その日、珍しく博麗神社には誰も来なかった。
魔理沙は研究でカンヅメだそうだし、レミリアやらも毎日毎日来るわけでもない。
つまりまぁ、確率的には誰も来ない日もありえるわけだ。
「ま、たまにはこんな日も良いわよね。どうせウチに来るのって妖怪ばかりだし」
呟きつつお茶を一口。
平和であった。
○
翌日。
起床して半ば自動的に朝食の準備をする。
食料にはまだ余裕がある。買出しの必要は無い。
「さて、と……」
運動がてら、だらだらと境内を掃除する。
つい最近までうだるような暑さであったが、ここ数日は大分気温も下がった。
なかなか過ごしやすくなったものだ。
掃除も適当に終え、家事を一通りこなしてぼーっとしているといつの間にか昼になっていた。
本能に任せるまま昼食を終え、昨日と同じく縁側でのんびりお茶を飲む。
気づけばそのまま空が赤く染まる時刻になっていた。
布団に入る頃、何か違和感を感じるなぁと考えて気づいた。
今日も誰も来なかった。
○
今日も誰も来ない。
まぁ連中も私に興味をなくした、と言う事だろうか。
平和で良き事である。妖怪神社なんて噂されても困るし。
「……暇ね」
ただ、時折ちょっとあの喧騒が懐かしくなるときも無きにしもあらずなわけで。
ああ何言ってんだか私。らしくないわ。
そういえば紫とか何してるんだろ。
冬眠にはまだ早いはずだが。
空を見ても妖精も天狗も見ないし、もしかして異変だろうか。
そんな感じしないけどなぁ。
○
「おーい、霊夢ぅ。茶飲みに来たぞー」
「研究してたんじゃなかったの」
「ああ、あれは駄目だった。失敗だぜ」
「ふぅん。まぁ、上がりなさい」
「なんだ、今日はえらく従順じゃないか」
「そういう日もあるのよ」
その日、巫女は客をちょっとだけ親切にもてなした。
>まぁ連中も私に興味をなくした、と言う事だろうか。
この部分に、霊夢の寂しさがよく表現されていたと思います。