ちょっとした作業を終えて、窓から外を覗くと、今日はいい天気だった。
透き通る様な空には所々に雲が浮いていて、何もない青空よりかは赴きを持って僕を迎えてくれる。
僕こと森近霖之助は、そんな外を見上げながらう~んと伸びをした。
「ん?」
と、そこで気付く。
魔法の森へと差し掛かる場所にある一本の桜。その桜が咲いているのだ。
「狂い咲か」
季節にして、今は桜が咲く様な時期ではない。まさしく桜が狂ったとしか思えない現象だ。果たして、彼女が咲いた原因は何だろうか。そう思って、桜を見た時に、珍しい妖精を見かけた。
「リリーじゃないか」
リリー・ホワイト。別名を春告精と呼ばれる彼女が、桜の根元で眠っていた。春以外に彼女の姿は見る事が出来ない。いったい何処で何をしているのか、謎になっていたのだが……
「こんな所で寝ぼけているとはね……」
どうやら、狂い咲の原因はリリーの仕業の様だ。僕は香霖堂から出ると、桜の根元へと近づいた。リリーは桜の根を枕にしてす~す~と可愛らしく寝息をたてている。側には、お酒の一升瓶。
「……どこかで宴会でもあったのかな」
恐らく、泥酔して今が春だと勘違いしたのだろう。この一本の桜だけを咲かせて満足したのか眠ってしまったらしい。幻想郷中を春にしてしまわなかっただけマシだろうか。そうなると、レティとチルノが異変解決へと乗り出す事になってしまう。
「もっとも、春じゃないリリーが異変の主犯なので、大した事件にはなるまい」
そんな事を呟きながら、僕は彼女の肩を揺らす。妖精が風邪を引くのかどうかは知らないが、さすがにこのまま寝させ続ける訳にはいくまい。
「ん~……あれ、ここどこ?」
「ここは香霖堂の裏さ。春の妖精はうろつく場所でも、寝ている場所でもないよ」
僕がそう告げると、リリーは目をパチクリとさせてから、驚き飛び上がった。まぁ、妖精だから人間や妖怪にはあまり近づかない。チルノや博麗神社近くの妖精達ぐらいだろう。
「おい、まだ酒が残ってるぞ」
と、逃げる様にして飛んでいくリリーに声をかけるが、彼女はその言葉に応える事なく、そのまま行ってしまった。
やれやれ、と僕は酒瓶を拾い上げる。まだ中身が半分程残っており、いったいリリーは何処からこれを手に入れてきたのか、それなりの謎が残る。
「ふむ……春以外に姿を現さないリリー・ホワイトがお酒を手に入れる方法か」
まさか人間の里で買った訳ではあるまい。
僕はポンと酒瓶の蓋をあけると、その答えに気付いた。
「なるほど、自分で作った訳か」
お酒は日本酒などの類ではなく、梅酒だった。これなら、簡単に作る事が出来る。
「せっかくだ……今日は花見をして過ごすのも、悪くはない」
僕はさっそくとばかりに、お猪口と乾物を香霖堂から持ち出し、狂い咲いた桜の前にゴザを敷いて、座る。
お猪口にリリー特製の梅酒を注ぎ、桜の花に乾杯してから、口へと運んだ。甘さの中にほんの少しの酸味を感じる。
「うむ、美味い」
ほんの少しの肌寒さを感じるが、それも酒の御力で感じなくなるだろう。
「春を独り占めするというのも、悪くはないかな」
ふと、長い間、春が来なかった様な錯覚に陥る。はて、何だっただろうか、と思い出そうとするが、何も出てこない。春が来なかったあの異変を思い出すのだが、それとは違う感じがした。
まぁ、どうでいいか。
僕はかぶりを振って、疑問を頭から追い出す。
香霖堂に春が来た。
季節外れの春だけれど、僕はこれを歓迎する。
透き通る様な空には所々に雲が浮いていて、何もない青空よりかは赴きを持って僕を迎えてくれる。
僕こと森近霖之助は、そんな外を見上げながらう~んと伸びをした。
「ん?」
と、そこで気付く。
魔法の森へと差し掛かる場所にある一本の桜。その桜が咲いているのだ。
「狂い咲か」
季節にして、今は桜が咲く様な時期ではない。まさしく桜が狂ったとしか思えない現象だ。果たして、彼女が咲いた原因は何だろうか。そう思って、桜を見た時に、珍しい妖精を見かけた。
「リリーじゃないか」
リリー・ホワイト。別名を春告精と呼ばれる彼女が、桜の根元で眠っていた。春以外に彼女の姿は見る事が出来ない。いったい何処で何をしているのか、謎になっていたのだが……
「こんな所で寝ぼけているとはね……」
どうやら、狂い咲の原因はリリーの仕業の様だ。僕は香霖堂から出ると、桜の根元へと近づいた。リリーは桜の根を枕にしてす~す~と可愛らしく寝息をたてている。側には、お酒の一升瓶。
「……どこかで宴会でもあったのかな」
恐らく、泥酔して今が春だと勘違いしたのだろう。この一本の桜だけを咲かせて満足したのか眠ってしまったらしい。幻想郷中を春にしてしまわなかっただけマシだろうか。そうなると、レティとチルノが異変解決へと乗り出す事になってしまう。
「もっとも、春じゃないリリーが異変の主犯なので、大した事件にはなるまい」
そんな事を呟きながら、僕は彼女の肩を揺らす。妖精が風邪を引くのかどうかは知らないが、さすがにこのまま寝させ続ける訳にはいくまい。
「ん~……あれ、ここどこ?」
「ここは香霖堂の裏さ。春の妖精はうろつく場所でも、寝ている場所でもないよ」
僕がそう告げると、リリーは目をパチクリとさせてから、驚き飛び上がった。まぁ、妖精だから人間や妖怪にはあまり近づかない。チルノや博麗神社近くの妖精達ぐらいだろう。
「おい、まだ酒が残ってるぞ」
と、逃げる様にして飛んでいくリリーに声をかけるが、彼女はその言葉に応える事なく、そのまま行ってしまった。
やれやれ、と僕は酒瓶を拾い上げる。まだ中身が半分程残っており、いったいリリーは何処からこれを手に入れてきたのか、それなりの謎が残る。
「ふむ……春以外に姿を現さないリリー・ホワイトがお酒を手に入れる方法か」
まさか人間の里で買った訳ではあるまい。
僕はポンと酒瓶の蓋をあけると、その答えに気付いた。
「なるほど、自分で作った訳か」
お酒は日本酒などの類ではなく、梅酒だった。これなら、簡単に作る事が出来る。
「せっかくだ……今日は花見をして過ごすのも、悪くはない」
僕はさっそくとばかりに、お猪口と乾物を香霖堂から持ち出し、狂い咲いた桜の前にゴザを敷いて、座る。
お猪口にリリー特製の梅酒を注ぎ、桜の花に乾杯してから、口へと運んだ。甘さの中にほんの少しの酸味を感じる。
「うむ、美味い」
ほんの少しの肌寒さを感じるが、それも酒の御力で感じなくなるだろう。
「春を独り占めするというのも、悪くはないかな」
ふと、長い間、春が来なかった様な錯覚に陥る。はて、何だっただろうか、と思い出そうとするが、何も出てこない。春が来なかったあの異変を思い出すのだが、それとは違う感じがした。
まぁ、どうでいいか。
僕はかぶりを振って、疑問を頭から追い出す。
香霖堂に春が来た。
季節外れの春だけれど、僕はこれを歓迎する。
我が世の春が来たァァ!!
まさにお酒が美味しく飲めそうな話じゃあないか。
めでたいめでたいww
おつかれさまリリー、ごめんね秋姉妹……
祝 東方香霖堂発売!! ばんざ~い!!×3
季節外れの桜もめでたくて仕方ない!