Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

天然ものの甘さ

2010/09/17 05:51:18
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季節は秋。あの仲の良い豊穣神の姉妹が活躍する季節である。秋は何をするにも丁度良い季節とされてきた。食欲の秋、読書の秋、運動の秋、そして睡眠の秋。だからなのだろう。こうして縁側でお茶を啜りながら、いつもの様に待っているのに。愛しの人が来ないというのは寂しいのものである。そんなことを想っている時だった。唐突に目の前の空間に裂け目ができたのは。
「おはよう、幽々子。」
「もうおやつの時間よ、紫。」
西行寺幽々子の待ち人、八雲紫はいつもの様に唐突に現れた。だが、そのいつものことが幽々子にとっては堪らなく嬉しかった。少し皮肉っぽく言ってみたものの、紫は分かっている様で柔らかく微笑んだ。つられて幽々子も頬が緩んでしまった。
「今日はもう来ないのかと思ったわ。」
「あら、私がそんなに薄情な女に見えまして?」
「いえ。でも、貴女は胡散臭いから。」
幽々子が言うと、紫は嬉しそうにクスクスと笑う。
「はい、今日のお土産。」
そう言って紫はスキマから風呂敷を取り出した。
「あらあら。今日は何かしら?」
幽々子は紫の持って来るお土産が楽しみだった。お菓子の時もあれば、一見しては使いどころの分からない道具。はたまた本を持って来ることもあった。幽々子にとってはどれも大切であったが、それ以上に紫が持ってきてくれたというのがとても嬉しかった。
「まぁ、開けて御覧なさいな。」
紫に言われ、風呂敷を解くとそこには形の良いサツマイモが積まれていた。
「あら、秋の味覚ね。」
「えぇ。ここに来る途中で山に寄ったらあの姉妹から頂いてね。今年は例年より美味しくなっているそうよ。」
「あらあら。それは良いことね。食べるものが美味しいというのは人生において何物にも変えがたい幸せだわ。」
サツマイモを見ながら本当に幸せそうな顔をする幽々子を見て、紫も嬉しそうにフフッと笑った。
「早速、妖夢に焼かせましょう。」
「えぇ……でも、その前に。」
そう言った紫の顔にはあの胡散臭い笑顔があった。
「美味しい秋の味覚を持ってきた恋人に、御褒美は無いのかしら?」
突然のことに茫然としてしまう幽々子。何故なら、こんな要求をされるのは初めてことだったからである。それに、こういったことを求めるのはいつも幽々子からだった。
「………えっと……その……。」
やっと口をついて出た言葉もしどろもどろ。せっかく紫から求めてくれているというのに、頬を赤く染めて恥ずかしがることしかできないなんてと幽々子は思ってしまった。
「あっと……その……幽々子。」
「なっ、なにかしら、紫?」
紫に呼ばれて生娘の様な反応しかできない幽々子を見て、紫は楽しくてしょうがなかった。普段やらないこともやってみるものだと改めて紫は思う。こんなに楽しい恋人の姿が見られるのならば尚更だ。
「ふふっ………少しいぢわるしちゃったかしら。」
「………もう、紫ったら。」
「………でも、」
と、紫は続けた。
「御褒美は頂戴な。」
サツマイモはまだ食べていないのに、狂った甘さが二人の口の中に広がった。
「秋の味覚、ごちそうさま。」
離れる瞬間、唇をチロリと舐められた。紫の放った言葉は幽々子にとって酷く曖昧で現実感のないものだった。
けれども、この口に残る甘さは、現実だった。
初めまして、月羊と申します。
とりあえず、ゆかゆゆが大好物なので徹夜のテンションで書いてしまいました。非常に短くてすみません。
とにかく、温かい甘い空気を目指してみましたが……そんなに甘くならなかったかも。二人のこのあとは皆様のご想像にお任せします。
では、読んでいただいた方は、貴重なお時間をこの小説を読むことに使っていただきありがとうございました。最上級の感謝を。
月羊
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
確かに短すぎる気もしますが、良かったです。
二人を想像して、思わずにやけてしまいました。

時間を有効に活用出来ました。
2.奇声を発する程度の能力削除
とても素晴らしく有効活用できました!!
3.名前が無い程度の能力削除
誰だ!!俺の焼き芋に砂糖かけたバカモンは!!(褒め言葉)
とてもよかったです!
4.名前が無い程度の能力削除
ゆかゆゆいいですよね
短かったのは残念でしたが甘い雰囲気が漂ってて美味しかったです
5.名前が無い程度の能力削除
いや~甘い!けど、やっぱり少し短いかな?
いい雰囲気でした。ごちそうさま!
6.けやっきー削除
>とにかく、温かい甘い空気を目指してみましたが……
なってます。もう、十分甘い空気になってます!
ごちそうさまでした!