本SSは、拙作「雪が舞い落ちる朝に」(作品集72)の流れを汲んでおります。
オリジナルの設定などございますので、出来ましたら前作を読み終えてからご覧ください。
マイが私の友達になって1週間ほどが過ぎたある日のこと。
外では猛烈な吹雪が轟々と音を立てて私たちの家に襲いかかっていた。
ギシギシと音を立てて家が揺れる。雪が窓を叩き、カタカタと音が鳴る。
そこにはぁというため息が一つ混ざる。風の音にかき消され、ため息は虚空に消える。
「ひーまーだー……やることがなーいー……」
聞く人もげんなりするだろうな、と思うような声で小さく呟く。
外がこんな天気でなければ外に出て魔法の試し撃ちをするところなのだけど、
流石にこんな状況で外に出るほど馬鹿ではない。
そもそも出たところで1時間もしたら凍えて遊びどころではなくなってしまうだろうし、
最悪遭難するかもしれない。
かと言って家にある本はあらかた読みつくしてしまっている。
首都に出かけて新しい本を買おうと思ったらこの天気だ。本当に嫌になる。
「研究……研究かぁ……研究もなぁ……」
少し前までは研究をしていたのだ。だけど途中で手詰まりになって飽きてしまった。
二進も三進もいかない状況になってしまったのだ。
こういう時には一度寝て頭をすっきりさせるのが一番なのだけど、あいにくまだ眠くもなかった。
すぐに新しい魔法を研究する気にもなれないし。そもそも研究ずっと続けるとか面倒だし。
家事をしようにも、こういう日に限って家事はマイの担当日だった。
なぜか私が手伝おうとすると嫌がるし。自分のやり方を崩されるのが嫌なのだろう。
だから私は今何もすることがない。本当に暇すぎて嫌になってしまう。
もう一度ため息をつく。
「はぁ……。」
――なんか溜息ついたらもっと憂鬱になったなぁ……。
気分転換に紅茶飲もうかなぁ……。でも一人で飲むのはマイに悪いしなぁ。どうしようかな。
うーん……最近一人で飲んでも前ほど楽しくないんだよなぁ……。やめとこう。
一瞬頭に浮かんだ一人で紅茶を飲むという考えもそうして却下された。
今やれることはただぼんやりと虚空を眺めて暇だ、暇だと呟くことだけ。
無意味で生産性がないのは分かっているけど本当になにもすることがないのだ。
そうして何も考えずにぼーっとすること5分ほど。何気なくマイの方を見ると、
9割方仕事を終えて仕上げの掃き掃除をしているところだった。
ちょうどいい、二人でティータイムにしよう。
どうせマイも掃除が終わったら研究か読書くらいしかやることはないだろうし。
「ねえマイ、お掃除終わったらティータイムにしない?片付けやるから」
「……いいわよ。テーブルの準備はしておくわね」
よかった、了承が得られた。断られたらどうしようかとちょっとだけ思っていたのだ。
「それじゃあ、淹れてくるね!」
「……ユキが研究してる間にスコーン作ったんだけど、食べる?」
「わ、なにそれなにそれ、食べたい! どこにあるの?」
「奥の棚に入れてあるわ……」
何日か前に食べたマイの手料理が美味しかったことを思い出して私ははしゃいだ。
きっとお菓子も美味しいはず。楽しみだ。
「一人で食べようと思ってたけど、まあいいか……」
「ん、何か言った?」
「なんでもないわ……早くしましょ」
「そうだね、じゃあ準備してくるね!」
そういうと、私はキッチンへと早足で移動した。
水を入れて、ケトルを火にかける。沸騰したのを見計らい、ティーポットにお湯を入れて温める。
ポットが温まったら、一旦お湯を捨て紅茶葉の缶を取り出す。
秋摘みのダージリンは蓋を開けるとふんわりと辺りに甘い香りを漂わせる。
茶葉を少し多めにティーポットに入れて、ケトルからお湯を入れ、しばらく待つ。
その間にミルクを取り、自分のカップに入れた。
ちょうどよい濃さになった紅茶をカップに注いで、スコーンの隣に置く。
さあ、楽しいティータイムの始まりだ。
「マイー、紅茶淹れたよー。そっちの準備は終わったー?」
「ええ、今終わったところ……」
「じゃあティータイムにしましょうか!」
そういうと、私はさっそくスコーンを口に運ぶ。
混ぜ込まれたチョコの甘味と、生地の甘味とが混ざり合って口の中に広がった。
「……どう?」
「すごくおいしい! マイやっぱり料理上手だねー……」
「ありがと……お料理好きだから神綺様のところにいた時からよくやってたの……」
「ああ、やっぱり料理好きなんだ。上手だもんねー」
「あとは、お掃除も好き……」
「すごーい、私は掃除大嫌いだよ……。マイはいいお嫁さんになれそうだねー」
そういうと私は紅茶を一口飲んでマイの方を見る。
――そういえば、1週間くらい一緒にいるけどこの子のことあんまり知らなかったな……。
聞いてみようかな。
「ねえ、マイ。他に好きなこととか好きな物とか何かある?」
「研究とか、考え事とか、色々あるわ……でもね……」
「でも?」
「でもね、一番好きなのはユキ、かな……」
「え、え、ふえぇ!?」
え、なにそれ! なにそれ! 確かにマイは可愛いし、友達としても好きだけど、
一番好きなのが私!? え、いや確かに好きだけど同姓だよ……え、え、どうしよう!
「ふふ、嫌いな掃除手伝おうとしてくれるところとか、簡単な嘘もすぐに信じちゃうところとか、そうやってすぐに焦りだすところとか大好きよユキ……」
「あれ、なんかちょっとひどいこと言われてる気がする!?」
本当にこの子は私のこと好きなのだろうか。一瞬疑問に思った。
「後半は冗談だけど、ユキのこと好きなのは本当よ……?
ねえ、返事聞かせてくれる……? ユキは、私のこと好き?」
少しだけ潤んだ瞳は確かに私をまっすぐ見ていた。
よく見ると顔が少し赤らんでいる。それに、少し震えていた。
ああ、この子は本当に――。
「ユキ……やっぱり、だめかな? 同姓、だもんね……」
泣きそうな顔でマイがこちらを見てくる。
これ以上この子のこんな顔見ていられない。見ていたくない。
覚悟を決めてすぅと息を吸い口を開く。
「マイといた時間は短いけれど、マイがすごくいい子だってことはわかってるし、これからもずっと一緒にいたいの」
そこで私は一度言葉を切る。やはりまだ躊躇してしまう。
だけど勇気を出してもう一歩だけ踏み出すことにした。二人のために。
二人で歩く人生という名の道に。
「私、私もマイのことが――ドオオオォォォォン!!
突然扉が吹っ飛んで何かが飛び込んできた。なに、何が起きたの!?
「ユキちゃーん!! 夢子ちゃんがいじめるのー……!」
聞こえた声は創造神のポワーンとした声だった。
お付きのメイドにいじめられたくらいでわざわざ扉吹き飛ばしてこないで欲しい。
誰が直すと思っているんだ。ああ、もう頭痛くなってきた……。
「苛めてなどいません、神綺様」
わ、夢子さんもきた!? すごい執念、神綺様何やらかしたんだろう……
「私はどうして私に黙って新しく住人をお創りになられたのかお聞きしたいだけですわ」
「だって、夢子ちゃんに勝手に創ってること知られたら折角の自信作壊されたり取り上げられたりしちゃいそうだったんだものー……あ、マイちゃん壊さないでね!」
「そうですね、他の者に危害を加えるような作品でしたら……今すぐにでも壊します。」
「夢子ちゃんやめてー!」
マイが……壊される……!? ドクンと心臓が大きく鼓動するのを感じる。
いやだ、今気づいたばかりなのに。これから二人で頑張っていかなきゃいけないのに……
「やめて、夢子さん! マイを殺さないで!」
「ユキ……?」
「マイは私の友達で! 相棒で! 恋人なの! もしマイを壊したら、
もしマイを殺そうとするなら……私があんたを壊す!」
大見得切るのはいいけど勝てるのか? 不意に頭にそんな言葉がよぎる。
勝てる勝てないの問題じゃない、勝たなきゃマイは……マイは――
「あら、やる気なの、ユキ?」
「マイを殺すなら、たとえ夢子さんでも容赦しない!」
「ふふ……あっはっはっはっは……」
私がそう言うと、夢子さんは突然笑い出した。なにかおかしなこと言った?
「まったく、もう。相変わらずユキはせっかちでおっちょこちょいね」
呆れたように夢子は苦笑いを浮かべ、短剣を懐にしまう。
マイを一瞬みたあと私の方を向き口を開いた。
「大丈夫、壊さないわよ。
他の者に危害を加えるようであれば壊したかもしれないけど、
その子が他の者に危害を加えるような子じゃないって言うのは貴方の態度でわかったしね」
「え、じゃあ……」
「あなた、ユキを大切にするのよ。きっとその子は貴方を守ってくれるから……」
「じゃあ、神綺様このことに関してたっぷりと聞きたいことがあるのでそろそろ帰りましょうか……」
「え、やだ、夢子ちゃんなんか怖い!」
そんなやりとりをしつつ、夢子はウインクをして神綺様を引きずりながら帰っていった。
えっと、とりあえずマイは殺されなくて済んだ。よかった。
そう思ったら、膝の力が抜けた。へなりと床に座り込む。
「よかったぁ……夢子さん思いとどまってくれたぁ……」
「えっと、ユキ……それよりも……私、恋人?」
照れ隠しにドアが吹き飛んだ衝撃で近くに転がってきた帽子を被る。
「さっき邪魔入ったから言えなかったね。私も、マイが好き。大好きよ、マイ」
言い終わるか終わらないかのうちにマイは私に飛びついてきた。
「ユキ……ありがとう、ユキ……」
少し涙声でそういうマイを抱きしめ返す。
「大丈夫だよマイ、私がずっとついててあげる。私がずっと守ってあげるからね……。」
「ありがとう、ユキ……ありがとう……」
抱きしめる力を強くする。
これからは彼女と生きていこう。
彼女のために生きていこう。
彼女と過ごす一時のために、生きていこう。
そう強く思うのだった。
<了>
オリジナルの設定などございますので、出来ましたら前作を読み終えてからご覧ください。
マイが私の友達になって1週間ほどが過ぎたある日のこと。
外では猛烈な吹雪が轟々と音を立てて私たちの家に襲いかかっていた。
ギシギシと音を立てて家が揺れる。雪が窓を叩き、カタカタと音が鳴る。
そこにはぁというため息が一つ混ざる。風の音にかき消され、ため息は虚空に消える。
「ひーまーだー……やることがなーいー……」
聞く人もげんなりするだろうな、と思うような声で小さく呟く。
外がこんな天気でなければ外に出て魔法の試し撃ちをするところなのだけど、
流石にこんな状況で外に出るほど馬鹿ではない。
そもそも出たところで1時間もしたら凍えて遊びどころではなくなってしまうだろうし、
最悪遭難するかもしれない。
かと言って家にある本はあらかた読みつくしてしまっている。
首都に出かけて新しい本を買おうと思ったらこの天気だ。本当に嫌になる。
「研究……研究かぁ……研究もなぁ……」
少し前までは研究をしていたのだ。だけど途中で手詰まりになって飽きてしまった。
二進も三進もいかない状況になってしまったのだ。
こういう時には一度寝て頭をすっきりさせるのが一番なのだけど、あいにくまだ眠くもなかった。
すぐに新しい魔法を研究する気にもなれないし。そもそも研究ずっと続けるとか面倒だし。
家事をしようにも、こういう日に限って家事はマイの担当日だった。
なぜか私が手伝おうとすると嫌がるし。自分のやり方を崩されるのが嫌なのだろう。
だから私は今何もすることがない。本当に暇すぎて嫌になってしまう。
もう一度ため息をつく。
「はぁ……。」
――なんか溜息ついたらもっと憂鬱になったなぁ……。
気分転換に紅茶飲もうかなぁ……。でも一人で飲むのはマイに悪いしなぁ。どうしようかな。
うーん……最近一人で飲んでも前ほど楽しくないんだよなぁ……。やめとこう。
一瞬頭に浮かんだ一人で紅茶を飲むという考えもそうして却下された。
今やれることはただぼんやりと虚空を眺めて暇だ、暇だと呟くことだけ。
無意味で生産性がないのは分かっているけど本当になにもすることがないのだ。
そうして何も考えずにぼーっとすること5分ほど。何気なくマイの方を見ると、
9割方仕事を終えて仕上げの掃き掃除をしているところだった。
ちょうどいい、二人でティータイムにしよう。
どうせマイも掃除が終わったら研究か読書くらいしかやることはないだろうし。
「ねえマイ、お掃除終わったらティータイムにしない?片付けやるから」
「……いいわよ。テーブルの準備はしておくわね」
よかった、了承が得られた。断られたらどうしようかとちょっとだけ思っていたのだ。
「それじゃあ、淹れてくるね!」
「……ユキが研究してる間にスコーン作ったんだけど、食べる?」
「わ、なにそれなにそれ、食べたい! どこにあるの?」
「奥の棚に入れてあるわ……」
何日か前に食べたマイの手料理が美味しかったことを思い出して私ははしゃいだ。
きっとお菓子も美味しいはず。楽しみだ。
「一人で食べようと思ってたけど、まあいいか……」
「ん、何か言った?」
「なんでもないわ……早くしましょ」
「そうだね、じゃあ準備してくるね!」
そういうと、私はキッチンへと早足で移動した。
水を入れて、ケトルを火にかける。沸騰したのを見計らい、ティーポットにお湯を入れて温める。
ポットが温まったら、一旦お湯を捨て紅茶葉の缶を取り出す。
秋摘みのダージリンは蓋を開けるとふんわりと辺りに甘い香りを漂わせる。
茶葉を少し多めにティーポットに入れて、ケトルからお湯を入れ、しばらく待つ。
その間にミルクを取り、自分のカップに入れた。
ちょうどよい濃さになった紅茶をカップに注いで、スコーンの隣に置く。
さあ、楽しいティータイムの始まりだ。
「マイー、紅茶淹れたよー。そっちの準備は終わったー?」
「ええ、今終わったところ……」
「じゃあティータイムにしましょうか!」
そういうと、私はさっそくスコーンを口に運ぶ。
混ぜ込まれたチョコの甘味と、生地の甘味とが混ざり合って口の中に広がった。
「……どう?」
「すごくおいしい! マイやっぱり料理上手だねー……」
「ありがと……お料理好きだから神綺様のところにいた時からよくやってたの……」
「ああ、やっぱり料理好きなんだ。上手だもんねー」
「あとは、お掃除も好き……」
「すごーい、私は掃除大嫌いだよ……。マイはいいお嫁さんになれそうだねー」
そういうと私は紅茶を一口飲んでマイの方を見る。
――そういえば、1週間くらい一緒にいるけどこの子のことあんまり知らなかったな……。
聞いてみようかな。
「ねえ、マイ。他に好きなこととか好きな物とか何かある?」
「研究とか、考え事とか、色々あるわ……でもね……」
「でも?」
「でもね、一番好きなのはユキ、かな……」
「え、え、ふえぇ!?」
え、なにそれ! なにそれ! 確かにマイは可愛いし、友達としても好きだけど、
一番好きなのが私!? え、いや確かに好きだけど同姓だよ……え、え、どうしよう!
「ふふ、嫌いな掃除手伝おうとしてくれるところとか、簡単な嘘もすぐに信じちゃうところとか、そうやってすぐに焦りだすところとか大好きよユキ……」
「あれ、なんかちょっとひどいこと言われてる気がする!?」
本当にこの子は私のこと好きなのだろうか。一瞬疑問に思った。
「後半は冗談だけど、ユキのこと好きなのは本当よ……?
ねえ、返事聞かせてくれる……? ユキは、私のこと好き?」
少しだけ潤んだ瞳は確かに私をまっすぐ見ていた。
よく見ると顔が少し赤らんでいる。それに、少し震えていた。
ああ、この子は本当に――。
「ユキ……やっぱり、だめかな? 同姓、だもんね……」
泣きそうな顔でマイがこちらを見てくる。
これ以上この子のこんな顔見ていられない。見ていたくない。
覚悟を決めてすぅと息を吸い口を開く。
「マイといた時間は短いけれど、マイがすごくいい子だってことはわかってるし、これからもずっと一緒にいたいの」
そこで私は一度言葉を切る。やはりまだ躊躇してしまう。
だけど勇気を出してもう一歩だけ踏み出すことにした。二人のために。
二人で歩く人生という名の道に。
「私、私もマイのことが――ドオオオォォォォン!!
突然扉が吹っ飛んで何かが飛び込んできた。なに、何が起きたの!?
「ユキちゃーん!! 夢子ちゃんがいじめるのー……!」
聞こえた声は創造神のポワーンとした声だった。
お付きのメイドにいじめられたくらいでわざわざ扉吹き飛ばしてこないで欲しい。
誰が直すと思っているんだ。ああ、もう頭痛くなってきた……。
「苛めてなどいません、神綺様」
わ、夢子さんもきた!? すごい執念、神綺様何やらかしたんだろう……
「私はどうして私に黙って新しく住人をお創りになられたのかお聞きしたいだけですわ」
「だって、夢子ちゃんに勝手に創ってること知られたら折角の自信作壊されたり取り上げられたりしちゃいそうだったんだものー……あ、マイちゃん壊さないでね!」
「そうですね、他の者に危害を加えるような作品でしたら……今すぐにでも壊します。」
「夢子ちゃんやめてー!」
マイが……壊される……!? ドクンと心臓が大きく鼓動するのを感じる。
いやだ、今気づいたばかりなのに。これから二人で頑張っていかなきゃいけないのに……
「やめて、夢子さん! マイを殺さないで!」
「ユキ……?」
「マイは私の友達で! 相棒で! 恋人なの! もしマイを壊したら、
もしマイを殺そうとするなら……私があんたを壊す!」
大見得切るのはいいけど勝てるのか? 不意に頭にそんな言葉がよぎる。
勝てる勝てないの問題じゃない、勝たなきゃマイは……マイは――
「あら、やる気なの、ユキ?」
「マイを殺すなら、たとえ夢子さんでも容赦しない!」
「ふふ……あっはっはっはっは……」
私がそう言うと、夢子さんは突然笑い出した。なにかおかしなこと言った?
「まったく、もう。相変わらずユキはせっかちでおっちょこちょいね」
呆れたように夢子は苦笑いを浮かべ、短剣を懐にしまう。
マイを一瞬みたあと私の方を向き口を開いた。
「大丈夫、壊さないわよ。
他の者に危害を加えるようであれば壊したかもしれないけど、
その子が他の者に危害を加えるような子じゃないって言うのは貴方の態度でわかったしね」
「え、じゃあ……」
「あなた、ユキを大切にするのよ。きっとその子は貴方を守ってくれるから……」
「じゃあ、神綺様このことに関してたっぷりと聞きたいことがあるのでそろそろ帰りましょうか……」
「え、やだ、夢子ちゃんなんか怖い!」
そんなやりとりをしつつ、夢子はウインクをして神綺様を引きずりながら帰っていった。
えっと、とりあえずマイは殺されなくて済んだ。よかった。
そう思ったら、膝の力が抜けた。へなりと床に座り込む。
「よかったぁ……夢子さん思いとどまってくれたぁ……」
「えっと、ユキ……それよりも……私、恋人?」
照れ隠しにドアが吹き飛んだ衝撃で近くに転がってきた帽子を被る。
「さっき邪魔入ったから言えなかったね。私も、マイが好き。大好きよ、マイ」
言い終わるか終わらないかのうちにマイは私に飛びついてきた。
「ユキ……ありがとう、ユキ……」
少し涙声でそういうマイを抱きしめ返す。
「大丈夫だよマイ、私がずっとついててあげる。私がずっと守ってあげるからね……。」
「ありがとう、ユキ……ありがとう……」
抱きしめる力を強くする。
これからは彼女と生きていこう。
彼女のために生きていこう。
彼女と過ごす一時のために、生きていこう。
そう強く思うのだった。
<了>
次回が凄く楽しみですよ!
次は、ユキとマイのキャラクター性にスポットを当てた話が読んでみたい!
タイトル、考えられてますねぇ。
いい話の中に、この神綺様はww