※夏なのにレティが巫女の家にいますが気にしない。
「レティー!しんでないかー?!」
ばざーん、と勢いよく草むらの陰から現れたのはチルノだった。挨拶代わりになかなか物騒なことを言いながら、彼女は博麗神社の縁側でかなりくたばっているレティのもとへ駆け寄った。
「あらチルノ、久しぶり~。死んではないけど融けそうね~」
縁側でうつ伏せに突っ伏しているレティ。補足しておくと、この時間縁側は陰ができてそこそこ涼しい。でも気温に大差はなく、吹く風は熱風と言ってよかった。
レティは、まだ笑顔で冗談を返せる程度には元気であるらしかった。チルノも、
「大丈夫だ!とけたらわたしがこおらせてもどしてあげる!」
と返す。妖怪と妖精の会話でなかったら何言ってるんだこいつら、となるところだ。
とそこへ
「縁起でもないからやめなさいな、あんたら。」
と、呆れたような顔をしてこの神社の巫女であるところの、博麗霊夢が現れた。手にはお盆、お盆には冷たい麦茶と団扇(自分用)があった。
「ありがとう霊夢~」
レティは霊夢からグラスを受け取り、冷たい麦茶を一気に飲んだ。
「レティはライフを15 かいふくした!」
「何言ってるのよ」
ぴしゃりとたしなめられるチルノ。子供は元気だ。
訂正。チルノは冷気を操れるので気温なんて関係なかった。
そりゃいつでも元気だ。
霊夢はチルノをたしなめたその手をなでつつ
「アンタ冷たくていいわね。というか冷気操れるのよね?丁度いい、私たちを涼やかにしなさいな」
とミコミコルールを発動しようとしたものの、チルノは
「ムリだよ~、いくらさましてもすぐあつくなるんだもん」
と返した。
しばらくきょとんとしていた霊夢だったが、
「……っ、ちょっと、どういう意味よ、それ!」
と顔を真っ赤にして言った。はて、どういう意味やら。
チルノ本人は笑って、
「アハハ。じゃあカキ氷作ってくる!ちょっと待ってて!」
と言って台所の方へ走っていった。
駐:廊下は走ってはいけません。
さて、残された霊夢とレティはというと、
「…まったく、この私をからかうなんて、お仕置きが必要かしら?」
「ふふ。れいむったら、照れてる~」
「うるさいうるさい。やめてほっぺた突付かないで」
…おお熱い熱い。
「チルノはああ見えて、とっても鋭いんだから。ある意味では貴女よりも鋭いかもよ?」
「どういう意味よそれ。」
「………さあてね。」
「……………………教えなさいよ」むに~
「いひゃいいひゃい~」
「ほっぺた突付いた罰よ。この~」
「れひむ~」
《雪符『ダイアモンドブリザード』(弱)!!!》
「ひあっ!!?」
突如として現れた強冷風にびっくりした霊夢が辺りを見回すと、お盆の上にカキ氷を3つ載せたチルノが戻ってきていた。
チルノは、いたずらっぽく、困ったような表情をつくると
「ほら~、だから言ったじゃん。いくら冷ましてもアツくなるって。」
と言って、2人にカキ氷を手渡した。
霊夢はイチゴシロップ、レティはみぞれ、チルノはブルーハワイだった。
縁側に座り、3人で仲良く並んで座る。
涼しげに風鈴が鳴り、穏やかな夏の午後である。
すると、
「あやややや?今日はまた一段と平和な光景ですねえ。」
射命丸文が空から降りてきた。
「あらパパラッチ。残念ね。縁側はもう満席よ。」
平然と言い放つ辺りが霊夢である。
文は苦笑して、
「相変わらず酷い言い草ですね。まぁいいですけど。」
と返した。いい写真ももう収めましたし、とも言った。
あら撮られてたのね。と声に出したのはレティだった。
霊夢は平静を装っていた。
チルノは何故か突然嬉しそうな顔をした。
すると文は、何かを察知した様子で、
「どうしましたチルノさん?――ああ、写真が見たいのですか?いいですよ。後で見せてあげます。」
と言った。口元に笑みを浮かべつつ文はこう続けた。
「本当にいい写真ですよ?霊夢さんとレティさん、そしてチルノさんが
本 当 の 家 族 み た い で 。」
その時、3人は、レティと霊夢の間にチルノが割って入る形で座っていた。妖精のチルノが小さいだけに、さながら親子のようだった。
文のその発言を聞いてチルノは一気に嬉しくなって
「本当か?!本当かあや!」
と言いつつ立ち上がって文のもとへ駆けていった。
その隣でレティは
「あら。そうするとさしずめ私とれいむが親で、チルノが娘ってとこかしら?」
と言った。文は「まさしく!」と笑顔で答えたが、それを聴いていた霊夢がまた真っ赤になった。
「な、何で姉妹とかじゃなくて親子なのよ!」
「私と夫婦はいやかしら~?」
「嫌とかそういうのじゃなくて、~~~~ほら!もう!」
霊夢は言葉が出てこなくてじたばたしている。可愛い。
そこへ文が
「さて、ところでレティさん」
と割って入った。
レティが
「何かしら?」
と答えると、
「いや、お母さん、チルノを嫁にください!」
と、チルノを引き寄せてそう宣言した。
「あら、あなたたちそんな仲だったの?お母さんびっくりしたわ~」
レティはノリノリだった。
この事態に慌てたのはチルノである。
「ち、ちょっとあや!?!何言ってるのよ!レティも!」
今度はチルノが顔を真っ赤にする番だった。
けれど文が
「私のお嫁さんになるの、嫌ですか?」
と言うと、チルノは恥ずかしそうに
「え、いや、じゃ……ないよ。」
と答えた。文の顔も紅潮していく。
レティは
「あら、人前でなんて、若い人はいいわね~」
なんてノリノリで言っていた。
ツッコミは漸く復活した。
「いつまで茶番やってるのよ。全く。」
しかし今の3人は誰にも止められなかった。
「あら、誰も偽ったことはしていないわよ。」
とレティが言えば
「そうですね。チルノさん、私は貴女のこと、好きですよ。」
「あたいも、あやのこと、だーいすき!」
と文チルが返し
「私も、れいむが好きよ~」
と言って、レティが霊夢を抱きしめてしまえば、これでもう霊夢も茶番劇の参加者である。
もう霊夢には
「……うっさい、ばか」
と言って顔をレティの躰にうずめるしか無かった。
その様は、逆に文とチルノの方が赤くなるくらいだった。
うむ!
それで十分だった
名言だなぁ・・・幻想郷は今日も大甘ですなぁ