Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ネタ探しの日

2010/10/18 14:08:42
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「う~む、面白いネタがないわね~」

 机に向かい、ペンを回しながら悩む。
 最近これといって記事にできそうな面白おかしいことがない。
 新聞自体は趣味でやっているようなものであり、必ずしも出す必要があるわけではない。が、

「む~……新聞大会までにもうちょっと部数伸ばしたいのになー」

 年一回天狗の間で開かれる新聞大会。
 発行部数を比べる大会だが、ここのところ負け続きである。
 幻想郷において新聞は情報収集よりも、娯楽の一つとして楽しまれることが多い。そのためか、事実を伝えるものよりも、面白おかしく書かれたもののほうが好まれる傾向にある。
 まあ、大抵の新聞は勝手に取材して、勝手気ままに書かれた記事ばかりなのだが。

「ぬあ~……、取材でもしてネタを探すか~。」

 伸びをすると骨が鳴る。その姿勢のまま欠伸を一つ。
 椅子から飛び降りた彼女はまず机にペンを立てる。そしてペンが倒れた方向に行き先を決め、手帳を片手に飛び立った。




 博麗神社。
 相変わらず参拝客が居るわけでもなく、巫女が境内の掃除をたまにやるくらい。
 その掃除も終わって暇を持て余した巫女は縁側で茶を飲んでいる。やる気が微塵も感じられないが、実に平和である。

「暇ですねー」
「そうね、暇ならお賽銭でも入れて頂戴。素敵な賽銭箱はこっちじゃなくてあっちよ。」
「いや~、新聞のネタがなかなかなくて困ってるのですよ。」
「あらそう。で、賽銭箱はあっちよ。帰り道は向こう。」
「面白そうなネタもあるんですが、裏がなかなか取れず難航していましてね。」
「来たときに撒き散らした落ち葉の掃除。帰る前にやっていきなさいよね。」
「新聞大会まではまだ期間はあるんですけど、早めに手は打っておきたいんですよ。」
「ところで、あんたは何しに来たのかしら?あと掃除していってね。」

 両者とも相手の話を聞く気が感じられない。ただ自分の喋りたいことを喋っているだけである。しかし不思議なことに勝手に話して勝手に話が続く。成立してはいないのに会話が続いている。

「あ、この前作った新聞どうぞ。」
「いらないわよ。うちにどれだけ新聞溜まってると思ってるのよ。」
「じゃあ私はこれで。また取材に来ますからおいしいネタ、用意して置いてください。」
「結局何しにきたのよ。お茶ならまだしも、そんなもん用意するわけないでしょ。賽銭入れないし用が無いなら帰れ。」
「あらら、冷たいですね~。でも冷たい中にもほんの少しの優しさが見え隠れするようなしないような…『博麗神社の巫女はツンデレだった』とか記事書いたら注目されますかね?」
「なによ『つんでれ』って。」
「ダメですね。あんまり良い記事が書ける気がしません。」
「何故かわからないけど腹が立つわね。」
「じゃあ明日も来ます。」
「来るな。」

 天狗は新聞を置いて飛び去る。お茶とお茶請けはしっかりいただいていく。迷惑なことこの上ない。
 残された巫女は溜息をつき、湯のみと皿を片付ける。
 その後、縁側に戻り、また増えた新聞を見てもう一つ溜息。天狗の起こした風で境内に散らばった落ち葉を見てさらに一つ。飛び去った天狗はもはや点すら見えない。この短時間で巫女は3日分くらい幸せが去っていったのかもしれない。




 魔法の森。
 木々が密集し、薄暗いこの森の中、たまに日が差し込む、開けた場所がある。
 森に住み、魔法使いになろうとする人間は、このように開けた場所に住居を構えることもある。
 次に彼女が降り立ったのは、その中の一つの住居だった。


「というわけで、何かネタになりそうなことを探しに来ました。」
「ほほう?どういうわけなのかさっぱりわからないな。まあいい。丁度良いネタがあるぜ?」

 ネタがあると聞いて期待の眼差しと共に手帳を取り出す。

「ほうほう。それは是非とも教えていただきたいですね。」
「この前珍しい植物を見つけてな。作った新薬の実験台を探していたんだ。」

 その一言が聞こえた瞬間、彼女は一歩下がる。笑顔を保ってはいるが、表情も先ほどより強張っている。

「それって大丈夫なんですか。」
「安心しろ。既に私が安全性を確認済みだからな。」
「ああ、それならば」
「少し死神の世話になった程度だ。」

 それは安全とは言わない。
 一気に3歩ほど後ろに下がった。魔理沙はいつの間にか、手に怪しい液体の瓶を持っている。はっきり言って怪しい。危険な臭いしかしない。

「それって安全なんですか?」
「妖怪なら頑丈だし、大丈夫大丈夫。保障はしないが。さあ飲め、私の知識の糧となるといい。ふっふっふ……どんな反応するか楽しみだぜ。」
「あややややややや……なんだか激しくまっどさいえんてぃすと的なオーラが漂っていますね……。」

 じりじりと後退する。対してマッドサイエンティストは文との距離をゆっくりと詰めてくる。その眼は獲物を捕らえた狩人の如く。相手の一挙一動を見逃さない。
 今、文は入り口側にいる。が、入り口から出るには扉を開けなければならない。おそらく相手は背中を向けたら最後、即座に拘束し、実験台にされるであろう。前方やや左手側には窓がある。しかし、そこから出るには相手の正面を横切る必要があるだろう。それを向こうが見逃すとは思えない。
 周囲の状況を確認。今文の周囲にある脱出口は入り口、窓の二つ。二階は階段が魔理沙の背後にあるため、今の状態では使うべきではない。従って前者のうちどちらかから脱出するべきだろう。窓から出るにはまず、魔理沙をどうにかせねばなるまい。窓の鍵は開いているが、相手も幻想郷最速を自称する人物。一瞬でも動きを止めるのは危険だ。

 脱出の方法を確認した文は、まず近くにあるハードカバーの本を投擲する。魔理沙はそれを避ける。代わりに窓に本が当たるが、一瞬隙ができた。そのうちに入り口に向けて体を飛ばし、全体重を込めた蹴りを放つ。だが

「あまいな! 霊夢ほどじゃないが、多少の結界くらいは張っているんだぜ!」

 こちらの動きに気付いた魔理沙がそういうと同時に、ドアに足が届く。蹴りを受けたドアが軋み、外側に向けて僅かに曲がった。しかし、破壊はできなかった。一撃では足りない。
 そのままドアを蹴って体を後ろに飛ばし、飛び掛かろうとする魔理沙と距離をとる。

「くそ、ドアが曲がっちゃったじゃないか。後で修理代請求させてもらわないとな!」

 捕まえ損ねた魔理沙は舌打ちをしてドアの状態を確認した。多分、修理しない限りは使い物にならないだろう。だが確認している間も、相手を逃がす気は無い。即座に次の行動に移る。
 文に向けて瓶を投げた。それだけではない。空中で瓶が緑色の光弾に撃ち抜かれ、砕けた。中身が空中にばら撒かれる。
 文はそれを回避する。床や壁に薬がぶちまけられた。

「あ、おい! 本にかかったらどうするつもりだ!?」
「自分でやっておいてなんですか!? そうなったら自業自得ですよ!」
「避けたお前も連帯責任だぜ!」

 そういいつつ、床に着地。直後に体を全力で前に飛ばした。
 狙いは窓。先ほど本をぶつけた窓には罅が入っており、おそらく次の一撃で破壊できるはず。妖怪の身体能力だからこそできる芸当だ。
 魔理沙は気付き、捕らえようとするが、間に合わなかった。文の足が窓を強打し、砕け散る。そのまま外に飛び出し、勢いが残っているうちに飛翔する。

「また取材に来ますねー。今後とも文々。新聞をよろしくお願いしますー。」

 去り際に新聞を窓に向けて投げ入れた。

「やれやれ、逃げられたか。しょうがない、妖怪に試すのはまた今度だな。」

 実験台に逃げられ、家に残された魔理沙は部屋を見回す。

「うへぇ……これ後片付けしなきゃいかんのか……。ちょっとはしゃぎすぎたぜ。」

 ただでさえ本で埋まっていた床に、机に乗っていた本が落下し、足の踏み場も無い。さらにドアは曲がり、窓は砕け、床と壁には薬と瓶の破片が飛び散っている。

「まあ本に薬がかからなかっただけマシか。丁度いい、久しぶりに掃除でもしてみるとしようかね。」

 そういって、まずは塵取りと雑巾を探しに行った。やると決めたら徹底的にやるタイプなのか。きっと彼女の今日一日は掃除で終わるだろう。




 気が向くまま、雲を突き抜け、天界へ。
 山よりも高く、雲よりも高い場所に位置するここから見える下の景色はまさに絶景。天界そのものも、名前の如く、この世のものではないような風景が見られる。記事にするには十分な景色である。

「こんにちは、毎度お馴染み射命丸です。」
「あら天狗さんいらっしゃい。新聞一つもらえるかしら?」
「どうぞー。ちょっと前に作った物ですが。」
「ありがとう。天狗の新聞ってなかなか面白いことが書いてあるから、暇をつぶすには丁度いいのよ。」

 天界は広い。ちょっと見渡したくらいでは人一人見つからない。時間にもよるだろうか。

「それで、貴女はわざわざここまで新聞を売りにきたの?」
「いえいえ、次の新聞のネタを探してここまできたんですよ。」
「そう。でも残念。ここは退屈で死にそうになるくらい何もないわよ。」
「あやややや……困りましたねぇ…。」
「あ~も~暇だわ~。また地震でも起こしてやろうかしら。」
「それはそれで記事になりますが、しょっちゅう起こされても困りますね。」

 何か物騒なことを言う天人。
 博麗神社が地震で倒壊したことは多くの新聞でネタにされた。当事者である巫女は怒り狂っていたが、周囲に被害が一切なかった為、ただの地震よりも面白いネタが書けた。

「ふーむ、地震を起こすとしたら、幻想郷の建物の耐震性抜き打ちテストみたいにやっては?地震対策の重要性をネタにいい記事が書けそうです。」
「なるほど、それに地震を起こせば異変解決と称して来た人と暇つぶしができるかもね。ついでに異変の記事が書けて貴女も一石二鳥ってところかしら?」
「二度ネタですからね~……もう少し捻りが欲しいところです。」

 物騒な会話が続いている。
 神社の要石を抜いてみようかとか、地震を起こした後、大ナマズの暴れる姿を撮影してみようだとか、色々と話している。多分、尋常じゃない被害が出る。冗談半分で語っているだろうが、もう半分は本気のような気がしないでもない。

「それじゃあ私の剣で気質を集めて、冬でもないのに猛吹雪を起こす。その最中に地震を起こして雪崩のコンボとかどうかしら?」
「いやいや、秋なのに真夏並みの暑さにして『異常気象』を作ったらどうですかね?地震で山が崩れたらわりと困りますから。」
「あら?山の耐震性をテストするには丁度いいと思うわよ。」
「むむむ、しかし仕事場が崩れたりしたら困りますね。それに山は自然物ですから、耐震強度をテストするまでもないですよ。」
「自然物って言っても、済むために色々してるんじゃない?たまには自分の住む場所の記事を書くのも新鮮で面白いと思うわよ。私は天界には飽きてきたけど。」
「仕事場崩れたら新聞作れなくなりますよ?」
「む、それは困るわね。暇つぶしが一つ減るのはまずいわ……。」

 なにやら異変を起こす方向で決まりつつある様子。
 ネタが無ければ自分で作るという文であるが、異変まで起こすつもりだろうか。
 なんというかこの天人のノリ的に、前科もあるため、本気でやり兼ねない。だが、地震対策を記事にするのは良い考えかもしれない。地震に限らず、自然災害はいつ起こるかわからないのだ。起きてからではどうしようもないし、できることなぞ高が知れている。災害時には、せいぜい自分の身を守ることが精一杯であろう。だからこそ、災害には事前の準備が必須なのだ。準備は物だけではない。自分の心構え、この準備を怠れば、いくら家屋の補強をして、物資を用意しようとも水の泡だ。折角の準備も、上手く利用できる状態でなければ意味が無いのである。
 
 話が逸れた。いつの間にか二人は話を終えたらしい。

「それではこの計画はまた今度考えることにしましょう。」
「そうね。いい暇つぶしになったわ。また新聞ができたら来て頂戴ね。広いけど変化が無いここは退屈なのよ。」
「今後も文々。新聞をよろしくお願いします~。」

 そういってすぐさま飛び去る。
 日は落ち始ており、空が赤く染まりはじめている。
 天人は来客があったことに満足しているのか、天狗が飛び去った後でも笑みを浮かべている。

「取材か~、色々なところ飛び回って楽しいのかな。明日あたり下界に行ってみようかしら。」

 呟き、その場から立ち去る。
 辺りからは人の気配が消えた。



 家に帰った後、先に入浴を済ませ、浴槽内で今日一日のことを思い返し、整理する。
 そして寝巻きのまま仕事部屋へ。

「むぅ~……。」

 机に向かい、手に持ったペンを回しながら悩む。
 結局今日一日でネタは収穫できなかったらしい。面白い事件も特に無いし、その面白い事件になりそうなこともまだ計画の前の段階だ。いや、実行されてもネタには困らないが、他の意味で困りそうな気がするから勘弁して欲しいが。

「また色々まわって面白そうなこと探そうかな。次は何処にしよう?」

 そして考え込むこと十数秒。眼を開き、欠伸を一つ。

「ま、それも明日考えればいいか。今日はもう寝よっと。」

 立ち上がり、仕事部屋の明かりを消す。
 本日の新聞の進行はゼロ。次の新聞まではまだかかりそうである。



















 以上が文々。新聞の記者、射命丸文のある一日の様子である。

                                  姫海棠 はたて
ジェネでは3度目まして。総合的に4~5回目まして。生芋こんにゃくです。
相変わらず捻りもなんにもないタイトルですね。
オチは書いている最中に思いついたため、全体的にはたての視点でも見えるように修正してみましたが、おかしいところがあったらゴメンナサイ。
もうちょっと作風を安定させていきたいところです。

ご意見・感想・指摘等ありましたらコメント頂けると嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。

10/28 読んでくれた方、コメントくださった方、ありがとうございます。だいぶ遅くなりましたが、お礼を兼ねてコメントレスを。

>奇声を発する程度の能力様
 何でもない日常が好きなのです。何でも無さすぎますかね……。

>名前が無い程度の能力様
 まったりほのぼのな作品を作っていけたらいいなーとか思ってます。
生芋こんにゃく
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
何でもない一日の感じがとても良かったです。
2.名前が無い程度の能力削除
なんかほのぼのいい感じ。