Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方混合酒 ~M.Kirisame~

2010/11/13 08:58:36
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 夜の帳も落ち、木々の切れ間から仄かな月光が射す。魔法の森はもう人の時間ではない。そんな魔法の森の端に明かりが漏れる店が一つ。その名を香霖堂と言い、動かない店主が蘊蓄を語る古道具店である。今、そこに一人の少女が入って行った。
「待たせたな、香霖」
「来たかい。それじゃあ、早速だが始めよう」

東方混合酒 ~M.Kirisame~

 事の発端は今日の昼頃になる。いつもの様に番頭台に座りながら読書をしていると、魔理沙と霊夢が押しかけて来た。いつもはそこでお茶を出しておしまいなのだが、霊夢があるものを見つけてしまったのだ。
「霖之助さん、これは何?」
霊夢が見つけたのは実に種々様々な液体の入った瓶の数々だった。
「あぁ、それかい。先日、無縁仏の供養に行った時に見つけたんだ。どうやら外の世界のお酒らしい」
「酒だと!?よし、宴会だぜ!!」
酒と言う単語を聞くだけで宴会に繋げる魔理沙の短絡思考に苦笑しながら霖之助は言葉を続けた。
「話は最後まで聞くものだよ。実はこの本をその時一緒に拾ってね」
と言って霖之助は多色で印刷された一冊の本を魔理沙に見せる。
「本の色彩にも驚いたが、それ以上に驚いたのはこの本は【カクテル】と言うものについて書かれているんだ。カクテルとは簡単に言うとあるお酒に別のお酒を入れたり、果汁や調味料を入れて混ぜ合わせて作るお酒、もしくは飲み方の一種らしい」
「焼酎とか梅酒を水とかお湯で割るのと一緒か?」
「広義ではそういう事になるだろうね」
 いつの間にか霊夢がお茶とお煎餅を持って来てくれていた。どうやらお酒には興味がないらしい。
「必要な道具も揃っていたので作ろうと思ったんだが上手くいかなくてね。咲夜に聞いてみた所、詳しくは無いなんて言いながら手取り足取り教えてくれてね。一応はカクテルとやらを作れる様になったよ。『お礼はそうですわね…。仕事を忘れて、二人で飲めたらそれでいいですわ』だそうだ。お酒はともかく、仕事はどうにもね?」
霖之助は困った顔をしながらも笑っていた。
「って、咲夜と二人で飲んだのか!?いつ!?どこで!?何もなかったんだよな!?」
激しい剣幕でまくし立てる魔理沙を右の掌で制止する。
「何をそんなに焦っているんだ?咲夜とはそれっきり、一週間は会っていないよ」
ホッと胸を撫で下ろした魔理沙にある案が浮かんだ。
「それじゃあさ、香霖。そのカクテルって奴を飲ませてくれよ」
「今からかい?昼間からお酒とは感心しないね」
「そーじゃなくて、今晩だぜ?この魔理沙さんだけに香霖がそのカクテルを振る舞う権利をやろうって訳だぜ」
霖之助は唸りながら首を捻った。
「だめ…なのか?」
不安そうな顔で見上げる魔理沙を見て霖之助が折れるのに時間はかからなかった。
「わかった、そうしよう。真夜中までには来てくれよ」
「がってんだぜ!」

 今、魔理沙は普段の白黒の魔法使いの服ではなく、シックな黒いドレスを纏っている。店の中はスペースが作られカウンターと棚の間に霖之助が立っている。
「いらっしゃい。どうしたんだいそのドレスは?」
ドアの前に棒立ちになっている魔理沙は手にハンドバッグを持っていて、どこかの令嬢の様だった。
「あ、アリスがなたまのパーティーとか、ドレスコードがある時は着て行けってくれたんだぜ。そのぉ、変…か?」
霖之助は静かに首を横に振った。そして、カウンター前にたった一つしかない椅子を勧める。それに応え、慣れないヒールを鳴らしながら魔理沙は背の高い椅子に座った。
「箒で来たんだろう?その格好ではあまり飛ばない方がいいと思うのだが…」
「一応、その辺は考えてあるから大丈夫だぜ、じゃなかった。大丈夫よ?」
「ぷくっ、『よ』って魔理沙くくっ、どうしたんだい急に?君らしくもない」
「わっ、笑うな!たまには女らしくしようと思ったのに、もう香霖なんてしらん!」
憤慨した魔理沙は霖之助に背を向けて腕を組んだ。
「済まない、謝るから許してくれ。この通りだ」
慌てて謝る霖之助を目の端でちらっと見て、魔理沙は後頭部を霖之助に向け直した。
「笑いながら謝るなんて聞いたことないな、誠意がない証拠だぜ。それに、変なのはお前の格好もだろう?どうしたんだよ」
「あぁ、これかい?」
と言って霖之助は自分の服を見直した。黒のスラックスに革靴。白のワイシャツに青いベスト。シックな蝶ネクタイと普段の服装とは大きく違うものだった。
「いやね、山の巫女が来た時にカクテルの話をしたら、バーテンダーは大体こんな格好だと言われてね。あ、バーテンダーとはカクテルを提供するお店『バー』の店主の事らしい。バーとはこじんまりしたたたずまいで、主に店主だけで切り盛りするケースが殆どだそうだ。中には手品を見せる為に手品を別で雇ったりする事もあるらしく、あくまでベースのスタイルだと考えられるだろう」
「あー、蘊蓄はもういい。さっさと酒を出してくれ」
うんざりした顔で魔理沙は霖之助に向き直った。
「まぁ、普段と違う格好だが様になってるな」
 霖之助を改めて上から下まで見る。すらっとした体躯に色白の肌がうらやましい。自分自身はお世辞にも大人になったとは言えない体つきに弾幕ごっこで傷だらけの肌。あまり露出が出来ないのもこのせいだ。
「褒め言葉と受けとっておくよ。そういう君の姿も新鮮なものだね。僕が仕立てた以外の服を着ているのを見るのはいつぶりだろうか?とても似合っているよ。さっきは言葉遣いを笑って悪かった、何だか一瞬君が僕の知らない存在になるんじゃないかと思ってしまったよ」
魔理沙は霖之助の目を見つめて呆然としてしまった。そして一気に吹き出した。
「アハハハ、何言ってんだよ香霖。魔理沙さんはいつまでも魔理沙さんだぜ。服も言葉遣いも全部飾り。そんなの関係ないんだ。だから、その下にある私をちゃんと見といてくれよな」
笑顔で話す魔理沙を見て霖之助は微笑みを返した。
「さてと、お話はこれくらいで本来の目的を果たそうじゃないか。魔理沙はカクテルについて何も知らないだろうから、僕に任せてもらって構わないかな?」
「おう、任せた」
その返事を聞いて、霖之助は逆円錐形のグラス(カクテルグラス)二つと寸胴のガラスの器(ミキシンググラス)を一つ出した。ミキシンググラスに氷を入れ二つのお酒、ドライジンとドライベルモットを砂時計みたいな形のもの(メジャーカップ)で計って入れた。それを細長いバー・スプーンで混ぜ合わせる(ステア)。しっかりと混ぜた所でストレーナーでこしてグラスに注ぐ。オリーブの実をグラスに落としてグラスの内一つを魔理沙の目の前に置いた。
「カクテルの王様と呼ばれる、マティーニだ。つまみにはチーズなんてどうかな?」
一口大にスライスされたチーズを皿に乗せてグラスの横に添える。魔理沙はグラスを手に取り、少し香りを嗅いだ後一口含んだ。とほぼ同時に眼をカッと見開き、すぐにチーズを一つ放り込んだ。
「どうだい、初めてのカクテルは?」
魔理沙は目を潤ませながら霖之助を睨みつけた。
「…少々きつかったかな?飲めないなら僕が飲むが…」
「五月蝿い!私だってこれくらいは飲めるっ!!」
「無理はしてほしくないんだが…」
霖之助が言い終わるより早く、魔理沙はグラスを空にした。
「次を、頼む。…別のやつをな」
霖之助は困った顔をしてから空のグラスを下げて、ミキシンググラスを洗ってまた氷を入れた。今度はスコッチ・フランボワーズリキュール・デュポネを計ってステア。再びカクテルグラスに注いでチェリーを飾る。
「どうぞ」
「お、こいつはいけるかも…」
「それは畳重」
霖之助は手元のマティーニを傾ける。ふぅ、と息を吐いてしみじみと目を閉じる。
「こんなにも静かに君と酒が飲めるとは思ってもみなかったよ」
「む、失礼な。私だっていつまでも子供じゃないんだぜ。しっかりした大人の女性になって香霖を…」
「僕をどうするんだい?」
しばしの沈黙。回答を待つ霖之助と口を閉ざした魔理沙。
「なぁ香霖…」
「どうしたんだい?」
魔理沙はゆっくりとカウンターに手をついて霖之助を見上げた。
「気分悪くなってきた…」
「宴会でなら持つ君も、外の世界のお酒では早く酔うんだね…。少し水でも飲んで待っていなさい」
そう言って水を入れたコップを渡すと霖之助は店から住居へと向かった。
 水を含んで、目の前に霖之助がいないことを確認した。
「何でこうなっちゃうかなぁ~。もうちょっとで言えただろうに~」
ぐでっとカウンターにへたり込んで木目に沿って人差し指を動かす。
「どーせ、香霖の事だから私の気持ちなんて気づいてないんだろーなぁー」
魔理沙の顔を二筋の水滴が滑る。
「ずるぃぜ、香霖。私は、私はこんなにも好きなのに…」
とめどなく流れる涙を魔理沙は拭おうとも止めようともしなかった。ただ、感情と共に溢れる涙を流し続けた。
「魔理沙?」
戻って来た霖之助にしてみれば全く訳のわからない状態だった。幾度となく酔った魔理沙を見てきたが、泣いているのを見たのは初めてだったからだ。急いでカウンターを回り魔理沙の横へ屈む。
「どうしたんだい魔理沙?何かあったんだろう?」
「五月蝿い!どっか行け!!私の気持ちなんか何もわかってないくせにっ!」
顔を覗き見ようとした霖之助を払いのけようと腕を振り回す。霖之助はそれを受け止め、一瞬だけ魔理沙を見つめた。そして、腕を魔理沙の背中へと回した。
「何すんだ!離せ、この助平!変態!」
腕の中で暴れ続ける魔理沙を霖之助は強く抱きしめ続けた。
「君は僕の気持ちを知っているのかい?」
「知るかっ!そんなの聞きたくないっ」
「僕はね、君に幸せになって欲しかったんだ。僕よりも遥かに良い男性と良い家庭を築いて欲しいと願っていたんだ。心の底から…。でもね、ある時僕は気づいてしまったんだ。内なる自分自信の気持ちに。君を幸せにする男になりたいと、君の幸せを僕が作りたいと、君の笑顔をいつも一番側で見ていたいと。今まで僕は君の気持ちを蔑ろにしてきた、なのに僕は君に惹かれていたんだ。こんな我が儘が許されるとは思わない、それでもこの気持ちを君に伝えたいんだ。魔理沙」
魔理沙は動きを止めて霖之助を見上げた。今までに見たことのない霖之助。いつも知識をひけらかす得意げな顔でも、私や霊夢が来た時の面倒臭さどうな顔でも、鑑定や読書の時の真剣な顔でもない。どこか悲しそうで、不安そうで、それでも瞳には固い決意が光っていた。
「僕は君が好きだ。例え何があろうと、僕が君を守る。この命に変えても」
「香霖…」
一度止まった涙が魔理沙の頬をまた濡らし始めた。しかし、今度は違う。悲哀ではなく歓喜の涙。
「ばかっ!今まで散々私の気持ちを無視してきてなんだよ!私が好きだって?私の方がもっと好きだよっ!」
顔を上げた魔理沙は一瞬で霖之助の唇を奪った。
「お前にはこんな事も出来ないだろう?だから、私の方がずっとお前を愛してる」
キョトンとした表情から何をされたか気づき、紅潮し目を逸らす霖之助。
「いやはや、こうなるとはね」
そして今度は霖之助が魔理沙へ口づけ。さっき魔理沙がしたのよりもずっと長く。
「僕以上に君を愛してるやつなんて存在しないさ。死ぬまでなんて言わせない。これから僕は君の、君は僕のものだよ。魔理沙」
 飲みかけのカクテルの名は「キス・ミー・クイック」。冷えたグラスが歓喜に満たされ、露の涙を表明に浮かべていた。
はじめましての方、はじめまして。お久しぶりの方、お久しぶりです。jazzです。
久々に書いてみました霖之助ssです。
前は東方想創話の方に同じ名前であげたことがありましたが、ジェネリックは初めてです。
良かったら、そっちもよろしくお願いします。

今回は最近マイブームなカクテルとあわせて書いてみました。
なお、作中に出てくるレシピは実際のものです。
同じ感じで慧霖とか咲霖とかもかけないかなぁと思ってます。まぁ、分からんですけど。

誤字脱字があればご一報お願いいたします。

ここまで読んでくださった貴方に最大級の感謝を。
jazz
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
カクテルはよく分かりませんなぁ・・・。
霖之助・・・・ちょっとカッコいいぜ・・・・