「だから、ちゃんと皮をむいてから食べなさいって言ってるでしょ?」
「いいじゃないか、そのままだって食べられるだろ?あむっ」
目の前には大皿に盛られた葡萄。
一粒一粒つまみそのまま口に放りこむ魔理沙。
その様子見て行儀が悪いからやめなさいといって躾けようとするアリス。
「わかってないなぁアリスは。皮の渋さと実の甘さが相まってコレが絶妙なんだぜ。」
「なにわけのわからない事言ってるのよ。お腹壊しても知らないわよ?」
「アリスは知らないのか?赤ワインって皮と実を一緒に入れるんだぜ?」
「だから何よ?そのまま食べるのとお酒にして飲むのは違うの。」
不毛な押し問答を続ける魔理沙とアリス。
その間も魔理沙はアリスの説得に応じようとせずパクパクと葡萄を口に運んでいた。
「もう、しょうがないわね。」
先に動いたのはアリスの方だった。
「魔理沙。こっち向いて。」
「ん?どうした……んっ」
アリスは魔理沙の開いた口に向けて人差し指と親指で葡萄の端をはさんできゅっとつぶした。
皮のむけた葡萄は見事魔理沙の口の中に納まった。
「どう?」
「……あまい……」
「渋くない方がおいしいでしょ?」
「…………うん。」
魔理沙は手を止め、アリスの方をじっと見ている。
「どうしたの?」
「もっかいやってほしいんだぜ。」
それを聞いたアリスはニヤニヤしながら魔理沙に尋ねた。
「なに?食べさせてほしいの?」
魔理沙は返事に戸惑ったのかしばらく間を置いた。
そしてちょっとはずかしそうに頬を赤らめながら小さくこくりと頷いた。
「しょうがないわね。はいあーん」
「……あーん」
ぱく。
ふたたびアリスの手から魔理沙の口へと葡萄の実が運ばれる。
魔理沙は葡萄の実を味わいながら恥ずかしそうに、かつ幸せそうな表情を浮かべる。
「ねぇ魔理沙。」
「ん?どうした?」
「その……私も食べさせてほしいな。」
そう言い終えるとアリスの頬も少し赤らめていた。
「しょ……しょうがないなぁアリスは。いいぜ。」
葡萄を一粒つまみ。アリスの口へと運び、
パク
「あっ」
皮をむいた葡萄を魔理沙は自分の口に入れた。
「ちょっと魔理沙!わたしに……っ」
不意を付かれアリスは言葉を失う
「んっんん」
魔理沙はアリスの唇を奪っていた。
少し開いた唇の隙間からコロンと何かがアリスの口の中に転がり込んでいく。
アリスの口の中に渋みのない甘さが広がる。
「………………どうだ?」
「…………おいしい……わね。」
「へへっ」
唇を離しお互い見つめあう。
二人とも顔を赤くして、幸せそうに笑いあう。
そんないつもと変わらない二人の光景。
「……あの二人いつもあんな感じなんですか!?」
「ん?まぁね。」
ここは博麗神社。
葡萄をお裾分けしにきた早苗は霊夢の隣で一緒に葡萄を食べながら二人を眺めていた。
「まぁなんていうか……ね、風景みたいなものよ。……もう見慣れたわ。」
霊夢は遠い目をしながら呟く。
「そ、そうなんですか。」
そんな霊夢に相槌を打つ早苗。
その視線は二人に釘付けになっている。
「ところで早苗?」
「なんですか?」
「なに興奮してるの?」
「えっ!?そそそそんなことありませんよ!?」
「そう?」
早苗は明らかに動揺を隠しきれていない。
あまり興味も無さそうに霊夢はずずっとお茶を啜った。
そして
「私たちもやってみる?」
「ふえ!?…………あ……いや……まだこころのじゅんびが……」
「冗談よ。」
「………あ、そうですか。」
解りやすく落ち込む早苗。
その様子を見た霊夢は一粒葡萄を手に取り。
「早苗。口あけて」
「へっ……?」
気が付けば早苗の口の中に渋みの無い甘さが広がっていた。
ていうかお前ら人目もはばからずちゅっちゅするなーー!!
甘すぎる!!
葡萄一つでこんなに甘くなるなんてやっぱ百合は良いものだ