「桜って食べれるのよね」
だってほら、桜餅とかいい例じゃない?
と彼女、紫は酷く美しく、艶やかに笑ってみせた。
「その道理がどうめぐって、こんな状況になるのかしら」
つややかに濡れた幽々子の唇が疑問と僅かな驚きを孕んで動いた。幽々子の片手
は紫のそれによって畳に縫い留められ、身体も紫に馬乗りに跨がられて、身動き
がままならない。
所謂これは、この状況は紫に幽々子が押し倒されたというもので。
しかし幽々子は身じろぎすることも、何の抵抗もしない。嫌悪に眉をひそめると
いうよりは寧ろ、ゆったりと掴み所のない笑みを目許に浮かべている。
そうして問われた紫も紫で、至極呑気に、気楽に問いかけに答える。
――だって幽々子って美味しそうだもの、と。
「だってほら、頬とか柔らかいし、いい香りするし。あとはそうね、美味しいっ
て気概を纏ってるような」
次々と理由を付け足しながら紫は空いた方の手で幽々子の髪を梳き、幽々子の頬
を啄んだ。
「とにかく私は、あなたを食べたい」
そう言って紫は再び、それはそれは美しく、妖しく笑うのだ。
しかし、
「いやよ」
幽々子の唇が音を伴い動く、拒絶。
しかし唇は楽しそうに弧を描く、微笑。
何故と訝しむ紫の声に、疑問。
「だって紫の方が美味しそうじゃない?髪だってこがね色で蜂蜜みたいだし、」
紫に縫い止められていない方の腕を伸ばし、さらりと金の流れから一筋掬い上げ
て、慈しむように眺め。流れから指を抜いてその目許に這わせると紫は少しだけ
身じろぐ、その分幽々子の笑みは深まる。
「目の色ももぎたての葡萄みたいで綺麗よね、」
名前通りの色を閉じ込めたつやつやとした瞳を、長い睫毛が隠した一瞬に、する
りと紫の首に背中に腕をまわして引き寄せる。
刹那、ゼロ距離になった、二人は影も形も重なり合う。唇の、触れ合うそれは接
吻。
それは触れ合うだけの、柔らかなキス。
しかし刹那は永遠にも近く、たっぷりと時間が経ったような錯覚に陥りながら二
人は離れた。
「ほら、唇だって苺みたいに赤く甘くってやっぱり美味しいもの」
幽々子は紫の紅いルージュを映した朱い唇で美しく淡く笑う。
「あと私って…基本食べる方だから。食べられるっていうのは違和感がね。
だから、」
いただきまーす。
幽々子の顔には満面の笑み。紫の顔が幽々子と対照的に引き攣る。
組み敷いたはずが組み敷かれ、食らうはずが食らわれてしまうようで。
その証にいつの間にか天井が視界に入っているわけで。
一体どうしたことかと呆気にとられ瞬きを繰り返す紫の首筋に、捕食された印が
紅く鈍い痛覚を帯びて残された。
言 っ た な ?
良し、なら早くブログの方に続きを書く作業に戻るんだ!
さあ早く続きを書く作業に戻るんだ
という訳で続きを!!