注:前回からの続きです。
________18:00 地底入り口
魔理沙「…………わっ。もうこんなに暗くなってるぜ」
妖夢 「そりゃ暗くもなるでしょうね。もう夕方の六時ですし」
魔理沙「ふむ。六時か……六時といえば、なんだ?」
妖夢 「は?」
魔理沙「六時といえば?」
妖夢 「…………衛星アニメ劇場?」
魔理沙「違う。というか、今はもうそれは六時じゃない」
妖夢 「じゃあなんなんです?」
魔理沙「決まってるだろ、夕飯だ」
妖夢 「決まってるっていうか……あなたが決めつけてるだけでしょ」
魔理沙「いや、夕飯だ。
この国の世帯は六時から七時にかけての時間に夕食をする家族が
もっとも多いことは、すでに統計にでている」
妖夢 「幻想郷の話をしてくださいよ」
魔理沙「つまりだ。
……お前、どうすんだよ今日の夕飯」
妖夢 「…………」
魔理沙「食材はもう無いんだぜ? 全部さとりにとられちまった」
妖夢 「……とりあえず、幽々子様に話をして、それからですね。
今後の事も、まず幽々子様の許可を得ないといけませんし……」
魔理沙「今後の事、ねぇ。
まあわたしは楽しみだが、どうなることやら……」
妖夢 「…………」
妖夢 「(………………あの時、わたしは勝負に負けて……)」
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さとり「サレンダー……わたしの勝ちですね」
妖夢 「…………」
妖夢 「(わたしの剣がまるで通じなかった……。
どう攻めても、心理を読まれ、空を斬るばかり……こんな相手がいたなんて……)」
魔理沙「まあ、残念だが順当な結果だったな。相手がさとりじゃあ仕方ない」
さとり「ふふふ、次はあなたですか?」
魔理沙「ふん。わかってるんだろ? やり合う気なんてないさ。
勝算の無い勝負はしない主義だ」
さとり「あら、残念ですね。まだまだやり足りなかったのに。
それとも、もう一戦なさいます?」
妖夢 「……いいえ、ありません。わたしの完敗です」
さとり「……どうやら、本心からの言葉のようですね。わかりました。
では、はるばる地上からお越しいただいて申し訳ないのですが、
デュエルはわたしの勝ちですのでお求めの品々はお譲りできません。
そして、わたしが勝った時の条件の方ですが……そうですね、聞いていただけますか?」
魔理沙「さすがに約束を反故にするわけにはいかないからな。ちゃんと聞いてやるよ。
わたしじゃなくて、こいつが」
妖夢 「いや……まあ、そのつもりですからいいですけど」
さとり「勝ったら何でもわたしの言うことを聞く、ということでした。
何をしてもらおうか、デュエルをしている時からずっと考えていたのですが……
あなた方には〝大会を開いてもらおうと思います〟」
妖夢 「……ええっ!?」
魔理沙「大会だと!?」
さとり「ふふふ、驚いてらっしゃるようですね。
少し前に、地上でデュエルモンスターズの頂点を決める大会があったという話は聞いています。
魔理沙さん、あなたはその大会の優勝者。そうですね?」
魔理沙「まあ、正確には優勝者の一人だな」
さとり「そう、二人組単位の個人戦という形式での大会でした。
あなたはもう一人のお強い方と組んで、見事優勝の栄光を勝ち取った。幻想郷一の称号を。
しかしですね……近頃地底ではそのことに対して、不満を持つ者たちが増えてきたのです」
妖夢 「不満、ですか?」
さとり「そうです。
あの大会で募った参加者達は、地上の妖怪達のみ。
すなわち、ごくごく限られたコミュニティの中で行われた。
我々地底の者達を差し置いて。
幻想郷一を決めるものと謳いながら、実際は地上の者達だけの間で行われたのです。
すなわちあなたは、至極限定的な身内の中で一番だった、という事実に過ぎない。
そう、地底のデュエリスト達は主張しています」
魔理沙「身内の中でだぁ~? 地上全部がそうだってのか。どんないいがかりだよ」
さとり「まあ、そこはあくまで極論ですけれど。
ですが、もし我々が参戦していたら結果は全く変わらなかったか、と問われれば、
そうそう頷くことはできないはずです」
妖夢 「(確かに……もしさとりさんが大会に出場していたら、どうなっていたかわからない。
案外、あっさり優勝を攫ってしまったかも……)」
魔理沙「ふん、地底の妖怪ねぇ。途中軽く踏み潰した気もするが」
さとり「あら。土蜘蛛やお燐はともかく、鬼からは手加減されてたんじゃないの?」
魔理沙「ちぇっ、また思考を読まれたか。
まああれは勝手に酒の器を持ってただけだから、手加減なのかはよくわからないけどな」
さとり「と、いうわけで、です。
ようするに地底の者達は、格付けをしたがっています。自分達の方が、腕は上だとね。
妖怪達のフラストレーションは、今や旧地獄にこだまし、
怨霊や旧灼熱地獄に影響を及ぼすほどです」
妖夢 「そこで大会……というわけですか」
さとり「あなたが今浮かんだ考えで、ほぼ正解と言っていいでしょう。
ただ、今話したように、肝心なのは格付けができるかどうかということです。
よって通常のトーナメント形式では、意に沿う形とは言えないでしょう。
望ましいのは、地底対地上の、完全な対決という図式です。
すなわち……チーム戦」
魔理沙「チーム戦だと!?」
さとり「そう、チーム戦。
お互いの陣営から選り抜かれた代表者数名……そうですね、五対五ぐらいがいいでしょう。
各々選抜し合い、合計五戦、先に三勝。最終的な星の数で勝敗を判定する。
どうです、明解でしょう?」
妖夢 「(五対五……地上と地底、妖怪達のプライドを賭けた総力戦……)」
魔理沙「うおお、なんか壮絶におもしろそうじゃないか!
こりゃ乗らない手は無いぜ」
妖夢 「……あっ。ちょっと待ってくださいよ」
魔理沙「なんだよ~、こんな心踊るエンターテイメントは久しぶりじゃないか」
妖夢 「話を聞くに、これはそこそこおおごとな話になりますよ。
わたし達の裁量で勝手に受けてしまうのは……」
魔理沙「受けてしまうもなにも、お前負けたんだから断りようがないじゃないか」
妖夢 「う……それはまあ、そうなんですけど……」
さとり「ならばこうしましょう。
〝この大会で勝利したチームが、賞品として最高級の鍋を食べる権利を得る〟」
妖夢 「えっ?」
魔理沙「おおっ、そりゃあいい。名案だな。一石二鳥とはこのことだ」
妖夢 「ちょ、ちょ、ちょ……どういうことです?
まさか、その鍋に使う材料は……」
さとり「あら、わかっているのでしょう?
うちで採れた野菜と、あなたの背中のリュックの中身ですよ」
妖夢 「……だ、駄目に決まってるじゃないですか!
これは今夜の鍋に使うためのもので……」
魔理沙「その鍋も、ネギも白菜もえのきも無いんじゃ、鍋って胸張って言えるのか疑問だけどな」
妖夢 「う……しかし。食材にしても賞味期限がありますし。
ほら、お豆腐とか足が早いのなんの……」
さとり「ご安心を。豆腐ならばタッパーに水でひたして、一日一回水を入れ替えれば一週間はもちます」
妖夢 「(せ、生活の知恵……)」
魔理沙「まあ聞けよ、妖夢。どうせもうタイムリミットだろう。
今から戻れば、地上に出た頃にはもう六時になってるはずだ。
今から残りの材料を探しに行くのは、どう考えても時間が無くて無理だ」
妖夢 「(う……確かに)」
魔理沙「そこでだ。どっちにしろ今夜中に鍋を作るのは不可能なんだから、
幽々子に言ってこの大会の日まで待ってもらうのさ。
そりゃあ今夜までっていう命令には背くことになるし、
勝負に負けて残りの材料が手に入らなかったのはお前の落ち度なわけだから、
こういう状況に陥ってしまった責任を含めて、お前は幽々子にそれなりの叱責は受けるだろう。
だが、幽々子の性格からしてこういったお祭り騒ぎは大歓迎するはずだ。
その大会で勝てば、きっちり鍋も食べれるわけだしな。
きちんと話せば、あいつも嫌とは言わないだろう
むしろ諸手をあげて大喜びするんじゃないか?
あいつはこういう祭りみたいなのが好きだしな」
妖夢 「それは……まあ、否定はしませんが……」
妖夢 「(……でも問題は、この件を言うと大会に直に足を運びたがることなんだよな……。
幽々子様には、もうデュエルモンスターズに関わらせたくない。
当然試合に出すわけにはいかないし、できれば会場にも来られない方が……。
今は紫様はいないから滅多なことは起こらないだろうけど、やっぱり、万が一ということがあるし……)」
さとり「ああ、何も疚しいことなど考えてはおりませんよ。
わたし達は、純粋にデュエルを楽しみたいだけです。
前の大会では何やら大変な事になったようですが、
あくまでやるのは普通のデュエルモンスターズですから。ご心配無く」
妖夢 「はあ。しかし……」
妖夢 「(…………まあ、そりゃ普通に考えて何か変なことが起こるわけがないんだけど……。
でも、確かに魔理沙さんの言うとおり、このままじゃ鍋は作れないし……。
何より、勝負に負けた以上、選択権なんて無いわけだから……)」
さとり「心に決めたようですね」
妖夢 「……はい。その話、お受けします」
さとり「うふふ、あなたならそう言ってくださると思っていました。
では、大会はこれより一週間後。前回の舞台でもあった、博麗神社境内にて執り行うとしましょう。
その日まで、五人。地上の精鋭を揃えてきてください。
まあ、観客になりますが、それ以上の方を連れてきたいというならばそれも構わないでしょう。
あなた方が持ってきた鍋の具材は、こちらで悪くならないようにまとめて保管しておきます。
他、質問はありませんね?」
魔理沙「あるわけないな。それがわかってて言ってんだろ」
さとり「正解です。なんでしたら、大々的に宣伝していただいても構いませんよ。
歴史の証人は多いに越したことは無いでしょうから」
妖夢 「(宣伝……か。あまり人は増やしたくないけど……仕方ないか。
それに、ある意味ちょうどいいかも。
一応新聞のネタを提供する約束だったから、たぶんこのことを文さんに伝えれば大喜びするはずだし……)」
妖夢 「わかりました。一週間後、博麗神社でですね」
魔理沙「あ、でも待てよ。
というかお前、地上に……」
さとり「『地上出てきても大丈夫なのか?』、ですか?
本物の太陽を浴びるのは久しぶりですが、きちんと肌にクリームを塗って
UVカットしていくので問題ありません」
魔理沙「いや、そういう意味じゃないんだが……てかお前心読めるんだから、わかってて言ってるだろ」
さとり「冗談ですよ。灼熱地獄跡の方はペット達に管理させておくので大丈夫です。
地底の妖怪が地上に侵攻することは禁じられていますが、
ちょっと遊びに行くくらいなら構わないでしょう」
魔理沙「ちょっとって……そういう問題なのか」
妖夢 「あ、最後に一つだけ聞かせてください。あの……」
さとり「……ああ、そのことね」
さとり「もちろん、イエスです。
では、当日、楽しみにしていますよ。うふふふふ……」
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妖夢 「(……結局、言われるままに承諾してしまった。
はぁ~、まさかまた大会だなんて。幽々子様はなんと言われるだろうか)」
魔理沙「お前、これで何度目のため息だよ。別にいいじゃないか。
今日中に食べれないってだけなんだから、幽々子も話せばわかってくれるだろ。
むしろ、はしゃぎすぎて庭で踊りまわるんじゃないか?」
妖夢 「だから問題なんですよ。
はぁ、もうすぐ冬だっていうのに。師走はのんびり過ごしたかったなぁ」
魔理沙「諦めるんだな。過ぎたことは仕方ない。
となれば、あとは前向きに前を見据えようじゃないか」
妖夢 「……あなたは随分楽しそうですね」
魔理沙「楽しくない方がおかしいと思うぜ?
この場合、おかしいのはお前の方だな。異常者だ、お前は」
妖夢 「どういう言い草ですか。
わたしはあなたみたいに毎日遊んでられる身分じゃないんです。
白玉楼の庭師は一日二十八時間労働なんですから。
はぁ~、気が重いなぁ」
魔理沙「とにかくだ。
こうなった以上、わたしとお前を入れたとしても、最低あと三人、
面子を揃えなきゃならない。一週間でな。
誰か当てはいるか?」
妖夢 「いや、わたしの方は……
幽々子様にやらせるわけにはいきませんし、紫様はどこかで休眠されてるらしいですから……」
魔理沙「ふむ。他には?」
妖夢 「見当は、皆目……」
魔理沙「そうか。糞の役にも立たんな」
妖夢 「いちいち一言多いんですよっ。そちらはどうなんです?」
魔理沙「そうだなぁ~。霊夢は頼りにならんし、紅魔館の門でも叩いてみた方がいいかな?」
妖夢 「吸血鬼とその仲間達ですか……。
あんまり関わりあいたくないんですよねぇ」
魔理沙「とくにレミリアとかなぁ。
あいつら地底の奴らと面識無いだろ?
強いことは強いんだが、いらん面倒が増えそうでならない」
妖夢 「ですね」
魔理沙「同じ理由で永遠亭の奴らも控えた方がいいだろうな。
まあ、どっちのせよ終わった後で、呼ばなかったことに文句を言われそうだが」
妖夢 「あれ? てか、あなたのパートナーはどうなんです?
連れてくればいいじゃないですか」
魔理沙「ああ、あいつは最近家にこもってる。寝たきりなんだ」
妖夢 「えっ……。
ど、どうかされたんですか??」
魔理沙「別に大したことじゃない。月のものだ」
妖夢 「……あなたこのシリーズ再開してから、さりげない下ネタが多いですよ。自重してください」
魔理沙「まあ、大会は一週間後だ。まだまだ時間はある。
今日はもう日が沈んだし、明日改めて落ち合って、候補になりそうな奴を探しに行こうじゃないか」
妖夢 「ですね。でもわたしはその前に、幽々子様にどう報告するかという問題が……」
魔理沙「腕の見せ所だな」
妖夢 「意味がわかりません。では、わたしはこれで」
魔理沙「……あっ、ちょっと待った」
妖夢 「何ですか?」
魔理沙「お前、さとりと別れる時、最後に何か質問しようとしただろ。
あれは何を訊いてたんだ?」
妖夢 「あれですか?
『あなたは、地底の妖怪達は格付けをしたがっているとと言っていたけど、
あなた自身もそう思っているのですか?』と訊きたかったんです。
まあ、訊ねる前に答えられちゃいましたけど」
魔理沙「で、『もちろん』って返ってきたわけか。
なんでそんなどうでもいいこと訊いたんだ?」
妖夢 「いえ、ちょっと気になっただけです。
わたしはあの方とは今日が初対面でしたが、彼女自身はそういう……
勝負事とか格付けとかには、興味無さそうな性格の印象を受けたんです。
そんなに争いを好まないというか」
魔理沙「そうか? わたしが初めて地霊殿に行った時は、いきなり襲いかかられたが」
妖夢 「それはあなたがよからぬことを考えていたからでしょう。
あるいは、勝手に他人の家に忍び込んだからか」
魔理沙「あるいはというか、両方だな」
妖夢 「(両方かよ……)」
魔理沙「でもまあ、確かにお前の言うとおりかもしれない。
妖怪にしては、あいつは戦闘には消極的な方だ。
あんなことを言い出すのも、珍しいことなんだろうな。
だが、もちろんなんて啖呵を切ってきた以上、あいつも五人の一人に入ってくるだろう。
出るとしたら……おそらく、大将だろうな」
妖夢 「(大将……)」
妖夢 「(もしわたしがもう一度彼女と対戦したら……どうなるだろう)」
妖夢 「(いや、考えるまでもないな。今のままでは、彼女には勝てない。
手も足も出ず、今日のような無様なデュエルを再現してしまうだけだ。
これも、わたしの剣の未熟さ故……)」
妖夢 「(……強くなりたい。もっと強く。
わたしは……なれるだろうか)」
*
________18:30 白玉楼
妖夢 「と、いうわけでして、かくかくしかじか……」
幽々子「まるまるうまうまというわけね。なるほどなるほど……」
妖夢 「なので、そのう……申し訳ありませんが、鍋は今日はご用意できませんでした。
大会が行われる当日まで、お待ちいただきたいと……」
幽々子「なるほどなるほど。うふふふふ……」
妖夢 「(ま、満面の笑み……)」
幽々子「言うに事欠いて大会ですって? また? またなの?
なにそれ。最高じゃない。そんなのアリなの?」
妖夢 「あ、あの……幽々子様」
幽々子「ああ、実体の無いわたしのお脳とハートがときめいているわ。
残念ね、紫も来られればよかったのに……」
妖夢 「幽々子様ってばっ。聞いてらっしゃいます?」
幽々子「どうしたのよ、そんなに慌てて。
なに、一人で先にお祭り騒ぎ? ひょっとして前夜祭のつもり?」
妖夢 「誰のせいだと思ってるんですか。しかも別に前夜でもありませんし……。
とにかく、本当に申し訳ないのですが、仰せつかっていた鍋は、
大会で地上チームが勝利したらという運びになってしまいました。
処分は如何様にでも……」
幽々子「そう。構わないわ。
代わりにとても楽しそうなイベントを持ってきてくれたのだもの。
結果オーライということにしておきましょう」
妖夢 「そ、そうですか」
幽々子「ただし、わたしの命を遂行為し得なかったのは、あなたの未熟さが要因であることに代わりはない。
精進しなさい」
妖夢 「……はい」
幽々子「にしても、大会ねぇ。大会~♪」
妖夢 「あ、あの……」
幽々子「それはそうと……。
チームを編成するには、五人必要なわけでしょう。
二人はあなたとあの金髪白黒でいいとして、他はどうするつもり?」
妖夢 「(う……きたか)」
妖夢 「それなんですが……その、幽々子様」
幽々子「ん~?」
妖夢 「あの、申し上げにくいのですが……今朝、約束しましたよね?
幽々子様はデュエルはしない、と。
ですので、幽々子様はその大会は不参加という形で……その、よろしいでしょうか」
幽々子「なに、そんなこと? わかってるわよ」
妖夢 「えっ……?」
幽々子「失礼ね。いくらわたしでも、つい今朝方の事を忘れるわけがないわ。
ちゃんと覚えてるわよ」
妖夢 「…………」
妖夢 「(……こんなにあっさり引き下がるなんて。逆に怪しい)」
妖夢 「ほ、本当によろしいのですか? ちゃんと大人しくしててくれます?」
幽々子「もう、子供じゃないんだから、何度も言わないでほしいわ。
ああ、でも出場はしないけど、大会には行くわよ。見学ぐらいはいいでしょ?
その日に白玉楼を離れるってことは、予め閻魔様に伝えておくわ」
妖夢 「(見学か……。
できれば屋敷にいててほしかったけど、あんまり強く出ると何しでかすかわかんないしなぁ。
この辺で妥協しておくのが正解かな)」
妖夢 「まあ、わかりました。それぐらいでしたら」
幽々子「ふふふ、大会ねぇ、大会。
だいたい、大会って、まずこの響きがいいわよね。
ただでさえお祭りなのに、何か起こりそうな気がするわぁ」
妖夢 「……言っておきますが、何も起こさないでくださいね?」
幽々子「は? ただ見学してるだけなのに、何が起こせるっていうの」
妖夢 「…………。
わかりました。
あいにく、今回はごくありふれたカードゲームの大会です。
何も予定外のことなんて起こりませんから、あしからず」
妖夢 「(……幽々子様が何かしなければ、ですが)」
幽々子「ん? わたしがどうかした?」
妖夢 「ギクッ。いえ、別に何も……
(なんでこの人まで心を読むような真似してくるんだ……ピンクの悪魔だからか?)」
幽々子「いやねぇ、わたしはあなたを生まれた頃から見てるのよ。
赤ん坊のあなたを抱き上げたこともあるんだもの。
妖夢の考えてることなんて、その半霊を見ればすぐわかるわ」
妖夢 「(なぜに半霊の方……)
とにかくですね。今回は本当に何も起こりません。
普通にデュエルして、どちらかのチームが鍋を食べて……
あとたぶん、打ち上げで徹マンでもして終わりです」
幽々子「どちらかのチームが……ねぇ。
もちろん、わたしにちゃんと食べさせてくれるのよね?」
妖夢 「はい。そのつもりですが」
幽々子「はい、と言ったわね。
それはすなわち、絶対に勝つ自信があるということ。
そう受け取っても構わないかしら?
まあ、ただでさえ今日わたしは何も食べずに夜まで我慢していたのに、
件のものにありつけなかったわけだから、二度目の失態を許す気は無いけど」
妖夢 「(幽々子様……)」
妖夢 「(…………これ以上、幽々子様を失望させるわけにはいかない。
主の意を汲み通せずして、何のための従者か……)」
妖夢 「二言はありません」
幽々子「即答が望ましかったけど……ふふふ。まあ、いいわ。
その言葉が偽りでないことを期待しておきましょう」
幽々子「でも妖夢、一つだけ訊くわ。
その地底チームの、古明地さとり……だったかしら。
あなた本当に、今のままで勝てる自信はあるの?」
妖夢 「う、それは……」
妖夢 「(……気取られていたとは。
さすがは幽々子様、なんでもお見通しだな……)」
幽々子「前回の大会の事、覚えてるわよね?」
妖夢 「えっ? は、はい」
幽々子「どうしてあなたがあの時、〝五人の戦士〟になれなかったのか。わかる?」
妖夢 「いえ……」
幽々子「あなたは決して、デュエルの実力的に魔理沙達に劣っていたわけではない。
それでも選ばれなかったのは、あなたの中に欠けているもの、もしくは足りないものがあるからよ。
それが一体なんなのか、自覚することね」
妖夢 「(足りない……もの?)」
妖夢 「(……そんなもの、いくらでもある。
それぐらいわかってる。わたしはまだ半人前だ。
力も、知識も、経験も……数え上げたらきりが無い。
わたしが未熟なのは、自分が一番よく知っているんだ)」
妖夢 「(でも……その中で、わたしに最も欠けているものって……?)」
幽々子「幸いだったわね。時間はまだ一週間もある。
まあ、一週間しかないとも言えるけど」
妖夢 「…………」
幽々子「待ち遠しいわ。
知ってる? 一週間後の夜、月相は満月よ。
当日は、またとない幻想の宴となるでしょう。
楽しみにしているわよ、妖夢。くすくす」
・・・・・・To be continued
本家の方も楽しみに待ってます。
ああ~言われたら出したくなってきたw
いいですね。考えておきます。
>>2
ありがとうございます~
あとがきの通り、遊戯王はしばらく休みますがすみませんm(_ _)m
もしよければクラミさんの考えるE-HERO(イービル)が見てみたいです、
そして一輪さんの影響でクラウディアンをがちで組んでしまいました、本当にありがとうございます