「レディーーーース&ロリータ諸君!! このふざけた催しへよおこそ!! 君はTough Girlだ!!!」
「…ねぇ、しょっぱなからレッドゾーンに突入するのはやめてくれない?」
「はっ! 失礼いたしました。マイクを握るなんて久しぶりなのでテンション上がってしまって。こう見えても私、放送部時代はワンダータンバリンの異名を持っていて、テンション上げ要員とし」
「だから、余計なことはいいからさっさと始めてよ」
「こほん…。改めまして、さぁいよいよやって参りました! 最も速いのは誰か!? 守矢神社主催、幻想郷最速伝説の幕開けです!」
「え、いつの間にあんたのとこ主催になったの? と言うかその名前はちょっと微妙なんだけど…」
「なお、実況は最強生物と同じ緑を冠する私、東風谷早苗が、解説は緑にShit!する赤を象徴する博麗さんちの霊夢さんでお送りいたします」
「私あんたに対する突っ込み役としてここにいる気がしてならないんだけど、気のせいかしら」
「ダメですよ、霊夢さん! 語尾はちゃんとですぞにしないと!」
「早苗、私時々貴方がわからなくなるわ…」
------------------------------------------------------------------------------
「さてさて、オープニングのつかみはOK! 漫才はこの辺にしてルールなどの説明をいたしましょう。霊夢さんお願いします!」
「自覚あったんかい! ……ルールは簡単。ここ守矢の神社がスタートで博麗神社がゴール。最も短時間でたどり着いた者の勝ちよ」
「確かに簡単ですね。でもまさかそれだけじゃないですよね。この幻想郷においてそんな単純な勝負がエンターテイメントとして成り立つわけがありませんし」
「あんた随分といい性格になっちゃったわね。残念だけど今回は妨害は御法度よ」
「えーーーー! 正気ですか!? ここは幻想郷ですよ!? 妨害の無いレースなんて見てて面白くないですよ!!」
「あんたここを何だと思ってるのよ…。それに目的としての妨害はNGだけど結果としての妨害に関してまでは禁止しないわ」
「はい? どういう意味ですか?」
「そのままよ。あくまで博麗神社への到達する時間勝負が主体。妨害を主目的にするのはダメだけど、時間短縮の過程で結果的に妨害してしまうことはOKって事」
「よくわかりませんね。じゃあどういう妨害ならOKなんですか」
「例えば相手を直接狙った弾幕はNG。これはさっきも言ったとおり」
「それはその通りですね」
「だけど、推進力として後方に弾幕を放つとかはOKよ。結果的にそれが他の選手の妨害をしたとしてもそれはあくまで結果なので」
「むむ、なんとなく姑息な手段って気がしますね」
「他にも砂煙が巻き上がって視界をさえぎってしまった、木を切り倒したら進路を妨害してしまったとかそういうのもOK。でも砂を掴んで相手に投げたり、切った木で殴りかかったりはアウト」
「要は霊夢さんが最初に言ったとおり、選手同士のリアルバウトにならなければOKってことですか」
「それもちょっと違うかな。何度も言うけどあくまで博麗神社へ到達する時間を縮めることを主としてもらいたいので、直接間接問わず妨害が発生する事を意図した行動は慎んでもらいたいって事。あくまで結果論ね」
「純粋な速度勝負に専念しろってことですね」
「細かいところで語弊はあるけど、その解釈でいいわ。勝負の性質上足引っ張ることなんか考えてる余裕は無いはずだし。自分で言っといてなんだけど、さっきの例にしても木を切ったりなんて考えるくらいなら、そもそもそんなコース取りをしないように行動する方が正解ね」
「しかし、基準が曖昧で判断が難しくないですか?」
「その辺は審判に任せるわ。信頼できる奴を呼んでおいたので」
「なるほどなるほど! というわけでここで本大会の審判のご紹介に参りましょう! いつでも心に悪・即・斬! 楽園における地獄の象徴。ヤーマ・The・説教中毒の四季映姫さんです!」
「東風谷早苗。後でたっぷりと説教です」
「あいつに喧嘩売るなんてよーやるわね」
「東風谷の名前は伊達ではない! 説教なんて馬耳東風! 心配せずとも大丈夫です!」
「あんた長生きするわ…」
「手元の資料によりますと、四季審判はごま塩をごまと塩に選り分ける選手権(黒ごま部門)にて無敗且つギネスの記録を持つそうです。信頼の実績ですね」
「ま、あいつにかかれば曖昧な判断なんて一刀両断でしょ。そういうわけで妨害に関しての判断は大丈夫」
「そんなわけでルール説明でした。まとめますと、目的は博麗神社へ速く到達すること。選手同士の直接的な妨害はご法度。以上です!」
「あ、ごめん。勝負には直接関係無いけどルール追加。うちの神社壊した奴は鍋の具材になるからそこのとこよろしく」
「うわー。随分過激な発言が出てきましたね。こわやこわや」
「当たり前じゃないの。場所貸してやってるのにその上壊されるとかありえないわ」
「ちなみに守矢神社を破損させた場合、琥珀製のオンバシラから削りだした特製アンバージャックにて、神奈子様直々にたたきつぶす、だそうです」
「あんたのとこだって十分物騒じゃないの。何よ叩き潰すって。もう少し抑えた表現に出来ないの?」
「たたきつぶす、です。そういう名前の技なのでしょうがないです。神々の抗争の時、どっかの猿の神をこれで屠ったという由緒正しい技なんですよ」
「そんな技を一介の参加者に披露するってわけ? 物騒ねぇ」
「まぁ、そんなことにならないように、参加者の方には十分留意して欲しい次第であります」
「さて、それではお待たせの選手紹介ですが……選手の皆さんはどこにいらっしゃるのでしょう」
「ああ、あそこの箱に一人ずつ入ってるわ」
「え、何でそんなことに。あの箱の中からじゃ周りの様子とか全くわからなそうですが」
「そりゃそうよ。今回はどんな選手が参加するか本人たちにはわからないようにしたもの」
「それはまたどうしてそんなことに」
「事前に対策を立てられないように、ってのが表向きの理由だけど、ぶっちゃけこうしないと面白くならないから」
「実にわかりやすい理由ですね! でもアリだと思います!」
「ま、本人たちにも集中して欲しいってのもあるからね」
「えー、では改めて本大会に出場される7名の選手紹介……あれ、白紙? ちょっと係さん、原稿間違ってますよ」
「あ、それでいいの。全員白紙」
「そんな困りますよ! これじゃ紹介のしようが無いじゃないですか!」
「そもそも最初から原稿ガン無視でしょあんた…」
「真面目な話、私選手が誰かわからないので紹介できませんよ」
「だからそれでいいのよ。選手紹介なし。そういう方針なの」
「いくらなんでもそれは選手の方にも観客にも失礼では」
「誰が出てくるかわからないってのもそれはそれで楽しいでしょ。だからいいのよ」
「え、でも私でも何人は予想がつきますよ。例えば」
「ストップ。心の中に留めておきなさい。確かに二人は鉄板だしそれ以外にも予想は出来るだろうけどね」
「うーん、そんなんでいいのでしょうか」
「と言うよりしょうがないのよ。今回の大会のルールを正しく把握している人には選手紹介は興ざめにしかならないのよね」
「なんかその台詞自体が色々ありそうな気もしますが…。まぁ、しょうがないですね。その分実況と解説で頑張りましょう!」
「うん、まぁ…そういうところね」
------------------------------------------------------------------------------
「さてさて! いよいよ開始が近づいてまいりました! 選手は誰なのか? その結果は!?」
「どうなるかしらね。予想を覆してくれると面白いんだけど」
「各選手とも開始を心待ちにしておられるでしょう。さぁ、運命の扉が………今! ゲートオープンです! って速! 実況の間もなく一瞬でいなくなりましたよ!?」
「そりゃまぁ、あの連中を考えたらそうなるでしょうね」
「でも大丈夫! こんなこともあろうかと、上空に観測衛星SATORIを待機させておきました! 心理状態から映像を再現する最新技術を搭載したすごい奴ですよ」
「え、さとりってそんな能力あったっけ!?」
「さとりさんではなくSATORIです。なお一部音声は心理状態を可聴化したものになっています。では映像から実況解説していきましょう。はい! キュー!」
「ブレイジングスター!!」
「幻想風靡!」
「おおっと! やはりこの二人は鉄板。始めの一歩から全力ですね!」
「そりゃそうよね。そもそもこの二人が言い出したのが事の発端なんだし」
「しかし高速度撮影でこの速度とは。やはりこの二人の一騎打……えっ!? 今二人の横をとんでもない速度で影が二つ!!?」
「ただ、二人には悪いけど、他の参加者見たら優勝はないと思ってたわよ」
「一体誰でしょうか! これはもうゴール付近を見るしかありませんね。さとりさん! ちょっとゴール前映してください!」
「やっぱりさとりなんじゃないの」
「ゴール前映りました。果たして誰が…」
「どんなに速度があっても距離自体を縮めてしまえば意味が無いね。これで優勝はあたいの物さ」
「なんと小町さんです! と言うか距離を縮めるっていいんですか!?」
「相手を直接妨害してるわけでもないし当然アリよ」
「これが有効となるとなんという大番狂わせ! この映像では魔理沙選手たちはまだ守矢神社付近だと言うのに! まさにぶっちぎり! これは優勝は決まりですね!」
「さぁて、それはどうかしら」
「距離なんて物自体が無意味。スタートとゴールを直接繋げてしまえばそれが最短よ」
「ここで御大登場! 妖怪の賢者が参加していた!?」
「距離を縮めてもそこには少なからず移動と言う行為が発生するわね。その点で距離を0にしてしまうスキマ移動にはどうしても及ばないわねぇ」
「なんでしょう。ものすごくハイレベルな争いのはずなのになんとなく納得いかない感がするのは」
「まぁ、あんた含めて大半の予想したデッドヒートとは程遠いからね。しょうがないでしょ」
「かく言う間にスキマから降り立つ紫選手。この瞬間に優勝が決定されまし」
「降り立つまでの時間は如何ほど? 1秒? 0.1秒? そのどれもが私にとっては永遠に等しい。それだけの時間があればこの幻想郷を100周以上できるわね」
「なななんとぉおー!? 紫選手よりも速くゴールを割ったのはまさかの輝夜姫!? お淑やかな佇まいとは裏腹になんとアグレッシブな!?」
「距離だけでなく自分の行動時間すらも一瞬に縮められるわけだから、そりゃこの手の勝負では反則級よね。他人を妨害してるわけでもなし、当然アリよ」
「二つ目の影は彼女でしたか。なんという能力の無駄使い! 勝負と言うのはここまで人を変えてしまうのか!? ともあれ優勝は蓬莱山輝夜選手に決定です!!!」
「皆様お疲れ様でした。敗者へのせめてもの労いとして、紅魔館特製の紅茶とお茶菓子をご用意させていただきました」
「おっと、ゴール地点には咲夜さんがお茶を用意して待機されていたようです。流石瀟洒なメイドさ…敗者への?」
「咲夜は選手よ。つまり本当にぶっちぎりで優勝したのはあいつ。それこそお茶を用意できるくらいぶっちぎりにね」
「時間停止…ですか」
「輝夜の能力もすごいわ。でも操れるのは一瞬まで。どれだけ0に近づけようと0にはなれない。0にはかなわない。小町と紫の関係に似てるわね」
「でも、時間と空間に優劣は無かったはず。それなら距離を0に出来る紫さんが勝ってもおかしくないのでは」
「紫は接地するまでの『時間』があったわけだし、そもそも能力使うにも『時間』が必要よね」
「ああ、言われてみれば!」
「距離、すなわち『空間』と言うフィールドのみでの勝負が出来ない以上、今回に関しては『時間』の方が優位だったと言えるわ」
「うーん、となると咲夜さんが参加されてたなら確かに他の選手にはどうしようもなかったですね。歌おうと思ったときには既に歌っている、どころか歌い終わってる状態なわけですし」
「だから選手紹介をしなかったのよ。結果が見えちゃうから。それでも何らかの番狂わせを期待してたんだけどね」
「でも、輝夜選手のところまでは本当に結果が見えなくて興奮できました」
「まーね。ある程度読めてたけどなかなかの接戦でよかったわ」
「それでは、会場を博麗神社に移しましょう。審判直々に優勝者の認定が行われますから」
「魔理沙たちもいい加減到着してるだろうしね」
------------------------------------------------------------------------------
「はぁ、はぁ、納得…いかないぜ…」
「魔理沙さんの言うとおりです! あれじゃ勝ち目があるわけ無いでしょ!」
「やっぱりお二方はご立腹ですね。気持ちはわかりますが」
「ま、確かに言いたいのもわかるけど、あんたら二人はこの大会の趣旨を理解してなかった。それが最大の敗因よ。早苗もいまいち理解してないみたいだけど」
「え、幻想郷最速のキャラを決める大会ですよね」
「違うわよ。あくまで特定距離をどれだけ短時間で移動できるか、よ。純粋な速度を競うだなんて、私は一言も言ってないわ。だから大会の名前も微妙だって言ったわけだし」
「となると、そもそもお二方が参加したこと自体が無謀だったのでは」
「言ったでしょ。他の選手を考えたらこの二人だけは優勝は無いって。少なくとも咲夜たちはこの大会の趣旨を正しく把握してたわ」
「なんとまぁ…。お二人には悪いけど貧乏くじを引かされたようなものですね」
「まぁ、思い込みって危険よね、と言う話だわ」
「ご愁傷様です。さて、それでは審判から優勝者の発表及び白澤ギネス認定です」
「え、いつの間にギネスに? まぁ今更いいけど。どうでも」
「偉業なんですから当然ですよ! それでは四季審判お願いします!」
「まずは参加された選手に。結果がどうであれ全力を尽くすことは善き事です」
「納得がいかぬものは更なる精進を、納得がいくものは次の機会もまた結果が出せるようたゆまぬ努力を続けなさい」
「優勝者の発表に先立ち、私四季映姫はヤマザナドゥの名に賭けて本発表に関し嘘偽りが無いことを宣誓いたします」
「それでは、本大会の優勝者を発表いたします」
「幻想郷最速伝説、優勝者は河城にとりです」
「「え」」
「「「「「「え」」」」」」
>四季映輝
映姫、でしょうか。
すげーなwww
だが、それがいい。
>誤字
辞書登録してあるから大丈夫だと思っていたら登録内容自体が間違っていました…。
大変申し訳ありません。
それにしても河童の技術は…!