※注意!
この作品は80%が作者の妄想、20%は願望で出来ています。つまりはオリジナル設定です。
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別に良いよと言う方だけご覧になってください。
警告はしました。中傷とかは無しでお願いします。
妖怪の山が本格的に紅葉で染まり始めた九月の終わり。
僕は相変わらず客の来ない店内で店番という名の読書をしていた。
里ではもうじき豊穣祝いの秋祭りが行われる事だろう。だが……
「里に在住していない者には関係の無い話……か」
呟き、窓から外を見る。最も高い位置にあった日輪が少し傾き始めている所だ。
秋は日が沈むのが少し早い。もうじき暗くなるだろう。
「買出しに行かなければな……」
先日霊夢と魔理沙に襲撃された所為だ。霊夢はともかく、魔理沙はもっとしっかり教育しておいた方が良かったな……
「やれやれ……面倒だが、仕方無い」
言って、勘定台の席を立つ。
財布を懐に入れさて行こうと扉に目を向けた時、僕の体は停止していた。
「……ん?」
理由は、天井裏から聞こえて来るドタバタと暴れる様な音だ。不思議に思い足を止めたが、原因は分かっている。
「……やれやれ」
呟き、天井に目を向ける。音の原因は暫くすると店の奥へと移動していき、階段を経由して店内へとやってきた。
「一体何を騒いでいるんだい?……朱鷺子」
店へと駆け込んで来たのは、背中に朱鷺の様な翼を生やした少女、朱鷺子。
此処香霖堂の看板娘であり……僕の娘だ。
「見て!捕まえた!」
言って、音の原因である朱鷺子は右手を突き出す。その手に握られていたのは、鼠の尻尾。
これを捕まえるために走り回っていたのだろう。
「猫みたいな事をするね……全く」
「でも捕まえた方がいいでしょ?」
「……まぁそれはそうだが」
「でしょ?」
「まぁそれはいいとして……それ、どうするつもりだい?」
「……どうしよ?」
無計画か。
「……その辺に逃がしてきなさい」
「はーい」
言って、朱鷺子は店を飛び出した。
「はい、もうお店に来ちゃ駄目だよ~」
◆◆◆
「!?」
「ど、どうしたのですか!?」
「今……同属が囚われ、放たれた……?」
「い、いきなり何を言ってるんですか!?」
「人は鼠を嫌うんだが……いやはや、幻想郷は狭い様で広いね。考えを改めなければ」
「何を言ってるんですかぁ~……」
「あぁ、すまないご主人。で、用事って何だい?」
「その……宝塔を無くしちゃって……ですね」
「……真にうっかりさんで、旧態依然だね。いざ、南無三ーっと」
「ちょ、ま、何言ってくぁwせdrftgyふじこlp;@:」
◆◆◆
「逃がしてきたよー」
「そうかい」
「うん」
店に戻ってきた朱鷺子はすぐさま洗面所に走っていった。鼠に触れたのだ、当然だろう。
「……さて、早く行かなければ」
「何処に?」
「ん?」
見ると、さっき手を洗いに行った筈の朱鷺子がすぐ横にいた。ちゃんと石鹸で手首まで洗ったのだろうか。
「何処か行くの?」
「あぁ、里に買出しだよ」
「え?この前行った……あぁ、紅白と白黒か」
「ご名答……朱鷺子は間違ってもあんな事をする子になっては駄目だよ」
「分かってるよ。人の本強奪なんてしないもの」
「ならよろしい。……さて、行ってくるよ」
「ね、私も行っていい?」
「ム……」
……さて、どうしたものか。
朱鷺子を連れて行ったとして、何かしら面倒が起こりそうな予感がするのだが……
……まぁ、子供が行きたいと言っているのだ。聞いてやるのが親だろう。
「迷子になるんじゃないよ」
「うん!」
嬉しそうに朱鷺子は頷く。親と出かけるのが嬉しいのだろうか。
僕は……そういう経験が無いから、良く分からないな。
「さ、行こうか」
「はーい!」
言って朱鷺子は僕の手を掴み、早く早くと急かす様に引っ張る。
しかし妖怪の血が混ざっているとは言え、子供の体重と子供の力だ。腕を少々前に出す形になるだけで、引っ張られる筈も無い。
「早く早く!」
「はいはい……」
喜々として僕の手を引く朱鷺子を宥めつつ、僕は里へと足を進めた。
***
「ねぇおとーさん、私今日魚食べたい」
里に着き、さて何から買っていこうかと考えながら歩いていると、朱鷺子がそんな事を言ってきた。
「魚?」
「うん」
「魚……ね」
確か久しく食べていないな。焼き魚……活きの良い物なら寿司にしてもいいだろう。昼では活魚を手に入れられるかどうか怪しいが、可能性は零ではない。
「魚なら何でもいいのかい?」
「ん~……本当はどじょうが一番だけど……偶には違うものでもいいかな、うん」
「成程、了解した」
「よーし、じゃあ魚屋さんにれっつごーだよおとーさん!!」
「分かったから引っ張らないでくれ、伸びるだろう……」
言うと、朱鷺子は「むぅ」と残念そうに呟くと袖から手を離した。古道具屋の娘なのだからもう少し本以外の道具も大切にしてほしいものなのだが……
「あ」
とそんな事を考えていると、朱鷺子が何かを見つけた様な声を出した。
「うん?」
気になって朱鷺子を見ると、僕の元から走り出していた。
「あ、こら……」
待ちなさい。
そう言おうとした僕の言葉は、朱鷺子が向かった先にいた人物を見た瞬間喉の奥に引っ込んでいた。
「……そういう事か」
その向こうにいたのは。
「おかーさーん!」
「おぉ、朱鷺子!元気にしてたか?」
寺子屋の教師にして人里の守護者、慧音。
僕の妻だ。
「やぁ、慧音」
「おぉ霖之助。里に来ていたなら家に来れば……」
「買出しだよ。君の家にはその後で行くつもりだった」
今の会話の通り、慧音と僕は夫婦だが別居している。
僕は商売を止めるつもりは無いし、かといって慧音が此方に住むと教師の仕事に不備が出るだけでなく、里までの距離が多少なりとも出来てしまうため何か起こった時の対処が遅れてしまう。故の別居だ。
「ム、そうか。……ん?だが買出しは先日済ませたんじゃ……」
「霊夢と魔理沙がね……」
「……あぁ、そういう事か」
呟き、慧音は苦笑いを浮かべる。
「少しあの二人に甘いんじゃないのか?」
「……まぁ、二人とも妹の様な感じだからね……どうにも強く出れないんだ」
「全く……朱鷺子にもそこまで甘くしていないだろうな?」
「そこは抜かりないよ」
慧音が朱鷺子の事を聞いてくるのも理由がある。
別居する際、朱鷺子にどちらの家に住むか聞いた所、少し迷った後僕の所に住むと決めたのだ。書庫の存在が大きかったらしい。
本なら慧音も教科書や歴史書があるが……外界の本という所も大きいのだろう。
「ねーおとーさん。早くしないと魚売り切れちゃうよ?」
「ん?あぁそれもそうだな。じゃあ慧音、後で……」
後でそっちに行くよ。そう言おうとした僕の言葉は、
「待て」
慧音の言葉に掻き消された。
「何だい?朱鷺子も言っているし急がなくてはなんだが……」
「買出しって……魚なのか?」
「?あぁ……」
何故そんな事を聞いてくるのか気になったが、素直に答える。
「そうか、なら今すぐ私の家に来い」
「?何故……?」
「いいから、早く行くぞ」
「おとーさん、行こ?」
「あ、あぁ」
朱鷺子に腕を引っ張られ、僕は歩き出した……ところで、朱鷺子は僕の腕を放し、慧音の元へと走っていった。
「……?」
少し見ていると、朱鷺子は慧音の手を引いて此方に戻ってきた。
「ん!」
そして、慧音の手を掴んでいない方の手で僕の手を握った。
僕と慧音の間に朱鷺子がいる構図となる。
「うん!これでよし」
何がよしなのかは分からないが、朱鷺子が楽しそうならそれでいいかと思った。
「と、朱鷺子がいいなら私は構わないが、その……矢張り少し恥ずかしいな」
「別に恥ずかしがる様な事でもないだろう、家族なんだから」
これが赤の他人なら恥ずかしがるのも理解できるが、僕達は家族なのだ。何を恥ずかしがる事があるというのだろうか。
そんな事を思いながら、僕達は三人並んで歩みを進めた。
***
暫く歩くと慧音の家が見えてきた。
周りの家より少し大きい建物が寺子屋、その隣りにあるのが慧音の家だ。
寺子屋の看板のすぐ脇には少し汚れているが、それでもまだ新しい『森近』の表札がそれを示している。
「さ、入ってくれ」
「あぁ、お邪魔するよ」
「おかーさんの部屋だー!」
朱鷺子はそう叫ぶと、靴を脱ぎ捨て奥へと走ってゆく。靴は揃えなさいとあれ程言ったというのに……
「元気なのはいい事だが……元気すぎるのも困りものだな」
「全くだね」
言って、何となく笑った。
「……で、部屋に呼んだのは何かしら理由があるんだろう?」
「あぁ。魚なら丁度良いと思ってな」
「丁度良い?」
「そうだ。まぁ居間で待っていてくれ」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
言って、部屋へと上がる。勿論靴を揃えるのは忘れない。
居間へと足を運ぶと、奇妙なものに出くわした。
「……何してるんだい」
奇妙なもの……畳にうつ伏せに寝転ぶ朱鷺子を見ながら尋ねる。
「ううん、別に何でもないの。ただね、畳ってこんなに良い匂いだったんだって思って……」
「畳なら家にもあるだろうに」
「違うの。家の畳は……何ていうか埃臭いの。あんまり掃除しないから」
「しっかり掃除はしているつもりなんだがな……」
「見た目は綺麗。でも匂いは別」
「フム……」
確かに畳から井草の香りが消えるというのは少し嫌だな。明日辺り外界の消臭剤でも使ってみようか……
「霖之助ー、ちょっと来てくれ」
思考を巡らせていると、勝手場から慧音の呼ぶ声が聞こえた。
「あぁ、今行くよ」
言って、立ち上がる。
「はにゅう……いい香り……」
「……はしたないから止めなさい」
忠告をして、勝手場に足を進めた。
***
勝手場に入ると、慧音がまな板の上に何かを乗せている所だった。
「霖之助、コレだ」
「これは……鮭かい?」
そう、鮭。外界では秋刀魚と並ぶ秋の味覚だ。
「今朝八雲の大妖怪がくれたんだが……」
「フム、紫がくれたものか。という事は外界の鮭……さぞ脂が乗っている事だろうね」
「それだけ聞けば美味そうなんだがなぁ……」
「……成程、得心いったよ」
要するに、慧音は『捌いてくれ』と言いたいのだろう。報酬は秋の味覚である外界の鮭。それを慧音が腕によりをかけて料理する訳だ。
「……まぁ、そういう類の書物は幾つか目を通した事もある。出来ない事は無いだろう」
「本当か?助かる」
「僕は捌くだけだからね。料理の方は任せるよ」
「ふふ、任された」
言って、慧音は包丁を取り出した。
「……さぁ、始めよう霖之助」
「あぁ」
少女解体中.....
「……さて、こんなものか」
「そうだな」
大体鮭を捌き終わり、手に付着した血を洗い流す。
「じゃあ朱鷺子と居間で待っていてくれ」
「あぁ」
言って、居間へと戻る。
「はにゅう……」
「……やれやれ」
朱鷺子はまだうつ伏せだった。そんなに畳の匂いがいいのだろうか。
「あ~……このまま寝れちゃいそう……」
「寝たら晩御飯はどうするんだい」
「ん……それもそっか」
言って、朱鷺子は起き上がる。
「……あれ?おとーさん晩御飯作らないの?」
「……今日は母さんがいるんだぞ?」
「え……!じ、じゃあおかーさんの手料理!?」
「そういう事だね」
僕がそう言うと、朱鷺子は飛び上がった。
「やったやった!おかーさんの料理!」
「その喜び様……僕の料理は不味いのかい?」
「ううん、おとーさんの料理も美味しいよ?でもおかーさんのは別なの!」
「……母の味……か」
愛情がこもった母の手料理はどんなご馳走にも勝る、か。
僕の母の味は……忘れてしまったな。最後に家族で食事をしたのは何十年前だったか。
「おかーさんの料理!おかーさんの料理!!」
「……嬉しいのは分かるが、あまりはしゃぐんじゃない」
「はーい」
言って、朱鷺子は飛び跳ねるのを止めた。
「さて……料理が出来るまで本でも読ませてもらおうかな」
呟き、懐から小説を取り出す。常に数冊携帯している内の一冊だ。
読もうと本を開いて目を落とそうとすると、朱鷺子の声でそれは阻止された。
「おとーさん」
「ん?」
見ると、朱鷺子は僕のすぐ傍まで来ていた。
「膝の上座っていい?」
「………………」
朱鷺子は時々僕の膝の上に座りたがる。魔理沙もそうだが、何故僕の膝に座りたがるのだろうか?
「ね、駄目?」
「……まぁ別に構わないが」
「やった」
言って、朱鷺子は僕の膝の上に腰を下ろす。
魔理沙程大きくはない為、本は読めるが……矢張り読みづらい。
どかそうかという考えが一瞬だけ過ぎったが、座って良いと許可したのは自分なのでどうも出来はしない。
まぁそれでもいいかと思いつつ、僕は読書を始めた。
***
「おーい、出来たぞ」
「うん?あぁ……」
「おかーさんの料理!」
「ほら、魚は刺身と塩焼き……後は薩摩芋の味噌汁だ。栗ご飯も考えたんだが、塩焼きにはどうかと思ったんでな」
「いや、十分だよ」
「食べよ食べよ!」
「あぁ。……では」
「「「頂きます(まーす!)」」」
「ん……!美味しい!おかーさん、美味しい!」
「ふふ、そうか。おかわりもあるからな?」
「……うん、美味い。矢張り君の料理は美味しいね」
「そ、そうか。……な、何か照れるな」
「あぁ朱鷺子、箸の持ち方間違えてるよ」
「ん?」
「あぁ、間違えているな。いいか朱鷺子?正しい箸の持ち方はだな……」
「む……こ、こう?」
「違うぞ朱鷺子。ここはこうして……」
「ん、味噌汁……少し味が違うね」
「お、分かるか?少し鮭の頭と骨で出汁を取ってみたんだ」
「あぁ、中々に美味だね」
「それはよかった」
「ホントだ、このお味噌汁美味しい!」
「こら、先ずはその刺身を飲み込んでから話しなさい」
「行儀が悪いよ朱鷺子」
「は~い」
………………
…………
……
***
「「「ご馳走様(!)」」」
食事が終わり、手を合わせて挨拶を済ませる。
これは小さな事だが、決して疎かにしてはいけない。
食事とは生命を己に取り込み生きる糧とする行為であり、頂いた命には最大の感謝をしなければならない。それは生きる為に食事を必要としない僕であっても、命を頂いた以上例外ではないのだ。
それにここで僕が挨拶を疎かにしてしまえば、娘に間違った事を教えてしまい、寺子屋で恐れられる頭突きが飛んでくる。
「さて、霖之助。先に風呂に入ってしまってくれ。朱鷺子も一緒に」
「風呂?」
「あぁ。着替えはこっちにもあるし、少ない距離だが今日一日歩いたんだ。汗をかいただろう? 外はもう暗いし、今日は泊まっていったらどうだ?」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
「おとーさん!早く入んないとお湯冷めちゃうよ!」
「あぁ分かった、今行くよ」
言って、朱鷺子と脱衣所に向かう。
「んしょ、んしょ、んしょ……」
「よ……っと」
服を籠の中に入れ、体を洗うためのタオルを取る。
「わーい、お風呂ー!」
「こら、湯浴みは静かにしなさいと言っているだろう。風呂場では声が響くんだから……」
「はーい」
◆お風呂タイム(音声のみでお楽しみ下さい)◆
「……むー」
「どうしたんだい?」
「もっと欲しいなぁ……」
「ん?……あぁ、そう言うものは時間が解決するよ。焦らなくてもいい」
「でも……」
「朱鷺子には慧音の血が流れてる。心配しなくても大丈夫だよ」
「うん……そうだよね!おかーさんの子だもんね!」
「あぁ、そのうち嫌でも発達するよ。……ほら、流すよ」
「ん……ぷはぁ」
◆お風呂タイム終了◆
「ふー、さっぱりした!」
「いいお湯だったな」
風呂から上がり、朱鷺子の体をタオルで拭いてやる。
「にゅ……もっと優しくしてよぉ」
「あぁ、済まない」
そんな会話をしながらも、頭、体、足と順に拭いていく。
「ほら、終わったよ」
言って、自分の体を拭きにかかる。
「んしょ、んしょ……」
朱鷺子は置いてあった寝巻きに着替えると、寝室に走っていった。
朱鷺子の寝巻きが置いてあった横には、僕の寝巻きも準備されていた。
「用意がいい事だね……」
呟き、着替えてから寝室に向かう。
「ん、湯加減はどうだった?」
「あぁ、丁度良かったよ」
寝室には既に布団が敷かれていた。それを準備した慧音が枕を並べながらそんな事を言ってくる。
「ん~ふかふか~」
朱鷺子は折りたたまれた掛け布団に顔を埋めて羽をぱたぱたさせている。
「さて、もう夜も遅い。いい子は早く寝るんだぞ朱鷺子?」
「慧音の言う通りだよ。そんな所にいないで早く寝なさい」
「はーい」
言って、朱鷺子は枕に頭を乗せる。
「さて、私達も寝るとしようか」
「あぁ」
言いながら、慧音は朱鷺子を寝付けさせている。
僕は灯りを吹き消し、慧音と朱鷺子の居る布団へ入り込む。
「おやすみ、朱鷺子」
「おとーさんおやすみー……」
「おやすみ、朱鷺子」
「おかーさんもおやすみー……」
言いながら、朱鷺子の瞼は段々と閉じられていき……やがて隙間が無くなり、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてくるのにそう時間はかからなかった。
「疲れてたんだな」
「まぁ鼠を捕まえる為に走り回ってたからね……」
「霖之助の血を引いているとは思えないぐらい活発に育ったな……」
「そう言う所は昔の君にそっくりだよ。僕に似たのは本好きな所だね」
朱鷺子の頭を撫でながらそんな会話をする。
無言の時間が訪れその場を支配するが、それは心地良い静寂だ。外から聞こえて来る風の音が何とも言えない雰囲気を作っている。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
どれくらい、そうしていたのだろうか。
十分、三十分、或いはもっとか。
不意に、慧音が口を開いた。
「霖之助」
「うん?」
「里に来る気は無いのか?」
「………………」
慧音はこの話をよく僕に振ってくる。まぁ別居している夫婦は幻想郷では珍しいから無理も無い。
だが、それに対する返答はいつも同じだ。
「無いよ。店の事もある」
「なら里で店をやればいいじゃないか。丁度空き地もあるんだ」
「そうは言ってもね……」
里で店を開けば結構な利益が見込めるだろう。買出しに行くのも苦労しないし、親父さんにも頻繁に顔を見せに行ける。もしかすれば魔理沙の被害も減るかもしれないな。
それに……毎日、慧音の声で目覚める事が出来るだろう。
「駄目か?」
……だが。
「あぁ……駄目だね。香霖堂は人妖関係なく来れるようにあそこに建てたんだ。里に建てようものなら妖怪が来れなくなる」
最近は里でも妖怪を恐れる事は余り無いが……それでも、種族の壁はまだまだ高い。
「そうか……」
「あぁ」
そこで会話は途切れる。
再び静寂が訪れるが、さっきまでの心地良いものとは違い重苦しい。
「………………」
「………………」
「……里に来るのが嫌な訳じゃ……ないんだな?」
「……君は何を言ってるんだい?」
「いや……流石に毎回断られてると……な」
「全く……そんな訳がないだろう」
そこまで話し、慧音の顔をちらと見る。
「……むぅ」
「……?」
慧音の顔は、さっきまでの朱鷺子を寝かし付けていた穏やかな顔ではなかった。
何か思っている事を言おうか迷っている、そんな顔だ。
「………………」
「………………」
やがて、意を決したかの様に口を開いた。
「……何処にも、行かないよな?」
「………………」
思わず、黙ってしまった。
昔、全く同じ事を同じ人物から言われた事があったからだ。
確か親父さんの店から独立が決まった少し後の事だ。慧音は里で店をやると思っていたのだろう。里を出るという言葉に驚愕していたな。
そして蚊の鳴く様な声で発した台詞がそれだったか。
とそんな事を考えていたのが拙かったか。慧音が聞いてきた。
「霖之助?な……何で黙るんだ?」
「あ、あぁ。済まない」
しまった。思わず昔に浸ってしまったか。自分の世界に入るのも考え物だな。
「黙るって事は……まさか……」
「……ハァ」
全く、聡明な彼女らしくもない。
言わなければ分からないのか。
「………………」
「………………」
あぁ、駄目だ。
当たり前の事だが、矢張り口に出すと恥ずかしいものがあるな。
どうしても顔が赤くなり、自然と目線が明後日の方向へと逸れてしまう。
「霖之助……?」
慧音が泣きそうな顔になっていた。拙い。早く言わなければ。
「………………」
「………………」
「……僕は何処にも行かないよ。君と朱鷺子がいる限り……ね」
地味にツボったww
ようやく春が来た…永かった…
だ、駄目だ……ちゃんと本編の感想を言いたいのに、あとがきの方しか、頭に残ってない……
家族か、いいものだ……これくらいしか浮かばない……ごめんね。
いやぁ、良かった。素晴らしく良かった。
いやーやっと来ましたね。
さてそろそろ貴方に私はそんな権限は無いかも知れませんがこの称号をどうぞ。
つ【霖之助マスター】
これからも励んでください。
100%じゃ足りない。
とっても美味しかったです、御馳走様。
本文の161行目かな?朱鷺子の台詞です。
>「違うの。家の畳は……何ていうか誇り臭いの。あんまり掃除しないから」
誇り→埃では?
なんと言えば良いのか分からないがただ一つ分かるのは
「良くやってくれました」
これだけです
お風呂?記憶力の事ですよね!知ってましたよ!えぇ!(必死
このほのぼの家族、いやぁ、良かったです!
>言って、慧音は包丁を取り出しす。
取り出す、もしくは取り出した、ですか?
いやあ、俺の脳内家族がこんなところにもあったなんて・・・・・・
タヒねる!!>(゜∀゜)
>>奇声を発する程度の能力 様
永かったですね……えぇ……ホントに。
>>2 様
いえいえ、感想を頂けるだけでも嬉しいです!
>>3 様
妄想を吐き出しただけでしたが、良かったですか!有難う御座います!
>>華彩神護.K 様
霖さんも可愛いんですかw
ひゃ、100%越え!?そんなにですか!?
おぉう、称号どうも有難う御座います!恥ずかしいんで身内に対してのみ名乗らせてもらいますねw
>>下上右左 様
ほのぼのしていただけましたか!良かった……
行数まで数えていただいて……修正しました。報告有難う御座います。
>>投げ槍 様
別居夫婦でもらぶらぶですw
家族って良いですよね!
>>7 様
慧音の娘とお風呂場だったら記憶力ですよね!
>>けやっきー 様
家族はいいものです。えぇ。
何度確認してもあるんですね、誤字……報告有難う御座います。
>>9 様
おぉ、朱鷺慧霖の同士がいた!
マジですか!!>(゚Д゚)
読んでくれた全ての方に感謝!