※処女作です。よろしければどうぞ。
ここは博麗神社。魔理沙はいつものごとく霊夢のもとへ遊びに来ていた。
しかし、今日は霊夢の姿が見当たらない。
はて、今の時間だとお茶と一緒に昼のおやつでも堪能しているのだろうか。私も相伴に預かろうではないか。
そうひとりごちながら、戸を開ける。
「邪魔するぜー…………」
家に入るなり魔理沙が絶句してしまうのもやむを得ないことだろう。
「……な、なにやってんだ、霊夢?」
そこには、天井に横たわる巫女がいたのだから。
*
「……で、一体これはどういうわけだ」
「知らないわよ。気づいたらこうなってた」
異変が起きたのは二日前。いつものように境内で掃除をしていたところ、突然体が地面から離れ、戻らなくなった。
そう語る霊夢は、今は大体胸くらいの高さでふよふよと浮いている。
「なんでまた天井なんかに」
「ちゃんと拭いといたから汚くないわ」
「そういう問題じゃ無くてだな」
「……気を抜いていると体がどんどん上に上がっちゃうのよ」
「あ……」
たしかに、霊夢が少しやつれているように見える。霊夢の言うことがもし本当なら、起きている間はさぞかし気が休まらないだろう。
「原因はわからないのか」
「わかったらとっくに犯人をぶちのめしに行ってるわ」
「誰かの仕業と決まったわけでもあるまいに」
「誰かの仕業と考えないと気が治まらないわ」
ぷんすか怒る霊夢は、それはそれで可愛いが、やはり霊夢には笑顔が一番よく似合う。
それに、困っている友人を助けるのもまた一興だろう。
そう魔理沙は考え、胸を張って言った。
「ふふっ……ここはこの魔理沙様に、大船に乗ったつもりでどーんと任せるがいい!」
*
作戦1、とりあえず頑張ってみる
「うん、それ無理」
「まあ、そう言わずに頑張ってみろよ」
「私だってあんたが来る前にそれくらいしてるわ。でも、上手く説明できないんだけど、どうにもならないのよ」
霊夢の説明は要領を得なかったが、さしずめ磁石の同じ極同士が反発しあうような状態らしい。
作戦2、とりあえず重りをつける
「そんじゃ、乗るぞ」
手軽に使えて運ぶのも楽、それでいてそれなりに重い。これらの条件を満たしているのは自身の体だろうと考えて魔理沙は霊夢の背に跨る。
「変なところ触ったらしばくわよ」
「へいへい」
「やっ、ちょ、くすぐった……」
「へへっ、ここが弱いのか?」
「……に……」
「へ?」
「調子に、乗るなぁぁああ!!」
すぱこーん。
霊夢の放った陰陽玉は、霊夢の腋をわきわきする事に執心していた魔理沙の後頭部を的確に撃ち抜いた。
霊夢の背中から転げ落ち、のたうちまわる魔理沙。
いろんな意味で作戦失敗である。
作戦3、冷やす
「物は冷やすと下に沈むんだぜ。だから霊夢、これを」
「……なにこれ」
そう言って魔理沙は、「\あたい/」「\すげぇ/」などと繰り返し言うチルノの形をした何かを霊夢に手渡す。
三等身にデフォルメされていて非常に可愛らしい。
「どうだ、効きそうか?」
「魔理沙、これちっとも冷たくないわ」
「やっぱ駄目か」
「でも、これなかなか可愛いわね」
「だろ? だろ?」
盛り上がってはいるものの、作戦は失敗である。
作戦4、冷やすTAKE2
「てなわけで本物のチルノを連れてきたぜ」
「ふうん」
「霊夢がお困りと聞いてやってきたわ。さいきょーのあたいにまかせるがいいわ!」
「あの、盛り上がってるところ悪いんだけど」
「どうした、霊夢?」
「ぶっちゃけ、冷やしたところで何の意味も無い気がするんだけど」
「まあまあ、ノリでなんとかなるって」
結果は言わずもがな。言われた通り意気込んで霊夢を冷やしにかかったチルノは、あわれ苛立つ巫女の御札の餌食となり、流石に不憫に思った魔理沙はおもむろに飴玉を渡して丁重にお帰ししたのであった。
「全然駄目じゃない」
「待て! まだ他にも手はあるはずだ」
……
……
……
作戦n、霊夢が上を向いて魔理沙を抱え、魔理沙が上の方に向かってマスタースパーク
「どうなるか、やる前から想像つくわね」
「やらないで後悔するより、やってから後悔する方がずっとましだぜ。試行錯誤が魔法使いのつとめなんだぜ」
「私は魔法使いになった覚えはないわ」
二人はマスタースパークを撃つために外に出ていた。
沈もうとすることばかりに囚われたのかあるいは度重なる失敗に自棄になっているかのような作戦である。
「行くぞ! マスタースパァーク!!」
地面との反発と、マスタースパークの強力な推進力が組み合わさるとどうなるか、通常ならば容易に想像が付く事であるが、何故かこのときの魔理沙の脳裏には微塵もその事が浮かばなかった。
結果、二人は勢いよく横に吹き飛び、砂埃が上がった。
「おー、いてて……大丈夫か霊夢?」
砂埃を振り払い魔理沙は霊夢に呼びかけた。
しかし霊夢の姿はどこにも見当たらない。
「こっちよー」
「!?」
霊夢は、上空をふわふわと、少しずつ浮かび始めていた。
「おい、霊夢! 待ってろ、今行くからな!!」
しかし、自分の持てる限りの魔力をつぎこんで追いかけているのに、何故か霊夢との距離は縮まるどころか離れるばかり。
「霊夢ぅー!!」
そしてとうとう……霊夢の姿を捉えることができなくなってしまった。
霊夢は―― 二度と地球へは戻れなかった……。巫女と生物の中間の生命体となり永遠に宇宙空間をさまようのだ。
そして死にたいと思っても死ねないので ――そのうち霊夢は考えるのをやめた。
「うわああああああぁぁぁっっ!!」
跳ね起きる体。高鳴る鼓動。おびただしい汗。たった今見ていた光景が夢であることに気づくのにしばしの時間を要した。
「ゆ、夢か……」
全身が汗でびっしょりである。実に気持ち悪い。
「……とりあえずシャワーでも浴びるか」
*
妙な夢を見たときなどはよく朝からシャワーを浴びるのが常で、大抵浴び終わるころには夢のことなどお湯と一緒にさっぱり流れ去ってしまうのだが、この日に限ってはいつもと様子が違う。
あの、霊夢がどこか届かないところへ行ってしまうイメージが一向に頭から離れず、むしろ強まるばかりなのである。
「ちくしょうちくしょう、なんだってんだ」
いてもたってもいられず、身支度もそこそこに、魔理沙は神社に向けて飛び立った。
*
ここは博麗神社。霊夢はいつものごとく掃除をしている。
キイイイイィィィィン……
突然の物音に何事かとその方向を向いて驚く。天狗もかくや、というスピードで魔理沙がこちらへ向かってきていたのだ。
ろくにスピードを落とさないまま着陸を決める魔理沙を、霊夢はただ呆然と見ているほかなかった。
「はぁはぁ、れ、霊夢……」
「どうしたのよ、そんなに慌てて」
「…………ぐすっ」
「!? ちょ、本当にどうしたのよ!?」
来るなり突然泣き始める魔理沙を見ては、さしもの霊夢と言えどもうろたえるのも無理からぬことであろう。
「だって、霊夢が、れいむが……」
魔理沙は、しゃくりながら夢で見た事を話す。
*
「あはは、あんた、私が飛んでいく夢を見て、それで怖くなって一目散に飛んできたの? あーおっかし」
「うるさい、ぅひっく、うるさい……」
「馬鹿ねぇ……私がどこかに飛んでく事なんてあるわけないじゃない」
「……ひくっ、ほんとか?」
「本当よ。だから、そんな事でいつまでも泣かないの」
きゅっ。
「ま、魔理沙!?」
「……動くな」
「そ、そんなこと言っても、誰かに見られたりしたら」
「いいから」
「いや、私は……」
ぎゅっ。
「……ぐすん」
全く、仕方ないわね。
そう霊夢はささやいて、抱きつく魔理沙の頭を優しく撫で続けるのであった。
<了>
これから書いていくことで魅力的な作品を出せると思うので頑張って下さい。
>1と同感で、今後人を引き付ける作品を書けるようになると強く思います。
宣言してから一週間で書き上げた、作者様のガッツに拍手です。
内容に関しては、可もなく不可もなくといった感じですね……。昨今の流れへの反発から、インパクトのあるオチを避けちゃったのかな。
私がインパクトのあるオチが好きなだけなんですけどねっ。
それでは今後のご活躍を楽しみにしています。
面白かったです。
飛べなくなる話はよく見ますが、風船みたいに浮かんだままになってしまうとは……w
面白かったです。
レイマリレイマリ。
一言で言えば普通、つまらないわけじゃないが面白くはない。薄味のおかゆのようなもの。
某所で書かれてたが正直言ってこれで最近の一発ネタ作品とは~なんて失礼な事よく言えたものだと思う。
まあ決してとても悪かったというわけじゃないので、細々と積み重ねていけばいいんじゃないかな。
>>れびゅーした人 さん
>>れびゅーした人その2 さん
ありがとうございます。自分に足りない所を的確に指摘してくれて嬉しかったですよ。
また機会があったら読んでくださいね。
>>如月日向 さん
いえいえ、週末までに投稿しようとしていたのですが。
インパクトと言えば、オンミョウボールは貴方の作品でしたね。
>>4 さん
良かったかな、というポイントが伝わって幸いです。
>>ワレモノ中尉 さん
ですよね。霊夢の方も急に抱きつかれてうろたえる所など良いですよね。
>>リペヤー さん
いわゆる逆転の発想ですね。
>>7 さん
小ネタに反応してくれてありがとうございます。
>>8 さん
「あかれいむ」「げそれいむ」「おこされいむ」「さとられいむ」……作家の数だけ色んな霊夢がいるんですね
>>奇声を発する程度の能力 さん
はい、俺もそう思います。
>>10 さん
一番心に残るコメントでした。特にスレでの投稿直後の発言は、舞い上がっていたとはいえ、配慮が足りていませんでした。
不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。以後気をつけます。
>>11 さん
ありがとうございます!
マテwww
巫女とはどんなものにも属さない不思議な存在なのです(何