「美鈴を門番から外す?」
「はい」
紅魔館の一室。紅い絨毯が敷き詰められ、アンティークの調度品が部屋を彩っている。中でも純白のテーブルクロスで化粧をした丸いテーブルが目を惹きつける。
その一室には紅魔館の主であるレミリア・スカーレットとその妹のフランドールがテーブルに就いており、その傍には瀟洒な従者、十六夜咲夜が控えていた。
時刻は三時を十分程過ぎ、日課のティータイムを嗜んでいたのだ。いや、三時のおやつタイムと言った方が正確かもしれない。
その証拠にテーブルの真ん中には大きめのバームクーヘンが主役の如く置かれている。このバームクーヘン、吸血鬼姉妹の二人には少々大きいサイズ。夕御飯は大丈夫なのだろうか?
そして、主役の傍らには湯気が立ち昇るティーカップが二つ、そっと寄り添っている。そのティーカップの中身は紅色で満たされており、紅茶であろうことが容易に伺えるが、紅茶の銘柄は飲んでみてのお楽しみだ。
そんないつもの微笑ましい三時のおやつでの、咲夜の先程の申し出であった。
「何故かしら? 確かに美鈴は、白黒に連敗記録を毎日更新してるけど・・・」
あまりにも急な咲夜の進言。事実、美鈴の門番としての働きはお世辞にも良いモノとは言えないが、そんな事は今に始まったことではない。
そういえば・・・と続けるレミリア。
「妖精メイドの間では連敗記録が何時ストップするか、という賭けが行われているそうな・・・」
大半の妖精メイドは来年も記録更新中に賭けている。
「ええ、存じております。賭けに参加していた妖精メイドは一昨日、全員、シメました」
表情一つ変えずのポーカーフェイスで、何とも軽く言う。だが、その『シメる』とは、具体的にどのような行為かは語らないのが瀟洒たる所以か。
また、一昨日から館内が静かなのは、咲夜が妖精メイドを『シメた』のが原因のようだった。
「そして、胴元のメイドは・・・・」
咲夜は一旦言葉を切り、レミリアから視線を外し、オヤツに夢中なフランを一瞥する。
「フランドール様の遊び相手、一週間を言い渡しました」
そうなの? レミリアもフランに視線を投げ、首を傾げて問う。
「うん!」
おやつの食べカスを口の回りに付け、朗らかに笑うフラン。
「ちょっと手が当たっただけで、面白いように妖精がぶっ飛んで楽しいよ!」
「それは何の遊びなの?」
「おままごとだよ!」
それは本当におままごとなのだろうか?
「おほん」
咲夜の可愛らしくワザとらしい咳払い。いや、『らしい』ではなくワザと話を本題に戻すために咳払いをしたのだろう。
咲夜に視線が戻される。
「そもそも、門番をネタとした賭け事など! 偉大なカリスマを持つ、お嬢様の住まう、紅 魔館には、在ってはならないことです!」
ポーカーフェイスはどこ吹く風。右手を拳に変えて、言葉を区切り、語気を荒げた。
「門番が機能していないなら、美鈴を門番から外すべきです! 門番という役職など、もはや必要ないと強く進言致します!」
「う、う~」
タジタジお嬢様。
「でもでも、美鈴はどうするの? 白玉楼の剣士みたいに、紅魔館専属庭師にでもするの?」
ニヤリと咲夜の口角が上がる。その言葉を待っていたと言わんばかりに口の形を三日月に変えて、静かに口を開く。
「いいえ。いっそ、解雇しましょう。クビにすべきです」
「ええ!?」
笑顔の咲夜。
驚愕のレミリア。
「さくや~、紅茶おかわり~」
我関せずのフラン。
「かしこまりました」
そんなフランのリクエストに時を止めて、即座に応える。
次の瞬間には、既にフランのティーカップには七分目まで紅茶が注がれていた。
「そ、それはやり過ぎじゃない? 美鈴が可哀相でしょ? 今の不景気じゃ、幻想郷でも再就職は・・・」
現世から隔てられた、幻想郷でさえ不況は逃れられずにいた。
心配するレミリア。
「それならば、問題ありません」
「あら? もう、美鈴の再就職先は決まっているの?」
「はい。美鈴は私が囲いますから」
「・・・かこ・・う?」
固まるレミリア。
「お姉様~? 囲うってどういう意味?」
辞書では『こっそり養う』と書いてある。
「美鈴は、いつ白黒がマスパ撃ってくるか分からない危険な門前より、安全で、雨風は防げて、ふっかふかベッドがあって、夏は暑くなく、冬は寒くない私の部屋の警備をしてくれればいいんです!」
「ちょ、ちょっと・・・咲夜?」
「そして、仕事が終わって、自室に戻った私に彼女はこう言うんです! 『ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、私とお休みしますか?』と!」
妄想のポロロッカである。
「勿論、私の答えは決まっています!」
咲夜は大きく右拳を天に振り上げ、大きく息を吸いこみ・・・。
「お休みします!!」
言い放った。一切の迷いなく、一切の淀みなく、彼女は言い放った。
「え~さくや、もう寝るの~?」
それでも、マイペースなフラン。
「私は常日頃から思ってました。何故、美鈴は毎日不憫な目に遭わなければならないのか! 魔理沙に撃墜され、それを賭けのネタにされる!」
咲夜さんの勢いは衰えない。
「御存知ですか? 私がどんな思いで、美鈴の頭にナイフを投げているのかを!」
咲夜さんの勢いは衰えない。
「御存知ですか? 戦いの疲れからくる眠気に負けて、日向で気持ち良さそうに眠る愛する人を毎回起こす私の気持ちを!」
因みに、時間を止めて小一時間、美鈴の寝顔を堪能してから起こしているのは咲夜だけの秘密である。
因みに因みに、咲夜の秘蔵『今日の美鈴』というタイトルのアルバム(現在八六冊目)の四割は寝顔である。
咲夜が音もなく、スーっと窓辺に近寄りレースカーテンの隙間を覗く。その隙間には門前に腰を下ろし、帽子を深く被っている美鈴の姿が見えた。
「あの猫の様に可愛らしい彼女の寝顔を、自らの手で壊さなければならない毎日!」
一般的に、上司という立場である者は、部下の不始末には罰を与えなければならない。それは咲夜にも課せられている義務である。そして、完璧で瀟洒なメイドだからこそ、完璧に遂行しなければならない義務だったのだろう。
美鈴を見つめていた咲夜の蕩けきった目は一変し、鋭い刃を瞳に宿らせて、レミリアを視線で射抜く。
「私は、もう限界です!」
物凄い気迫である。
それは五百年物のヴィンテージ吸血幼女を震えさせる程に。
「・・・さぁ、美鈴をクビにしましょう」
レミリアに一歩一歩近づいていく。
「そうすれば、彼女を私だけの美鈴にすることが出来るんです」
一歩、一歩、また一歩。
咲夜の足が止まった。
そして、咲夜の両手がレミリアの双肩を掴む。
「っ!」
「ね?・・・お嬢様?」
咲夜の赤い眼がレミリアの眼を覗き込む。
「あう・・・あ、あう」
気迫に押されて、声もろくに出せない。
咲夜の手が万力の様に感じられる。両肩の痛みが増していく。
「さぁお嬢様、美鈴をクビに致しましょう♪」
「キュッとして、ドッカーン」
ピチューン
咲夜の人生は一時中断された。コンテニューすれば再開可能です。
「う~、こわk、いや・・・・・・・危なかったわね」
いま、怖かったって言いそうになってなかった? 何が危なかったの? 我々の疑問は尽きない。
だけど、そんな疑問は些細な問題。だって彼女はおぜう様なのだから。
「助けてくれて、ありがとっフラン。流石は私の妹だわ」
ちょっと涙目、おぜう様。
「別に、お姉様を助けたかった訳じゃないよ?」
「へ?」
「だって・・・美鈴は私のモノだもん♪」
「はい」
紅魔館の一室。紅い絨毯が敷き詰められ、アンティークの調度品が部屋を彩っている。中でも純白のテーブルクロスで化粧をした丸いテーブルが目を惹きつける。
その一室には紅魔館の主であるレミリア・スカーレットとその妹のフランドールがテーブルに就いており、その傍には瀟洒な従者、十六夜咲夜が控えていた。
時刻は三時を十分程過ぎ、日課のティータイムを嗜んでいたのだ。いや、三時のおやつタイムと言った方が正確かもしれない。
その証拠にテーブルの真ん中には大きめのバームクーヘンが主役の如く置かれている。このバームクーヘン、吸血鬼姉妹の二人には少々大きいサイズ。夕御飯は大丈夫なのだろうか?
そして、主役の傍らには湯気が立ち昇るティーカップが二つ、そっと寄り添っている。そのティーカップの中身は紅色で満たされており、紅茶であろうことが容易に伺えるが、紅茶の銘柄は飲んでみてのお楽しみだ。
そんないつもの微笑ましい三時のおやつでの、咲夜の先程の申し出であった。
「何故かしら? 確かに美鈴は、白黒に連敗記録を毎日更新してるけど・・・」
あまりにも急な咲夜の進言。事実、美鈴の門番としての働きはお世辞にも良いモノとは言えないが、そんな事は今に始まったことではない。
そういえば・・・と続けるレミリア。
「妖精メイドの間では連敗記録が何時ストップするか、という賭けが行われているそうな・・・」
大半の妖精メイドは来年も記録更新中に賭けている。
「ええ、存じております。賭けに参加していた妖精メイドは一昨日、全員、シメました」
表情一つ変えずのポーカーフェイスで、何とも軽く言う。だが、その『シメる』とは、具体的にどのような行為かは語らないのが瀟洒たる所以か。
また、一昨日から館内が静かなのは、咲夜が妖精メイドを『シメた』のが原因のようだった。
「そして、胴元のメイドは・・・・」
咲夜は一旦言葉を切り、レミリアから視線を外し、オヤツに夢中なフランを一瞥する。
「フランドール様の遊び相手、一週間を言い渡しました」
そうなの? レミリアもフランに視線を投げ、首を傾げて問う。
「うん!」
おやつの食べカスを口の回りに付け、朗らかに笑うフラン。
「ちょっと手が当たっただけで、面白いように妖精がぶっ飛んで楽しいよ!」
「それは何の遊びなの?」
「おままごとだよ!」
それは本当におままごとなのだろうか?
「おほん」
咲夜の可愛らしくワザとらしい咳払い。いや、『らしい』ではなくワザと話を本題に戻すために咳払いをしたのだろう。
咲夜に視線が戻される。
「そもそも、門番をネタとした賭け事など! 偉大なカリスマを持つ、お嬢様の住まう、紅 魔館には、在ってはならないことです!」
ポーカーフェイスはどこ吹く風。右手を拳に変えて、言葉を区切り、語気を荒げた。
「門番が機能していないなら、美鈴を門番から外すべきです! 門番という役職など、もはや必要ないと強く進言致します!」
「う、う~」
タジタジお嬢様。
「でもでも、美鈴はどうするの? 白玉楼の剣士みたいに、紅魔館専属庭師にでもするの?」
ニヤリと咲夜の口角が上がる。その言葉を待っていたと言わんばかりに口の形を三日月に変えて、静かに口を開く。
「いいえ。いっそ、解雇しましょう。クビにすべきです」
「ええ!?」
笑顔の咲夜。
驚愕のレミリア。
「さくや~、紅茶おかわり~」
我関せずのフラン。
「かしこまりました」
そんなフランのリクエストに時を止めて、即座に応える。
次の瞬間には、既にフランのティーカップには七分目まで紅茶が注がれていた。
「そ、それはやり過ぎじゃない? 美鈴が可哀相でしょ? 今の不景気じゃ、幻想郷でも再就職は・・・」
現世から隔てられた、幻想郷でさえ不況は逃れられずにいた。
心配するレミリア。
「それならば、問題ありません」
「あら? もう、美鈴の再就職先は決まっているの?」
「はい。美鈴は私が囲いますから」
「・・・かこ・・う?」
固まるレミリア。
「お姉様~? 囲うってどういう意味?」
辞書では『こっそり養う』と書いてある。
「美鈴は、いつ白黒がマスパ撃ってくるか分からない危険な門前より、安全で、雨風は防げて、ふっかふかベッドがあって、夏は暑くなく、冬は寒くない私の部屋の警備をしてくれればいいんです!」
「ちょ、ちょっと・・・咲夜?」
「そして、仕事が終わって、自室に戻った私に彼女はこう言うんです! 『ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、私とお休みしますか?』と!」
妄想のポロロッカである。
「勿論、私の答えは決まっています!」
咲夜は大きく右拳を天に振り上げ、大きく息を吸いこみ・・・。
「お休みします!!」
言い放った。一切の迷いなく、一切の淀みなく、彼女は言い放った。
「え~さくや、もう寝るの~?」
それでも、マイペースなフラン。
「私は常日頃から思ってました。何故、美鈴は毎日不憫な目に遭わなければならないのか! 魔理沙に撃墜され、それを賭けのネタにされる!」
咲夜さんの勢いは衰えない。
「御存知ですか? 私がどんな思いで、美鈴の頭にナイフを投げているのかを!」
咲夜さんの勢いは衰えない。
「御存知ですか? 戦いの疲れからくる眠気に負けて、日向で気持ち良さそうに眠る愛する人を毎回起こす私の気持ちを!」
因みに、時間を止めて小一時間、美鈴の寝顔を堪能してから起こしているのは咲夜だけの秘密である。
因みに因みに、咲夜の秘蔵『今日の美鈴』というタイトルのアルバム(現在八六冊目)の四割は寝顔である。
咲夜が音もなく、スーっと窓辺に近寄りレースカーテンの隙間を覗く。その隙間には門前に腰を下ろし、帽子を深く被っている美鈴の姿が見えた。
「あの猫の様に可愛らしい彼女の寝顔を、自らの手で壊さなければならない毎日!」
一般的に、上司という立場である者は、部下の不始末には罰を与えなければならない。それは咲夜にも課せられている義務である。そして、完璧で瀟洒なメイドだからこそ、完璧に遂行しなければならない義務だったのだろう。
美鈴を見つめていた咲夜の蕩けきった目は一変し、鋭い刃を瞳に宿らせて、レミリアを視線で射抜く。
「私は、もう限界です!」
物凄い気迫である。
それは五百年物のヴィンテージ吸血幼女を震えさせる程に。
「・・・さぁ、美鈴をクビにしましょう」
レミリアに一歩一歩近づいていく。
「そうすれば、彼女を私だけの美鈴にすることが出来るんです」
一歩、一歩、また一歩。
咲夜の足が止まった。
そして、咲夜の両手がレミリアの双肩を掴む。
「っ!」
「ね?・・・お嬢様?」
咲夜の赤い眼がレミリアの眼を覗き込む。
「あう・・・あ、あう」
気迫に押されて、声もろくに出せない。
咲夜の手が万力の様に感じられる。両肩の痛みが増していく。
「さぁお嬢様、美鈴をクビに致しましょう♪」
「キュッとして、ドッカーン」
ピチューン
咲夜の人生は一時中断された。コンテニューすれば再開可能です。
「う~、こわk、いや・・・・・・・危なかったわね」
いま、怖かったって言いそうになってなかった? 何が危なかったの? 我々の疑問は尽きない。
だけど、そんな疑問は些細な問題。だって彼女はおぜう様なのだから。
「助けてくれて、ありがとっフラン。流石は私の妹だわ」
ちょっと涙目、おぜう様。
「別に、お姉様を助けたかった訳じゃないよ?」
「へ?」
「だって・・・美鈴は私のモノだもん♪」
美鈴、もてもてだね。
美鈴は俺の嫁の嫁。でも、おままごとは遠慮しようかな(汗
だが美鈴は私が囲う
ならばおぜうは私が囲もう。
単純計算で現在の美鈴写真は4300枚です。
4割が寝顔ですね。
はい!さて美鈴の寝顔の写真は何枚あるでしょうwww
つまり、私が10,20枚くらい貰っても大丈夫だt(ナイフ
だから私の所に(ry
ぜひ小悪魔を解雇して下さい。
そして小悪魔にはウチの本棚の司書を(ロイヤルフレア
何故か、何故かここで一番笑っちゃいましたw
そうですよね、おぜう様ですもんね。
堂々と囲うと宣言した咲夜さんぱねぇですw
面白かったです