木陰でうとうとしていたら何かが降ってきた。
どすん! がらがらがら、どんどん。がん! 落っこちた何かは勢いに任せて地面を転がる。土に混じった小石と共に耳障りな音を立てていき、最後に何所かに激突してやっと止まったようだ。
眠気はどこかに行ってしまったようだ。訳が分からずにきょろきょろと周りを見渡す私。まわりに動くものは何もない。しいんと静かな秋草の群だけが目の前に広がる。
自分の息遣いさえも聞こえそうな静寂のあと、急にざぁと風が吹く。流れる空気に乗ってかすかな祭囃子がやってくる。それに張り合うように虫の音も聞こえ出し、秋の野山は音を取り戻した。
「ややや、どこに落ちたんでしょう」
またしても騒がしいものがやってきた。私が背もたれにする木の上をばさばさ飛び回り、何かを探しているみたいだ。しばらく飛び回ったそいつはお目当てのものを見つけたらしい。少し離れたところに降り立った。
「あった、ありました。うん、どこも壊れていませんね。中の物はこぼれていないようで……」
「ねえ鴉天狗。それなんなの?」
声をかけたら飛び上がるように驚いていた。本当に浮いていたかもしれない。恐ろしげな表情をして振り返ったが私の顔を見て固まる。ああ静葉様でしたか、なんて猫なで声を出して無理に笑いだした。
「でさ、それなんなの?」
「つまらない物ですよ。静葉様にお見せするような物では」
「へえ。あんた、荷物運びなんかさせられてるの? 新聞記者じゃないっけ」
「はは、あちこち飛び回っていますから。たまにはこんな仕事も押し付けられてしまうのです」
ふうんと頷く私から目をそらし、文は落っこちてきた何か、一抱えほどある鉄缶を肩に乗せる。もごもごと口の中で挨拶をして飛び立とうとしていたのであわてて呼び止める。
「ちょっと! もう行っちゃうの?」
「ええ。ご迷惑をおかけしました」
「迷惑だと分かっているなら少しは付き合いなさいよ。私お昼寝していたの」
「それは結構なことで」
「あんたが落とした物がガラガラうるさくて眠気が飛んで行ったわ。侘びがわりに話くらいしていっても罰は当たらないと思うけど?」
鴉天狗は露骨に渋い顔をした。嫌々、といった様子で荷物を地面に転がす。私がさっきまで寝ていた木の根元まで来ると、向かい合うように腰を下ろした。
「隣に座んなさい」
「……お隣、失礼しますよ」
小さな声で応え、少し間を空けて隣に座る。そしてそのまま黙りこくってしまう。一言も発しない。膝の上で指を遊ばせて、早く終わってくれ、という態度をありありと見せている。
そのまましばらく経った。どん、どん、どん、と小さく響く祭り太鼓が心地よい。痺れを切らした文がちらちらと私に目線を送ってくる。このまま黙っているわけにもいかないだろうが、どうしよう。
私自身、なぜ呼び止めたのかいまいち分かっていなかった。居眠りを邪魔されたことに怒ってはいない。こいつとそこまで親しいわけでも、頻繁に長話をするわけでもない。運んでいた荷物に興味はない。
でも、なぜか呼び止めてしまった。なんとなく一人でいたくなかったのかもしれない。
すぐそばに置いておいたカバンから菓子の包みを出す。ヒモをほどいて差し出した。
「食べる? 里で買ってきた、お団子」
「いただきます」
「……」
「……」
「……」
「おいしいですね」
「お祭りでしか食べられないキビ団子なんですって」
「ああ、収穫祭だったんですか。どうりで騒がしいと思いました」
二人で団子をつまみ、やっと会話が始まる。
菓子を食べて口がほぐれてきたのか、鴉天狗は少しずつ饒舌になっていった。聞いてもいないのに運んでいた荷物のことを話しだす。
天狗社会は秘密主義なんじゃないのか、と聞くと、ご馳走になったお礼ですよ、と言う。菓子くらいで記者が転んで大丈夫なのだろうか。
なんでも外の世界から流れてきた薬らしい。田畑にまいて雑草を根絶やしにしてしまう物なんだそうだ。あまりの強さに外じゃ廃れてしまいこっちに流れてきているみたいです、と鴉天狗が菓子を含みながら言う。
私の相槌の有無などお構いなしにべらべら話し続ける。天狗というものは噂好きの妖怪だ。一度転がりだしてしまえばいくらでも喋り続けるのだろう。人の事などまったく気にかけていない。とりあえず口が動かせればいいのか。気まぐれで、無神経なやつだ。
ここ数年、里の人間がこの薬の効果に気がついてしまい手当たり次第にばら撒いている。このままじゃ幻想郷が禿山になってしまう、と山の天狗たちで集めて燃やしているのだそうだ。
遠慮など何所吹く風、と言わんばかりにがつがつと菓子を口にしている。私はひとつしか食べていないのに。
とうとう最後のひとつになってしまった菓子に鴉天狗は当然のように手を伸ばす。私はその手を押しとどめる。
「あ、すみません。もっと食べたかったですか」
「私のじゃないわ。最後の一個は、あの子の分」
「ええと、どなたですかね?」
「穣子よ」
「みのり……え、ああ。ですが穣子様は何所に?」
「あんたも知っているでしょ」
「なんだ。まだ音沙汰なしの行方不明のままなんですね」
「……」
「失踪した妹のために祭りの団子を残しておくなんて、泣かせますねえ」
私のほうを向いて意地悪そうな笑顔を浮かべだした。こいつが素直に言葉を使えるのは食事中だけか。餌付けの効果はあっという間に切れてしまう。団子どころか私の体までついばみだした。
ポケットから黒塗りの帳面とペンを取り出してぺらぺらとめくる。あっという間に妹のプロフィールが書き込まれたページを見つけたようだ。
隣に座っている私からもよく見えた。目が勝手に文字を追ってしまう。
農薬が里に流行し始めたころに失踪する。夏ごろから精神的にまいっていたらしい。失踪直前に「気味が悪い、気味が悪い」と呟き徘徊する姿を目撃されている。薬で自らの象徴がいい様に弄られるのが耐え切れなかったのだろう。神とはいうが、ナマモノの神はひ弱だ。と妹の、穣子の様子がこと細かく書き記されていた。
私は取材をうけた記憶がない。よく調べ上げたものだ。いや、こいつお得意の妄想取材かもしれない。現に後半は妹への悪口でいっぱいじゃないか。
文が手帳にはさまれた写真を引き抜く。里の広場で、村長と並んではにかむ妹の姿があった。いつかの収穫祭の一コマ。胸元には稲穂を抱き寄せ、雑穀をまぶした串団子を手にしている。
私達には写真をとる習慣がなかった。記念写真など一枚もない。天狗の新聞も一度読めば捨ててしまう。季節は巡るもので、秋だって何度もやってくる。それを無理に閉じ込めておくなんて気持ち悪いじゃない、と二人で笑ったものだった。
妹の顔は心に焼きついている。写真がない事を後悔してはいない。でも、うすっぺらい妹であっても、もう一度目に出来て嬉しい。
視界が黒くさえぎられる。パタン、と手帳が閉じる音がして鴉天狗がさらに意地悪く見つめてきた。
「神様が盗み見とは感心しませんねぇ」
「読まれたくないなら天狗文字でも使いなさいな」
「なんです、それ。何であろうと盗み見の罪は消えませんよ」
「じゃあ」
そうですねえ、とわざとらしく考え出す。うんうん唸ってどんな良からぬ事を考えているのやら。
文の手が動いた。素早く伸びてたった一つ残っていた団子を掴み取る。私が唖然としているうちにむしゃむしゃと食べてしまった。言葉が出てこない。
「あらあら、事件ですよ! 穣子様のお団子が消えちゃいました」
「え」
「大変ですねえ。どうしましょう。穣子様が悲しんでしまいますよ?」
「お前がそれを言うか」
「はい? 仕方がありませんね。ここは私が一肌脱がないと」
「……」
「ほらほら。ぼけっとしている場合ですか。行きますよ」
立ち上がり、後ろを振り向いた鴉天狗が言う。呆れ顔を浮かべているが、本当に呆れているのは私だよ。
こんなやつなんか呼び止めるんじゃなかった。一人寂しいからと話しかけるには最悪の相手。私は馬鹿だ。そこらの妖精でも捕まえればよかった。意味は成さないが不快になることもない。
右手をつかまれて引っ張り起こされる。いきなりの事に疑問の声を出す暇もなく、そのまま空に浮き上がった。
天狗の力に牽引されて、私は空を飛んだ。優雅さも物悲しさも欠片もない。ごうごうとした音だけが耳元でうねる。里がぐんぐんと近づいてくる。
右手が千切れんばかりに痛む。必死に振りほどこうとするが、天狗の強力からは逃げられない。少しでも痛みを和らげるため、浮遊の力を出し続けるしかない。
あっという間に里の入り口までついた。思わずその場にへたり込む。右腕が痺れるように痛かった。
人間の姿はない。皆祭りに参加しているのだろう。地面に這い蹲る惨めな姿を見られずにすんだ。
だらしがない、と上から声が降る。お前のせいだろうが。いつもの倍、いや三倍、それ以上の速さで飛んだんだよ。私の飛翔はもっと優美なんだ。
また無理やり抱き起こされる。介抱される酔っ払いのように肩を抱かれて里の奥に歩いていく。髪や顔がひどい事になっていそうだけど、構う気力はない。
あ、カバンを忘れてきてしまった。畜生。
どん、どん、どどん、どんがらどん。空気が震える。じんじんと私の体まで震える。
祭り太鼓の音は心を高揚させる。私の心にも高鳴りが満たされ、先ほどの惨状から復活できた。晴れやかな気分。それが妹のいない空虚な祭りのものだとしても、だ。
里の広場には二本のヤグラ。片方には和太鼓と汗をかく半裸の若い衆。赤銅色の背中を見せ付けるように打ち鳴らしている。もう一方には今年の収穫物が。五色の紙に彩られて供えられている。
私と文は広場のすみに立ち、目の前を通り過ぎていく人並みを眺めていた。着飾った者も、普段着のままの者も、どことなくくたびれた服装の者もいる。しかし表情だけは明るかった。祭りという雰囲気の中に溶け込んでいる。
人の世界は私などとは関係なく、勝手に動いているようだ。妹が消えたとしても祭りが消えるわけじゃない。あっという間に新しい流れができて、順応してしまう。
こうやって祭りで沸きあがる里を眺めるのは初めてかもしれない。妹がいたころはあの子にすべてを任していた。消えてしまってからは準備中にこっそりお邪魔して、菓子を買って帰るだけ。お土産だよ、という言葉と一緒に受け取った団子の包み。今は私が買っていく。
「食べます?」
不意に紙に包まれた何かを差し出された。隙間から湯気が漏れている。いつのまに買ってきたんだ。さすがは天狗。
受け取り、紙を破る。一瞬視界が白く曇った。香ばしいような、ちょっと違うような、不思議な香りがする。蒸かし芋だ。
一口齧った。口の中で芋が赤く熱を持っている。舌を焼くようなそれを噛まずに飲み込んでしまう。味はよく分からなかった。おいしかった、と思う。
もう一口食べた。今度はすぐに飲み込まずに舌先で転がして冷めるのを待ってみる。香りの中に混じった違和感の正体が分かった。半ば予想はしていたことだ。
顔を上げ、同じように芋を食べている鴉天狗のほうを向く。目が合うと相手も同じ考えらしく顔をゆがめた。
「ひどいですね。ここまで薬臭いとは」
「分かりきったことじゃない。あんただってよく里には来るんでしょ?」
「いえ、食事をとるのは久しぶりで。さっきのお団子はおいしかったのに」
「あれは、昔なじみの職人さんから買ったから」
「はぁん。となるとあれは少数派ですか。寂しいですねえ」
いやあ勿体無い、と大げさにがっかりした様子を見せる。天狗が組織だって薬の回収をしているのなら、分かりきっていたことじゃないか。私の顔を見て察したのか、それはそうなんですが、と天狗が口にする。こんなものを食べて平気なのだろうか、と。薬で舌が痺れますよ、と苦笑しながら言う。
周りを見渡してみた。先ほどと変わらないお祭りの光景が広がっている。秋の恵みに感謝する祭り、ということもあり食べ物の屋台が多い。広場を行き交う人間のほとんどが何かしらの食べ物を手にしていた。
両親に手をひかれた子供。年頃の娘たち。軒下に座り込んだ老人。紙に包まれた蒸かし芋や団子に果物、皆笑いながら頬張っている。
笑い声や楽しげな噂話も飛び込んでくる。誰も、おかしさなど感じていないのだ。今年の収穫物に対して無邪気に喜んでいる。私たちのように薬の不気味さに顔をゆがめている者は一人もいない。
壁があった。歓声や祭囃子が音の輪郭を形作る。洪水のようにうねり、私だけを世界から切り離してしまう。身動きが取れない、息を吸うこともできない、壁の中に押し込められた。
ここに立っている自分がまるで嘘のように感じてしまう。いてはいけない邪魔者、除け者に思えてしまう。
どん、どん、どん。打ち鳴らされる和太鼓はもう私を昂ぶらせない。いたずらに身体をかき回していくだけ。
気分が悪くなる。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと、人に」
「ああ、人酔いですか」
ならこっちへ、と手をひかれ広場からのびる通りへ向かう。文は後ろを気遣うことなく無理にひっぱる。よろけながら、足をもつれさせながら、ついていく。天狗の好意は強者の好意でしかない。
通りを抜けて狭い路地へ入った。人気のない薄暗いところ。
前からのひかれる力が消えた。支えを失った私はその場にへたり込む。脚に砂利が突き刺さる。手のひらに気色悪い湿り気が伝わってきた。
ここならどうです、という鴉天狗の声をどこか遠い物のように聞いた。長い竹筒を通したようにぼんやりした声だ。
どどん。どどん。どん。どん。どん。太鼓の音だけが妙に鮮明に聞こえる。空気が震え、身体もいいようにぐちゃぐちゃにされる。
体から何かがはみ出してしまったようだ。抑えきれないものがこぼれ落ちる。私は、戻してしまった。
べたべたしたそいつは、依然としてつんとした薬臭さを残している。身体が中から薬に汚されてしまったようだ。
悲しい、と思い、むなしい、とも思った。涙がこぼれる。この涙もつんと鼻につくのだろう。
「静葉様? 静葉様!?」
「げほっ、ごほっ……。はぁ」
「すみません。すみません。私としたことが……」
文が跪き、私の背中を撫でる。びっくりするほど優しい手つきをしている。先ほどまでの乱暴な振る舞いはどこかにいってしまった。
背中をずっとさすられている。口元をハンカチで拭われた。泥やよく分からないもので綺麗なハンカチが汚れていく。私は身動きがとれず、されるがままだった。
すみません、すみません、と謝罪の言葉がずっと耳元で繰り返される。文が、なぜ謝るのだろう。悪いのは私、ひ弱なのも私、原因も私なのに。
気がつくと、身体が震えていた。細かく、かすかに。また、どんどんという音にかき回されてしまうのか。そんな怯えが胸の中を通り過ぎる。
震えが止まった。暖かい何かが私の震えを止めてくれた。上を見ると、吐息がかかる位の距離に顔があった。びっくりするくらい悲しい顔をしていた。涙は、鬼の役目だろうに。
そのまま文に抱きかかえられて、空に浮き上がる。私を気遣うようにゆっくりと飛ぶ。祭りの喧騒が遠ざかっていく。その間も言葉にならない謝罪が飛んできた。意識が遠くなっていた私は子守唄のようにそれを聞いていた。
鴉天狗の羽に包まれている。とても暖かく穏やかだ。
団子、買えなかったなあ。眠りに落ちる直前に、そんなことが頭に浮かんだ。
目が覚めると自宅のベッドで寝ていた。身体を起こし、寝室を出る。家中どこを見回しても誰の姿もなかった。
昨日のことは、夢ではない。それははっきり分かる。けれど家の中に文の痕跡が何もない。手紙くらい残しておいてくれてもいいのに。
もう少し話がしたくなった。迷惑をかけた侘びでもなんでもいい。顔をつき合せたくなったのだ。
身支度を済ませて、外へ出る。空が高い。そしてどこか騒がしい。
ふらふら彷徨い、昨日のくさはらに着いた。同じように木を背もたれにする。澄んだ空を見上げた。
やはり今日の空は騒がしい。こうして眺めているうちに何人もの妖怪の姿が見えた。そして不思議なことに天狗の割合が高い。
その中に見知った顔を見た。大きな声で名前を呼ぶ。何度か叫ぶと黒い影がこちらに急旋回して近づいてくる。
ばさばさと同じように音を立てて降り立つ。傲慢を旨としたようなやつなのに、なぜかうつむいている。私と目が合うと慌てた様に逸らした。
「昨日はありがとう」
「もう、具合のほうは」
「大丈夫よ。みっともない所見せてごめんね」
「そんな。私のせいで」
今日のこいつは何故かしおらしい。介抱してもらった礼は言わなければならないと思っていたが、謝られてしまうと調子が狂う。記事のネタだ、なんて言いながらからかわれるのも覚悟していたのに。
顔をこちらに向けないし、距離も遠い。身体も小さくなってしまったように見える。どうしてしまったんだ。
文のもとに一歩踏み出そうすると、突風が吹き荒れていった。視線を横に向けると去っていく天狗が見える。
「天狗の量を増やしたんです。農薬が人間の手に渡ることはもうないと思いますよ」
「そうなんだ」
「人はすぐに変わりますから。また薬に頼らないで何とかやっていくでしょう」
「うん」
「ですから静葉様も……」
「本当に、ありがとう」
「……。私は、天狗としての役目を果たしただけですから」
目で近くに来るように促した。昨日よりもっと複雑な顔をして天狗が応える。今日は、はじめから隣に座ってくれた。
また無言になってしまう。なにを言うべきなんだろうか。もっとお礼をしなくちゃならないのに。言葉が出てこなかった。
文がカバンの留め金を外し、包みを取り出す。二人で食べたのと同じ団子の箱だ。
「あの後で買っておきました。時間が経って硬くなってしまいましたが」
「さっきから本当に何? どういう風の吹き回し?」
「はは、酷いですねえ。お詫びのしるしですよ」
「どうかしらね。でも嬉しいわ」
「静葉様は、これからも穣子様を待ち続けるのですか?」
「ええ。そのつもりよ」
「当てはあるのですか? まったくの音信不通なんでしょう」
「あるわ。私たちは姉妹神として生まれた。私がいる限り、いつか帰ってくるわよ」
「そんな雲をつかむような」
「それに、頑張ってくれているんでしょ? あんたがさ」
「え?」
「文、本当にありがとう」
私の言葉に目を丸くしたようだ。意味が分からない、とでも言うように少し固まる。そして、私を見て笑ってくれた。打算も、欲も、悪意もない、無邪気な笑顔だった。
しかしそれはすぐに引っ込み、いつもの悪戯っぽい笑みが顔を覆う。この笑みのほうが、こいつらしい。
「そうですねぇ。神様のくせに、天狗に頼っているですから」
「ちょっと」
「少しはご自分でも何かしたらどうですか? うじうじして情けない」
頭上の枝に力を送り、鴉天狗にに落ち葉の雨を降らせる。しかしそれは軽々とよけられてしまった。からからと笑いながら軽やかに飛び回り、置きっぱなしの鉄缶を拾い上げる。
そのまま笑い声を残して空のかなたに消えていく。風に巻き上げられ無数の落ち葉が空を舞った。
「何よ、もう」
まったく、天狗というやつは。自分勝手がすぎる。もうちょっと、ゆっくり話をしていてもいいじゃないか。
自分に正直だからこそ天狗なのかもしれない、とあきらめの気持ちでため息をつく。落ち葉の舞っていた先、文がいるであろう方角を見つめる。
憎々しい位に高い秋の空が広がっていた。
そして、ちゃっかり者の穣子様ww
文静・・・そういうのもあるのか
文の優しさが胸に沁みます。目の付け所のいい話だなあ。
そして穣子アンタは何をしとるかww
後書きで救われた派ですww
文のぶっきらぼうな優しさも、静葉のやるせない気持ちもすごくよく伝わってきました。
穣子様とにかく早く戻ってこい!
穣子様がお元気なら、きっと幻想郷は大丈夫!
私もいつかこの境地に至りたいです。
素敵な作品を鑑賞させて戴き寔にありがとうございました。
しかし、さりげなく有害な農薬が幻想入りってことですか…
そしてそれを不思議に思うことなく人間達は使っている、と。
何だか薄ら寒いものを感じますね…。
幻想郷の人々には外の世界での過ちを繰り返して欲しくない、と思いますねえ。