※注意!
『唯(ゆい)の暴走作品』
この言葉に不快感を憶える方は大至急戻るをクリックし、ご自身のお気に入り作品で気を紛らわせて下さい。
それでもいいよ!という寛大なお方は、早苗さんの様な大らかな心で何もかも許すと言う姿勢でお読みになって下さい。
では、以下よりどうぞ。
……忠告はしましたからね?
木々を抜ける冷たい風が秋の訪れを感じさせる長月の初め。
木漏れ日すらも眩しく感じる中、僕は井戸水で顔を洗っていた。
「……ふぅ」
自然と息が漏れ、徐々に頭が覚醒してゆく。
霊夢や魔理沙の善意の目覚ましと言う名の睡眠妨害が無かったため、今日はゆっくりと眠りの世界に浸る事が出来た。そして目覚めた頃には、太陽は最も高い位置に燦然と輝いていた。
「しかし……暑いな」
今の時刻は丁度昼時。雲一つ無い日本晴れだが、それがあったとしても暑すぎる。葉月が終わっていないのではないかと錯覚してしまう程だ。
この天候では暫く雨は見込めないな。そう思って店に戻ろうとした時、思考が待ったをかけた。
「……フム」
暫くは雨が見込めない。それは即ち今日の夜は少なくとも晴れるという事だ。
中秋の名月には早いが、今宵の月もまた美しい事だろう。
「……そうだな」
思い立ったが吉日だ。今から準備すれば時間も丁度いい。これは今日酒宴を設ける為に運命が動いているようにも思える。レミリアではないが、そんな気がした。
「さて……」
そうと決まれば即実行。
僕は『本日休業』の張り紙を作りに店内へと戻った。
***
「……さて、と」
里で酒や少量の肴を買い揃え店に到着したら、先ずは酒を冷やす。
今から冷やしておかなければ夜には丁度いい頃合いだろう。
思い、縁側に置いた桶の中に氷水を入れていると、店の扉を開く音があった。
「……休業の張り紙ははがしていないが……?」
霊夢や魔理沙が張り紙を見ずに店に入ってくる時は少なからず存在する。だが聞こえた鈴の音は霊夢達が開ける時の様な煩いものではなく、静かにゆっくりと鳴っていた。この事から霊夢と魔理沙ではないと断定できる。
となると咲夜か早苗君か……
不思議に思い店に顔を出す。
「……君か」
そこにいたのは予想していなかった妖怪だったために少し動揺してしまったが、思わず納得してしまった自分もいた。
「あら、そこにいたの。……霖之助」
「休業の張り紙を見なかったのかい?……幽香」
大妖怪、風見幽香だ。
力の強い妖怪程紳士的であると言う。幽香もその例外ではないらしい。
「見たわよ。それなら好都合だと思って」
「……?」
話が掴めないな。僕が休んでいるほうが好都合とは……どういう事なのだろうか?
「これよ、これ」
言って、幽香は手に持った瓶を掲げた。
「それは……酒、かい?」
「ただのお酒じゃないわ。スキマから貰った外界のお酒よ」
「ほぅ……」
「今日は月が綺麗に光りそうだから、一杯やろうと思ったんだけど……外のお酒は長持ちしないし、かといって今日一日で全部飲む程お酒は好きじゃないし……」
「宴会に持っていくのも何だし……かい?」
「察しが良いわね。あんな所に持っていけば他のお酒と一緒に水みたいに飲まれるに決まってるから」
「……確かに、な」
「……で、二人で飲めて、それでいて騒がないでそこそこ飲める人を思い出したら貴方しかいなかったのよ」
「……成程」
つまり、その酒で月を肴に一杯やろうという事か。
「僕も同じ考えだよ、幽香。今縁側で酒を冷やしている所だ」
「あら、そうなの?」
「あぁ、僕も月で一杯やろうと思ってね」
「ふーん、そう」
「どうだい?一緒に」
言って、杯を傾ける動作をする。
「……そうね、ご一緒させてもらうわ」
「そうか」
「えぇ。これも冷やしておいて」
言いながら、幽香は奥へと歩いて行く。
外の酒……か。
「これは、愉しめそうだな」
一人、呟いた。
***
月が昇る頃、僕と幽香は縁側で暫し月を見ていた。
「綺麗ね」
「あぁ」
矢張り僕の見立ては間違ってはいなかった。視線の先には十五夜の月に劣らない輝きを見せる月があった。
「さて、そろそろ始めようか」
「そうね」
言って、傍に置いてあった杯を取る。酒と一緒に幽香が持ってきた物だ。
まぁ、それ自体は何の問題も無い。だが……
「……幽香」
「な、何?」
「……何故、夫婦杯なんだい?」
「う」
そう、夫婦杯。
同じ形なのに幽香の杯の方が少し小さいからそうなのだろう。
「べ、別に飲めれば何でも良いでしょう!?」
「ま、まぁそれはそうだが……気になったんでね」
「良さそうなのがそれしかなかったのよ。……馬鹿」
「……?」
何故馬鹿と言われたのだろうか。分からない。
「……まぁいいか」
「……ハァ」
幽香が溜息を吐いた。何か落ち込む様な事でもあったのだろうか?
考えながら、何となく横に目を向ける。
そこに置いてあるのは炒った向日葵の種。これも幽香が用意した。というか、何時の間にか作っていたのだ。
最初に注いだのは外の酒ではなく、里で買ってきた普通の清酒。
「ほら」
「あ、ありがと」
八割程注ぎ、手渡す。
「乾杯」
「……乾杯」
杯を掲げ、先ずは少し中身を減らす。
口に広がるのは、そこいらの安物の酒の味。
だが状況次第で酒とは味が変わるものだ。何時も晩酌で飲む様な酒も、いい肴があれば銘酒と化す。
「……うん、美味い」
「そうね、美味しいわ」
幽香の口に合うかと思ったが、どうやら僕と同じ考えだったようだ。ならいらない心配だった様だな。
そんな事を考えながら、向日葵の種を口へ運ぶ。
ポリポリと程よい食感が伝わり、同時に少し辛い味が広がった。香辛料で味を付けているのだろう。酒精との相性は良いな。
「フム、これは中々……」
「でしょう?」
言って、幽香は僕の杯に酒を注ぐ。彼女が持ってきた外の酒だ。
「有難く頂くよ」
「えぇ、どうぞ?」
言って、杯を呷る。
苦いような甘いような、何とも言えない味が口の中に広がった。
「これは……美味いな」
「そうなの?じゃあ私も」
言いながら、幽香は杯に少しだけ注ぐと、くいと傾けた。
「……何と言うか、不思議な味ね。でも嫌いじゃないわ」
「なら何の問題も無いよ」
言って、また杯を傾ける。
小さな酒宴は、始まったばかりだ。
***
「……ふぅ」
あの後、景色を肴に酒を愉しみ、時々思い出したように会話をしてはまた酒を飲む。その繰り返しが続いていた。
そして酒宴が始まり、二時間程経った頃だろうか。
「……おや、もうこれで最後か」
僕が用意した酒を主として飲み、幽香が持ってきた外の酒は口直しに飲んでいた。
そして今残っているのは、幽香が持ってきた外の酒が一杯分程だ。
「あら、もうそんなに飲んじゃったの?」
「あぁ、後一杯分ぐらいしか残っていないね」
「そう」
「あぁ」
言いながら、幽香の杯に最後の一杯を注いでゆく。
「……何?」
「君が持って来たんだ。君が飲むべきだと思ったまでさ」
「あら、私を酔わせてどうするつもりよ?」
言って、幽香は少し距離を詰める。
「……別に、どうもしないさ。布団に寝かせて、介抱するだけだよ」
「……ハァ。……ま、貴方らしいわね」
溜息。何かおかしな事でも言っただろうか?
「そんなだから浮いた話の一つも出てこないのかしらねー……」
「浮いた話……僕のかい?」
「そうよ」
「……まぁ、相手がいないからね」
「み、店の客はどうなのよ?」
「お客……かい?」
「そう」
「フム……」
言われ、考える。
香霖堂の客層の多くは……と言うより殆どが女性だ。
思いつくだけでも咲夜や妖夢に慧音、それにナズーリン……
買い物をしない常連も含めるなら霊夢や魔理沙に朱鷺子、それに紫もか。
「確かに女性は多いが……そういう目で見た事は無いよ」
「ふーん……じ、じゃあ」
「うん?」
「わ、私は?」
「君かい?」
「え、えぇ。そう」
「君か……」
考える。
……が、直ぐに結論は出た。
「見た事は無いよ」
「……そう」
「あぁ」
そこで会話は途切れる。空間が切り取られたのではないかと思うような静寂が訪れ、耳に入ってくるのは時折吹く風の音だけになる。
「………………」
「………………」
やがて、幽香が口を開いた。
「……何で?」
「ん?」
幽香の方に目を向ける。
月光でよく分からないが、少し目が潤んでいる様に見える。
「何で見た事が無いの?」
恐らく、さっきの話に対する問いだろう。
「………………」
問われた以上、答えねばならないだろう。
「……幽香。君は名の知れ渡った大妖怪だ」
「……えぇ」
「対して、僕は何の力も持たない半妖」
「………………」
「どう考えても釣合う筈がないからね。見ようとしても現実が追いつかない。無駄なんだ」
そこまで話し、杯を傾ける……が、酒は既に無い。
「………………」
「………………」
「……何よ、それ」
「うん?」
見ると、縁側に腰掛けていた幽香は、此方に向き直っている。
月光で曖昧だった目の潤みは、はっきりと確認できた。
「私が大妖怪だから、貴方は私をそういう目で見れないって言うの……?」
「……平たく言えば、そうなるな」
そう言った直後。
とすん。
左肩に何かが当たった。いや、凭れかかっていると言った方がいいか。
「……幽香?」
目を向けると、そこにいたのは僕の服を掴んで僕に凭れる幽香。
少し俯いている所為で、表情は読めない。
「何よ、それ……!そんな周りの目があるから、私をそういう風に思った事が無いですって……?」
「幽、香……?」
「ふざけないでよ!私がどんな思いで毎回此処に来てると思ってるの!?」
「少し落ち着いてくれ、幽香」
「これが落ち着いていられる訳ないでしょう!?私がどれだけ想っていても、貴方は気付く素振りすら見せない!だから気付くまで通うって決めたのに!その結果がコレなの!?私は初めから対象外だったの!?そんなのって……あんまりよ!」
「君は、何を言って……?」
「……まさか、分からないって言うの?」
「あ、あぁ……」
「………………」
「………………」
重苦しい空気が漂う。幽香の顔が見えないだけに、この先どうなるのか全く想像がつかない。
「分かった」
「……?」
唐突に幽香が口を開き、重苦しい空気を払い去った。
「分からないなら、教えてあげる。……一度しか言わないから、しっかり聞きなさい」
「あ、あぁ……」
幽香から放たれる謎の圧力に、思わず頷く。
そして、幽香は顔を上げ、言い放った。
「貴方が好き!周りに何て言われてもいい、貴方が好きなの!」
――幽香は、泣いていた。
「……な、何を言って……」
「私は貴方が好き!周りが何て言おうが知った事じゃないわ!この気持ちに理由も理屈も無い!」
幽香は涙を流し、僕の服を掴みながら言葉を続けてゆく。
「貴方とずっと一緒にいたい!貴方を傍に感じたい!貴方と……夫婦にだってなりたいわ!」
「………………」
「ハァ……ハァ……」
幽香の手から力が抜けてゆく。
「好き……なのぉ……」
「……幽香?」
その言葉を最後に、幽香から返事は無かった。
「くぅ……くぅ……」
「……眠ってしまったか」
頬に残る涙の後を見ると、何とも言えない気分になる。
「しゅき……なのぉ……」
「……寝言か」
「くぅ……くぅ……」
「………………」
……このまま縁側に寝かせておいては風邪を引いてしまうな。妖怪だから無事なのかもしれないが、それでも気が済まない。
「……そう、だな」
「くぅ……くぅ……」
何かに言い聞かせる様に一人呟く。
其処にいると、何とも言えない気分になる。
「………………」
「くぅ……くぅ……」
まるで雑念を払う様に、僕は幽香を抱き抱えて縁側を後にした。
ゆうかりん乙女っ!酒飲むと普段言えないような事も言えますよね。
甘さは60~70%くらい?
>早苗さんのような
早苗さんはどちらかというと許早苗のイメージが強いし、白蓮様の間違いでは?
個人的には結構甘め…80%くらい?ですかね。
前半が切なかったんで、甘さは60%ぐらい?
いやぁ、何とも言えないこの気持ち、よかったです!
お酒飲むと色々吐き出せます。本音も、アレも。
60~70ですか。貴重なご意見有難う御座います。
>>2 様
自分の中の早苗さんは常識に囚われないアクティブな子なんです、はい。
>>淡色 様
乙女でしたか!良かった……
80!?そんなにですか!?
>>奇声を発する程度の能力 様
可愛いです!
>>けやっきー 様
ほ、ほら、強引な展開の進め方とか、朴念仁じゃない霖さんとか……あれ?
それでも60ですか……
よかったですか!やった!
読んでくれた全ての方に感謝!
霖之助……ぱるぱる……今週中に倒す。
むしろあとがきの方が甘い気がする罠w
ひとまず80%でファイナルアンサー
倒したら花の大妖怪が貴方を本気で潰しにきますよ!?
>>8 様
幽香霖ですア゙ァァァァイ゙!!!
あとがきで補正したものですからw
80ですか……そんなに高いのか……
読んでくれた全ての方に感謝!