Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ジ・ウラボン・セレナーデ

2010/08/14 01:13:12
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 目覚めたら、十六夜咲夜は茄子なすだった。
「まあ、この時期だしね」
 そういうこともある、と我が主はごく気楽に言ってのけ、咲夜はそういうものかと納得する。トンネル効果の理論に従って言えば、今咲夜の足元の床、また地面、その分子構造を咲夜の身体が波動として透過し、情熱の南米大陸まで落ちてゆく可能性もゼロではないと、科学的に証明されている。世界を論理的に記述するには人間的な直観などあてにならない、とヘンペルも言っていた。
「ちょっと紅茶が茄子くさいのが難点だけれどねぇ」
 申し訳ありません、とつややかに光る紫色のこうべを垂れた咲夜に、別に良いのよ、とレミリア。「貴方の責任ではないわ」
 パチュリーは紫野菜キャラが被るから、と早々に図書館へ引きこもり、今は小悪魔たちが世話をしているはずである。フランドールが晩御飯にカレーが食べたいと言ったが、この時期、夏野菜が具になってしまうカレーはレミリアが許可しなかった。だって、今の状況じゃあ、カニバリズムっぽくてだし、という妖怪らしからざる理由であった。
「じゃあ美鈴をパプリカにしましょう」
 嬉しそうに門の方へ駆けてゆくフランドールと入れ違いに、お邪魔します、とロビーのドアが開かれた。西行寺幽々子であった。
「あら、辛気臭いのが」
「うふふ、遊びに来たのよー」
「ぶぶ漬けならあるけれど」
「もっとおもてなししてよ。せっかくこの時期だし」
「……ああ、この時期か」
 レミリアは納得し、咲夜にお茶菓子を用意するよう命じた。咲夜は粛々しゅくしゅくと業務をこなした。
「茄子っぽいわね」
「茄子っぽいでしょう」
 申し訳ございません、と若干しなびた緑色のヘタをぺこりと下げると、二人はきゃらきゃらと笑った。
「いえ、ご立派よ。太さといい色つやといい」
「うってつけね」
「さて、そろそろお暇させていただくわ」
「フムン。咲夜、見送りなさい」
 そこで、咲夜はふいに今の自らの使命を直感した。咲夜はナイフを割り箸に持ち替え、装着した。それが咲夜の手足の代わりとなった。さあ、お乗りください、と言うと、幽々子はひどく感動した様子であった。レミリアも誇らしげで、「さあ、ゆっくり物見遊山ものみゆさんでもしながら帰ると良いわ」と客人に告げた。幽々子が咲夜にまたがると、咲夜は、紫色のつややかな体を若干しならせて、浮遊した。そうして、牛が歩くような速度で、西へ向かって飛行を開始した。日が暮れ、虫も鳴くゆうべであった。いつしか門に集まっていた美鈴、フランドール、パチュリーとともにレミリアは夜空を見上げた。茄子が亡霊を乗せ、ゆっくり、高く高く空へと上がってゆく。レミリアは、不覚にも、神々しいという形容を使いたくなった自分に驚いた。レミリアたちをはるか地上に見下ろし、茄子はどんどん遠ざかってゆく。やがて、それは小さくなり、もう、夜空に消えてどの星とも見わけがつかなくなってしまった。そうなるまで、レミリアたちは見送っていた。
 そうして、その日の晩餐ばんさんには、美鈴による本格的な麻婆茄子が振る舞われた。



コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
ちょwwwwwインパクトでか過ぎwwwww
2.名前が無い程度の能力削除
茄子になったか・・・では私は胡瓜に・・・
3.名前が無い程度の能力削除
どう反応すれば良いの……
4.名前が無い程度の能力削除
どういうことなの…?
5.名前が無い程度の能力削除
文中でヘタは緑といってるのに、後書きでは紫じゃねえかww
6.名前が無い程度の能力削除
これはいい茄子だ
7.名前が無い程度の能力削除
これが哲学か……
8.名前が無い程度の能力削除
結局食うのかw
へたの分け目が咲夜さんの前髪に見えたから俺はもうだめだ。
9.名前が無い程度の能力削除
お盆で咲夜さんが帰ってきてたんですね…
10.名前が無い程度の能力削除
これは良い盆だ。
11.名前が無い程度の能力削除
タイトルでカノッサ機関ネタだと思ったのは内緒だ
12.名前が無い程度の能力削除
盆はコミケ行っててすいませんでしたァー!
お墓参りしてきます。