Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

私が咲夜を殺した

2010/09/08 23:15:25
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 私が咲夜を殺した。
 そう、他でもない、私が殺したのだ。
 あの、十六夜咲夜を。



 喧嘩の理由は、些細な物だった。
 今となっては、思い出す事も出来ない。
「咲夜なんて、死んでしまえばいい!」
 私は、そう言った。
 間違い無く、そう言ってしまった。
 だから、咲夜は死んだ。死んでしまった。
 咲夜の運命を、死の方向へと、操ってしまったに違いない。
 私が、レミリア=スカーレットが、咲夜を殺したのだ。



 それは、無意識の内に起こった。
 今となっては、何も覚えていない。
「咲夜、お出掛けするの? 私も一緒に行きたい」
 私は、そうおねだりした。
 昼間だから、駄目ですと返されて、ちょっと腹が立った。
 そうしたら、咲夜は死んだ。死んでしまった。
 自分でも、気付かない間に、咲夜を壊してしまったに違いない。
 私が、フランドール=スカーレットが、咲夜を殺したのだ。



 何を何処で誤ったのか。
 今となっては、全く分からない。
「いつもの、疲労回復の術式を、やってもらえませんか?」
 咲夜にそう頼まれたから。
 いつもの術式を、いつも通りに施した筈だった。
 ところが、咲夜は死んだ。死んでしまった。
 どこかで、体力を奪う方へと、術式を間違えてしまったに違いない。
 私が、パチュリー=ノーレッジが、咲夜を殺したのだ。



 昼寝をしていて、いつものように怒られた。
 今となっては、魔が差したとしか思えない。
「咲夜さん、胸が私より小さいからって、苛めないで下さいよ」
 私は、そう言った。
 間違い無く、そう言ってしまった。
 だから、咲夜は死んだ。死んでしまった。
 胸の大きさを言われて、精神的に、ショックを受けたに違いない。
 私が、紅美鈴が、咲夜を殺したのだ。



 四人で、咲夜の死体を、ベッドに寝かせてあげた。
 四人で、ただ咲夜の死体を、見つめる事しか出来なかった。
 そこに、博麗の巫女が、扉を蹴破るようにして入って来た。
「異変ね!」
 四人は、告白した。
 自分が、咲夜を殺したことを。
 博麗の巫女が、鼻で笑った。
「巫女の勘よ。間違い無く、犯人は外の人間ね」



 誰かが咲夜を殺したのだと、博麗霊夢は力説した。
 仇を討たなくていいのかと、四人は詰問された。
 四人は悩んだ。
 自分が殺した事については、確信に近い物があったから。
 四人は迷った。
 誰かに罪を着せようとしている気がしたから。
 それでも、四人は立ち上がり、紅魔館を後にした。
 博麗の巫女の、勘の方を信じる事にしたのだ。



 猫が、泣いている。
 狐が、怒り狂っている。
「ほら、こういうときの黒幕って、紫のことが多いじゃない?」
 襲撃者の代表である博麗の巫女には、反省の色は見られない。
「違ったみたいだから、次に行きましょ、次に」
 橙が泣き続ける。
 藍が抗議し続ける。
 当の紫は、ぐっすりと寝ていた。



 庭師が、半分くらい地面に埋まっている。
 半霊も、半分くらい地面に埋まっている。
「ここの連中も、犯人じゃないみたいね」
 幽々子は少し怒っている。
「違ったみたいだから、次に行きましょ、次に」
 幽々子が、庭師と半霊を、地面から引き抜く。
 哀れな庭師は、泥に汚れたままの状態で。
 弱過ぎる、と主人から怒られた。



 てゐは、早々と逃げた。
 永琳は、人里の患者を診ていた。
 輝夜は、布団から出て来なかった。
「たぶん犯人じゃないけど、行きがかり上、ね」
 鈴仙一人が、ぼこぼこにされた。
「違ったみたいだから、次に行きましょ、次に」
 鈴仙は、いつものように涙を拭った。
 輝夜は、一回だけ寝返りを打った。



 次なる標的は、洩矢神社。
 妖怪の山の中腹で、何故か四季映姫と小野塚小町が待ち伏せていた。
「随分と、暴れているそうですね」
 裁判長が、五人の前に立ちはだかる。
 映姫は地面を強く蹴ると、宙に舞い上がった。
 そのまま滑り込むようにして、レミリアに土下座をする。
「この度は、十六夜咲夜さんの件で、ご迷惑をお掛けしました」
 蒼白な顔をした小町も、隣で土下座をしていた。



 十六夜咲夜は、レミリアの機嫌を直したかった。
 お八つに入れる為の、希少品を探していた。
 彼岸花を求めて三途の川へ行った時。
 間違えて、小町が船に乗せて渡してしまったのだ。
「当方の手違いですから、責任を持って生き返らせます」
 四人とも、大いに喜んだ。
 けじめを付ける為に、レミリアが小町を殴った。
 小町は、妖怪の山の麓まで飛んでいった。



 咲夜が、ベッドの上で、目を覚ます。
 レミリアが、涙を堪えていた。
 フランドールは、素直に喜んだ。
 パチュリーは、静かに微笑んだ。
 美鈴は、こっそり逃げようとしていた。
「お嬢さま、美鈴の理由だけは、許せません」
 頷いたレミリアが、けじめを付ける為に、美鈴を殴った。
 美鈴は、綺麗な放物線を描いて、湖に落下した。


 
 異変が解決し、満足した霊夢が帰ると、いつもの日常が戻って来た。
 咲夜は、元気に忙しく働いている。
 紅魔館は、今日も平和だった。
部屋を整理していたら東野圭吾先生の作品が出て来たので。
別次孝
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
面白かった。シンプルにまとまっていて、良かったです。
なんというか、すごく霊夢らしさが出ていた。
咲夜さん、愛されてますね。
2.名前が無い程度の能力削除
面白かった。最近よく見る完璧超人モテモテ美鈴よりサボり魔美鈴のほうが美鈴らしいしそのほうが好きだな。
3.奇声を発する程度の能力削除
シンプルで読みやすかったです
4.名前が無い程度の能力削除
淡々としているのに、口元がにやけた。GJ
5.けやっきー削除
この淡々と進んでいく感じが、とても好物でしたw

>「咲夜さん、胸が私より小さいからって、苛めないで下さいよ」
なにか、新しい美鈴を見た気がします。えぇ。