「くんくん」
「魔理沙何してるの」
「アリスの匂いかいでるの」
「いや、かいでるの、じゃなくて」
ソファに腰掛け裁縫をする私の背中に、魔理沙がぴとりとくっついている。
ソファと私の背中の間に、まるで猫のように身体を滑り込ませている体勢だ。
魔理沙はくんくんと、私の髪に鼻を埋める。
「アリスの髪はいい匂いだな」
「それはどうも」
「おひさまみたいな匂いがするぜ」
「ずっと引きこもってるのに?」
「みたいな、って言っただろ。比喩だよ比喩」
言いながら、魔理沙は私のうなじの方に鼻をずらした。
僅かにかかる鼻息が、非常にこそばゆい。
「ちょっと魔理沙。くすぐったいんだけど」
「くんくん」
「いや、くんくんじゃなくて」
魔理沙は私のことなどお構いなしに、私の匂いをかぎ続ける。
これ以上言っても無駄だと悟った私は、仕方がないので手元の作業に神経を集中させることにした。
「くんくん」
「…………」
「くんくん」
「…………」
―――そうこうしているうち、どうやら満足したらしい魔理沙が私の肩の上に顎を乗せた。
「ふぅ」
「もういいの?」
「ああ。アリス分は十分摂取できたぜ」
「そう」
そこで私は作業の手を止めると、おもむろに上半身をひねり、魔理沙の方を向いた。
「ん?」
目をぱちくりとさせる魔理沙。
私はソファに両足を乗せると、お姉さん座りになって魔理沙と真正面から相対した。
魔理沙は私とソファに挟まれた状態だ。
「な、なんだ? アリス」
魔理沙の声が少し怯えを含んでいる。
私はにこやかに笑って言った。
「次、私の番ね」
「えっ」
魔理沙が一瞬、身体を後ろに反らす。
同時に、私はそのか細い両手首をしっかと掴んだ。
「あっ!」
魔理沙は気は強いが腕力は弱い。
加えてこの体格差だ。
私が少し力を入れれば、魔理沙は簡単に動けなくなってしまう。
「あ、アリスっ……」
更に、今の魔理沙はソファに背中をくっつけている状態だ。
逃げ場はどこにもない。
「や、やめてっ……」
「やめない」
私はずいっと顔を近づける。
頬と頬が触れ合いそうな距離。
金色のふわふわが私を包む。
「くんくん」
わざとらしく擬態語を発すると、魔理沙が震える声で言った。
「だ、だめっ……今日、まだおふろはいってないし……」
すぐ傍にある魔理沙の頬が上気する。
なんだか熱量が伝わってきそうなほどに赤い。
私は口元を歪めると、更に深く、魔理沙の中へと突っ込んだ。
「くんくんくん」
「あ、アリスっ」
魔理沙はじたばたと身じろぎするが、私が両手首を掴んでいるため、自由には動けない。
それをいいことに、私は魔理沙の耳元で囁いた。
「魔理沙。とってもいい匂い」
「やぁ……」
魔理沙はなんだか泣きそうになっていた。
いいや、このまま泣かしちゃえ。
「すごく懐かしくて、落ち着く匂いだわ」
「うぅ……」
私は魔理沙の髪、のみならずそこに付着したあらゆるにおいを己の嗅覚で感知する。
その正体はすぐに判った。
「そっか。これ―――森の匂いなんだ」
「……そりゃ、そうだろ……私はずっと森で暮らしてるんだから」
「でも、私だってそうよ」
「アリスは基本、引きこもりじゃないか」
「そうね。魔理沙は森のきのこ採ったりしてるものね」
「そうだぜ。インドアなアリスとは違うんだぜ」
魔理沙が少しずつ、普段の調子に戻ってきた。
でもそこで、再びイニシアチブを奪うのが私のやり方。
「へぇ。じゃあこっちはどうかな」
「ひゃっ!」
私は頭を少し下にずらして、魔理沙の首筋に鼻をくっつけた。
途端に、ぴくんと全身で反応する魔理沙。
「ちょ、あ、アリス……っ」
「なによ。魔理沙だって私のうなじの匂いかいでたクセに」
「で、でも」
「くんくん」
わざとらしく鼻を動かす。
魔理沙の白い肌が、みるみるうちに紅潮していく。
「森の匂いと魔理沙の匂いが混ざってるわ」
「や、やめてぇっ……」
その後も魔理沙はうだうだ言っていたが、そんなの知ったこっちゃないので私は魔理沙の匂いを引き続き余すことなく堪能してやった。
―――そして。
「ううぅ」
「いつまで拗ねてるのよ」
ようやく私の辱めから解放された魔理沙は、全身をタオルケットでくるみ、恨みがましい視線だけを私に向けて覗かせている。
「……アリスがこんなにヒドイ奴だとは思わなかったぜ」
「そりゃあどうも。こう見えても魔女ですんで」
「うぅう」
しれっと返すと、魔理沙は一層視線を険しくした。
おおこわいこわい。
「……もうお嫁に行けないぜ」
ぶすっとした口調で言う魔理沙。
そんな彼女の目を見据えて、私は言う。
「大丈夫よ」
「何がだよ」
「私が貰ってあげるから」
「っ……!」
私がにっこり笑って言うと、魔理沙は唯一覗かせていた目元すらもばさっと覆い隠してしまった。
了
まりまりささんのマリアリだあ
堪能した
しかもR10だ!
私のライフがゼロを越えてマイナスになったと思ったら
オーバーフローしてマックスになったぜ…。
どうすれば・・・。
ずっと待っていたいたよ マリアリ分補給完了
ごちそうさまでした
面白かったです。
R-15だったら人殺せるレベルじゃないか!
しかし何故まりまりさの書くマリアリにはここまでニヤリと来るのか、
と真面目に考えてみたらシチュエーション作りが上手いんだという結果になっアバババババババ
22さんもいっていますがありきたりな文章、しかしあなたのマリアリの実績と雰囲気作りにより私たちを発狂させるすばらしい作品でした(褒め言葉)
追記
うぐー最後のアリスのセリフはあの場では卑怯です!!