Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

真夏の夜の夢

2010/09/09 11:57:56
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 とう、とう、と妖精は踊る。
 青い若草を隠すように暗く茂る木々の下。覆う枝葉を縫って漏れる月明かりを追って、ただ無邪気に跳ねている。まるで人の子が意味も無く、楽しげに建物の陰を通るように。
 土を踏む足にも、ひらひらと翻るスカートにも華美で繊細なリズムは無い。ただ思うがまま感じるがまま、妖精としてあるがままに。

 「ねえ知ってる?」

 くすくす、と妖精は笑う。
 可笑しいことは何も無い。今は真夏の夜の夢のようなもの。静まる木々の間で光るプリズムのきらめきだけが、漂う夜の熱を凍えさせる。友人の持つ特性がいつも通りで心地よいから、いつも通り妖精らしく無邪気に笑うだけ。
 踊る妖精はその声に何も返さない。体に自分を動かさせ、腕を振るっては茂みを撫で、足を蹴り上げ土を飛ばしている。

 「夜の空にはね、街があるの。星の光が階段になって、落ちた星がキャンディになってるんだよ。食べるとパチッてなって、面白いんだって」

 笑う妖精は言葉を紡ぎ続ける。しかし目を向ける先に居る踊り子に話しかけることなく、意味も無いような言葉を楽しげに続けている。
 じゃりじゃりと、踊り子の踏みつける音が変わっていく。夜の熱気は魔法だな、と黒い魔法使いは言っていた気がする。足元の霜が溶けていく様を見ながら踊り子は思い出していた。朝靄に溶けていく夜の熱は、人間にとって幻のようなものなんだろうか。夜が明けて太陽が顔を出すまでのわずかな間の、自然の顔の一部でしかないそれのどこが不思議なんだろうか。

 「歌が聞こえるの。星の街に来て欲しいって。ほんの少しの間だけの街だから」

 ビュウ、と強く吹く風に熱は無い。辺りが涼しくなってしまったからなのか、それとも地面よりずっと涼しい空のほうから吹いた風なのか、いつも冷たい自分にはよくわからないから踊り子にはあまり興味は無かった。
 風はそのまま吹きさらし、話し続けていた妖精の口を閉じ込め、留まらない話をさらって去っていく。後に残るのはわずかに見える星空を見つめる妖精と、水溜りを何度も踏みつける妖精しかいない。

 
 「行きたいの?」

 数分ほどそうしていた二人だったが、水溜りに土を混ぜて泥遊びを始めていた妖精がふいに問いかける。ぼうっと揺れる木々の隙間から、せわしない小さな夜空を見つめていた妖精は答えない。その目に映る光は、階段を見つけた光なのだろうか。
 草を含んだ泥団子。おいしそうには見えないけれど、星の光を釣る餌にでもなるかもしれない。問いかけへの答えも待たず、妖精は続けていく。

 「街はよくわかんないよ、あたい達にはそんなのいらないもの。でもおいしくて楽しいのは好きかな」

 泥団子をせっせと増やしながら、妖精は素直に言葉を出し続けていく。いまだ星空を見つめる妖精は、しかし今度はそうだね、と小さく呟いた。

 「行こうか」
 「うん」

 力強く立ち上がった妖精は、力いっぱい凍りついた泥団子を木々の葉から覗く夜空に投げつける。星の光を落として、階段をかけるために。泥団子が餌になるかなんて、考えてもいなかった。
 見つめる妖精は精一杯の応援をしながら、街がなんなのかをずっと考え続けている。調子よく回る口から出た歌云々の話は覚えてもいなかった。
「団子を百個くらい作ったわ。あたいったら最強ね!」
「チルノちゃんすごい!」
魔理沙「ほうほう。で、肝心の星の街はどうなったんだ?」
「「??」」
魔理沙「だめだこいつら・・・」

オチなし山なし意味もなし。
アタゴオルと東方はマッチする気がするんだ。
両方とも幻想郷な感じ。ですよね
えろーら
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
たしかに、大した意味は無いように思った。
でも雰囲気は良かった。
2.名前が無い程度の能力削除
つりばりと空気の流れが見える眼がないと難しいんじゃないかな
3.奇声を発する程度の能力削除
感じは凄く良かったです。
ただ元ネタは分からんかった…
4.名前が無い程度の能力削除
タイトルで免許取られる話かと思った
5.投げ槍削除
アタゴオル物語ですかね?元ネタ、あれ凄く好きなんだよな
確かに東方とマッチするかもしれませんね
6.けやっきー削除
意味のない日常を描いた作品、とても好きです。
そういえば最近、泥団子そのものを見かけないなぁ…