇ」と言いたげな顔をしていた。
それを無視して中身を啜った。
砂糖が殆ど溶けきっていたため、先程以上に甘ったるい。
流石に少し、気分が悪くなった。
そんなパルスィに一輪は苦笑し、そして、
「辛子入れてみる?」
「やめて!」
湯飲みの中の紅茶に数十個の角砂糖を投下しているのを見て、若干引いたように一輪が呟いた。
無造作に積み上げられる正方形に規則性などありやしない。
最早飲み物を埋める勢いの溢れんばかりの角砂糖。湯飲みからこんもりと山になっている。
今、一つ机に落ちて、辺が砕けた。
只の砂糖になってしまったそれらを右手でまとめて、左の手のひらを机の縁に当てて落とす。
少量の粉砂糖が、パルスィの手のひらに広がった。
「これ、使えるかしら」
「………いいんじゃない」
言ってもらったところで、角砂糖の山にそれを降り注いだ。さらに甘さがアップである。
パルスィは躊躇い無く湯飲みの縁に唇を当てて、流し込むように傾けた。
一輪は思わず悲鳴を上げる。
同時にコロンコロン、と何個かの角砂糖が落ちた。
小さくため息を付き、湯飲みを置く。
濡れた唇を人差し指で拭いながら今度はパルスィが顔をしかめる。
「人の事言うけど、あんたこそ饅頭に辛子付けてるじゃない」
一輪の手には辛子の入った小箱。それをこれでもかと言うほど饅頭に塗りたくっている。
元々真っ白だった外の皮は今、黄色く染まっていた。
「私は辛党なのよ」
見ているだけで何処と無く目が痛くなる。
「じゃあ饅頭買わないで煎餅でも買えばいいじゃない」
「それじゃ駄目なのよ。私は饅頭が食べたいのだから」
二つになった饅頭の片割れを、いるかと訊ねられたがパルスィは丁重にお断りした。
「残念だわ」
艶やかな粒餡の上に、黄色い暴力が落とされていく。
目の前の饅頭の末路に、嫉妬の妖怪はそのグリーンアイズをそっと逸らした。
「水橋さんもお饅頭食べない?」
「辛子付いてないでしょうね」
「付けたいならあげるわよ」
純粋に真っ白な饅頭を目の前に付き出される。
おずおずと受け取って、ちらりと一輪の顔を窺う。
彼女はこちらに笑顔を向けていた。
このじめじめした地底において彼女の笑顔は微妙に、本当に微妙ではあるが眩しかった。
その明るさをパルスィは妬ましく思う。
「……ふん」
一人鼻を鳴らして饅頭にかじりついた。
確かに甘かった。口の中で冷たい餡が蕩けていく。
そして、ふわふわの皮と餡が絡み合ってまろやかな味を生み出していた。
普段は味に頓着ないパルスィだが、この饅頭は美味しいと素直に思った。
どこで買ってきたのだろうか、思案しながらもさもさと口に運んでいく。
「そこの街で買ってきたの」
「……聞いてないわよ」
「顔に書いてるわ」
「嘘ばっかり」
半分程食べたところで、少し温くなった茶を手に取る。
また一輪が「げぇ」と言いたげな顔をしていた。
それを無視して中身を啜った。
砂糖が殆ど溶けきっていたため、先程以上に甘ったるい。
流石に少し、気分が悪くなった。
そんなパルスィに一輪は苦笑し、そして、
「辛子入れてみる?」
「やめて!」
パルスィも一輪も凄すぎるww