Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

言の葉の誓い 終章

2010/11/15 12:57:55
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「おはよう、天子」

「………」



「今日は林檎持って来たよ」

「………」



「雪が綺麗だよ、また今年も綺麗な冬が来た」

「………」

「今度、一緒に見ようか」

「………」


天子は何も言わない


「…それじゃあ、今日は帰るね。お休み」

「……」


天子は何も答えない

天子は今や人形に近い状態になっていた。







二度目の地震を止めた日、あの後チルノや輝夜達の手によって天子を救出する事に成功したはいいが天子は動かなくなってしまった。

すぐに永遠亭に運ぶが診断結果は今のところ永琳曰く不明。

今は永遠亭のベッドの上で緩やかに呼吸をしながら横になっている。


天子は話さない

天子は答えない

天子は何も訴えかけない


だが不思議なのは体は健康であり異常は見られない、霊力もちゃんと戻っているし何より天子に意識がある事だ。

天子が起きたと思われる状態なった時は眼を開けて天井をじっと見ているし瞬きもする、チルノが訪れて話しかければチルノの方を向くし口に食べ物を運べばちゃんと食べるし飲み物も飲む。

ただ、眼には何の意志は無い。

あるのは虚空を思わせる虚無感だけ、その口からは何の言葉も紡がれない。

そんな天子をチルノは身の回りの世話をし続けた。

地震発生から軽く数ヶ月が立っていた







「ねえ、永琳。天子の症状について何か解った?」

診療室で紫はカルテを記入している永琳に尋ねる。

「いいえ、まだわからないわ。そっちはどう?」

「こっちも駄目ね、こんな症状は初めて見たわ」

「体は健常、霊力にも異常なし、呪術関係は反応なし、意識があるのに反応は鈍い…どころか人格がほぼ喪失。でも人格のオリジナルが喪失してしまえば多重に持って居ない限り植物人間状態になるわよね、でも反応が一応最低限にあるってことは…」

「最低限の反応しかできないレベルまで人格のオリジナルに何かが起きてる…か。結構これは難題ね…」

「姫様でも呼びます?」

「あら、それじゃあ後でお茶でも一緒にさせていただこうかしらね。さて状況は解っても手が出せないのは歯痒いわね」

「そうね…」


科学でも魔法でも結界でも呪術でも奇跡だろうが対象が無ければ意味が無い。

例えば。ある患者が異常を訴えるとする。

患者の異常の現象の原因は解った、だがそれだけだ。

道具はある、しかしその原因の場所が何処だか解らない、しかも直す手段も解らない。これでは手を出すわけにはいかない。

下手をすれば大変な事になる、ならば決定打を待つしかない

そんな現状だった。


「えーりん、入るよ」

「あら、チルノ…天子は?」

「…いつも通り。あ、紫、こんにちは」

「こんにちは、チルノ。今日はどうするの?」

「ん…そろそろレティが起きる頃だと思うからちょっと行って来る」

「解ったわ、行ってらっしゃい」

「ん、行って来る」

チルノは部屋を後にした。

「さて…今日も検査を始めますか今日は、『記憶を基にした反応が返ってくるかどうか』」

「そうね」

二人も部屋を後にした。



―――霧の湖



「レティ、いる?」

答えは帰ってこない。

「まだ、起きないか…」

先の地震の影響で荒れてしまった湖の近くのお気に入りの場所、天子と初めて会った場所にてチルノはしばらく気を抜くために空を仰いでそこに座った。

半刻後、レティはやって来た。

「久しぶり、チルノちゃん」

「おはよう、レティ」

「…あら?」

「どしたの?レティ」

「チルノちゃん背伸びた?髪も長くなってるし、何より霊力が強くなってるし。成長期?」

「…いやいや、この地震が起きた後になっちゃたの」

現象には変化が発生する。

天子の場合は解決不明の状態。

チルノの場合は地震を解決した者の一人として妖精や里人たちなどから信仰を受け力が強くなった影響で身体も変化したのだ。

「へぇ、私が寝てる間にそんな事が…」

「うん」

「チルノちゃん、ちょっと何が起きたか説明してくれる?」

「…えっと」

去年にレティが眠ってしまった時から今までをそのままに伝える。



いつも通り一人で遊んでいた事

天子と友達になった事

天子の事

地震の事

その後の事

二度目の地震の事


「なるほど…それでチルノちゃんが暗い顔しているのは何故?」


「…数ヶ月前―――









幻想郷を崩壊させんとした地震を止めるために天子は紫の協力の下、術式を発動し地震を止める事に成功した。

しかし元々術式を使う事に特別秀いているわけではない天子は術式を暴走させてしまう。

天子の根幹から直接エネルギーを奪い取られ紅く赫く光に変換されていく、このままだと天子が力尽きてしまうのは目に見えていた。


「―――――――――ぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

「天子!!」

「下がってろチルノ!!喰らえ!!!!!」


   恋符「マスタースパーク」


様々な色が重なり合い色彩を失った極光の光線が辺り一帯を照らし出し焼き尽くす。

しかし―――

「マジかよ!!」

紅い光に全く効果は無く、全て軽く弾き飛ばされてしまった。

「クソッ!霊夢!!アレお前の力で壊せないのか!!?」

「今やってる!!!」

お祓い棒を改めて握りしめ全力を込め紅い壁に向かって突進する。

「あう!!?」

しかしお祓い棒が壁に触れる前に霊夢ごと弾き飛ばされてしまった。何物にも縛られない、法則すらも捻じ曲げる博麗の巫女が吹き飛ばされた。

「霊夢でも駄目なのかよ!!!」

「いたた… 、もうっ!紫は何してるのよ!!」

「天子!今行く!!」

「あ、コラ!チルノ!!」

霊夢と入れ替わる様にチルノが紅い壁に向かって突撃する。

そして、チルノも弾き飛ばされるかと思われたが


「天子!!しっかりして!!!こっちを見て!!!!」


チルノは弾き飛ばされずに紅い壁に触れていた。

チルノが触れている地点を起点に紅い壁がどんどん蒼く染まっていく。

そして、壁はあっけなく砕けた。


「よくやったわ!チルノ!!」


紅い壁の力の影響が消えスキマを展開出来るようになった紫が天子とチルノを永遠亭に運ぶ、だが。

「永琳!早く治療を!!」

「天子?」

「………」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「…そんな事があったのね」

「うん…もう何をすればいいか分からないよ…」

「そうでもないわよ?」

レティが真剣な顔で言い切る。

「チルノちゃんが天子ちゃんを起こす方法はただ一つ…」

「………」

「キスよ!!!」

「…はい?」

「だからキス、口づけ、接吻、ベーゼ、ちゅー、ちゅっちゅ。チルノちゃんも大人になったのねー、ちょっと前なら凄いわたわたしそうなものを」

「本気で言ってるの?」

「本気の本気よ、何なら賢者さんに言ってみなさいな、『天子ちゃんはいま寒くて寒くて仕方ない』って言えばOKよ」

「…分かった」

「じゃあね、早く行ってあげなさいな」

「うん」

お互いに手を振り合いながら二人は別れた。



―――永遠亭



「……なるほど、ふふ、全く何で今まで気づかなかったのかしら」

「紫、どういう事?」

「簡単よ、天子の精神がフリーズしそうなの」

「???」

「最初から説明するわね。二回目の地震を防ぐ時のあの術式結界、あれは今までに起きた異変の残留したエネルギーを集めると同時に異変の起点と同期して幻想郷と深くつながる事で一時的に博麗の巫女の様に幻想郷の住人達と博麗大結界の力を得る事が出来るというモノなの」

「うん」

「しかし、途中で制御しきれなくなってしまった。その理由は貴女」

「私?」

「貴女も異変に加担していたでしょう?あの妖精達と起こした小規模な異変を」

「あ…」

「幻想郷はあれも重大な異変として管理していたみたいね…お陰で術式のバランスが崩れてしまった」

「それじゃあ私が壁を壊せたのは…」

「貴女が異変の首謀者に当たったからみたいね。貴女が術式結界と共鳴して不完全ながらに安定し止めることに成功した」

「…つづけて」

「…さて本題は天子の状況、これは天子の行った術式が不完全に終了したために起こってしまった術式の結界が概念化して天子の精神の使用率がほぼ限界まで埋まり掛けているために精神が最低限の反応しか出来ない状態にある」

「詳しくお願いします」

「結界には色々種類があるのよ、固定、排除、魔除け、隠蔽、結、滅などなど」

「うん」

「今回は同期ね。で、さっきも言った通り正常に終了しなかったために異変が起こり結界が概念化、そして概念化した結界は天子の精神と『同期』してしまい天子の精神に強制的に大量の情報が叩き込まれてしまった。…そんなところね」

「そんな…どうすれば」

「解決方法は簡単よ、天子から情報をガス抜きしてあげればいいんだけど…これは精神に干渉しないと駄目ね」

「…私に出来る事は?」

「大丈夫、貴女にしかできない事よ」

「?」


「ぜーんぶ包み隠さずに天子にぶつけちゃいなさい」



―――天子の病室


天子はどうやら眠りについてるようで緩やかな呼吸を繰り返している。

「天子…」

もちろん返事は無い。

さて、問題は今二つある。

何を言えばいいのか、それと

「どうやって精神に干渉すればいいの?」

その時レティが言っていた事を思い出した。


―――だからキス、口づけ、接吻、ベーゼ、ちゅー、ちゅっちゅ。

「―――天子」

軽く断りを入れて天子に口づけを一つ。

桃みたいに瑞々しい感触がしてとても甘かった。


「…陽気な凍気の宣戦よ」


ポツリと頭に浮かんだ言の葉を詠む。

するとゆっくりと意識が暗く落ちて行くのが分かった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



…あれは天子?

白い空間の真ん中で天子がふよふよと浮かんでいる。

「天子!!」

とりあえず近づいてみる。

「……貴女、誰?」

力無く天子が呟く。

「…!!チルノだよ…天子、分かる?」

天子が私を忘れてる、そう思うと胸が痛くなる、涙が出そうになる。

「チルノ…チルノ…チ、ルノ…ああ、チルノね、思い出した。で、何の用?」

「…迎えに来たよ」

「で?だから?」

「帰ろうよ、目を覚ましてよ」

「嫌だ、私は疲れたの。それに世界なんて大嫌い、目覚めが来ないなら万々歳だわ」

「…天子?」

「帰って」


やはりこの天子はあの天子とは何処か違う。

でも何処かで見たことがある、そう言いかけて思い出した。

かつての私や天子だ。


「…天子」

「何よ、話しかけないでよ。どうせ貴女もあいつらと――――!!!!」


二回目のキス。

何を言えばいいかわからない臆病者からの全部諦めた振りしている臆病者への、キス。









ねぇ、天子


嫌い

好き

大嫌い

大好き

無茶する天子は大嫌い

私のためとか言って勝手に一人で行こうとする天子も大嫌い

大好きだから大嫌い

貴女のせいで私は貴女が居ないと駄目になってしまうもっと駄目な奴になってしまいました

貴女が居ないと嫌な妄想に付きまとわれて夜もまともに眠れません


ゴメン、ありがとう、さようならと貴女は言い残して行きましたがそんなのこちらが御免です。

ゴメン?許しません

ありがとう?こちらこそありがとうございます

さようなら?それだけは絶対許しません


あの手紙を読んだ時どれだけ悲しくなったか想像できますか?

多分あなたの想像したモノより何倍も悲しかったです。


貴女の横顔を見るだけでドキッとします

貴女がしかめっ面をしているとこっちも不安になってしまいます

貴女が怒ると絶望が私を襲います

貴女が笑うと幸福と満足感が私を包みます

貴女が泣くと私も涙を流してしまいそうになります


ほら、私は此処まで貴女に依存するようになってしまいました

貴女のせいです、責任とって下さい

好きなんです

大好きなんです

愛しています

誰よりも愛しています


何度でも言います


好き

好きなんです

大好きなんです

愛しています

心の底から愛しています






「あ、あう……」

「…天子」

天子が信じられないといった顔をして放心している。

「チ、ルノ…」

「私は、ここにいるよ。大丈夫、貴女は強いから」

天子の手を強く繋ぐ。



「目を覚まして」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



気付けば意識が戻っていて泣きじゃくる天子に抱きつかれていた。

「うぐっ、うう、うあああああ…」

「…お疲れ様」

「怖かった…」

「うん」

「何が何か分からなくて」

「うん」

「心がどんどん錆びついてもう戻れないと思った…!!」

「天子…」

今日だけで三回目のキス。

「落ち着いた?」

「…うん」

「…今日は隣の部屋で寝るね、永琳に声かけて行くから」

「…うん」

チルノは病室を後にした。

チルノが出て行った後に永琳と紫がやって来たが永琳に紫と一緒に怒られてしまった。

その後に二人に抱きしめられた、暖かかった。


…その後永琳にまた紙と筆を貰って手紙を書こうと思った。

今度は心配させないように。





拝啓、父上様へ

貴方様に手紙を書くのはこれが最初ですね。

さて本題ですが、

これから少しの間天界を留守にさせていただきます、言ってしまえば家出です。

その間に非想の剣はしばらくお借りします。

特に何がしたいわけではありませんが暫くは地上で何も意識せずブラブラと生きて行こうと思います。

といっても今まで籠りっきりで何も出来ない私なので暫くは誰かにお世話になろうと思います。

この手紙を衣玖に持たせるつもりですが衣玖には行き先を伝えないので無駄だと思ってください。

もしも、もしも手紙がこちらに届いたら返事するつもりはありますのでよろしくお願いします。

あ、あと友達出来ました。

大切な人も出来ました。

今とても心が暖かいです。

そう言えば棚に入っていたお菓子食べたの私です、ごちそうさまでした。

では


地子より




娘へ

前置きは無駄なので省く。

確かにお前からの手紙は初めてだな。

それはそうと家出と言うか何と言うかお前はしばらく天界に帰って無かったから意味が無いんじゃないかと思ったがあえてそこには突っ込まん。

あと、非想の剣折るなよ。

まあお世話になるのはいいが迷惑をあまりかけないように。

ちなみにこの手紙だが手紙を届けに来た衣玖に一応聞いてみたところ普通に居場所を答えてくれたがいいのか?

友達とかも出来た様で何よりだが大切な人って何だ?俺は聞いて無いぞ?

まあ今度連れてくるように。

P.S、何普通に俺のお菓子食ってるの?高いんだぞ?あれ。


非想非非想天より





「天子、何読んでるの?」

「ん?お父様からの手紙。いつもどおりね、あの人は」

そう言って少し困ったように笑いながら返信を書くために筆と紙を取る。

「なんて書くの?」

「ん?そうね…反抗期だから帰りません、もう少しチルノと居たいのでごめんなさい…かな」

「…えへへ」

そうしてチルノと天子はキスをする。

天子が意識を取り戻した後に紫にチルノと一緒に住む家が欲しいと言ったら湖の近くに二人で住むには大きすぎる家が出来た。紫は気合いを入れ過ぎだ。

まあそんなマイホームでチルノとささやかにイチャイチャさせてもらっている。

「そう言えば今日は大妖精が来るんだって」

「そっか、じゃあ桃でも庭から取ってこようか」

「うん!!」


今、二人は二人で幸せです。
やっと終わった!!

前篇を書いてから1年6か月!!長かった…

さて、次何書こう

1、雨雲は~
2、殻被りの~
3、紅魔警察
4、またいつか~
5、シソ(蓮メリ)
6、キッチンメニュー
7、ネタはあるけど友人Sと下上氏に全力で止めろと言われたカオス作品。

さあ、どれ?

では
華彩神護ofぷにふに戦車:ころねーす
[email protected]
http://lainasu.blog101.fc2.com/
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
本当に長かった…でも素晴らしかった!!ハッピーエンドで良かったです。
アレから1年6ヵ月も経ってたのか…
2.削除
シリアス……そして甘い……
もうね、最高。これしか感想が思いつかないよ。

>1、雨雲は~
これはすっごい楽しみだね。この作品と同じ様なシリアス分と甘さ。期待。

>7、ネタはあるけど友人Sと下上氏に全力で止めろと言われたカオス作品。
これでシリアス書いたんだろう? は っ ち ゃ け ち ま え ! ! !

次も頑張って下さい、楽しみです。
3.ワレモノ中尉削除
全編から通して一気に読んできました。
大地震を止めようと奔走する魔理沙や霊夢、そして天子とチルノの必死な姿がとても良かったです。
皆幻想郷を愛しているんだなあ…というのが伝わってきました。

それと、最後の手紙では、不覚にもグッと来てしまいました。
普通なら、こんなこと怒るでは済まないでしょうに…親父さん、いい人だ。

いい話をありがとうございました。
4.華彩神護.K削除
コメ返し~

奇声を発する程度の能力 様
確かに長かったですね…。

唯 様
うおおう、凄まじいほどの褒め倒しありがとうございます。
とりあえず頑張ります。

ワレモノ中尉 様
全編読破ありがとうございます。
手紙の部分ですが大人は子供の文句ぐらいいなせないと駄目だと思うんです。偶には放任主義にならないと私みたいに駄目人間になります。