Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

マルテニツァ(ささやかなる、午後の。)

2010/08/30 01:34:21
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「寝てる」
 見たそのまんまだった。それを思わずつぶやかせるような、光景だった。
 十六夜咲夜が寝ている。紅魔館の、キッチンである。ちょうど隙間のような時間帯なのか、妖精メイドの姿はない。かたむき始めた陽光が、窓から差している。レースのカーテンごしに、咲夜の銀髪をやわらかく輝かせている。咲夜は黒樫らしき椅子にからだを預けて、安らかに呼吸をしている。
 ふうん、と魔理沙は思った。こいつにも、こういうとこ、あるんだ。
 ちょっとあたりを見回してみる。整頓されたレンジ周り。整然と食器の収納された食器棚。ガラスにくもりはないし、木肌にしみひとつない。調度品もさりげなく、澄まし顔で並んでいる。人はいない。
「おやつ、つまみ食いしに来たんだけれど」
 口に出してみる。咲夜は息を吸って、吐いて、少しまつ毛が震えたようだった。髪がひとふさ、さらりと落ちる。魔理沙は、あ、と思う。咲夜の髪がほどかれている。いつも編みこんだ髪につけられているリボンは、今、咲夜の手にゆるく握られている。
 魔理沙は、も一度ぶんぶん首を振って、あたりを見る。そうして、咲夜の隣の椅子を引く。魔理沙のお尻に木材のひややかさ、そして、胸に差す光のあたたかさ。逆光のなかで、咲夜の横顔。輪郭が淡い光をまとって、ふわふわしている。魔理沙は手を伸ばしかけて、引っ込める。う、とうめきを漏らして、自分の手を見る。小さい手。咲夜の横顔に目を戻す。やすらかな寝息。ふう、と、ひと呼吸。そうして、も一度、手を伸ばす。咲夜の髪に、触れる。しっとりと、手になじむ銀髪。魔理沙はため息をつく。竪琴の弦のようだ、と思う。てのひらを傾けると、しゃらしゃらと鳴りながら、水のようにこぼれ落ちてゆく。光を反射するところからは、あまい香りが立ちのぼる気がする。魔理沙は、咲夜の胸の上下するのを見る。まぶたが安らかに閉じられているのを見る。そうして、ふう、と呼吸をしてから、その髪のひとふさに口吻くちづけする。
 今まででいちばん深い息をしてから、魔理沙は、帽子の端をぎゅっとつかむ。足を、音をたてないようにばたばたと揺らして、く、ふ、ふふふ、と笑いを口の中で殺す。魔理沙の笑いは、おさまらない。ぎゅうっと椅子の上で小さくなって、魔理沙は自分が爆発してしまいそうなのを我慢する。
 そうして、ひとつ、いたずらを思いつく。
 魔理沙は、そのいたずらを実行に移すのを考えて、もっと爆発しそうになる。でも、しない。それはとっても素敵ないたずらだからだ。しなければならないのだ。魔女のいたずらを、種なし手品師にみせつけてやるのだ。そう思って、自分の髪を解く。





 そうして、咲夜は目覚める。ああ、と思う。そうだ、眠っていたのだ、と。懐中時計を見る。おおよそ予定通りの時刻。管理された仮眠。首をめぐらそうとして、気付く。隣の椅子に座って、白黒魔法使いが眠っている。ほとんど息のかかるような距離に、彼女の横顔がある。思わず、咲夜は微笑む。そうして、彼女の頭をなでようとして、あっ、と、今度は驚く。咲夜の髪が編まれている。魔理沙の髪と。
 金糸と銀糸をり合わせるように。二人の髪がひとふさずつ一体になって、その先に、リボンが結ばれていた。
 ああ、と、声が漏れていた。咲夜は、笑った。そうして、懐中時計を目でなでて、ポケットにしまう。咲夜は、魔理沙の手を取って、そうして、椅子に座ったまま、も一度目をつぶる。そうして、くすくす笑いながら、ひと言だけつぶやいて、それきり、黙った。


「もう、ばかね」



 さくまり好きすぎて禿げる
つくし
http://www.tcn.zaq.ne.jp/tsukushi/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
今世紀最高のシチュエーションを見てしまった……僕は爆発した。
2.拡散ポンプ削除
最後の一言がいい女すぎる。禿げた。
3.奇声を発する程度の能力削除
素晴らしすぎて禿げちゃった
4.名前が無い程度の能力削除
これが…咲マリの真骨頂か…。
5.風峰削除
何という咲マリ……負けたよ、俺の負けだ……
もっと書いてくれ! いや、書いてください!
6.名前が無い程度の能力削除
元から禿げてた自分は何故か生えてきました、ありがとうございます
7.名前が無い程度の能力削除
禿げた
8.ぺ・四潤削除
「もう片方が残ってるじゃない」とか言って反対側も編み出したら悶え死にそう。
さくめーの同人誌では見たことのあるシチュだけど咲マリとは……
金と銀の編み込みは芸術的だ。
胸が高鳴りすぎて禿げた。
9.すいみんぐ削除
なんと言うか、すごくあたたかな気持ちになれました。まどろみの中の気持ち良さみたいな感覚が残る、素敵な咲マリをありがとうございました。
10.名前が無い程度の能力削除
その、なんというか。

好きすぎて困る。
11.名前が無い程度の能力削除
萌え禿げたとでも言ってほしいのか。
まあ、萌え禿げたんだが。
12.名前が無い程度の能力削除
読んで良かった咲マリ式
13.名前が無い程度の能力削除
なにこれ禿げる
14.名前が無い程度の能力削除
貴方は俺の毛根を死滅させる気か!?いかん、互いの髪を編むシチュとか萌え過ぎてハゲる…
15.MR削除
ただでさえ少ない毛根が死に絶え……た……
16.euclid削除
魔理沙の仕種だけでも禿げそうだったというのに……
咲夜さんの最後の一言で完全に禿げあがってしまいましたよ。
発毛剤を要求します。
17.名前が無い程度の能力削除
よかった…よかったよぅ…
18.名前が無い程度の能力削除
左の眉毛が禿げました(ぇ
すばらしい咲マリをありがとう。
19.名前が無い程度の能力削除
殺す気か、殺す気なのか……オアア……