懐かしい夢を見た。
まだ霊夢のリボンが真っ赤っかだった頃。
仄紅い闇の中、珍しく人間が飛んできたから、ちょっかいをかけたんだっけ。
「あなたは食べられる人類?」って私は聞いたんだ
そしたら霊夢は、こう言った。
「良薬は口に苦しって知ってる?」
そして霊夢は、容赦なく私を退治して――
「――おはよう。」
夢から目覚めたら霊夢がいた。起きたと思ったんだけど、まだ夢の中なのかな?
なら寝たら目覚めるかな?おやすみなさーい
「こら。寝るなら森の奥で寝てなさいよ。」
軽くぶたれた。目が覚めた。
そういえば、鳥居にもたれかけて昼寝してたんだっけ。
立ち上がった私は笑って、「おはよう」とだけ言った。
霊夢はあきれ果てて、ため息をひとつついた。
「とにかく、ここも一応人のための神社なんだから。こんな所で寝ないでよね」
それだけ言うと、霊夢は階段を上っていった。
寝てても起きてても、結局私は暇だから、
私は霊夢についていくことにした。
階段を上ると、魔理沙が待っていたので、
霊夢はもうひとつ、ため息をついた。
霊夢と魔理沙はお茶を飲みながら、何か話している。
私はその横で、おまんじゅうを食べている。
「頼むからなるべくそれで持たしなさいよ」
なんて霊夢は言っていたっけ。
そういえばおまんじゅうがもうあと三つ。
これはいけない。大事に食べないと。
「そういえばさ」
不意に魔理沙が私のほうを見て言った。
「ルーミアって闇消せたっけ?」
「んむぇ?」
あまりに唐突だったので、最後のお饅頭をのどに詰まらせるところだった。
それはともかく。
言われて気がついた。
闇が、出ていない。
私は、光の下に、身体を思い切りさらしていた。
次の日。
「まっくら、だよねぇ。」
自分の闇を確認する。
いつも通り、何も見えない闇が私を包む。
さっき木の枝に頭もぶつけたし、いつも通り。
どうして昨日闇が出てなかったのか
結局私にも分からなかった。
魔理沙にはどう言ったんだっけ
覚えてないけど
たぶんてきとうに言った気がする。
たぶん何かの間違いだったんだ
そうだよね。
そう考えて、とりあえず神社へ向かう。
いつもいる森は神社の裏手だから、
着くまであっという間
こんなどうでもいいこと考えてる間に
ほらもう森がなくなって神社が見えた。
……見えた?
自分を見ると、闇が消えてた。
「何してるの?」
突然声がして、驚いてしまった。
なんでか妙にあわててしまって、言った言葉が
「……ふしぎ発見?」
「意味が分からないわよ」
自分でもそう思う。
霊夢なら何か判るかもしれない。
そう思って話してみた。かくかくしかじか。
「ふーん」
それだけだった。
ひどい。結構気になってるんだから
何か言ってくれてもいいじゃない。
そう言っても霊夢は、
「別に、むしろ困らなくていいじゃない」
と言って、気にせずに私の頭を撫ではじめた。
ものが見えているほうが便利ではあるのだけれど――頭もぶつけないし。
それはそうなのだけど、でもなんだか落ち着かない。
とりあえず、神社に来ると闇が消える。
分かったことはそれだけだった。
その後もずっといろいろ考えてみるけど、
結局なんにも分からないまま、太陽だけがぐるぐる回っていった。
頭がぐるぐる、不安もぐるぐる。
きになる、気になる。もやもや。
わからない、こわい。きもちわるい。
どうして?どうして?なんで?わからない。
こころがきゅうと鳴って、誰かに掴まれたみたいで
涙が止まらなくなって、あと木の幹に全身でぶつかって
前と後ろがわからなくなって
でも私は気がついたら神社にいた。
体はぼろぼろ、顔はぐずぐず、頭はふらふら。
霊夢は私を見て言った
「あらいたの………ってどうしたのよアンタ。」
わかんないの
「そんなにぼろぼろ泣いて、顔真っ赤じゃない。うわ、熱もあるし。」
え?
「妖怪は病気にならないんじゃなかったの?どういうことなのよもう……」
わたし、びょうき、なの?
「とりあえずほら、こっち来なさい」
ぐずぐずの頭で覚えてることは、
ほてったからだのあつさと、
れいむのしんぱいそうなかお、だった。
――懐かしい夢を見た。
いつかは忘れたけど、私と魔理沙がいる。
私が言った。
「りょうやくはくちににがし」
「へ?なんだお前、そんな言葉知ってるのか」
魔理沙が意外といった表情で聞いてきた。
私はぽつりと、
「………って、どういう意味なのかな?」
とだけ言った。
「なんだ意味も知らないで言ってたのか。『良薬は口に苦し』ってのはな、そのまんまだ。よく効く薬は苦いけど我慢しろってこった」
魔理沙は笑ってそう教えてくれた。
「だけどお前、薬なんかいるのか?」
うーん、いらないかも。
「――おはよう。」
夢から目覚めたら霊夢がいた。おはようなんていってるけどなんか夕方っぽい。
体は大丈夫なんだけどまだ心がぐずぐずしてた。
「……結局、どうしたらいいのかしら。」
霊夢は困った感じで、そう言っていた。
そのとき、ふいに、私の体が行動を起こした。
「………おくすり」
「へ?」
なんだか、そう言えって、体が言っていた。
「薬って言ったって……人間用の薬なんかアンタに飲ませても意味なんかないでしょうに」
「違うの。」
私はよろよろと起き上がって、霊夢にとびかかった。
身体がどきどきしてる。でも苦しくはもうなかった。
霊夢が私をにらみつける。
「ちょ、…アンタ、何してるのよ!」
「…おくすり」
「はァ?」
「れいむが、おくすり」
「…………………」
「良薬は口に苦し、って、れいむ言ってた。」
「っ、それいつの話よ…!」
「だから、れいむがおくすり、なの」
驚くばかりだった霊夢の顔から、ため息ひとつ
「……ならほら、お薬あげるから、口開けてなさい」
「んぁ……………む」
もうずっと頭はうつろだったから
苦かったかどうかもわかんなかったけど
たぶん甘かったんじゃないかな
おくすり
あの人の声が頭の中で自然に再生されたw
私もこのお薬が欲しいです。
お話自体は割とシンプルなのに、細かいところで不思議と何か言葉で言い表せない雰囲気があるような。
いやはや、楽しかったです。
けど二つ目の意味合いでないことを祈ろう。
甘いって言ってるし。
でないと安心できない!
敗北感?
すごいあるわ。
なんでか分からないけどね。
完敗です。はい。
まさに良薬ですね。