Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

魔理沙は絶対お年頃だから

2010/10/07 14:17:53
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「明日は頼むぜ、上海」
 魔理沙は上海の頭を撫でた。
 上海はビシっと敬礼して、かっこいい顔。
 間欠泉から怨霊が湧き出したので、理由を探ってきてほしいとアリスに頼まれたのだ。
 つまり地底探索前夜の出来事である。
 現在、魔理沙はベッドにこしかけて、上海を抱っこした状態。
 今日は早めに寝て、明日に備えるつもりだ。
 弾幕ごっこに寝不足は大敵。これはもう幻想郷の常識である。
 ただでさえ天才の霊夢が敵をバッタバッタとなぎ倒していくのに、秀才タイプの魔理沙は努力で補わなければ足手まといになりはててしまう。
 しかし、上海の優秀さに限りない安心を覚えもする。
 あの永夜のときも何度助けられたかわからない。それにアリスの一番のお気に入りだ。優秀さとかわいさを両立させたもっとも自律に近い人形である。
 魔理沙は上海の胸のあたりに顔をもっていって、スゥっと一息吸った。
「シャンハーイ」
 くすぐったそうに身をよじる上海。
「んー。石鹸の匂いかな。アリスに似てるぜ……」
 スンスン。
 スンスン。
 くせになる匂い。
 かろやかな甘さ。きつさのまったくないうっすらとした風味。
 髪の毛はつやつやで、顔つきはアリスに似ていて。
 少しドキドキしてしまう。
「あ、そ、そういや……おまえ、アリスと感覚つながってたりするんだっけ」
 そう思うと今の行為も知られてしまったかもしれない。けっこう恥ずかしい。
「ダイジョウブ」
 上海は親指を立てた。
「大丈夫って、おまえ結構いい加減だからなぁ……」
「キョリ トオイ」
「アリスの家から遠すぎるから大丈夫なのか」
 だとすれば、今の行為も秘密のうちに行われたことになるだろう。幸いなことにこの家にアリスが来ることはあまりない。明日は大事な本番だから、アリスも気をつかってなおさらこないだろう。上海の仕様説明はいやになるほど受けたし、いまさら付言されることもあるまい。
 そもそもわからないことは上海自身に聞けばいいのだ。
「よーし、じゃあそろそろ寝るか」
「チョ、マテヨ」
「お、なんだなんだ? なにかあるのか」
「シャンハイ マリサ パートナー」
「そうだな。明日はいっしょにがんばろうぜ」
「シャンハイ、シンパイ」
「なにが心配なんだ」
「シャンハイ、ニンゲンノ コトバ ウマクナイシ」
「十分伝わってるぜ?」
「ハツオン ヘンダシ」
「そんなことないぜ? ちょっとぎこちないかなって程度だ」
「シャンハイ レンシュウ スル」
「練習なぁ。いまさら練習なんかしても……」
 
 ハッとした。
 上海は決意の眼差しで魔理沙をにらみつけるように見上げていた。
 ほんの些細な瑕疵すらも許さないと言わんばかりの――
 アリスに似た几帳面で神経質な、そんな瞳だった。

「あー、わかったよ。で、何をするんだ」
「シャンハイ シャベル マリサ アドバイス スル」
「わかったわかった。アドバイスすればいいんだな。といっても人形の喋りにアドバイスってどうやればいいんだ……」
「スキニスレバ イインジャネーノ?」
「いやいや上海。意味がわからんぜ」
「イメトレ」
「イメージトレーニングか……」

 いっしょにトレーニング開始。

「ミギ」
「右だな」

 魔理沙はイメージの中で箒をにぎりしめて、右に体を傾ける。

「ヒダリ」
「左っと」

 同じく今度は左。

「ウエ」
「うぇーい」

 上昇の動作。

「シタ」
「絶望したッ!」

 下降の動作。

 今度は魔理沙の指令だ。

「上海。撃て」
「マサイコー」

「上海。シールド」
「ワタシガ ササエテイルウチニ サキニイケ!」

「上海、爆発しろ!」
「デデーン」


 三十分ほど経過。
「しかし、これで練習になるのか。だいたいうまくいっている気はするが」
「シャンハイ ヘンジャナカッタ?」
「べつに普通かな」
「ハツオンモ?」
「ああ、いつもと変わらない感じかな」
「ダメ、ゼッタイ」
「え?」
 上海はいつもと同じではご不満らしい。
「しかし、上海よ。おまえが日本語を流暢に話すと、それはそれで調子狂わないか……」
「アリスミタイニ ナリタイ」
「アリスみたいにか……」
 わからないでもなかった。
 アリスは確かに綺麗でかわいくて、魔理沙にとっては理想的ともいえたからだ。
 被造物である上海にとってはなおさらアリスに近づきたいという気持ちがあるのだろう。
 上海の必死さがなんだかいじらしい。
「わかったよ。もう少しつきあうぜ」
「シャンハーイ」
 上海はこくこくと頷いた。




 具体的には上海があるフレーズを言って、それを魔理沙が復唱することで少しずつ流暢な日本語に近づけていくという方法をとることにした。
 言葉の選択は上海にまかせた。

「ミギ」
「右」
「ミ・ギ?」
「みーぎ」
「→」
「おいっ。そりゃ人間には発音できんぜ」


「トナリノ キャクハ ヨクカキクウ キャク ダ」
「隣の客はよくかぎっぐへぽ」


「#"ёб℃Э<%$;л^иⅷ!」
「早すぎて聞き取れん……」


「マリサ」
「魔理沙」
「マリッサ」
「ま・り・さ」
「まりす?」
「まりさだって」
「マリス砲!」
「どこで覚えたその言葉!」


「それにしてもなかなかうまくいかんな。そうだ……、おまえが普段よく口にする言葉なら流暢に話せるんじゃないか?」
「ンー?」
 上海は口のあたりに手を当てて、なにやら考えている。
 なんだか嫌な予感がしたがたぶん気のせいだろう。
 既視感というやつかもしれない。
「ワカッタ!」
「お、なにか思いついたのか」
「イツモ イッテルコトバ アッタ!」
「そうか……、なんだ?」
「アリス スキ」
「あ……なるほどな。そりゃアリスの人形だもんな。アリスのこと……す、好きだよな」
「アリス スキ?」
「……」
「マリサ フクショウ」
「ありすすき」
 完全なる棒読みである。しかしそんなことでは完全無欠な発音を目指す上海を納得させることはできなかった。
 むしろヤル気がないと思いこんだのか、お怒りのご様子である。プンプンである。
「アリス スキッ」
 続きを視線で促している。
 魔理沙はベッドのうえをごろごろ転がりながら……
「アリス……好きだって」
「ンー。 キモチガ カンジラレナイ」
「気持ちとか関係あるのか。ただの発音の練習だろ!」
「ダメダナ。ゼンゼンダメダ」
「上海は厳しいな……」
「モット アリスガ スキッテカンジヲ ダセヨ」
「し、しかしそうはいってもな……ほら、なにか恥ずかしいじゃないか」
「モンダイナイ ハツオンノ レンシュウ」
「そう……だな。そうだよな。上海のためだからしょうがないよな!」
 ハハハハハハ。
 魔理沙はわけもなく笑い。
 それからごくりと生唾を飲みこんだ。
 最初は囁くような小さな声。
「アリス、好き……」
「モット」
「アリス、好き……」
「モット」
「アリス、大好き……」
「カンジョウ コメテ」
「アリスのこと好き……なんだ。すごく好きなんだ。きゅんってなっちゃうんだ。ホントはいっしょに地底ついてきて欲しかったんだ」
「フム……ドコガスキナンダ?」
「アリス……、かわいいし、綺麗だし、いい匂いだし、優しいし……顔見るだけで胸がきゅんきゅんしちゃうんだぜ……」
「ラブ ダナ?」
「ああ、恋しちゃってるぜ。文句あるか?」
「ダイジョウブダ。モンダイナイ」
「おまえが一番いいお人形さんでよかったぜ」
「アリスカワイイカラ スキニナッテ トウゼン」
 上海は誇らしげに胸を張る。
 ご主人様が褒められて自分も悪い気がしないらしい。
「言っとくが、いま言ったのは内緒だからな。アリスにはいろいろともうバレてる気がするが、その……気のせいということにしておいてくれ」
「ヨカロウ」
「ああ、でも感覚共有してないって聞いといてよかったぜ。ハハハ……」
 すっきりしたところで、魔理沙は眠りに落ちた。
 上海はにっこり笑顔で、明日に備える。





 そして朝日が再び顔をだした。
 魔理沙はウーンと伸びをして、愛用の箒を手にする。
 隣にはなんだか長年いっしょに戦火をくぐりぬけた戦友のような上海がキリッとした顔つきでこちらを見ている。
 うん。
 今日はいけそうな気がする。
 魔理沙は不敵な笑いを浮かべて、空を滑るように渡った。


 地底に入ると、物凄い風が吹いていた。

「洞窟の中なのに、風が凄いぜ……」

 吹き飛ばされそうになる。上海も両腕を必死に前に出して、魔理沙にくっついてきている。
 魔理沙は上海を箒の影に移動させた。
 これで風に飛ばされることはないだろう。
 上海はニコっと笑った。
 魔理沙も笑って、親指を突き出す。上海も真似した。
 以心伝心って素晴らしい。昨日の成果がもうでている。やはりコミュニケーションというのはどんなときでも一番大事なのだ。
 と、そのとき。

(……魔理沙? 聞こえるかしら……)

 上海のおなかのあたりから突然アリスの声が聞こえた気がした。

 その意味するところは――。

 走馬灯のように昨日の出来事が頭をよぎる。

「聞こえない聞こえない。私はまだ正常だ」

 そう、アリスの声が聞こえるわけがなかった。
 感覚共有はしてないと上海は言ったのだ。
 まさか通信機能がついてるとは思わないじゃないか。
 そんな機能がついてるなんて聞いたことないし、アリスが人に人形を貸すのは例外中の例外だから通信機能なんて備わってるはずがない。
 しかし、アリスは淡々とした声で語りかけてくる。

(あっそう……人形を返してもらうわよ)

 このクールぶった声色のなかに、こっそりと――しかし確実にまぎれこむ羞恥の感情。
 魔理沙はとっさに理解した。
 アリスはなかったことにしたいのだ。
 そう、ならば、魔理沙もそれに乗るしかない。
 乗るしかないのだ。羞恥心で死にたくければ。
 魔理沙はまるで人形の機能にただただ感心したかのように陽気な声をあげる。

「へぇ、攻撃の支援だけじゃなくて。会話も出来るんだな」

 会話できるなんて知らなかったのだ。
 確かに上海は嘘をついていない。
 上海はそんなこと一言も言わなかったし、魔理沙は聞いていなかったのだから。

(……紫が用意してくれたのよ)

 アリスの声はどことなく気疲れしているように思えた。
 会話はそこで一端終了ということになった。
 地底から生還したあかつきにはどんな顔をして、上海を返却すればよいのだろうか。もはやそのときのことを想像しただけで死ねる。

 上海はニコっと笑顔で、親指をたてていた。
 ヤッタナキョウダイ、そんなことを言いたげな……。

 なんという晴れやかな笑顔なのだろう。

 いっそ爆発しろ。

 いますぐ爆発しろ。

 頭のなかは混乱していて、思考らしい思考をつむげない。
 昨日、私は何を言った?
 確か、アリス大好きってアリスが好きだって、胸がきゅんきゅんって……
 乙女。
 乙女すぎる。
 魔理沙の乙女チックハートが羞恥という名の底知れぬ地獄へと落ちていく。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



















 開幕早々でっかい岩石にぶつかって、ピチューン!


上海「それは仕様です」(キリッ)
超空気作家まるきゅー
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
上海姐さんさすがです。
2.名前が無い程度の能力削除
序盤で笑い、中盤でキュンキュンして終盤で吹いた。
これは上海ではない。上海姐さんだ…。
3.奇声を発する程度の能力削除
流石っす上海姐さん!
4.名無し削除
上海マジ姐さん
5.名前が無い程度の能力削除
こんなマリアリで、問題ない。
6.名前が無い程度の能力削除
上海さんチィーッス!! マジリスペクトっす!! パネェっす!!
7.名前が無い程度の能力削除
問題ない、良くやった
8.名前が無い程度の能力削除
この上海絶対自立してるだろw
9.名前が無い程度の能力削除
一番いい人形を頼んだ結果がこれだよ!
上海たんGJ!(SS違い

前と前前のお年頃と比べるとオチのスピード感がもうちょっと欲しかったかな…
10.エクシア削除
この上海可愛いんだけど恐ろしくて手元に置けねぇwww
11.名前が無い程度の能力削除
そんな人形で大丈夫か?
12.名前が無い程度の能力削除
やっぱりニヤニヤしちまった!
13.名前が無い程度の能力削除
地スコアタの開幕潰しはこういうことだったのか
14.名前が無い程度の能力削除
地スコアタの開幕潰しはこういうことだったのか
15.名前が無い程度の能力削除
いいのぉw
16.名前が無い程度の能力削除
マサイコー!
17.名前が無い程度の能力削除
ネタのラッシュにやられたwwww
上海姐さんさすがっす!!そして、魔理沙かわいい。
18.削除
上海姐さんまじ漢女(オトメ)
19.名前が無い程度の能力削除
大笑い。
上海さん、最高です。
20.名前が無い程度の能力削除
うわああああああああ
悶え死ぬ
21.けやっきー削除
>「ウエ」
 「うぇーい」
なるほど、既に練習してたからこその成果なのか…
22.名前が無い程度の能力削除
なんという黒歴史。魔理沙かわいすぎる。
23.名前が無い程度の能力削除
アリススキからなんとな~くオチは読めたけど面白かったです。
24.名前が無い程度の能力削除
上海姐さん……。貴女って人(形)は……!GJ!!!
25.名前が無い程度の能力削除
今更気付いたが、この後戦うさとりにこれ想起されたら死ねるな…