Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

アリス・イン・パーキングエリア

2010/11/13 22:38:04
最終更新
サイズ
7.97KB
ページ数
1

分類タグ


「四葉のクローバーに、お祓い棒。カエンタケまで勢ぞろい」

ここ最近は、やけに寒いらしい。
そう魔理沙に聞いたから、ここ数日は引き籠った生活をしている。
寒いと分かって外に出る馬鹿じゃない。都会派だもの。



「まさに…ワンダーランドね」

それを良い事にか、ちょこちょこ人妖が来るようになった。
しかし、長居はしない。
ちょっと顔を出して、ちゃちゃっと帰る。それなら、来ない方が寂しくなくていいのに。
そうして、必ずこう言って帰る。



『ちょっと預かっててくれませんか? ちゃんと取りにきますので』

最初にそれを言ったのは、普通のより少し大きめな妖精。
遊んでる最中に見つけたのだろうか、綺麗な四葉のクローバーを持っていた。
ただ、見つけたのはいいけれど、遊ぶのには少し邪魔。
そこで見つけた、いい感じに都会派な私の家。
頼られた事が嬉しくて、つい、言ってしまった。



『えぇ、いいわよ。気にせず遊んでらっしゃい』

そうして、再び遊びに行った彼女。
大した頼みじゃないから、負担になることは無かった。
しかし、これで終わらないから困っている。



『珍しいきのこ見つけたんだ。ちょっと預かっといてくれよ。な?』
『お祓い棒に陰陽玉。ちょっと置かせてもらえる? 神社から人里まで、妖怪退治の度に持っていくの面倒なのよ』

私の都会派な優しさを、あの妖精が広めたに違いない。
その優しさを、素直に感心してくれる様な人達ばかりなら良かったけど。
あいにく、そんな綺麗な知り合いはいない。
人の優しさにつけこむ、そんな奴ばっかりだ。



『よぉ、アリス。悪いんだが、またきのこ採りすぎちゃってな。私の家までは遠いし…』
『…今まで、どれだけの数のきのこ、預かってると思ってるの?』
『おいおい、断る気か? 初対面の妖精の頼みは聞き入れるのに、親友、いや、心の友な私の頼みは聞けないのか?』
『限度があるって言ってるの』

不満気な様子を顕著に出してみても、引く気は一切無いこの態度。
そうして。今現在、家の棚には統一性の欠けている物に溢れている。
比率で言うと、人形:きのこ:その他=1:5:17。
…私は人形遣い。



「…生臭い」

預かってるきのこを引き取りに来ないのを見ると、さほど重要な物ではないに違いない。
採ってみたはいいものの、別にいらなかった。
でも、折角採ったんだし、捨てるのは勿体ない。
そうだ、アリスのとこにでも置いとけばいいだろ。物置代わりに。
…みたいな感じなのだろう。



「強硬手段ね。仕方ないわ」

一番被害を出しているのは、その他に属する妖精達だ。
黙ってるのをいいことに、少々私を舐めすぎてたみたいね。
都会派魔法使いの本気、見せてやる。




















「マーガトロイド預かり所…何だこれ」
「見ての通りよ。マーガトロイドである私が、預かる所」

本気を出した今の私は、ボランティア精神など持ち合わせていない。
優しさにつけこむ奴には、優しさを見せなかったらいい。
そうして作ったのが、このマーガトロイド預かり所。




「一品預かるのと引き換えに、千円。支払って頂きます。…って、ぼったくりじゃないか、それじゃ」
「そう思うのなら、利用しない事ね」
「営業努力が感じられないぜ」

五分で作り上げた、マーガトロイド預かり所ポスターを見て不満をこぼす魔理沙。
そもそも、こんなの利用する側にとって、大したメリットは無い。
だからこその、クレームの来そうなこんなルール。
営業なんて、するつもりじゃないんだから。



「払わなかったら、どうなるんだ? 処分してくれるなら好都合だぜ」
「今回の規定設定につき、一度ご返却させて頂きます」
「…断った場合は?」
「お客様がお預けになられたきのこの数だけ、こちらから様々な妖怪の死体を差し上げます。計175体」
「何でそんなに持ってんだよ…」

もちろん、175体分の死体なんて持ち合わせていない。
でも、ここは魔法の森。鬱蒼と生い茂る木々に、常に薄暗い世界。
探せば、妖怪の死体とかなんて、いくらでも転がっている筈。
…そんなのを探し求めるのは、どうにも都会派じゃないけど。



「ささ、お客様。こちらが、お預けになられたきのこ達でございます」
「うわ、くっさ…どうやって持ち帰ればいいんだよ…」
「そんなの知りません。さっさと持ち帰ってください」
「くそぅ…何かぬるぬるする…うわぁ…」

何より、魔理沙にとって死体よりかはきのこの方がマシに違いない。
それは、誰にとっても同じこと。
だから、死体集めの心配はあって無いようなもの。



「またのご利用を、お待ちしてません。これに懲りたら、二度と使わないことね」
「分かってるよ! 二度と頼るか!」
「あ、そのきのこ達、そこら辺に捨てちゃあダメよ。捨てたら夜中、人形達にあんたのベッドの周りへ並べとかせるから」

少し厳しいことをしたようだけど、所詮は自業自得。
魔理沙のことだから、きっと霊夢やそこらに愚痴を言うに違いない。
そうしてこの噂が広がっていき、私の恐ろしさを知らしめられればしめたもの。
都会派な私は、何だってやってのける。




















「あの…その、ごめんなさい。私、お金持ってなくて…」
「…」
「でも、どうしても返してほしいんです! チルノちゃんに見せたくて、その…」

しばらくして、最初にこの預かり所を利用した妖精がやって来た。
あれから一週間以上経って、すっかり忘れてるもんだと思ってたのに。
余程大事な、四葉のクローバーなのだろうか。



「あの…ダメですか?」
「別に、構わないわよ」
「本当!? ありがとうございます!」

心底、本当に嬉しそうに答える彼女。
この四葉のクローバー、ルール上は新たな規定設定につき、タダで返すことが出来る。
でも、少しは痛い目に合ってもらわないと。
好都合なことに、彼女はお金が無いと返してもらえないと勘違いしてるみたいだし。



「でも、貴方。先立つものは持ってないのよね?」
「…あの、何でもしますから、その…」

…どうにも、彼女に死体を押し付けるのは気が引ける。
かと言って、ここで彼女だけ優遇したら、また他の妖精に舐められる。
あの人形遣いは、所詮口だけなのだと。



「あの、私、料理でも洗濯でも、頑張りますから!」
「…」
「お風呂だってご一緒しますから!」
「…」
「お望みなら、添い寝だって…」

そんな趣味は無い。
何か、何か代わりにしてもらうことはないだろうか。
無償で返すわけにはいかないから。
…そうだ。



「博麗神社。場所、分かるわよね?」
「あ、はい。分かりますけど…」
「これとこれ。霊夢に返してきて。それでチャラにしようじゃない」
「…ありがとうございます!」

お祓い棒と陰陽玉を彼女に押し付ける。
確かに、飛んでいけば博霊神社なんてそう遠くない。
大した罰には見えない。でも。



「待ちなさい。返す時、霊夢にこう言うことが条件」
「?」
「『アリスさんの家ががら空きだったから、面白半分に荒らしてたんです。すると、いかにも使えなさそうな巫女セットがあるんじゃないですか! でも、ちょっとした好奇心で、
私が使ってみたんですよ。使えなさそうな巫女セット。するとどうですか! サッパリ使えません。やっぱり貧乏くさい巫女セットは、貧乏くさい巫女しか扱えないんですねぇ』って」
「…え?」
「長かったかしら? あ、一字一句そのままじゃなくていいわよ。嫌らしさが伝わればそれで」

せっかくだし、霊夢に手を下してもらうことにした。
この妖精、見た感じ真面目そうだし。
涙目になりながらも、律儀に喧嘩を売ってきてくれることだろう。ふふん。



「…行ってきます。四葉のクローバー、準備しててくださいね」
「えぇ。生きて帰ってくるのよ」
「…はい」

彼女の健闘を祈って、敬礼。




















「アーリースさーんっ! これ、ちょっと預かっててくださいよ!」
「何よこの実…くさいし、馬鹿でかいし。いい加減に…」
「あ、明日霊夢さんに会うんですよ」
「謹んでお預かり致します」

あの後、彼女は確かに私の言う通りに言ったらしい。
しかし、今にも退治されそうになったその時、彼女はこう呟いた。



『ゴメンね、チルノちゃん。四葉のクローバー見せられなくて…』

先程までの、やけに挑発的な口調とは打って変わってこの様子。
勘の鋭い霊夢のこと、かつ機嫌が良かったのだろうか。
攻撃の手を止め、事情を聞きだした。
そうして、正直に話した妖精に対して一言二言。



『陰湿ね。最近引き籠ってると思ったら、性根まで腐ったみたいじゃない。』
『今度何か言われたら私に相談しなさい。今のアリスに立ち向かう事は、世のため私のためなんだから』

この霊夢の言葉を、妖精は仲間達に広めてしまった。
噂はどんどん拡大する。
巫女の名を出せば、あの人形遣いは何でも言うことをきくと。



「おぅ、アリス! 悪いが、また採り過ぎちゃったんだ、きのこ。繁殖期かね?」
「…そうね」
「ってわけだから、後頼むぜ!」

今日も元気に、マーガトロイド預かり所は運営中。
今日も明るく、常にボランティア精神まっしぐら。
有り余るきのこ。そこら中に転がる謎の植物、生物、花畑。
隅っこに収まる人形達。



「…まだまだ」

私の家をこんなにした犯人は、皆霊夢の力を頼っている。
なら、次にすることは、霊夢を味方につけることだ。
彼女を味方につけるには、手っ取り早いいい方法がある。



「…微妙ね。でも、食べれないことは無さそうだし」

胃袋を制するものは、霊夢を制す。
松茸クッキーを手に、いざ、博霊神社へ。
都会派な私の逆襲は、一度や二度じゃ終わらない。
読んでくださって、ありがとうございました。

パーキングとは少し違いますよね。
でも、考えに考え抜いた結果です。
洒落たタイトルをつけれるようになりたいと、最近考えています。



追記
>奇声を発する程度の能力さん
都会派なアリスは、諦めることを知りません。
楽しく、努力し続けます。それが都会派。



>2.名前が無い程度の能力さん
うまのふん…
都会派な店主さんなら許してもらえる筈です。



>唯さん
自分のペースで…ありがとうございます。
少しずつ頑張っていこうと思います。



>4.名前が無い程度の能力さん
し、死体…
許されません。その酒場での、決まった罰を受けて下さい。
もしあれなら、マガトロ預かり所、ただ今無償で営業しております。



>yuntaさん
タイトルの面白さが、最近の課題です。
でも、内容と合って無かったらタイトルとは言えないですよね。
もう少し、考えてみようと思います。



>6.名前が無い程度の能力さん
人生を楽しむことが、都会派への秘訣です。
アリスは完璧な都会派魔法使い。



>7.名前が無い程度の能力さん
ありがとうございます。
楽しく、面白いタイトルを常につけれるようになりたいです。



>8.名前が無い程度の能力さん
前作までの作品も、読んでいただいたのでしょうか。
少し恥ずかしい反面、とても嬉しいです。
ありがとうございます。



>拡散ポンプさん
都会派なアリスは、何事でも楽しむことを大事にしています。
まさに、それが趣味の一つだから。



>10.名前が無い程度の能力さん
その言葉、嬉しくて嬉しくて仕方ありません。
これからも宜しくお願いします。
けやっきー
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
逆襲劇は始まったばっか!
2.名前が無い程度の能力削除
ドラクエの預かり所にうまのふんを預けてごめんなさい
3.削除
お久しぶりですね!
貴方の書くアリスは本当に都会派で……www

最高でした、ご馳走様!
次回も自分のペースで頑張って下さい!
4.名前が無い程度の能力削除
ルイーダの酒場に死体預けっぱなしで本当にごめんなさい
5.yunta削除
タイトルに惹かれたのですが、確かに内容とそれほどマッチしていなかったような。
しかし預かり所って面白い発想ですねぇ。アリスの良い性格が見れそうな題材だ。
6.名前が無い程度の能力削除
何この転落人生ぽくて実は楽しんでそうな微妙な雰囲気。
アリスは実に都会派だなぁw
7.名前が無い程度の能力削除
タイトルが目についたから読んでみたけど楽しかったよ
8.名前が無い程度の能力削除
この雰囲気がいいんだよなぁ
9.拡散ポンプ削除
それでも強かなアリス。
本気は出さずに、半分趣味でやってそうな感じがする。
10.名前が無い程度の能力削除
タイトルではなく作家さんにホイホイされた俺に隙は無かった