土用の丑の日だから、慧音は牛が食べたくなった。牛鍋である。
文明開化を目指して一路進むは妹紅の屋台。
おもむろに座る。優雅に座る。堂々と座る。立って座ってわざわざ三回。見せつける感じ。
「……何事だ慧音」
妹紅の視線はクールである。冷たいともいう。
訝しげな眼光をニヒルな笑みで受け流し、指を一本立てた慧音は歌うように注文を告げる。
「砂肝一本」
「品切れだ」
慧音は椅子を折って地面にひれ伏して世の欺瞞を呪った。
「……後で弁償な」
「出世払いで」
何を持って出世という気なのかと思ったが、今の不景気ではろくに金もないだろうとそれで承諾した。
慧音は思う。満月の夜がヤバいと。あれは出世だったのだ。一日署長さんみたいなものだったのだ。
しかし慧音、食べたいものがないという不満をどうしたものかと妹紅を睨む。
「土用の丑の日だから、牛が食べたいの」
「砂肝って鳥だぞ」
ごろごろと地面を転がる慧音。
真っ黒である。
「鳥の何が悪い!」
「え!? いや、悪いとは言ってない!」
何故怒られたのか判らず一瞬怯む妹紅。その心に過ぎるのは、面倒な客に絡まれたという素直な感想。
「兎だって一羽って数えるんだぞ!」
「だからなんだ!」
自前の焼酎を一気飲みして慧音は満足げ。
「だから、じゃぁ、えっと。ハチノス」
「牛は取り扱ってない」
「じゃあレバー」
「ほい」
生でご来場。
慧音のミノにイン。
「うまー」
「そら好かった」
慧音の顔は後光が差していた。
「やっぱり丑の日には牛ね」
「それ鳥な」
鳥と牛は似た漢字だから好いという解釈不能の暴論で妹紅に説教をかます慧音は、ぐっだぐだであった。
「なぁ慧音。一つ気になってたんだが」
「ん~?」
頬に朱を差す好い酔い具合。けれどこれは自前の酒。妹紅の儲けレバーだけ。
「土用の丑の日に喰うのは、鰻じゃないか?」
「……!」
慧音は一升瓶を取り落として嘆いた。
この後、慧音は家に帰り柳川を食べて寝た。
文明開化を目指して一路進むは妹紅の屋台。
おもむろに座る。優雅に座る。堂々と座る。立って座ってわざわざ三回。見せつける感じ。
「……何事だ慧音」
妹紅の視線はクールである。冷たいともいう。
訝しげな眼光をニヒルな笑みで受け流し、指を一本立てた慧音は歌うように注文を告げる。
「砂肝一本」
「品切れだ」
慧音は椅子を折って地面にひれ伏して世の欺瞞を呪った。
「……後で弁償な」
「出世払いで」
何を持って出世という気なのかと思ったが、今の不景気ではろくに金もないだろうとそれで承諾した。
慧音は思う。満月の夜がヤバいと。あれは出世だったのだ。一日署長さんみたいなものだったのだ。
しかし慧音、食べたいものがないという不満をどうしたものかと妹紅を睨む。
「土用の丑の日だから、牛が食べたいの」
「砂肝って鳥だぞ」
ごろごろと地面を転がる慧音。
真っ黒である。
「鳥の何が悪い!」
「え!? いや、悪いとは言ってない!」
何故怒られたのか判らず一瞬怯む妹紅。その心に過ぎるのは、面倒な客に絡まれたという素直な感想。
「兎だって一羽って数えるんだぞ!」
「だからなんだ!」
自前の焼酎を一気飲みして慧音は満足げ。
「だから、じゃぁ、えっと。ハチノス」
「牛は取り扱ってない」
「じゃあレバー」
「ほい」
生でご来場。
慧音のミノにイン。
「うまー」
「そら好かった」
慧音の顔は後光が差していた。
「やっぱり丑の日には牛ね」
「それ鳥な」
鳥と牛は似た漢字だから好いという解釈不能の暴論で妹紅に説教をかます慧音は、ぐっだぐだであった。
「なぁ慧音。一つ気になってたんだが」
「ん~?」
頬に朱を差す好い酔い具合。けれどこれは自前の酒。妹紅の儲けレバーだけ。
「土用の丑の日に喰うのは、鰻じゃないか?」
「……!」
慧音は一升瓶を取り落として嘆いた。
この後、慧音は家に帰り柳川を食べて寝た。