Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

霖「温泉旅行だからって浮かれるんじゃない」

2010/11/13 22:57:46
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※注意※
このお話は作品集77“霖「ハロウィーンだからって浮かれるんじゃない」”からの続きとなっておりますが、前作を読まずとも大丈夫だと言い張ります









あれ程目に付いた紅葉も余り見かけなくなった頃、僕は店の前で天子を待っていた

「…遅いな」

そう言って懐中時計を覗き込んだ瞬間、僕の真上に影が出来た

「ごめん!待った?」

「いや、待ってないよ、天子」

そう、天子が宙に浮かんでいたのだ

「着替えは一日分で良かったんだよね」

「そうだよ、寝間着も向こうにある、荷物は少ないに越したことはないよ」

天子は荷物を担いで歩こうとした僕に質問をした

「歩きだよね」

「そうだ博麗神社の近くの温泉だ、結構歩くぞ、大丈夫か?」

因みに地底へは流石に許可が下りなかった、僕はまともに戦えるわけでもないから正論と言えば正論だろう

「大丈夫、霖之助と一緒なら」

「そうか、じゃあ荷物は何時でも持つからきつくなったら言うんだよ」

「うん」

元気な返事を聞いて僕らは博麗神社へ歩き出した



短い歩きの旅を終えた僕と天子は博麗神社の付近に湧き出ている足湯に浸かっていた

「…はぁ~、気持ちいいね~」

天子はお湯の中で足を泳がせながら言った

「地底の異変の時に湧き出たそうだ」

「ふ~ん」

「夜はもっと大きい温泉だ、楽しみにしておくと良い」

僕はそう言って寝ころんで蒼く澄み渡った空を見上げた、雲の小さな塊が幾つも浮かび風に流されていた

「そろそろ冬か…」

「冬になったら雪降るかな」

「降るよ、相当積もるからかまくらなんか作ったら面白いだろうな」

「かまくらって何?」

その言葉を聞いた天子は首をかしげて僕に尋ねた

「あぁ雪を固めて中に空間を作った雪洞みたいな物だよ」

「…寒くないの?」

天子は訝しげに僕に問うた

「うん、これが案外暖かいんだ」

「へぇ、じゃあ冬はそれ作ろう、かまくら」

「ん、そうだな」

僕は天子の提案に賛同した

「約束だよ」

「あぁ、約束だ」

そう言って僕は目を閉じ眠りについた、寒くなく暑くもない、昼寝には最適の気温だった



顔を打つ風が冷たくなった頃、僕は目を覚ました
流石に暗くなり始め早く宿泊場所へ戻らなければ日が落ちてしまうだろう

「…天子、帰るよ」

眠い目を擦りながら天子に呼びかけた、が彼女からの返答は無かった

「天子?」

少し回りを見渡すと天子は僕の傍らで天使のような寝顔を見せて眠っていたのだった

「…気付よ自分」

そう言って僕は眠りこけている彼女の肩に手を掛けて揺り起こした

「天子、起きて、風邪ひくよ」

「…んぅ、霖之助ぇ、あと五分…いや四分三十秒……四分十五秒………」

「何処の紅茶好きのグータラ提督だい?君は、さっさと起きなさい」

しかし尚も幸せそうに眠る天子に僕は最終手段を僕は使うことにした

「…仕方ない、それっ」

僕は優しく天子の脇腹を小突く、なかなか起きなかった小さい頃の魔理沙によく使った手である

「キャッ!」

天子は上半身を勢いよく起きあがらせ、僕に言った

「何するのよ!霖之助!」

「君が起きないからだろ?」

夕暮れの空を見上げて僕は天子に言った

「ほら、空も暗くなり始めている、早く戻ろう」

「もう少し寝ていたかったのに…」

「風邪ひいたら元も子もない、暖かい布団で寝ようよ」

「は~い」

天子は渋々起きあがり足の水分をふき取ると靴を履いて立ち上がった

「さ、行こうか」

「うん」

僕は天子の手を取り暗い道を歩いていった


宿(と言っても博麗神社の付近に立てられた小屋)に僕たちが着いた頃に太陽は既に隠れきり星が瞬き始めていた

「…すっかり暗くなったな」

「秋は日が落ちるのが早いからね」

「それに寒いぞ、早く中に入りなさい」

「は~い」

部屋の中に入った僕は早速だるまストーブに火を付け始めた
鋳鉄製の扉を開け薪を入れマッチを擦り火を付ける、その瞬間橙色の炎が燃え始め小屋に暖かい空気が充満し始めた

「…暖か~い」

「熱くなるから気を付けるんだよ」

「うん」

楽しげな音を立て始めたストーブに近寄る天子に僕は注意を促し夕食の準備を始めた
包丁と小さめの俎板を取り出し食材を切り始めた

「…ねぇ何作るの?霖之助」

「そうだな、出来てからのお楽しみだね」

「そんな~」

僕はニンジンや玉葱、キャベツをざく切りにしてソーセージを取り出し鍋に全て放り込み水を入れストーブに置いた

「出来るまで結構かかる、温泉に入ってきたらどうだ?」

「良いの?」

「あぁ天子が出てくるくらいに出来るだろう」

「じゃあ入ってくるね」

そう言って天子は寝間着を持ち風呂場へと歩いていった


鍋から湯気が出始め楽しげな音が聞こえてきた頃、天子は濡れた髪と共に風呂場から出てきた

「出たよ~、霖之助」

「髪の毛はちゃんと乾かさないと風邪ひくよ」

そう言って僕は天子をストーブの前に座らせタオルで髪の毛を優しく拭いてあげた
風呂上がりの細く柔らかい髪の毛をタオルで軽く叩くように水を吸い取る

「お腹減った~」

「もう出来るよ、器を取ってくれないか?」

「うん」

天子は元気よく立ち上がり棚から大振りな器を持って戻ってきた

「で、今日のメニューは何?」

「今日はポトフだ、暖まるぞ」

「ポトフ?」

「あぁ仏語で『火に掛けた鍋』の名前を持つ煮込み料理だ、素材本来の味を楽しめるぞ」

僕は器によそりながら答えた
食べやすい大きさに切った具に良く煮込んだスープを注ぎ天子に渡した

「…じゃあ食べようか」

「頂きま~す」

こうして僕らはだるまストーブを囲み食事を開始した

「美味しいね、これ」

「うん、我ながら良くできてるよ、紫に教えて貰って良かった」

「えっ、紫って料理作れるの?」

「あぁこれまで何度か教えて貰っている」

天子は驚きを隠せない様子で更に質問をした

「ほ、他には何作れるの?」

「そうだな、レパートリーは色々あったよ、お粥から満漢全席までな、作れない料理はあまり無いそうだ」

「…凄いね」

そうこうしている内に鍋からポトフは消え去り僕らは食事を終えた

「…ご馳走様でした~」

「お粗末様でした」

片づけようと食器に手を伸ばした瞬間、僕の右腕は天子に掴まれた

「後かたづけは私がやるから温泉入ってきて」

「良いのかい?」

「うん」

「じゃあお言葉に甘えて」

そう言って僕は天子に後かたづけを任せ風呂に入る準備を始めた



「…広いな」

踏み入れた瞬間に出た言葉がそれだった
とても急ごしらえとは思えない出来で本気で温泉宿を開けば客が来る見込みはある

「さて、入るか」

お湯にどっぷりと浸かり思わず溜息が漏れる
壁一枚隔てた向こう側では天子が後かたづけをしてくれている音がかすかに聞こえる

「…眼鏡が」

視界がきかないと思っていたらどうやら眼鏡を掛けたまま入っていたらしくすでにレンズは真っ白な状態だった

「…これでは何も見えないな」

しかし湯気で曇っても眼鏡を外してもどっちみちよく見えないのだから問題ない
お湯をしっかり堪能した後湯船から上がり僕は手ぬぐいに石鹸をこすりつけ泡立て、体を洗おうとした瞬間、外から天子に声を掛けられた

『…霖之助、大丈夫?』

「どうしたんだい?天子」

『いや、背中流してあげようかなって…』

「頼んで良いかい?」

『うん』

そう言って背後で扉を開く音がして天子が浴場に入ってきた

「…これ、今泡立てたばかりだから使ってくれ」

「ん、解った」

そう言って天子は手ぬぐいを受け取ると背中を擦り始めた

「…強くない?」

「あぁ気持ちいいよ」

手ぬぐいが背中を擦る音が浴場に木霊する
浴場は一人では広すぎたが、二人では流石に少々狭かった

「…天子、もう良いよ」

「解った」

僕はそう言って天子に礼を述べた
天子が浴場から出たのを確認するとお湯で泡を洗い流してまた湯船に浸かった



「…出たよ、天子」

「お帰り、霖之助」

僕が風呂から上がった時既に天子は布団を敷き終えていた

「…一組だけか、布団」

「うん、霊夢が『私が眠れなくなるから布団は一組しか貸せないわよ』とか言ってたよ」

「どうしたものか、布団が一組しかないなんて」

「何でそんな簡単なことで悩むかなぁ」

そう言って悩む僕に天子は悩む方がバカらしいとでも言いたげに言った

「何か良い案があるのか?」

「うん」

頷いた天子は満面に笑みで解決案を提示した

「一緒の布団で寝れば良いじゃない、ね?」

僕は天子に予想以上の答えを出され返答に困りつつもそれ以上の良案が見い出せずその案を受け入れることにした



僕らは一つの布団に二人で入り、灯りを消した

「…狭くはないね?」

「うん、そうだ霖之助、腕枕してよ」

「良いよ」

天子の要求を受け入れ僕の腕に天子の頭を乗せ、月明かりが仄かに照らし出す室内で僕らは天窓を共に眺めた

「…広いね、空」

「あぁ、物凄く広い」

その瞬間、天子は僕の胸に顔を埋めてきた

「どうしたんだい?」

「…なんでもない」

そして僕は寝返りを打ち天子を優しく抱きしめた

「今日はやけに甘えんぼだな」

「…良いじゃない、別に」

そう言いながら僕は天子の頭を静かに撫で、天子は僕の腕の中で静かに眠りについた
どうも、大人の事情という奴で博麗神社の近くの温泉って場所に飛ばした投げ槍です
…本当は地底温泉を書くつもりだったんです、でも「地底へは簡単に行けないんじゃなかったっけ」と言った感じで場所変更をしてしまいました
……すいません
投げ槍
コメント



1.削除
地底だろうと神社だろうと、温泉なら何の問題も無い!
だが、もし少しでも「申し訳ない」という気持ちを持っているのなら、
是非、是非に「かまくらだからって浮かれるんじゃない」を(ry
2.奇声を発する程度の能力削除
甘えんぼ天子可愛いよ!
3.K-999削除
なんだこの結婚半年~一年くらいの夫婦はw ラブラブすぎですよw
良かったです。
4.SAS削除
良かった