「第二十四回、下に何も履いてないせんしゅけーん」
「いやいやいやいやいや何その如何わしい選手権っていうかあんた誰ここはどこ私はぬえ」
「自己紹介ありがとうございます。封獣ぬえさん。すごくやらしい射命丸文です」
「最悪すぎる……」
寺にいてもみんな忙しいばっかりで、暇潰しにぷらぷらしてたら拘束された。
説明してもさっぱりわからないんだけど、これが事実のすべてだった。
『奥さんプリチーな太ももが見えてますよおっと危ない』とか言いながらいきなり猿轡を嵌められて拉致監禁。
ああ一体幻想郷の治安はいずこへ。
そして私の貞操やいかに。
「それでまぁ、この企画もついに第二十四回を数えましたと」
「どういうことなの……」
「いい質問です! 実はですね、ミニスカートの女性陣があちこち飛び回っていて迂闊に空を向けない。
空を向いたらセクハラで訴えられてブタ箱にぶち込まれたという事件が最近多発しているのですよ」
「そ、そうなの?」
「ええ……。かくゆう私もミニスカートですから、そういった輩がいると安心して空も飛べません」
「それじゃあ私はこれぐらいで」
「ストーップ! いいですかぬえさん。『でも下にパンツを履いていたら安心して上を見上げることができる』。
つまりミニスカートを履く女性にはパンツを履く義務が幻想郷ではあるのですよ」
「当たり前でしょ!? 露出狂じゃないんだから下着ぐらい付けるでしょ!? というかセクハラなのは変わらないじゃん!」
「と、思うじゃないですか……。それがすべての悲しみの始まりだったんです……」
ハンケチを目に当ててわざとらしくうっうと泣きはじめる烏天狗。
ものすっごく鬱陶しい。天狗っていう種族は昔から嫌いだったけども、ここまで横暴で面倒な奴とは初めて会った。
「先日のことです。某地獄鴉の方がうっかり下着を履かずに……」
「ストップストップ! それ以上はもういい! 別に聞きたくないし」
「おかげで4A振るたびに目線がそっちいっちゃってコンボできないって!」
「そういう悩みはいいから!」
でも、絶対履いてないよねあれ。
「というわけで、不肖、射命丸文がミニスカートの女性のパンツの柄もとい、着用しているかを確認しているのです。
ついでにそれを新聞に載せるとバカ売れします。最高です。」
「資本主義の犬! 悪魔!」
「なんとでも言えばいいんですよ……。週間現○の妄想記事並にチープなネタだとしても、この企画も二十四回まで続いてしまいました。
肥大化した固定読者。マンネリしていることはわかっていても、代わる企画が生み出せない……。
最初のうちは良かったんです。でも、期待は次第に重圧へと変わっていって……。
わかりますか、私の苦しみが、悲しみが!」
「だからって拉致監禁していいことにはならないし」
「チッ」
「泣き落としなんて通用しないよーだ。ていうかさっさとこの縄解いてよ」
「それとこれとは話がサッパリ別です。
全国の読者の方が『あの子のスカートの中身って何色なんだろうなウフフ』って待ち望んでいるんですよ!?」
「ええい自分のみせときゃいいじゃないの自分のを!」
その瞬間――ゴトリと鈍い音とともに、鴉天狗の持っていたカメラが、音を立てて床に落下した。
「もうとっくにやりました」
「……その、ごめん」
すげー気まずくなった。
「私だって嫌だったんですよ……。でも『そういうあややの下着はどうなってんの?』だなんて言われて……。
最初は断ってたけど……。報道をする者が晒さないなんて卑怯だなんて投書が山のようにきて……わたし……」
今度ばっかしは泣き落としのための嘘泣きではない、みたい。
どうしよう、悪戯することはあっても泣かれたことってないから私そういうのに弱いっていうか。
でも冷静に考えなくたって、私ぜんっぜん悪くないよね? そうだよね?
こういうときに限って誰も答えてくれない。当たり前のことだった。ここは密室。
乱雑に散らばった新聞紙と写真たち、よくよく見ればパンチラ写真ばかりが散らばっている。
しかし、それだけだった。
この状況を打開できる道具も、案も、助けに来てくれるヒーローだって存在しないのだった。
「あのー……」
泣かれたままだと心持も悪いから、一応話しかけてみるけれど、ぐずぐずと鼻を啜っているばかりで返事もしてくれない。
「そんなに、私のパンツを撮らないとまずいの?」
なんかこー、ここまでのっぴきならない状況になると、自分のパンツぐらい見せたっていいんじゃないかという気になってきた。
あまりにも見ていて哀れになってきたのだった。
新聞を売ることにそこまで大きな意味があるとは思えないけれども、それはこいつにも都合があるのだろう。
他人のを晒すだけ晒して自分はノーリスクというのは卑怯だと思うけど、自分のも晒したならちょっとは同情できるっていうか。
「新聞を大量に刷るために、人には言えないところに借金をしてるんです……。せめてそれを完済し終えるまではこれを続けないと……。
私はただ、文々。新聞を人気新聞にしたかっただけなんです。本当はこんなことをしたくなかったんです」
「そっかぁ……」
白蓮も言っていた気がする。パンチラを撮られたらブラチラを差し出せって。
ちょっと違う気もするけど、大体そんな教えだったような気がする。
「わかった、撮っていいよ。それであんたがちょっとでも助かるなら」
「本当ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」
「ちょ、ちょっとだけだよ? あんましパシャパシャやられたら恥ずかしいし。
その、フツーの奴だから見せたら恥ずかしいかな、とか……」
「いいんですよ! 普通の奴だからこそぐっとくるってパトロンの方も言ってらっしゃいます。
良かった……。これで借金の完済にも目処がつきそうです。それじゃあ早速」
「えぇっ」
太ももに手を伸ばされた。
思わず挟んだ。
「スカートめくらないと撮影できないじゃないですか」
「いやその、心の準備がーみたいな? そういうのがあるかなーって」
「一理ありますが、この柔らかい感触からはいつ解放されるので?」
「っ……言わんでよろしい!」
同姓相手でも、スカートをピラっと捲り上げられたら恥ずかしいに決まってる。
たぶん、私の顔も真っ赤だろう。確かめたくもない。
「えいっ」
「……えー? なんでパンツを見せてるの?」
「あいやー、その、不公平かなと思いまして」
「どういう不公平なのよ」
「取材対象のスカートを捲り上げるのは私のジャーナリズムに反するとでも言いますか」
「どっちかというと、みんなで渡れば怖くないみたいな?」
「まぁ、どっちでもいいです。無理を通して道理を引っ込ませるのが目的ですから」
「確かに滅茶苦茶な光景だわね。女二人が密室に居て、しかも片方が自分でスカートを捲ってるとか。たぶん、白蓮が見たらひっくり返るわ」
「私もなんでパンツを見せているのかさっぱりわかりません。そこはかとなく極限状態です」
「よし。覚悟決めた! どんとスカート捲って写真に収めんしゃい! 女に二言はない!」
そっと、あやの指がスカートにかかる。さっきまでの威勢はどこへ消えたのか、壊れやすい宝物を触るかのような怯えた手つきでちょん、と摘む。
不安な気持ちが丸ごと伝わってくるかのような指先に可笑しくなって笑うと、あやは涙を一杯に溜めた眼でこっちを見つめてきた。
「なんだかいざとなると恥ずかしいですね」
「確かに。勢いでそのままされたほうがずっとマシだったかも」
「ええい、こんなぺらっぺらな布の癖に、今じゃ鉄板よりも硬い壁に見えますよ……!」
「あーやっぱり見せるのやめちゃおっかなー」
「一度良いって言ったのを引っ込めるのは卑怯ですよ!? 二言はないんじゃないですか!?」
「一言を曲げるだけだもの」
「そういうのは屁理屈って言うんです!」
結局、私のパンツが公開されたか公開されていないのかは、明日の文々。新聞で確かめてほしい。
その答えは明日実際に手に取ってみるまではわからない。
これを、シュレーディンガーの下着と言う、なんちって。
「いやいやいやいやいや何その如何わしい選手権っていうかあんた誰ここはどこ私はぬえ」
「自己紹介ありがとうございます。封獣ぬえさん。すごくやらしい射命丸文です」
「最悪すぎる……」
寺にいてもみんな忙しいばっかりで、暇潰しにぷらぷらしてたら拘束された。
説明してもさっぱりわからないんだけど、これが事実のすべてだった。
『奥さんプリチーな太ももが見えてますよおっと危ない』とか言いながらいきなり猿轡を嵌められて拉致監禁。
ああ一体幻想郷の治安はいずこへ。
そして私の貞操やいかに。
「それでまぁ、この企画もついに第二十四回を数えましたと」
「どういうことなの……」
「いい質問です! 実はですね、ミニスカートの女性陣があちこち飛び回っていて迂闊に空を向けない。
空を向いたらセクハラで訴えられてブタ箱にぶち込まれたという事件が最近多発しているのですよ」
「そ、そうなの?」
「ええ……。かくゆう私もミニスカートですから、そういった輩がいると安心して空も飛べません」
「それじゃあ私はこれぐらいで」
「ストーップ! いいですかぬえさん。『でも下にパンツを履いていたら安心して上を見上げることができる』。
つまりミニスカートを履く女性にはパンツを履く義務が幻想郷ではあるのですよ」
「当たり前でしょ!? 露出狂じゃないんだから下着ぐらい付けるでしょ!? というかセクハラなのは変わらないじゃん!」
「と、思うじゃないですか……。それがすべての悲しみの始まりだったんです……」
ハンケチを目に当ててわざとらしくうっうと泣きはじめる烏天狗。
ものすっごく鬱陶しい。天狗っていう種族は昔から嫌いだったけども、ここまで横暴で面倒な奴とは初めて会った。
「先日のことです。某地獄鴉の方がうっかり下着を履かずに……」
「ストップストップ! それ以上はもういい! 別に聞きたくないし」
「おかげで4A振るたびに目線がそっちいっちゃってコンボできないって!」
「そういう悩みはいいから!」
でも、絶対履いてないよねあれ。
「というわけで、不肖、射命丸文がミニスカートの女性のパンツの柄もとい、着用しているかを確認しているのです。
ついでにそれを新聞に載せるとバカ売れします。最高です。」
「資本主義の犬! 悪魔!」
「なんとでも言えばいいんですよ……。週間現○の妄想記事並にチープなネタだとしても、この企画も二十四回まで続いてしまいました。
肥大化した固定読者。マンネリしていることはわかっていても、代わる企画が生み出せない……。
最初のうちは良かったんです。でも、期待は次第に重圧へと変わっていって……。
わかりますか、私の苦しみが、悲しみが!」
「だからって拉致監禁していいことにはならないし」
「チッ」
「泣き落としなんて通用しないよーだ。ていうかさっさとこの縄解いてよ」
「それとこれとは話がサッパリ別です。
全国の読者の方が『あの子のスカートの中身って何色なんだろうなウフフ』って待ち望んでいるんですよ!?」
「ええい自分のみせときゃいいじゃないの自分のを!」
その瞬間――ゴトリと鈍い音とともに、鴉天狗の持っていたカメラが、音を立てて床に落下した。
「もうとっくにやりました」
「……その、ごめん」
すげー気まずくなった。
「私だって嫌だったんですよ……。でも『そういうあややの下着はどうなってんの?』だなんて言われて……。
最初は断ってたけど……。報道をする者が晒さないなんて卑怯だなんて投書が山のようにきて……わたし……」
今度ばっかしは泣き落としのための嘘泣きではない、みたい。
どうしよう、悪戯することはあっても泣かれたことってないから私そういうのに弱いっていうか。
でも冷静に考えなくたって、私ぜんっぜん悪くないよね? そうだよね?
こういうときに限って誰も答えてくれない。当たり前のことだった。ここは密室。
乱雑に散らばった新聞紙と写真たち、よくよく見ればパンチラ写真ばかりが散らばっている。
しかし、それだけだった。
この状況を打開できる道具も、案も、助けに来てくれるヒーローだって存在しないのだった。
「あのー……」
泣かれたままだと心持も悪いから、一応話しかけてみるけれど、ぐずぐずと鼻を啜っているばかりで返事もしてくれない。
「そんなに、私のパンツを撮らないとまずいの?」
なんかこー、ここまでのっぴきならない状況になると、自分のパンツぐらい見せたっていいんじゃないかという気になってきた。
あまりにも見ていて哀れになってきたのだった。
新聞を売ることにそこまで大きな意味があるとは思えないけれども、それはこいつにも都合があるのだろう。
他人のを晒すだけ晒して自分はノーリスクというのは卑怯だと思うけど、自分のも晒したならちょっとは同情できるっていうか。
「新聞を大量に刷るために、人には言えないところに借金をしてるんです……。せめてそれを完済し終えるまではこれを続けないと……。
私はただ、文々。新聞を人気新聞にしたかっただけなんです。本当はこんなことをしたくなかったんです」
「そっかぁ……」
白蓮も言っていた気がする。パンチラを撮られたらブラチラを差し出せって。
ちょっと違う気もするけど、大体そんな教えだったような気がする。
「わかった、撮っていいよ。それであんたがちょっとでも助かるなら」
「本当ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」
「ちょ、ちょっとだけだよ? あんましパシャパシャやられたら恥ずかしいし。
その、フツーの奴だから見せたら恥ずかしいかな、とか……」
「いいんですよ! 普通の奴だからこそぐっとくるってパトロンの方も言ってらっしゃいます。
良かった……。これで借金の完済にも目処がつきそうです。それじゃあ早速」
「えぇっ」
太ももに手を伸ばされた。
思わず挟んだ。
「スカートめくらないと撮影できないじゃないですか」
「いやその、心の準備がーみたいな? そういうのがあるかなーって」
「一理ありますが、この柔らかい感触からはいつ解放されるので?」
「っ……言わんでよろしい!」
同姓相手でも、スカートをピラっと捲り上げられたら恥ずかしいに決まってる。
たぶん、私の顔も真っ赤だろう。確かめたくもない。
「えいっ」
「……えー? なんでパンツを見せてるの?」
「あいやー、その、不公平かなと思いまして」
「どういう不公平なのよ」
「取材対象のスカートを捲り上げるのは私のジャーナリズムに反するとでも言いますか」
「どっちかというと、みんなで渡れば怖くないみたいな?」
「まぁ、どっちでもいいです。無理を通して道理を引っ込ませるのが目的ですから」
「確かに滅茶苦茶な光景だわね。女二人が密室に居て、しかも片方が自分でスカートを捲ってるとか。たぶん、白蓮が見たらひっくり返るわ」
「私もなんでパンツを見せているのかさっぱりわかりません。そこはかとなく極限状態です」
「よし。覚悟決めた! どんとスカート捲って写真に収めんしゃい! 女に二言はない!」
そっと、あやの指がスカートにかかる。さっきまでの威勢はどこへ消えたのか、壊れやすい宝物を触るかのような怯えた手つきでちょん、と摘む。
不安な気持ちが丸ごと伝わってくるかのような指先に可笑しくなって笑うと、あやは涙を一杯に溜めた眼でこっちを見つめてきた。
「なんだかいざとなると恥ずかしいですね」
「確かに。勢いでそのままされたほうがずっとマシだったかも」
「ええい、こんなぺらっぺらな布の癖に、今じゃ鉄板よりも硬い壁に見えますよ……!」
「あーやっぱり見せるのやめちゃおっかなー」
「一度良いって言ったのを引っ込めるのは卑怯ですよ!? 二言はないんじゃないですか!?」
「一言を曲げるだけだもの」
「そういうのは屁理屈って言うんです!」
結局、私のパンツが公開されたか公開されていないのかは、明日の文々。新聞で確かめてほしい。
その答えは明日実際に手に取ってみるまではわからない。
これを、シュレーディンガーの下着と言う、なんちって。
な展開がありありと思い浮かびます。合掌合掌。
……まぁそれはともかくとして、あっきゅんの鬼蓄さん♪
じゃなくて、阿求まじ鬼畜。
あと文ちゃんのが乗った回のも図書館探しても無いんだが?