Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想自衛隊~前編~

2010/09/20 21:04:35
最終更新
サイズ
15.32KB
ページ数
1

分類タグ


深い霧に包まれた湖、そして遠くに見える紅い館、そこに迷彩服に身を包んだ二人の男が立っていた

「谷岡、ここ一体何処だ?」

「僕に聞かないで下さい、盛岡さん」

こうなったのもあの女のせいだ、あの女の、盛岡は毒づいた


二人は止まない雪の中運転席で談笑をしていた、外は視界ゼロと言って良いくらいだった

『…東京じゃ季節外れの雪だそうですよ、盛岡さん』

『あぁ富士演習場がここまで積もってたら東京にも降るだろ』

盛岡と呼ばれた男は助手席から手を出し降りしきる純白の雪に触れた

『ちべてっ』

しかしすぐ手を引っ込め、懐から煙草を取り出し火を付けた

『ちょっ、運転席は禁煙ですよ?盛岡さん!』

『堅いこと言うなや谷岡、ちょっとくらい良いだろ三時間も座りっぱなしなんだ』

『…しょうがないですねまったく、禁煙とかしないんですか?』

『しねぇよ、これ止めたら何楽しみにすりゃいいんだよ』

谷岡と呼ばれた男は怪訝な顔をしつつ窓の外を見やった

『雪、止みませんね』

『あぁ』

その時だった

『ん?アレなんですか?盛岡さん』

『アレってなんだよ?』

なんと言えば良いのだろう、空が割れた?とでも言えばいいのか、何かが忽然と現れたのだ
そしてその裂け目からは…

『…女?』

金髪の女がこちらを見て笑っていた
その姿は何処までも美しく、どこまでも幻想的であった
視界が霞む吹雪の中でもその髪は美しく輝き、そして未来か過去からでもやってきたようなそんな不思議な存在だった

『そんなことより何で民間人が演習場に入ってるんだ?ちょっと行ってくる』

『待って下さい盛岡さん!マズいですってば、あれはヤバイですって』

谷岡が必死で盛岡を引き留める

『何がヤバイんだ?谷岡』

『とにかくヤバイ物はヤバイです!盛岡さんも見たでしょう、空が割れたのを、あれは人間なんかじゃない、妖怪なんです』

『妖怪だぁ?巫山戯るな、鬼○郎じゃあるまい』

そう言って盛岡がドアノブに手を掛けた瞬間…

『はぁい、私は妖怪よ』

『わぁっ!』

『ひぃっ!』

その女は車のすぐ傍にいたのだ

『なん…で?百メートルは離れてたぞ?』

『百メートルだろうが百キロだろうが一気に距離を詰められますわ、私の手にかかれば』

『だから言ったでしょう盛岡さん、この女は妖怪なんだって』

谷岡は恐慌状態で、盛岡も口をぱくぱくさせ、唯一冷静だったのは外にいる女だった

『…何しに来た?』

『貴方達を連れ出しに』

『やっぱり喰われるんだ、俺たちぁ妖怪に喰われるんだ』

『失礼ね、そんな野蛮なコトしないわよ』

女は谷岡の発言に頬を膨らませ反論した

『じゃあ、何を』

『この世界よりも面白い“幻想の世”へ連れに参りましたわ』

『なんで俺たちだ』

『…気まぐれよ』

そう女が言った瞬間、二人は激しい眠気に襲われ、視界が暗転した
そして目覚めたときには湖の畔だった、というわけである


「…ここはあの女が言ってた幻想の世って事ですかね、盛岡さん」

「信じられるか、きっとここは演習場の近くだ、霧が晴れれば富士だって見えるさ」

そう言って盛岡は地面へ腰を下ろし、待った、霧が晴れるのを
霧が晴れれば全てが分かる、そう全てが分かる

「霧が晴れてきた、富士のシルエットが見えてきたぞ、ははは

霧が晴れた瞬間、盛岡は安堵の表情を一気に崩した

「…富士ってあんなに尖ってたっけ?谷岡」

盛岡が見た物はパッと見四千は越えている連峰だった

「記憶じゃもっと平らでしたよ、富士山」

盛岡は力無くヘルメットを脱ぎ、天を仰いだ

「…なんてこった、どうしてこんな事に」

「分かりません、僕も」

そして盛岡は見た

「おい、アレなんだよ谷岡」

「アレって何です?」

盛岡が指さした方を見るとそこには…

「人?」

「あぁ飛んでる」

何かにまたがって飛び往く少女の姿だった

「あれ、何だよ」

「分かりません」

呆然とする二人の耳に聞き慣れた音が聞こえてきた

「…これ、ヘリじゃないですか?」

「あぁ、ブラックホークとヒューイのエンジン音だ!」

二人は音のする方向に顔を向けた、O.D.色のヘリコプターがこちらに飛んでくるのを見た

「おーい!ここだー」

盛岡は懸命に叫び手を振り、ヘリを呼んだ
数分後、ヘリは二人を見つけたのだろう、近くへ降下してきた

「行くぞ谷岡!」

「はい」


二人はヘリの元へ駆け寄り乗員達と再会した

「村井、貴様だったか」

「盛岡一尉、よくご無事で」

「それはこちらのセリフですよ、村井准尉」

「君もよく無事でいてくれた、谷岡一曹」

「総員何名だ?村井」

「私たちは歩兵十五名と乗組員で十九人だ」

「そうか、食糧は?」

「こちらにはこちらの分しかない、すまない」

「いや大丈夫だ、こちらにもある」

「そうか君達はコウキだったね、食糧は有るのか、良かった」

「武器は?」

「小銃が五十丁近く、手榴弾が百発、銃弾だって八万発くらいはある、それに重機関銃一丁とミニミが二丁ブラックホークに据え付けてある」

「何でそんな大量にあるんだ?」

「小銃と弾薬をヘリごと空輸する途中だったんだが急に吹雪き出してね、ホワイトアウトの中引き返すことも行くことも出来なかったから緊急着陸して待ってたらいつの間にか眠っていたんだ」

「良く死ななかったな、そんなことより飛ばせるか?ヘリ」

「あぁ良いよ」

「ここらの状況を把握しておきたい」

「それは私だって同じだよ」

村井の言葉を確認すると盛岡は谷岡に声を掛けた

「よし、谷岡はヘリの歩兵隊と共にここの警戒だ、俺と村井はヒューイで周辺偵察に行ってくる、寝るなよ」

「分かりました」

谷岡は敬礼するとヘリに乗っていた隊員達にてきぱきと指示を出し始めた
その様子を操縦席から見た村井は盛岡に小声で話しかけた

「…君の部下はなかなかやるじゃないか」

「当たり前だ、私が直々にしごいているのだからな」

「おやおや」

そう言って村井のヒューイは上昇を始めた


空に上がった村井と盛岡が見たものは延々と続く樹海だった

「…なんてこった、ビルが一つもないぞ」

「あぁ、地図の上だとここが御殿場なんだが、何もないな」

ヘリは飛ぶこと二時間、前方に紅い館を視認した

「おい村井、あれ何だよ」

「…見たところ館だな、凄いでっかい館だ」

「んなことぁ分かってる、あんな豪邸が建ってたか?」

「知らねぇよ、行ってみるか?盛岡」

「あぁ頼む、情報収集をしたい」

村井は機首を館へと向け飛んだ


その頃紅魔館では門番の紅美鈴が花壇の花の世話をしているところであった

「…この花はあと少しですね、楽しみです」

そう言い終えたとき、後ろから門番隊の隊員が息せき切らせて走り寄ってきた

「も、門番長!緊急事態です!」

「どうしたんです?詳しく説明して下さい」

「はい、先程門前に得体の知れない機械が降り立ちまして…」

「降りたって、どうしたんです?」

「いえ、中に人がいるのは確認できたのですが他の奴らはビビって近づくことすら出来ない状態でして、こうやって連絡することくらいしか…」

「…今のところ危害は加えられてないんですね?」

「はい!」

美鈴は手から軍手を外し隊員に押しつけ

「んじゃあ私が行ってくるからその子達のお世話よろしくね」

とだけ言って門へと急いだ


美鈴が門前で見たものは確かに得体の知れない機械だった、そして各所で勤務していた隊員達が一斉に集まってそれを取り囲んでいた

「…ハイどいてどいてー」

そう言って美鈴は群衆をかき分けそれに近づいた

「おい村井起きろ、親玉の登場だ」

盛岡が歩み寄る美鈴を見つけて村井を叩き起こした

「そうみたいだな、降りるか?」

「それが礼儀だ」

「撃たれたらどうする?」

「………」

暫しの沈黙のあと盛岡は平然とした顔で

「そん時はそん時で」

と言ってドアレバーに手を掛け降り立った


「見たところ貴方が指揮官ですね?初めまして、紅魔館門番隊指揮官の紅美鈴です、よろしく」

盛岡は差し出された握手に答えつつ自己紹介をした

「どうも、陸上自衛隊所属の盛岡一尉です、こっちは…」

「村井准尉です、よろしく」

村井が続いて美鈴に握手を求めた

「りくじょうじえいたい?聞いたこと無いですね」

握手に答えつつキョトン顔で答える美鈴に盛岡は付け加えた

「とりあえずあなた達に危害を加えるつもりはない、安心してくれ」

「…こいつ、巫山戯てるのか?」

盛岡の後に続いた村井が小声で問うた

「いや、多分素で言ってるだろう、この様子だと」

「あの~、なんか悪いこと言いました?」

「いや、別に構わない、それよりもここら辺に町とかは無いかな」

「あぁ人里ならここから数時間行った先に有りますよ」

「…聞いたか村井、人里だそうだ」

「丁度良い、そこでも情報を収集しよう」

そう言って盛岡は村井をヘリに戻らせた

「騒がせてしまって申し訳ありません、今すぐこの場所を離れますから」

「いえいえ、良いですよ」

「あぁそうだ、最後に一つ聞いておきたい」

「はい?」

「ここは一体何処ですか?」

盛岡の質問を受けた美鈴は即答した

「幻想郷です」

「げんそうきょう?」

「えぇ忘れ去られたものが集う場所、それがここです」

「…どうも…ありがとうございました」

盛岡はそれだけ言うとエンジンを始動させているヒューイへと歩み寄った


盛岡は機内であの門番が言っていた言葉をずっと繰り返していた

『忘れ去られたものが集う場所、それがここです』

考えれば考えるほどおかしくなりそうだ

「忘れられたものが来る場所、か」

「…どうした盛岡、さっきから神妙な顔して」

「ん、いやなんでもない、人里はまだか?」

「真ん前見てみろ、見えてきたぞ」

「おぉ」

二人が見た里は所謂古き良き日本の風景と言った感じで郷愁をそそるにたる姿であった

「…綺麗だな」

「あぁなんか懐かしいよ、子供の頃の田舎はあんな感じだったのを憶えてるよ、盛岡」

太陽光に反射する田圃、茅葺きの屋根、そして一軒一軒の家から立ち上る煙、子供だろうか一生懸命に走り回っている

「…夢みたいな光景だ、まさに幻想郷だな、村井」

「あぁ、まったくだ」

村井は夢のような光景を眺め言った

「…で、行くか?」

「いや、皆を引き連れて行ってみよう、流石に二人は少なすぎる」

「分かった、無線で呼んで落ち合うか」

「そうしよう」

そう言って村井は無線機を取り幕営地に向けて発信した


「…とうことは集落が近くにあるのですね?」

『あぁそうだ、一時間以内に来れるか?』

「まだ天幕を設営してないので大丈夫ですよ、もう一機のヘリも連れてきますか?」

『当たり前だろう』

「じゃあ何処で落ち合います?」

『その森を北側へ向かって大きく迂回したところに廃洋館がある、そこで合流しよう』

谷岡は盛岡から集結地点を聞き、隊員達に移動を命じた


その頃、人里は恐慌状態に陥っていた、警邏中の自警団の『空飛ぶ籠』目撃情報により退役した団員までかき集められ里の出入り口を固めていたのである

「…おい、お前さんが言ってた空飛ぶ籠ってのはどんなんだ?」

「とにかく物凄い音を響かせ空を飛んでいた、もうおいら腰抜けてしまったよ」

「…妖怪か?」

「いやでも中に人がいたようにも…」

門を固める団員達は皆それぞれ緊張の色を浮かべていた
その時、団員の一人が遠くを指さし叫んだ

「おい!ありゃなんだ?こっちに来るぞ」

団員達が見た物は獣でもなく妖怪でもなくおおよそ目にしたことが無い、身近な物で例えるならば車輪が付いた籠であったが、それを引っ張る牛が居ない

「籠じゃ!空飛ぶ籠じゃ!」

別の男が見たのは轟音を響かせ空を飛び往く鉄の籠だった、これまでの経験上見たこともない形をした機械であり、例えるならば籠に巨大な竹とんぼを付けたような姿であった

「ひぃ物の怪じゃ!物の怪じゃ!」

「助けてくれ~」

次々と逃走を始める団員、既に恐慌状態と化し崩れ始めていた防衛線に喝が入った

「狼狽えるな!私たちが退けば里にいる皆はどうなる?我らは人里を護るための存在だ!逃げてはならない!」

そう、自警団の団長、上白沢慧音である
団員達の顔から恐怖が消えたのを確認し、慧音は刀を構え前に出て、迫り来るそれに対峙した

「…来い」

額に汗を流し、迫り来るそれを睨み付けた
しかしそれは慧音達の手前十メートルほどで制動をかけ停止した
それの横にあった扉が開き男が一人出てきた

「………」

慧音は刀を構えたまま無言で男を見据えた、敵意はないように見えるが、油断はならない

「お騒がせして申し訳ありません、我々は陸上自衛隊という集団です、私は谷岡一曹と申します」

意外なまでの対応に慧音は張りつめていた糸が切れ、ぽかんと口を開けたまま黙っていた

「…あ、あぁ里の自警団の上白沢慧音だ、よろしく」

得体の知れない物から出てきた男は意外にも穏和で敵意を感じられなかった

「…お前達はどこから来たんだ?」

慧音は至極まっとうな質問をした

「外の世界、とでも言いましょうか、何というか…」

話を聞くところこの男達は外の世界で仕事をしていたところに何者かに連れてこられたらしく、雰囲気からも敵意を察することが出来ないため、慧音は額の汗をぬぐい言葉を発した

「…そうか、色々苦労したんだな、少しここで待っていてくれ、里の長に話を聞いてくる」

「ありがとうございます」

慧音は踵を返し里へ入っていった、長にこのことを報告するためだ


慧音が姿を消して数分、盛岡はヒューイから降り、谷岡に話しかけた

「…信用できるかな、この里の人達は」

「どうでしょう、分かりません」

「谷岡、ここはお前に任せる、俺は少し寝る」

「は?」

「じゃな」

谷岡は何も言えずに欠伸をしながらヘリに向かう上官を見送った

「…緊張感無いなぁ、大変なことになったのに」

そう呟き車に寄りかかり、青空を見上げた

「何だってこんな事になったかなぁ、何で僕たちなんだろ」


時同じくして里長の家、老人が一人の女性の話を聞いていた

「…陸上自衛隊、という集団だったね、慧音先生」

黙って頷く慧音に長は話を繋げた

「それは外の世界の戦闘組織だ、だが侵略は行わず自衛のみ、まさに里の自警団のような存在だ」

「見慣れぬ奇怪な格好をしており鉄の棒のような物を担ぎ更には大地を轟かす乗り物に空飛ぶ籠…か、厄介なのが迷い込んできたのう」

尚も押し黙る慧音をよそに長はさらに話した

「危ない芽は事前につみ取るのが定石だ、自警団は動けるか?」

黙り続ける慧音に長は続けた

「今この場で屠り去ってしまえば良い、問題は無い、そう思わないかね、慧音先生」

慧音を驚愕させるにはその一言で十分だった

「そんな、相手は交戦の意思をを見せてないぞ、里長!」

「だからといって野放しにしておけば我々に刃を向けるかもしれんぞ」

「しかし自衛のための集団だと今自分で言ったはずじゃないのか?」

「それは彼らの世界でのみ通用する決まりだ、彼らがここでどう変わるか分かったものではない」

「…そんな」

黙り込む慧音に里長は続けた

「…自警団は、動けるね?上白沢慧音先生」

それは、確認ではなく実行を促す一言だった


里の入り口に戻った慧音が見た物は和やかに談話する自衛隊と自警団の団員達だった

「…このイモはおらが作っただ、食ってけろ」

「ありがとうございます、頂きます」

地べたに座り込みイモを振る舞ったり

「これはなんちゅう機械かね、外人さん」

「ヘリコプターって言う乗り物だ、空を飛ぶための機械だ…」

見たこともない機械に目を輝かせ話をせがんだり

「…見た事ねぇ物だな、なんて言うんだ?」

「ん?あぁこれは銃だ」

「これがか?火縄がないぞ、撃てるのか?」

「火縄なんて外じゃとっくのとうに無くなってるよ」

「なるほどぉ勉強になったなぁ~」

お互いの武器を見せ合い語らっていたり、見たところ彼らに闘う意思はないように見えた

『…自警団は、動けるね?上白沢慧音先生』

そして去来するのは里長の言葉

「(私はこの言葉に従えるのか…)」

慧音は自問し

「(…無理だ、そんなこと、私だけじゃない、団員達だってきっと無理だ)」

そう自答した

「…沈んだ顔してどうしました?」

振り向いた先にいたのは男だった

「………」

「おっと、自己紹介が遅れましたね、私は彼らの指揮官の盛岡と申します」

男は目を擦りながら苦笑した

「…上白沢慧音だ」

「先程から見ていましたが何か思い詰めていることでも?」

「いいえ、何でもない、大丈…」

「…我々を殺せ、と言われたのですね?」

男が言い放ったその言葉は慧音の心臓を凍り付かせるのに十分すぎるほどだった

「…どうして分かる?」

「雰囲気です」

そう言いながら男は微笑む

「そうだ、長からお前達を屠れと言われた」

「それは大変、すぐに逃げなければ」

男はまるで他人事のように言ってのけた

「…私たちには見逃すことしかできない、すまん」

「謝らないで下さい、命令に背くことは重大な罪です、それをあえて負って下さったのです、こっちが感謝したい位だ」

男はそう言った瞬間、大声で命令を出した

「皆、撤収だ、さっきの湖の畔に引き返す!」

その言葉を聞き迷彩服を着込んだ集団が動き出した

「…お侍さん、また来て下さいな」

「僕は侍ではありませんが、また来たいです、おイモご馳走様でした」

皆々一様ににこやかな顔をして、笑顔で別れていった

「…次に会うときは、見逃せないかもしれないぞ」

「見逃してくれなくとも私たちはあなた達に勝てる」

男は最後にそう言うとヘリコプターへと歩いていった


「…役立たずめ」

轟音を響かせ飛び往くヘリを眺める老人はそう言って手に持っていた湯呑みを机の上に置き、煙管に持ち替えた

「霧雨を呼んでくれ」

近くに居た小間使いにそう言って煙管を吸った

「…それから、上白沢慧音を緊急逮捕だ」

小間使いは蒼い顔をして部屋を出て行った

「…まさか奴が来るとは」

小間使いが居なくなったのを確認して老人は煙管を歯形が付くほど噛みしめた


先程の湖へと飛び往くヘリの機内で盛岡は村井に語りかけた

「なぁ村井」

「どうした?」

「…ひょっとしたら、あの里と一戦交えるかもしれないぜ」

「なんだって?馬鹿も休み休み言え」

「馬鹿、か…確かに馬鹿かもな、俺も、この世界も」

「…何言ってるんだ?」

「何でもない」

そう言って盛岡は眠りについた
その頃の里の長の家では一人の男が招かれていた
「…で、俺にあの化け物を倒せって言うんで?長」
「そうだ、君なら出来るだろ?元愚連隊の頭だった霧雨君なら」
「それは何年も昔の話だぜ、長、あいつ等の装備を見たが勝てるような相手じゃねぇ」
「…慧音先生が『入院』したそうだ、この意味は分かるかね?」
「………」
「幸い彼女は独り身だ、少し寝ていればすぐ良くなる、だが君は家族が居るね、迷惑は掛けられないだろ?」
「…吐き気がするほど汚ぇ野郎だぜ、あんた」
「お褒めの言葉と受け取っておこう、で、答えは『はい』か『いいえ』か?個人的には後者を選んで欲しくはないが、君には選ぶ権利が与えられているよ」
霧雨と呼ばれた男は数瞬黙り込み、言葉を発した
「…答えは『はい』だ」
「ありがとう、感謝するよ」
「ただし条件がある」
「何だい、叶えられることは何でも聞いてあげよう」
「難しい事じゃない、行動する人員は俺に選ばせろ」
「…そんな事か、良いよ、君に任せよう」


時同じくして紅魔館
「…陸上自衛隊、聞いたことある?パチェ」
「書物に書いてあるには外の世界の軍隊らしいわ、読んで字のごとく自らを護ること以外の戦闘は行わないわ」
「ふぅん、そう、美鈴、貴方の意見は?」
「は、少し話した程度ですが我らを襲うようなことはしないかと思います」
「そう、まぁ襲われてもウチには優秀な門番が居るから大丈夫ね」
幼い吸血鬼は隣にいる親友の魔法使いに目線を送ったが気付いてもらえなかった
「…まぁ目を離さないことに越したことはないわね、美鈴、貴方に任務を与えるわ、奴らの行動を監視しなさい、気付かれずにね」
「はい」
大陸風の衣装に身を包んだ女性は目の前の吸血鬼に一礼し退室した



初めまして、初投稿でほぼオリキャラメインという暴挙をやってみた抹茶ジオと申す者です
色々分かりづらいかもしれませんが分かって欲しいのはこの三つ
・自衛隊員は紫の『気まぐれ』で飛ばされた
・今回自衛隊員達は妖怪と戦いません、人里の自警団と戦います
・里長が悪人
以上です、頑張って続けていこうと思います
抹茶ジオ
コメント



1.削除
所々で少し読みづらい部分がありましたが、物語に引き込まれていく様でサクサク読めました。
続き頑張って下さい。
2.奇声を発する程度の能力削除
さて、これからどうなるか…
頑張ってください。
3.けやっきー削除
もう少し、設定についての説明を加えた方がいいかもしれません。
でも、テンポは良かったので、説明を加えると少しくどくなるかも…
うーん、難しい…

お話自体は、とても続きが気になるものでした。