「あぁ…どうにかなっちゃいそう…」
姫海棠はたては、眠れない毎日を過ごしていた。
「どうしちゃったんだろ…私…」
そう呟きながら、一つの写真を手に取った。
その写真には、射命丸文が写っていた。
「あのバカ…アイツのせいで寝られないじゃない…」
はたては、その写真をぎゅっと抱きしめた。
無論、折れないように気を使いながら
「本当にバカなんだから…」
――眠れない
心のどこかで、いつも文のことが気になっていて、眠れないのだ。
本人には自覚は無い。だが、はたてはある感情を抱いてしまったのだ。
「…なんで気づかないのかしら…私の、気持ち……」
――そう、はたては好きになってしまった。
ライバルである文を…
「あー、もう…むしゃくしゃするわね!!文のバカ!!」
だが、憎めない
口ではこう言っているが、本当は好きだから――
「ふぅ…気晴らしに少し外に出ようかしら……ついでにネタがあればラッキーだし…」
そう言って、はたては、心のもやもやを払拭するかのように、全速力で幻想郷を飛びまわった。
「ん~、少し休憩しようかしら」
博麗神社の鳥居の上で休憩することにした。
普段は家に篭って念写しているから、疲れるのも無理はなかった。
全速力で飛んだから尚更だろう。
「星が綺麗ねぇ…」
まるではたての心とは正反対なくらい、明るく、はっきりと輝いていた。
「私の心も、あの星みたいに輝けたらなぁ…」
それは叶わないだろうなぁ…と思いながら、曇りも無く輝く星たちを見ていた。
「ん……あれ?寝てたのかな?…」
少しの間、眠っていたらしい。
疲れが溜まっていたのだろう。
「それにしても変な夢ね…文と話すだけの夢って…」
自分の気持ちに素直になれない――
自分の中の気持ちに気づいてはいるけど…
「星は…まだ輝いてる…か……そろそろ帰ろうかな…」
はたては、立ち上がって、宵闇に漆黒の翼を広げて飛び立った。
――夜空に輝く星を見ながら…
「…っと、到着到着ー」
全速力で飛んで、疲れているはずだったのに、体は軽かった。
行く前よりも、疲れが飛んでいる感覚だった。
「とりあえず寝ようかな…眠くなってきちゃった…」
ベットに横になるやいなや、すぐに眠りについた。
この時の夢も、文と会話している夢だった。
「ちょっとー!!はたてー!!居るでしょう!!」
少し太陽が西に傾き始めた時間に、ドアを叩く音と、愛しい人の声で、はたては目を覚ました。
「んー…って文!?」
「そうよ、貴女が言ったんでしょう?一緒にネタを探そうって」
…すっかり忘れてたはたてだった。
「あああ!!!そうだった!!ごご、ゴメン、文!!今から準備するからちょっと待ってて!!」
「仕方ないですね…早くしてくださいよ?」
「わ、わかってるわよっ!!」
はたては、パニックに陥っていた。
慌てているだけではなく、いきなり文が来たから。
心の準備ができていなかったのだろう。
「えっと…携帯携帯…あれ!?」
ポケットに入っている携帯すらわからなくなる始末である。
「はたてー、いつまでかかるのかしらー?」
「あぅ…も、もうすぐよ!!」
とりあえず、最小限のものだけ持って、はたてはドアを開けた。
そこには文が立っていた。
当然のことだが、はたてにはそれがとても嬉しく感じられた。
「おはよう、はたて」
満面の笑顔だった。
写真に撮って、永遠に取って置きたいくらいの、眩しいほどの笑顔だった。
「あ…その……おはよう…」
はたては、その顔を、まともに見ることはできなかった。
「あら?元気ないのかしら?」
「文のせいでねっ!!」
心にも無い悪口がついつい出てしまう。
いつになっても変わらない
素直になれない
「あらあら、他人のせいにするのはいただけないわね」
「う…うるさいっ!!早く行くわよ!!バカ文!!」
「バカとは失礼ですね…まぁ、いいでしょう。行きましょうか。」
こんなとき、素直になれたら…
はたては素直になれない自分を呪った。
その後、二人は、ネタを探しに幻想郷中を飛び回った…が、ネタは見つからなかった。
それでも、はたては満足だった。
大好きな文と過ごせたから――
「う~ん…ネタは見つかりませんでしたねぇ…」
日も完全に沈み、辺りは闇に包まれていた。
唯一、照らしてくれるのは、月と、輝く星たちだった。
「そうね~、でも、楽しかったからいいじゃない。」
実際、はたては大満足だった。
ネタなんかよりも大事なことだから。
「…貴女、それでいいのかしら?」
「……え?」
はたては膠着した。
「貴女は、ネタが見つからなくても良かったのかって聞いてるんです。」
「うん。別に楽しかったからね~」
当然、本心である。
楽しめただけで満足だった。
「貴女、新聞ちゃんと書く気あるのかしら?」
文からは予想外の言葉が返ってきた。
「当たり前じゃない。」
「なら、ネタが見つからなかったのに満足ってどういうことなんですか?理解できませんよ」
「そ、それは…」
今日のネタ探しは、あくまで仕事
ネタが見つからなければ意味なんか無いものだと思ってたなんて…
そう思うと、はたては悲しくなってきた。
「貴女はもう少し仕事に真剣になったほうがいいですよ。今日だってほとんど私についてきてただけじゃないですか。もっと積極的に……」
「……文は…私より仕事が大事なんだね……」
はたてにしては珍しく、感情の篭った口調だった。
だが、文は…
「当然です。貴女は仮にも私のライバルなんですから。頑張ってもらわないと……」
「……バカ…文のバカぁっ!!もう知らないっ!!」
「ちょ、ちょっと!!待ちなさい!!」
はたては飛び立った。
その漆黒の翼は、哀愁を帯びていたようにも見えた。
「グスン……バカ…文のバカぁ……」
はたては、神社の鳥居の上で泣いていた。
――私はこんなにも好きなのに…
文は…私よりも仕事なんだ…
そう思うと、涙が止まらなかった。
次から次へと、滝のように流れ落ちていった。
――ふと、空を見上げた。
「何でだろ…悲しいのに…昨日よりも光って見える……」
無論、涙のせいだ。
だが、その光景は、形容する言葉が見つからないほど美しかった。
「綺麗……」
すっかり見とれてしまっていた。
昼間に見た、文の笑顔も、これくらい…いや、これ以上に輝いていた。
「涙は止まらないのに…綺麗だよ……悲しいのに…綺麗なんだよ……ねぇ、文…なんでだろ……」
「星が貴女を癒してくれているんですよ…きっと……」
…嘘だ。
そんな筈は無い
ここに文がいるはずは無いんだ。
はたては恐る恐る横を見た。
そこには、文が居た。
宵闇に隠れて、表情は見えない
…怒っているんだろうなぁ…と、思いながら、不機嫌そうに話しかけた。
「何よ…文は仕事してればいいじゃない…」
「はたて……あの…ごめんなさい……仕事なんかより貴女のほうが大事に決まってるじゃない。」
そう聞くと、はたては、嬉しさで暴れだしそうだったが、ぐっと堪えて、不機嫌な振りをした。
「何でここがわかったのよ…」
それがわからなかった。
神社の鳥居の上に居るなんて普通は考えないだろう
「貴女、昨日もここに来てたじゃないですか。だから、ここかと思ったんですよ」
「そう……って、なんでここに来たこと知ってるの!?」
「ちょっと言いにくいんですが…貴女が急に家を出たので気になって後を追ったんですよ」
私のことを?気になって?
「何でよ?家を見張ってたの?」
「そんなところでしょうかね…すみません……」
なんでわざわざ見張ってたのだろう
なんで気になったのだろう
はたてには全くわからなかった
「あぁ、それと、貴女が昨日やってたこと、全てカメラに収めてありますよ?」
「…え?……じゃあ、家の中のも?」
「当然です。ずっと気づいてましたよ、貴女の気持ち……でも、素直になれませんでした…結果、貴女を悲しませてしまいました……すいません…」
あぁ…そうだったんだ…お互いに素直になれなかっただけなんだ…
「謝らなくていいのよ…言いたいことがあるんだけど…言っていい?」
今、私の心に曇りなんか無い――
「えぇ、どうぞ」
今なら、素直に言える――
「文…大好き……」
そのとき、月明りが二人を照らした。
目は赤いが、二人とも満面の笑顔だった。
夜空に輝く星たちにも負けないくらい、眩しい笑顔だった。
「…私もです…はたて…」
鳥居の上で、二人は抱き合った。
そのとき、柔らかな風が、二人を包みこんだ。
その風は、二人を祝福しているようにも感じた。
――今は、昨日ほど星は眩しく見えない。
それは、二人が輝いているから…星が、癒しを与えてくれたから…
「そろそろ、帰りましょうか」
「うん、もちろん一緒にね?」
「ふふふ、当たり前じゃないですか。それじゃいきましょうか。」
「うん!!」
二つの漆黒の翼は、迷いも無く、ただ真っ直ぐと、美しく羽ばたいていた――
それはまるで、流れ星の如く、光輝いていた。
姫海棠はたては、眠れない毎日を過ごしていた。
「どうしちゃったんだろ…私…」
そう呟きながら、一つの写真を手に取った。
その写真には、射命丸文が写っていた。
「あのバカ…アイツのせいで寝られないじゃない…」
はたては、その写真をぎゅっと抱きしめた。
無論、折れないように気を使いながら
「本当にバカなんだから…」
――眠れない
心のどこかで、いつも文のことが気になっていて、眠れないのだ。
本人には自覚は無い。だが、はたてはある感情を抱いてしまったのだ。
「…なんで気づかないのかしら…私の、気持ち……」
――そう、はたては好きになってしまった。
ライバルである文を…
「あー、もう…むしゃくしゃするわね!!文のバカ!!」
だが、憎めない
口ではこう言っているが、本当は好きだから――
「ふぅ…気晴らしに少し外に出ようかしら……ついでにネタがあればラッキーだし…」
そう言って、はたては、心のもやもやを払拭するかのように、全速力で幻想郷を飛びまわった。
「ん~、少し休憩しようかしら」
博麗神社の鳥居の上で休憩することにした。
普段は家に篭って念写しているから、疲れるのも無理はなかった。
全速力で飛んだから尚更だろう。
「星が綺麗ねぇ…」
まるではたての心とは正反対なくらい、明るく、はっきりと輝いていた。
「私の心も、あの星みたいに輝けたらなぁ…」
それは叶わないだろうなぁ…と思いながら、曇りも無く輝く星たちを見ていた。
「ん……あれ?寝てたのかな?…」
少しの間、眠っていたらしい。
疲れが溜まっていたのだろう。
「それにしても変な夢ね…文と話すだけの夢って…」
自分の気持ちに素直になれない――
自分の中の気持ちに気づいてはいるけど…
「星は…まだ輝いてる…か……そろそろ帰ろうかな…」
はたては、立ち上がって、宵闇に漆黒の翼を広げて飛び立った。
――夜空に輝く星を見ながら…
「…っと、到着到着ー」
全速力で飛んで、疲れているはずだったのに、体は軽かった。
行く前よりも、疲れが飛んでいる感覚だった。
「とりあえず寝ようかな…眠くなってきちゃった…」
ベットに横になるやいなや、すぐに眠りについた。
この時の夢も、文と会話している夢だった。
「ちょっとー!!はたてー!!居るでしょう!!」
少し太陽が西に傾き始めた時間に、ドアを叩く音と、愛しい人の声で、はたては目を覚ました。
「んー…って文!?」
「そうよ、貴女が言ったんでしょう?一緒にネタを探そうって」
…すっかり忘れてたはたてだった。
「あああ!!!そうだった!!ごご、ゴメン、文!!今から準備するからちょっと待ってて!!」
「仕方ないですね…早くしてくださいよ?」
「わ、わかってるわよっ!!」
はたては、パニックに陥っていた。
慌てているだけではなく、いきなり文が来たから。
心の準備ができていなかったのだろう。
「えっと…携帯携帯…あれ!?」
ポケットに入っている携帯すらわからなくなる始末である。
「はたてー、いつまでかかるのかしらー?」
「あぅ…も、もうすぐよ!!」
とりあえず、最小限のものだけ持って、はたてはドアを開けた。
そこには文が立っていた。
当然のことだが、はたてにはそれがとても嬉しく感じられた。
「おはよう、はたて」
満面の笑顔だった。
写真に撮って、永遠に取って置きたいくらいの、眩しいほどの笑顔だった。
「あ…その……おはよう…」
はたては、その顔を、まともに見ることはできなかった。
「あら?元気ないのかしら?」
「文のせいでねっ!!」
心にも無い悪口がついつい出てしまう。
いつになっても変わらない
素直になれない
「あらあら、他人のせいにするのはいただけないわね」
「う…うるさいっ!!早く行くわよ!!バカ文!!」
「バカとは失礼ですね…まぁ、いいでしょう。行きましょうか。」
こんなとき、素直になれたら…
はたては素直になれない自分を呪った。
その後、二人は、ネタを探しに幻想郷中を飛び回った…が、ネタは見つからなかった。
それでも、はたては満足だった。
大好きな文と過ごせたから――
「う~ん…ネタは見つかりませんでしたねぇ…」
日も完全に沈み、辺りは闇に包まれていた。
唯一、照らしてくれるのは、月と、輝く星たちだった。
「そうね~、でも、楽しかったからいいじゃない。」
実際、はたては大満足だった。
ネタなんかよりも大事なことだから。
「…貴女、それでいいのかしら?」
「……え?」
はたては膠着した。
「貴女は、ネタが見つからなくても良かったのかって聞いてるんです。」
「うん。別に楽しかったからね~」
当然、本心である。
楽しめただけで満足だった。
「貴女、新聞ちゃんと書く気あるのかしら?」
文からは予想外の言葉が返ってきた。
「当たり前じゃない。」
「なら、ネタが見つからなかったのに満足ってどういうことなんですか?理解できませんよ」
「そ、それは…」
今日のネタ探しは、あくまで仕事
ネタが見つからなければ意味なんか無いものだと思ってたなんて…
そう思うと、はたては悲しくなってきた。
「貴女はもう少し仕事に真剣になったほうがいいですよ。今日だってほとんど私についてきてただけじゃないですか。もっと積極的に……」
「……文は…私より仕事が大事なんだね……」
はたてにしては珍しく、感情の篭った口調だった。
だが、文は…
「当然です。貴女は仮にも私のライバルなんですから。頑張ってもらわないと……」
「……バカ…文のバカぁっ!!もう知らないっ!!」
「ちょ、ちょっと!!待ちなさい!!」
はたては飛び立った。
その漆黒の翼は、哀愁を帯びていたようにも見えた。
「グスン……バカ…文のバカぁ……」
はたては、神社の鳥居の上で泣いていた。
――私はこんなにも好きなのに…
文は…私よりも仕事なんだ…
そう思うと、涙が止まらなかった。
次から次へと、滝のように流れ落ちていった。
――ふと、空を見上げた。
「何でだろ…悲しいのに…昨日よりも光って見える……」
無論、涙のせいだ。
だが、その光景は、形容する言葉が見つからないほど美しかった。
「綺麗……」
すっかり見とれてしまっていた。
昼間に見た、文の笑顔も、これくらい…いや、これ以上に輝いていた。
「涙は止まらないのに…綺麗だよ……悲しいのに…綺麗なんだよ……ねぇ、文…なんでだろ……」
「星が貴女を癒してくれているんですよ…きっと……」
…嘘だ。
そんな筈は無い
ここに文がいるはずは無いんだ。
はたては恐る恐る横を見た。
そこには、文が居た。
宵闇に隠れて、表情は見えない
…怒っているんだろうなぁ…と、思いながら、不機嫌そうに話しかけた。
「何よ…文は仕事してればいいじゃない…」
「はたて……あの…ごめんなさい……仕事なんかより貴女のほうが大事に決まってるじゃない。」
そう聞くと、はたては、嬉しさで暴れだしそうだったが、ぐっと堪えて、不機嫌な振りをした。
「何でここがわかったのよ…」
それがわからなかった。
神社の鳥居の上に居るなんて普通は考えないだろう
「貴女、昨日もここに来てたじゃないですか。だから、ここかと思ったんですよ」
「そう……って、なんでここに来たこと知ってるの!?」
「ちょっと言いにくいんですが…貴女が急に家を出たので気になって後を追ったんですよ」
私のことを?気になって?
「何でよ?家を見張ってたの?」
「そんなところでしょうかね…すみません……」
なんでわざわざ見張ってたのだろう
なんで気になったのだろう
はたてには全くわからなかった
「あぁ、それと、貴女が昨日やってたこと、全てカメラに収めてありますよ?」
「…え?……じゃあ、家の中のも?」
「当然です。ずっと気づいてましたよ、貴女の気持ち……でも、素直になれませんでした…結果、貴女を悲しませてしまいました……すいません…」
あぁ…そうだったんだ…お互いに素直になれなかっただけなんだ…
「謝らなくていいのよ…言いたいことがあるんだけど…言っていい?」
今、私の心に曇りなんか無い――
「えぇ、どうぞ」
今なら、素直に言える――
「文…大好き……」
そのとき、月明りが二人を照らした。
目は赤いが、二人とも満面の笑顔だった。
夜空に輝く星たちにも負けないくらい、眩しい笑顔だった。
「…私もです…はたて…」
鳥居の上で、二人は抱き合った。
そのとき、柔らかな風が、二人を包みこんだ。
その風は、二人を祝福しているようにも感じた。
――今は、昨日ほど星は眩しく見えない。
それは、二人が輝いているから…星が、癒しを与えてくれたから…
「そろそろ、帰りましょうか」
「うん、もちろん一緒にね?」
「ふふふ、当たり前じゃないですか。それじゃいきましょうか。」
「うん!!」
二つの漆黒の翼は、迷いも無く、ただ真っ直ぐと、美しく羽ばたいていた――
それはまるで、流れ星の如く、光輝いていた。
夜空を見上げると、星よりも月に目がいってしまいます。
でも、どちらも綺麗ですよねぇ…
さっくり読めるいい短編でした。
アドバイスをいうならば、序盤でいきなり好きだ、ではなくて、どの辺が気になるとか一緒にいてドキドキしたりするシーンなどを冒頭にもっていくと、よりすんなりと話に入れるかもしれません。
うん、でもグッジョブ!ごちそうさまでした!