青い空の下、私は門の前に立っている。
この仕事は私の誇りだ。
「よーし!今日もがんばるぞー!」
おー!、と自分に気合を入れるため、頬にパチンと平手打ちをする。
少し強く叩きすぎたせいでちょっぴり痛かった。
今日の侵入者は誰かな~、と思いながらどっしりと門の前に立つ。
自分で言うのもなんだが、今の私はキマッてると思う。
真っ直ぐ前を見ていると、瞼が重たくなってきた。
おっとっと、まだ寝るな、紅美鈴!
仕事は始まったばかりだ!
寝るのは仕事が終わってからだ!
あ~。でもこうウトウトしてるのが気持ちいい、、、、っといけないいけない。
・・・・・・・・。
「あいたッ!」
頭の痛みに気が付いて目を開けた。
空を見ると太陽はさっきより高い位置にあった。
ハッとして紅魔館を見ると入り口あたりに咲夜さんの後姿が見えた。
あれ~?この頭から流れている赤い液体はなんだろ~?ナイフも刺さってる~。
そして気がついた。
「あちゃー。寝ちゃったよ」
お昼ごはんは咲夜さん特製、納豆パンで済ませる事にした。
割と美味しかった。
太陽が真上まで昇った頃、白黒の魔法使いがやってきた。
さて、久しぶりの戦闘だ。腹ごしらえも済んでいる。
「こんにちは、魔理沙さん」
「よう、美鈴」
「いざ尋常にsy 「ますた~すぱ~く!」 どぁぁぁあ!!」
「良し!門番突破っと」
先制攻撃された。酷いでしょう、これは。
直撃ですよ。マスパ。
私が妖怪じゃなかったら死んでましたよ。
会話中に攻撃しちゃいけないって教えてられて無いんですかね。
結局魔理沙さんはいつものように図書館の方に飛んで行った。
・・・まぁ仕方ない。
パチュリー様も本を盗られて怒ってるようで、実は魔理沙さんが来るのを待ってたりするし。
魔理沙さんが帰る姿が見えてから二分ほどたった頃、チルノと大妖精ちゃんがやってきた。
たまーにチルノが対決を申し込んでくるが、大妖精ちゃんと来るのは珍しい。
せっかくなので声を掛けてみる。
「私の名を言ってみろ!」
「めいりん!」
「美鈴さん」
意外ッ!大妖精ちゃんはともかく、このお世辞にも頭がいいとはいえないチルノが私の名前を覚えていた!
なんだか心に温かいものを感じられた。
「よく覚えてたわね~。やるじゃない」
「あたいは天才だ!あたいに不可能は無い!」
「というわけで、勝負よ!めいりん!」
「はいはい、しょーぶしょーぶ」
「チルノちゃ~ん!がんばって~!」
「大ちゃんが少し悩んで作った必殺技!うけてみろ!」
自分の必殺技くらい自分で考えろ!
少し悩んでって・・・。
大妖精ちゃんは「それは言わなくていいよ!」みたいな顔してるし。
コイツにいちいちツッコミ入れてたら日が暮れてしまうのでツッコミは入れない。
「喰らえ!え~と、なんだっけ。え~と、ちょっと待って」
なんということでしょう。
チルノは自分の必殺技の名前を忘れていた。
頭を抱えて必死に思い出そうとしている。
―――― 約三分後
頭を抱えていたチルノが顔を上げた。
「思い出した!喰らえ!殺人アイス頭突き!」
突然冷気を頭に集め、回転しながら頭から突っ込んできた。
チルノの体の回転!
けっこう呑気してた美鈴もチルノが一瞬巨大に見えるほどの回転圧力にはビビった!
・・・なんてネタを考えてみたが、たいしたこと無いのでこのネタは心の中にしまっておこう。
そんな事を考えているうちにチルノがもう目の前に迫っていた。
とりあえず腕でガードしようと思い、構えると、途中でチルノが止まり、「気持ち悪い~」などと言い出した。
そりゃあ一秒に十二回転もしてれば気持ち悪くもなるだろう。
とりあえず、近くの木陰で休ませることにした。
「じゃあ、私は仕事があるから、大妖精ちゃん、チルノの事よろしくね」
「分かりました!」
本気で心配している大妖精ちゃんにチルノの事を頼んで仕事に戻ることにした。
「あそこで回転してなければ勝ててたって」
「だってただ突っ込んだだけじゃカッコ悪いじゃん」
「それで負けちゃったら意味ないじゃない」
なんて声が聞こえてきたが、私はまだ戦い始めて無いし、勝ってもいない。
三時頃だろうか、日が西に傾いてきた頃。
気づくと、りんごが手の上に置かれていた。
紅魔館の入り口に咲夜さんの後姿が見えた
一瞬でこんな事を出来るのは身近な人ではあの人しかいない。感謝。
りんごをシャリシャリとかじりながら、空を見上げてみる。
他の人が見たらシュールな光景だろう。なんて事を考えてみるが、面白くない。
私がこの仕事に就いてから、一度もこの仕事を嫌だと思った事はない。
いろいろな人に会えるし、戦うこともできる。(大抵の場合、相手が強すぎるが)
私は紅魔館の門番だ。
門番といえばその場所の顔。
顔といえば大事な部分だ。
私はその役割をもらったことを嬉しく思う。
「めいりん!」
突然隣から声が聞こえた。
「今度は負けないからね!覚悟してなさい!」
声の主はビシィっとこちらを指差すチルノだった。
「はいはい。覚悟してますよ~」
「え~とじゃあ、さようなら美鈴さん」
「さようなら」
やっと回復したチルノは元気に大妖精ちゃんと帰っていった。
その背中が小さくなるまで見続ける。
少し橙に染まった空の下、私は門の前に立っている。
この仕事は私の誇りだ。
チルノ、かわいいなぁ。
意外に和風な咲夜さんでww