Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

こみけ

2010/08/17 04:39:47
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違う世界では自分たちがどんなことになっているか想像も付かないものである。
つまり未知の世界。だから知らなかった、私たちがあんなにも人気があったなんて。





「…コミックマーケット?なにそれ」
「知らないわよ私も」
「…漫画市場?」
「紫がね、外の世界というか何と言うか、まぁそんな名前の一大行事があるって」

ある日のこと、何時も通り手作りお菓子を片手に神社に顔を出すと、霊夢はそんなよくわからないことを言い出した。
なんでも外の世界では、色々な作家が自ら著した本(同人誌というらしい)を売りにだし、様々な組合(企業というらしい)たちが新作のげーむ?や漫画、グッズをこぞって持ち寄りあうお祭り(戦争とも言うそうで)があるらしい。それがコミックマーケット、通称コミケだそうである。

「でもなんでそんなことを」
「…紫がね。家族みんなで行こうとしたらしいんだけど、橙が風邪引いて藍も看病から離れられなくなったから余りが出たんだって。だから私とアリスに
どうかしらって」
「…これは?」
「出展者目録だって。それがないと入れないとか」
「カタログがチケットなのね」

目の前に出される2冊の本。なにやら絵が描いてあるその本は紅魔の図書館にある禁書よりも分厚く、紙は薄く、書いてある字は小さく、押絵というには多すぎるほどの絵が記されていた。

「凄いわよね。これだけの分厚さ枚数字体でぎっしりと書かれた本が他にもいっぱいあるんだって。しかもほら見てアリス、この本全くズレがない。一体この本を書いたのはどこの天才なのかしら」
「…全くね。会って見たいものだわ。達筆なんてものじゃないわよこれ」

とりあえず、目を通してみる。様々な見たことのない人たちがずらっと並んでいる。絵柄もバラバラで個性に満ちており、これ単体でもう絵画本として確立できるのではないかと…あ。

「ちょっとこれあなたじゃないの」
「ちょっとここあんたじゃないの」

指を伸ばした先には、幻想郷において私が見違えるはずがない人物、霊夢が描かれていた。さらに霊夢が指差した先を見るとそこにはなんと私の絵が。
それも一つではない。互いにいくつもの違った霊夢と私が描かれているところがあるではないか。

「どういうことなの一体」
「こっちが聞きたいわよそんなの…紫!」
「御用かしら」
「うわ!変なとこから出てくんな!!」
「湯飲みから手が生えてきた…」

改めて紫に聞いてみたところ、とにかく

「何故載ってるかは気にしないで。とにかく、あなたたちは明日の出発までにこれ見て何が欲しいか決めておくこと。詳しいことは現地で話すから大丈夫。あと服装は何時も通りでいいわ。変におしゃれする必要はない。自然体で。あとなるべく離れないようにね。紐なり手を繋ぐなどして決して離れ離れにならないように。あとはハンカチやお水を必ず持参ね。…あ、心配せずともお金はこっちでなんとかするから」

とだけ早口でまくし立てると何事もなかったようにまた湯飲みの中に消えていった。子供が見たら絶対トラウマになるんだろうな。

「とりあえず今日はもう帰るわね霊夢」
「あぁ!!やられた!最後にとっておいたアリスのお菓子がない!!紫の奴…!」
「はいはい、明日も持ってくるからね」





当日。

「ふぁ…。昨日はあまり寝れなかったわ。おはよ霊夢」
「はぁ~。ああ、おはよ。なによあんた寝不足?」
「昨日人形の手入れしてたら遅くなって。霊夢こそ寝不足でしょ」
「ああ、昨日暑かったから寝つけなくて」
「決して目録を隅々まで見てあんたの出てる本を探してたわけじゃないからね」
「決してカタログを全部見てあなたの出ている本を探してたわけじゃないわよ」
「え?」
「え?」





「ここが到着駅よ」
「…駅ってトイレじゃないの」
「まあまあ、とにかく、会場に入るわよ」

その後、紫の案内によって会場についたわけなのだが、中を見渡して霊夢ともども絶句してしまった。
人、人、人。どこを見ても確実に2,30人は視界に確認できてしまうほどの人だかりだ。それに

「あ、あれは魔理沙?…てそんな訳ないわね。魔理沙は来てないし第一あんなに体つきが逞しくないわ」
「あれは天子かしら。でも何かが違う…あ、胸が大きいんだ」
「どういうことかしら霊夢」
「これが…、紫から聞いてはいたけどこすぷれってやつね」
「あ、あのリグル…男の人…?」

一体ここはどんな世界なのか。こんなに幻想郷の乙女たちの姿を形どった人たちがいるなんて。

「紫、何よこれ。…紫?」
「先に行くって。ま、止まってても始まらないしいこっか霊夢」
「え?ええ。…てちょっと!?」
「何?」
「な、なんでも…ない。(ああああのアリスが私の手を握って不味い落ち着いて霊夢手汗なんかかいてる場合じゃないわよ!?)」
「…?」

「…なあ、あの子達なんか凄くないか」
「ん?誰だよ」
「ほらあれ。霊夢とアリスのコスプレの」
「うわっほんまやレベルたかいなぁ」
「すげー!あれほどのレイヤーが居たとは」
「声かけてみようぜ!なに大丈夫だろ少しくらい」
「あ、ああ!…てあれ」
「もう居なくなって…?」
「なんだか、眠く…」

「…いけない子たちね」





疲れた。非常に疲れた。妖怪である私でさえこんなにへとへとだから、霊夢はもっとつかれていることだろう。
目を横に向けると、彼女は畳に手足を投げ出してからからになっていた。

「疲れたわね」
「死にそう」
「嫌ね。悲しいじゃない」
「比喩よ」
「解ってるわ」

あれからお互いに目星をつけたところに出向いてはお買い上げし、その度に店番の人たちから感嘆の意のこもった視線を受け、1日中楽しんで帰還してきた。互いに何を買ったはよくわからないが確認する余裕もなかった。
神社に着くころにはお互い満身創痍で会話すら碌にできなかったが、馴染みある神社に帰ってきて多少余裕ができたのかぽつぽつと言葉を交わしていく。

「とりあえずさ、アリスはなに買ったのよ」
「何だっていいじゃない」
「けちね」
「いい女には秘密はつき物よ」
「いいわよ勝手に見るから」
「強引ね」

霊夢の手から袋を奪い返そうとするも消耗した体は自由には動いてくれず、かわされてしまい、そのまま霊夢は中を覗き込んでしまう。
すると動きがぴたっと止まり、まるで何かと参照するように私の買ったモノを見ていく。ふと見上げると顔が赤かった。

「私の本ばっかり。半分くらい」
「当たり前じゃないのあなたなんだから」
「…ありがと」

そういって恥ずかしそうに目を逸らしながら赤くなった顔で礼を言う彼女。ずるいなぁ。なんだか見られたことがどうでもよく、いや嬉しくなってしまうではないか。恥ずかしい。これでは不公平というものだ。私だって確認させてもらわなければ。

「シャンハーイ」
「え?あ、こら上海!」
「ありがと上海。霊夢あなただって見たんだから私だって見させてもらうわね」

霊夢に見せ付けるように袋を開き中を確認する。すると。
…なんだ。人のこと言えないじゃない、これ。

「私の本ばっかり。半分ほど」
「当たり前よ。あんたなんだから」
「…ありがと」

自然と顔が暑くなる。いけない、多分部屋の温度が高いからだ。冷たい紅茶でも入れて落ち着こう、とにかく。

「…ねぇ、アリス」
「ん?」
「ありがとね」
「え?」
「今日、私の格好した人たちいっぱいいたけど、似たような体格の人だっていたけど、全然全く間違えなかったでしょ?私のこと」
「当たり前じゃない。あなたなんだから」
「…うん。そっか」
「でも、あなたも間違えなかったわ」
「…当たり前じゃない。あんたなんだから」
「…ありがと」

今日、一緒にコミケなるものに行って良かったと思う。可愛い霊夢からかっこいい霊夢まで様々な霊夢の本が買えたし、理由をつけてとは言え霊夢の手を握れたし、あなたが私のことちゃんと見てくれてるってわかったし。また機会があったら連れて行ってもらおう。そのときは今日よりもっといっぱい霊夢の本を買ってやるんだ。とにかく今は暑くなった頬を冷ますため、冷たい紅茶でも淹れようか。


後日。
「よ!霊夢、アリス」
「ああいらっしゃい魔理沙」
「ん?なぁ霊夢。これらの本はなんだ?」
「ああ、こないだアリスと一緒に買って来たの」
「ええ、そうよ」
「ほー。しかし、霊夢が表紙の本にアリスが表紙の本ばっかりだな」
「そりゃあね」
「…それにここの本の山、同じやつが2冊づつあるじゃないか。しかも霊夢とアリスが映った奴だけ」
「当たり前じゃない」
「ええ。当たり前」

結局のところ、残りの半分はお互い同じ本を買っていたようだ。勿論、あなたと私の本を、ね。…当然か。
もし幻想乙女たちが(蓮子たちの世界で)コミケや例大祭に来たとしてもレイヤーと思われるだけなんだろうなぁ。あと霊夢もアリスもレイアリ本ははずさずチェックするんだろうなぁ。

今回は冒険しすぎました。夏風邪、夏バテ、家族が容赦なくつけるクーラーによる下痢にうなされながら書いた一品です。出来の悪さは1,2を争うくらいでしょう。ワンパで申し訳ない。

ああ、頭が痛い。体が重い。お腹が痛い。ちょっとお手洗いにいってきます。
…私、これが終わったらアイス食べるんだ…。
なるるが
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コメント



1.へたれ向日葵削除
甘く繰り返されるやりとりが素敵でした。
私は良かったなぁって思います
2.名前が無い程度の能力削除
甘々な本編もいいけど、湯呑みの妖精みたく出てきたゆかりんが一番ツボだった
3.奇声を発する(ry in レイアリLOVE!削除
甘くて素敵でした!!!
4.名前が無い程度の能力削除
レイアリのネチョいのがその本に入っていたら…
…ゴクリ
5.なるるが削除
コメントありがとうございます。

>>へたれ向日葵さま
くどくないかと心配でしたが…
そう言って頂けるとこの私もSSも喜びます!

>>2さま
ちなみに紫様は他にも薬缶の注ぎ口や風呂桶の中からも登場いたします…。

>>奇声を発する(ry in レイアリLOVE!さま
甘いレイアリは…いつでもいいものです…!

>>4さま
さっき紫様が「あ、あなたたちにはまだ早いわ…!私が預かります!」とか言って没収してましたw