何事に対しても「タイミング」というのは重要なことである。
例えば、お笑い番組を見ている時に愛の告白をしたら「そうなの?ありがとね。キャハハ!これ面白いね!」などとスルーされてしまったりする。また、宴会などで唐突に「オレ鬱だから死のうと思ってるんだ」と全員に聞こえるように言ったら「それを今ここで言うか?」と楽しいはずの宴会が一気にどんよりとした空気になってしまう。
つまり、自分にとって大事なことや重要なことであってもタイミングを一つ間違えるだけでスルーされたり、変な方向に行ってしまうのである。
「あ、そうだ。お嬢様、私ちょっとお暇をもらいたいんですが」
なので、楽しいはずである夕食の風景も美鈴のこの一言で一気にどんよりとした空気になってしまった。
「…ね、ねぇ美鈴。なんか悩み事でもあるの…?」
そんなどんよりとした空気を最初に払おうとしたのは紅魔館のメイド長である咲夜であった。
「そ、そうよ美鈴。話し難いことでも出来る限り協力するから」
咲夜の援護をするように紅魔館の主であるレミリアが続けて言う。その後ろではパチュリーとその使い魔である小悪魔がコクコクと首を動かしていた。ちなみに、レミリアの妹であるフランドールはどういった状況か把握してない様子で頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
「いえ、別に悩み事はありませんですけど」
しかし美鈴はそう言い切る。
この一言でこの場に居る者(美鈴とフラン以外)は頭を一斉に抱えだした。美鈴のことだ。何かの悩み事を自分ひとりで解決しようとしていると思っていたので、悩み事の相談に乗ってあげれば全て解決すると思っていた。しかし、こうも本人から否定されてしまうとまさに八方塞の状態である。
「…でも美鈴。お暇をもらったら誰が門番をするの…?」
考えても分からないと悟った咲夜は美鈴へ説得を始めた。
「それなら心配いりません咲夜さん。ちゃんと私の部下に言ってありますので。あの子達もやる時はちゃんとやれますから」
「で、でもでも。貴方は一体どうするのよ。その、お暇をもらったら……」
「それも大丈夫です。実は私、前から一度やってみたかったことがあるんです。ですからそれをやろうと思ってます」
「で……でも、でも!」
「…咲夜」
「お、お嬢様…?」
「美鈴はちゃんと暇をもらった後のことまで考えてるのよ。ただ闇雲に暇をもらいたいと言ってる訳じゃないの。ちゃんと考えた上で言ってるのよ。なら、美鈴の考えを尊重してあげるべきじゃないかしら?」
レミリアのその一言に驚いた表情で咲夜、パチュリー、小悪魔の三人はレミリアを見る。しかし、レミリアの表情から三人は悟る。レミリアは別に言いたくてこんなことを言っているのじゃないと。結局、その後は誰も美鈴のお暇のことには触れずに夕食は終わった。ちなみに、フランは終始、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていたのは余談である。
―翌日―
朝、紅魔館の門の前には6つの人影があった。
一番前に美鈴。そして、美鈴の後ろに横一列で日傘を差したレミリアとその隣で顔を俯かせているフラン。瀟洒な雰囲気を懸命に作っているが涙目になっている咲夜。分厚い本で顔を隠しているパチュリー。もう既に泣き出している小悪魔。
「それでは…もう行きますね」
そう美鈴が言うと、フランから嗚咽が聞こえてきた。実は昨夜の夕食の後、フランは皆がどんな話しをしていたのか気になり、姉であるレミリアの部屋に行っていた。そしてフランは姉から教えてもらった。「暇をもらう」という意味を。そして、それを美鈴が望んでいることを。
「・・・行っちゃヤダよっ! めーりんっ!」
我慢出来ずにフランは泣きながら美鈴に抱きつく。フランの涙で服のお腹辺りが濡れてしまっているが、美鈴は気しないでフランの頭をゆっくりと撫でる。
「泣かないでください、フラン様」
「ぐす・・・・・・めいりん…」
「なにも永遠の別れって訳ではありません。ちゃんと会えます」
「ほんと・・・?」
「ええ。だから、泣かないでください」
そう言って撫で続けるが、やはり納得して無い様子でまた俯いてしまう。そして貰い泣きなのか、美鈴の前では絶対に泣かないと決めていた咲夜も、フランや小悪魔までとは言わないが泣き出してしまった。
「咲夜さんも泣かないでください」
「だって…だって……!」
フランと同じように、咲夜は納得して無い様子である。そんな咲夜の肩をレミリアがポンと優しく叩く。
「咲夜…これ以上は本当に美鈴に迷惑をかけるわ。泣くなとは言わないけど、ちゃんと見送ってあげましょ」
レミリアの一言に咲夜はコクリと小さく頷いた。そして名残惜しそうに、しかし何かを決心したように美鈴から数歩下がる。
「それでは皆さん……行ってきますね」
そう言って美鈴はゆっくりと歩き出す。美鈴はレミリア達が見えなくなるまで手を振っていた。それに応えるように、レミリア達も手を振った。
そして美鈴が完全に見えなくなり「さぁ…戻りましょうか」とレミリアが言うまで、皆その場から動こうとはしなかった。
その日の紅魔館は物凄く変だった。
どこがどう変だったかと言うと、まず咲夜が変だった。
紅魔館の玄関を壊して侵入したら、まず咲夜のナイフが飛んでくるんだが、何故か今日は飛んで来なかったんだぜ。それだけじゃなく、少し進んだら咲夜が壁を背にして体育座りしてたんだ。それで私が箒から降りて「どうしたんだ?」て聞いたら「魔理沙…そういえば美鈴と私って名前が全然似てないわね……何故かしら?」て言ってきたんだ。
こっちが何故なんだぜ!
それで、そんな頭からネジが数十本抜けたメイドは放っておいて、目当ての図書館に向かったんだぜ。私がこう言うのはアレだが、あの図書館は薄暗いうえに埃臭くて正直、あんまり長居できるような場所じゃないんだぜ。だがなんか今日は違ったんだぜ。埃臭いのは変わらないんだが、もう薄暗いじゃなくて真っ暗だったんだぜ。しかも、その真っ暗な中で、ロウソクも点けないでパチュリーと小悪魔がこっちを見ながら机に突っ伏してたんだ。そして止めにパチュリーが「入るなら早くしろ。でなければ帰れっ!」って充血させた目で言ってきたんだ。ちなみに、パチュリーの正面に突っ伏していた小悪魔は「勝ったな…」なんて意味不明なことを言ってたんだぜ。
マジ怖かったんだぜ!
だから今日は本を借りないで帰ろうとしたら、今度はレミリアとフランに会ったんだ。フランは何故だか知らないが、わんわん泣きながら手近な物を壊してたんだぜ。だが問題はその隣に居るレミリア。もう直視することができないくらい痛々しい姿をしてたんだぜ。んで「どうしたんだ?」て咲夜の時みたいに聞いたら「いやね…まず咲夜が紅茶を入れるのに失敗して、その熱々の紅茶を頭からモロに被っちゃってね……次にパチェが新しい魔法の研究をしてたら失敗して、なぜかロイヤルフレアが発動してそれが全弾私に命中してね……最後にフランが泣きながら突き破った壁に押し潰されちゃってね……」とのことらしい。
【聞くも涙、語るも涙】とはこのことなんだぜ!
とりあえず、レミリアに貴重なキノコをあげてから、脱兎の如く紅魔館から逃げたんだぜ。
これを聞いた誰か。この紅魔館の異変(?)を解決して欲しい。それだけが(ry
以上が魔理沙談でした。
そんな異変と誤解された紅魔館も夕食の時間となった。
見るのが辛いぐらいボロボロになっているレミリア。未だにわんわん泣きながら手近な物を壊しているフラン。椅子の上で体育座りをして「なんで私と美鈴は名前が似てないのかしら?」と呟いている咲夜。机に突っ伏し、充血した目でどこかを見続けているパチュリー。火の用心と書かれたバケツに足入れて「ぬるいなぁ…」と呟いている小悪魔。
そんな異変と間違えられてもおかしくない今の紅魔館に、美鈴の姿はなかった。
「ねぇ皆、ちょっと聞いてちょうだい」
そんなカオスな空間に勇気ある者の一言が響き渡る。我らのカリスマ、レミリアである。
「皆、美鈴が居なくなって戸惑う気持ちは分かるわ。私だって同じ気持ちよ」
一拍置いて、全員が自分の言葉を聞いているかを確認する。
「でもね、美鈴が言ってたじゃない」
――なにも永遠の別れって訳ではありません。ちゃんと会えます
レミリアに言われて、美鈴のその言葉を思い出す咲夜達。
そう。なにも美鈴が死んでしまった訳ではない。永遠の別れではない。
美鈴のその一言を思い出したことで、咲夜達はいつもの表情に戻る。
それを確認したレミリアは小さく微笑む。
「ここまで言ってしまえば、私の言いたいことは分かるわね?」
レミリアがそう言うと、皆一斉にコクリと頷く。
「そう、美鈴のためにも――」
『こっちから会いに行けばいいのか!』
………あれ?
「そうだわ! 何も美鈴と永遠に会えない訳ではなかったわ!」
あれれ?咲夜?
「わーい! 美鈴に会えるー!」
あれれれ?フラン?
「まったく、そんなことに気が付かなかったなんて。【灯台下暗し】とはこのことね」
あれれれれ?パチェ?
「なんだか今、凄く嬉しい気分です!」
あれれれれれ?小悪魔?
「お嬢様も!」
「お姉様も!」
「レミィも!」
「レミリア様も!」
ちょ、ちょっと待って皆…私はね?
『そう言いたいんだよね!』
それはそれは完璧な期待の眼差しで見詰めてくる咲夜達。レミリアはどこからか「空気を読みましょう」という声が聞こえた気がした。それ即ち――
「そ、そうよ…・・・その通り…よ?」
空気を読むしかなかった。さすがカリスマ。
だがいくらカリスマでも、誰一人として自分の伝えたいことを理解してくれなかったら頭を抱えてしまう。当然レミリアも例外ではなかったが、皆からのお嬢様コールを聞いていると、そんなことなど、なんかどうでもよくなっていった。
なのでレミリアは、このまま皆からのお嬢様コールを聞くのに専念することにした。
だが少女達は重要なことを忘れている。こちらから会いに行こうにも、肝心の美鈴が一体どこに行ったのか知らないことを忘れていた。
咲夜達がそれに気が付くまで、紅魔館の食堂ではお嬢様コールがいつまでも響き渡ったという。
例えば、お笑い番組を見ている時に愛の告白をしたら「そうなの?ありがとね。キャハハ!これ面白いね!」などとスルーされてしまったりする。また、宴会などで唐突に「オレ鬱だから死のうと思ってるんだ」と全員に聞こえるように言ったら「それを今ここで言うか?」と楽しいはずの宴会が一気にどんよりとした空気になってしまう。
つまり、自分にとって大事なことや重要なことであってもタイミングを一つ間違えるだけでスルーされたり、変な方向に行ってしまうのである。
「あ、そうだ。お嬢様、私ちょっとお暇をもらいたいんですが」
なので、楽しいはずである夕食の風景も美鈴のこの一言で一気にどんよりとした空気になってしまった。
「…ね、ねぇ美鈴。なんか悩み事でもあるの…?」
そんなどんよりとした空気を最初に払おうとしたのは紅魔館のメイド長である咲夜であった。
「そ、そうよ美鈴。話し難いことでも出来る限り協力するから」
咲夜の援護をするように紅魔館の主であるレミリアが続けて言う。その後ろではパチュリーとその使い魔である小悪魔がコクコクと首を動かしていた。ちなみに、レミリアの妹であるフランドールはどういった状況か把握してない様子で頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
「いえ、別に悩み事はありませんですけど」
しかし美鈴はそう言い切る。
この一言でこの場に居る者(美鈴とフラン以外)は頭を一斉に抱えだした。美鈴のことだ。何かの悩み事を自分ひとりで解決しようとしていると思っていたので、悩み事の相談に乗ってあげれば全て解決すると思っていた。しかし、こうも本人から否定されてしまうとまさに八方塞の状態である。
「…でも美鈴。お暇をもらったら誰が門番をするの…?」
考えても分からないと悟った咲夜は美鈴へ説得を始めた。
「それなら心配いりません咲夜さん。ちゃんと私の部下に言ってありますので。あの子達もやる時はちゃんとやれますから」
「で、でもでも。貴方は一体どうするのよ。その、お暇をもらったら……」
「それも大丈夫です。実は私、前から一度やってみたかったことがあるんです。ですからそれをやろうと思ってます」
「で……でも、でも!」
「…咲夜」
「お、お嬢様…?」
「美鈴はちゃんと暇をもらった後のことまで考えてるのよ。ただ闇雲に暇をもらいたいと言ってる訳じゃないの。ちゃんと考えた上で言ってるのよ。なら、美鈴の考えを尊重してあげるべきじゃないかしら?」
レミリアのその一言に驚いた表情で咲夜、パチュリー、小悪魔の三人はレミリアを見る。しかし、レミリアの表情から三人は悟る。レミリアは別に言いたくてこんなことを言っているのじゃないと。結局、その後は誰も美鈴のお暇のことには触れずに夕食は終わった。ちなみに、フランは終始、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていたのは余談である。
―翌日―
朝、紅魔館の門の前には6つの人影があった。
一番前に美鈴。そして、美鈴の後ろに横一列で日傘を差したレミリアとその隣で顔を俯かせているフラン。瀟洒な雰囲気を懸命に作っているが涙目になっている咲夜。分厚い本で顔を隠しているパチュリー。もう既に泣き出している小悪魔。
「それでは…もう行きますね」
そう美鈴が言うと、フランから嗚咽が聞こえてきた。実は昨夜の夕食の後、フランは皆がどんな話しをしていたのか気になり、姉であるレミリアの部屋に行っていた。そしてフランは姉から教えてもらった。「暇をもらう」という意味を。そして、それを美鈴が望んでいることを。
「・・・行っちゃヤダよっ! めーりんっ!」
我慢出来ずにフランは泣きながら美鈴に抱きつく。フランの涙で服のお腹辺りが濡れてしまっているが、美鈴は気しないでフランの頭をゆっくりと撫でる。
「泣かないでください、フラン様」
「ぐす・・・・・・めいりん…」
「なにも永遠の別れって訳ではありません。ちゃんと会えます」
「ほんと・・・?」
「ええ。だから、泣かないでください」
そう言って撫で続けるが、やはり納得して無い様子でまた俯いてしまう。そして貰い泣きなのか、美鈴の前では絶対に泣かないと決めていた咲夜も、フランや小悪魔までとは言わないが泣き出してしまった。
「咲夜さんも泣かないでください」
「だって…だって……!」
フランと同じように、咲夜は納得して無い様子である。そんな咲夜の肩をレミリアがポンと優しく叩く。
「咲夜…これ以上は本当に美鈴に迷惑をかけるわ。泣くなとは言わないけど、ちゃんと見送ってあげましょ」
レミリアの一言に咲夜はコクリと小さく頷いた。そして名残惜しそうに、しかし何かを決心したように美鈴から数歩下がる。
「それでは皆さん……行ってきますね」
そう言って美鈴はゆっくりと歩き出す。美鈴はレミリア達が見えなくなるまで手を振っていた。それに応えるように、レミリア達も手を振った。
そして美鈴が完全に見えなくなり「さぁ…戻りましょうか」とレミリアが言うまで、皆その場から動こうとはしなかった。
その日の紅魔館は物凄く変だった。
どこがどう変だったかと言うと、まず咲夜が変だった。
紅魔館の玄関を壊して侵入したら、まず咲夜のナイフが飛んでくるんだが、何故か今日は飛んで来なかったんだぜ。それだけじゃなく、少し進んだら咲夜が壁を背にして体育座りしてたんだ。それで私が箒から降りて「どうしたんだ?」て聞いたら「魔理沙…そういえば美鈴と私って名前が全然似てないわね……何故かしら?」て言ってきたんだ。
こっちが何故なんだぜ!
それで、そんな頭からネジが数十本抜けたメイドは放っておいて、目当ての図書館に向かったんだぜ。私がこう言うのはアレだが、あの図書館は薄暗いうえに埃臭くて正直、あんまり長居できるような場所じゃないんだぜ。だがなんか今日は違ったんだぜ。埃臭いのは変わらないんだが、もう薄暗いじゃなくて真っ暗だったんだぜ。しかも、その真っ暗な中で、ロウソクも点けないでパチュリーと小悪魔がこっちを見ながら机に突っ伏してたんだ。そして止めにパチュリーが「入るなら早くしろ。でなければ帰れっ!」って充血させた目で言ってきたんだ。ちなみに、パチュリーの正面に突っ伏していた小悪魔は「勝ったな…」なんて意味不明なことを言ってたんだぜ。
マジ怖かったんだぜ!
だから今日は本を借りないで帰ろうとしたら、今度はレミリアとフランに会ったんだ。フランは何故だか知らないが、わんわん泣きながら手近な物を壊してたんだぜ。だが問題はその隣に居るレミリア。もう直視することができないくらい痛々しい姿をしてたんだぜ。んで「どうしたんだ?」て咲夜の時みたいに聞いたら「いやね…まず咲夜が紅茶を入れるのに失敗して、その熱々の紅茶を頭からモロに被っちゃってね……次にパチェが新しい魔法の研究をしてたら失敗して、なぜかロイヤルフレアが発動してそれが全弾私に命中してね……最後にフランが泣きながら突き破った壁に押し潰されちゃってね……」とのことらしい。
【聞くも涙、語るも涙】とはこのことなんだぜ!
とりあえず、レミリアに貴重なキノコをあげてから、脱兎の如く紅魔館から逃げたんだぜ。
これを聞いた誰か。この紅魔館の異変(?)を解決して欲しい。それだけが(ry
以上が魔理沙談でした。
そんな異変と誤解された紅魔館も夕食の時間となった。
見るのが辛いぐらいボロボロになっているレミリア。未だにわんわん泣きながら手近な物を壊しているフラン。椅子の上で体育座りをして「なんで私と美鈴は名前が似てないのかしら?」と呟いている咲夜。机に突っ伏し、充血した目でどこかを見続けているパチュリー。火の用心と書かれたバケツに足入れて「ぬるいなぁ…」と呟いている小悪魔。
そんな異変と間違えられてもおかしくない今の紅魔館に、美鈴の姿はなかった。
「ねぇ皆、ちょっと聞いてちょうだい」
そんなカオスな空間に勇気ある者の一言が響き渡る。我らのカリスマ、レミリアである。
「皆、美鈴が居なくなって戸惑う気持ちは分かるわ。私だって同じ気持ちよ」
一拍置いて、全員が自分の言葉を聞いているかを確認する。
「でもね、美鈴が言ってたじゃない」
――なにも永遠の別れって訳ではありません。ちゃんと会えます
レミリアに言われて、美鈴のその言葉を思い出す咲夜達。
そう。なにも美鈴が死んでしまった訳ではない。永遠の別れではない。
美鈴のその一言を思い出したことで、咲夜達はいつもの表情に戻る。
それを確認したレミリアは小さく微笑む。
「ここまで言ってしまえば、私の言いたいことは分かるわね?」
レミリアがそう言うと、皆一斉にコクリと頷く。
「そう、美鈴のためにも――」
『こっちから会いに行けばいいのか!』
………あれ?
「そうだわ! 何も美鈴と永遠に会えない訳ではなかったわ!」
あれれ?咲夜?
「わーい! 美鈴に会えるー!」
あれれれ?フラン?
「まったく、そんなことに気が付かなかったなんて。【灯台下暗し】とはこのことね」
あれれれれ?パチェ?
「なんだか今、凄く嬉しい気分です!」
あれれれれれ?小悪魔?
「お嬢様も!」
「お姉様も!」
「レミィも!」
「レミリア様も!」
ちょ、ちょっと待って皆…私はね?
『そう言いたいんだよね!』
それはそれは完璧な期待の眼差しで見詰めてくる咲夜達。レミリアはどこからか「空気を読みましょう」という声が聞こえた気がした。それ即ち――
「そ、そうよ…・・・その通り…よ?」
空気を読むしかなかった。さすがカリスマ。
だがいくらカリスマでも、誰一人として自分の伝えたいことを理解してくれなかったら頭を抱えてしまう。当然レミリアも例外ではなかったが、皆からのお嬢様コールを聞いていると、そんなことなど、なんかどうでもよくなっていった。
なのでレミリアは、このまま皆からのお嬢様コールを聞くのに専念することにした。
だが少女達は重要なことを忘れている。こちらから会いに行こうにも、肝心の美鈴が一体どこに行ったのか知らないことを忘れていた。
咲夜達がそれに気が付くまで、紅魔館の食堂ではお嬢様コールがいつまでも響き渡ったという。
えーwww
カリスマとはそういうものさ!