…いつからだろう、彼女を好きになったのは
自分自身もまさか女の子を好きになるなんて思わなかった
でも、そんな『小さい』問題はどうでもいい
ただただ、彼女が愛しい
笑顔をずっと見ていたい
泣かせたくない
…泣かせ…たく…ないのに…
私と少女は違う存在
いつか絶対に別れが来る
ほら、もう来た。まだまだやりたい事があったのに…
『早苗…、さなえぇ…』
『泣か…ないで下さい…小傘さん』
運命は残酷で容赦がない、現人神なんて呼ばれてた自分が何も出来やしない
そして私は小傘さんにあまり力が入らない手を伸ばす
彼女は私の手をしっかりと握ってくれる
…そろそろ限界だろう。自分の事は自分が一番分かる
『小傘さん…また…いつか――』
『さな、え?』
駄目だ、もう声が出ない。手招きで小傘を呼ぶ
そして小傘さんの耳元で囁く
道がつねにあなたの前にありますように。
風がいつもあなたの背中を押してくれますように。
太陽があなたの顔を暖かく照らし、雨があなたの畑にやさしく降り注ぎますように。
そしてふたたび会う日まで、
神様がその手のひらであなたをやさしく包んでくださいますように…。
そして小傘さん、私は貴方が――
そこで私は力尽きた
ほら運命は残酷だ、私が愛す人のために最後まで言わせてくれやしない
私は目を開ける
今、私は白く果ての見えない世界に居る
後悔なんてもうしたくない
弱い自分はもういらない
私は東風谷早苗、奇跡を起こす風祝
私はもう負けません、運命なんて『退治』してやります
これは自分勝手かもしれない、でももう小傘さんの涙を見たくない
なら出来る事をしよう
これが自分への誓い
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気付くとそこは『道』だった。
果てのない黒に橙色の道が急ではない傾斜で続いている。
歩く
――ここは何処だろうか――
進む
――何処まで続いているのだろうか――
行く
――何処に着くのだろうか――
体感時間などとっくに失われている中、早苗は一歩一歩確実に進む。
――神奈子様――
道に後ろは無い
――諏訪子様――
道に空は無い
――…小傘さん――
道に在るのは終わりだけ
道の遠くに光が見えた。
???
「いらっしゃい」
光を越えるとそこには青い髪の少女が立っていた。
「貴女は…天子さん?」
「ええそうよ、比那名居天子。今度は覚えておいてね」
「分かりました。それで天子さん、此処は何処ですか?」
「…ここは天界、天人が住む場所よ」
少し影のある表情で天子は告げる。
此処にいい思い出は無いと。
「…何かごめんなさい」
「いいのよ、貴女には関係ないもの。こっちも早く仕事終わらせたいし」
「すいません…。それで、此処が天界なら下りれば幻想郷に戻れるのではないのですか?」
「無理ね、貴方は死んでいるどころか今あなたはどこぞの幽霊よりも存在があやふやだもの。幻想郷どころか此処から離れれば死ぬわ」
「…死んでいるのに死ぬんですか?」
「訂正、存在の死よ。別に記憶から消えたりはしないけど輪廻転生は二度と戻れないわ」
「それでは私はどうすれば…」
「どうかされるために貴女は此処に来たの、どうかするために私は来たの。簡単よ、肉体はもう無い、だから肉体無しで存在できる体、つまり神になればいいのよ」
「そう簡単に言われても…」
「そ、でもなるしか貴女には選択肢は無いの。来なさい、神になる方法を教えてあげる」
天界、????
「着いたわよ」
「ここは?」
「…ここは『 』よ」
「…え?」
「だから『 』。名前の無い消えた地よ」
「それでどうすればいいのですか?」
「ここから『 』に入れるわ。後はただ居ればいい」
「はぁ…」
「ちなみに私は行かないから」
「分かりました。…行ってきます」
「分かった。じゃあね」
そう言って早苗は『 』へ消えて行った。
「いってらっしゃい早苗、名前すら消え行く忘却の地へ…」
天界、『 』
「…?何も無いですね」
『早苗、聞こえる?』
「天子さん?」
『まだ通じるみたいね、でももう少ししたら通信切れるから』
「?それで私はここで何を…」
『だから何もしなくていいの。…そろそろね』
「!!?」
急に体から力が抜け受け身も取れぬままうつ伏せで地面に倒れる。
『…始まったわね。早苗、消えてしまわない事、それが試練よ』
「消えるなってどういう…」
『限界ね…それじゃあ』
「あ…」
そして天子との通信は途切れた。
体が指一本動かない?
どういう事?力が入らないんじゃなくて動かない。
それに消えるなって…
分からない。
…小傘さんは元気でしょうか。
神奈子様も諏訪子様は大丈夫だと思いますが小傘さんはちょっと心配です。
ちゃんと人を驚かせられているか。
ひもじい思いをしていないか。
…少し眠気があるという事は眠れるのでしょう。
……お休み。
ん…相変わらずの白い世界ですね。見飽きました。
神になる試練…これの何処が…
…とっくに時間の感覚なんて消え失せました。
何か違和感も感じますし…一体いつまでここに居れば…
ん…寒い。
体が動かないので体を磨って暖めることも出来ません。
寒い?違う。
もっと…体の中から凍って行くような…
違和感はどんどん広がって行く。
体が動かせないという状況だけでも違和感で一杯なのに。
おかしい、視界がぼやけてくる。
ピントが合わなくなっていく。
違和感の理由が分かった、それは喪失。
最初に体の自由が喪失しそれからどんどん体の機能が喪失していく。
今は視界が……!!
そして光が消えた。
触覚が消えた。
自分が浮いているような気持ち悪い感覚に襲われる。
また幾らか経って頭が慣れたようだ、気持ち悪さが消えていく。
黒い世界で一人。
多分このままだと記憶が消えていくだろう。
そして自我が喪失した時私は消える。
やはり危惧したとおり記憶が消えて行っている。
何故なら思い出せる人数が減っている、そろそろヤバいかも知れない。
ついに前回数えた数さえ思い出せなくなった。
―――――――ここで私は何をしているんだろう。
―――私は…誰?
天界、『 』前
「ふわぁ…暇だぁ」
『 』へ続く門の目でくつろぐ天子。そして――
ピシッ
「!!?」
ピシッ、ビキッ、ギギッ!!
「…何事?」
そう言いながら非想の剣を構える。
ミシッ!!ガッ…ギギギ…キシッ!!
「どっせーーーい!!!」
空間の亀裂の中から早苗が無理やり出てきた。
「…『奇跡的』なスピードね、どう?気分は」
「…最高で最悪です」
「どっちよ…」
「最悪です」
「そう…で、どうだった?無我の境地のさらに奥、不可説不可説転は」
「二度とゴメンです」
「そう」
「それで…貴方は誰ですか?」
「…は?」
「私の事…知ってるんですよね?」
「…まさか」
妖怪の山、守矢神社
「おい!早苗が帰って来たぞ!!!」
「本当か!!?諏訪子!!!」
「早苗!!?」
「あ、えっと…その、始めまして。東風谷早苗と申します」
「…へ?」
「…今…?」
「早苗?」
すっと早苗の後ろから出て三人に現状を淡々と告げる。
「…今のこの子は貴女が知ってる早苗じゃないわ」
―――あの子は…死んだ。
最高だ!GJ!
意識して書けば出来るじゃないか。
唯 様
ありがとうございます!!
下上右左 様
元々出来たよ!?やらなかっただけで!!
奇声を発する程度の能力 様
いつもありがとうございます!!
通りすがり 様
…あの時はどうかしてました。