Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

あやしいお面屋

2010/08/11 00:17:05
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じりじりと焼けるように暑い太陽の日が降り注ぐ幻想郷。
団扇片手に、畳の上で寝転がる人々も良く見られる季節である。

妖怪の山の登山口には、天狗が数人立っており、山を流れる川へと一緒に行くことが出来る。
夏の期間は、川は特別に人間たちにも開放され、河童や天狗たちも一緒に涼しんでいる。
そこ以外にも、紅魔館近くの湖にも人たちが集まっていた。





そんな暑い幻想郷も、夜を迎えた。

カランッ、カランッ……。

蜩も鳴くのをやめた頃だった。
暗い夜の闇の中に乾いた音が響き渡った。

神社へと続く階段の最中、奇妙なリュックを下げている男が一人。
尋常じゃない大きさのそのリュックからは、カランカランと乾いた音が響く。
歩くたびに聞こえるその音は、不気味でしかなかった。

その者は、不気味なほどに笑顔だった。
目を開けているかどうかもわからないほど、ずっと笑顔のまま。
また、耳はとがっており、どこか妖精を思わせる耳だった。

階段の上からは、騒がしい声が聞こえる。
故にこの男はそちらの方へ足が勝手に動いたのかもしれない。
やがて階段を上った頃には、数名の女の子たちがそこにはいた。

「あら、見ない顔。誰かしら?」

そこには、霊夢や魔理沙、さとりなどの人間と妖怪がいた。
今日は小さな吞み会を開いていた為、彼女らは神社に集まっていた。
当然の事ながら、見たことのない男が巨大なリュックを担いでいれば、不審に思うものである。
疑いの目線をかけるも、男はにっこりと笑った。

「そんなに疑わないでください。私はここに迷い込んだだけの者ですから」
「ふ~ん……」

さとりがじーっとその男を見つめる。
心を読むことができるさとりだが、この男の言っている事はどうやら本当だと確認して、その疑いを解いた。
ふと、魔理沙がリュックを見ると、ところどころにお面がかかっている。
どれも違ったお面で、不思議なお面ばかりである。

「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ。お前の名前は何って言うんだ?」
「魔法使い、ですか。私はただのお面屋ですよ」
「お面屋……か。そんな職業もあるのか~」
「私は趣味で集めているだけです。お面で幸せを届けられるなら、私は喜んでお譲りします」

そういって、お面屋は笑った。
不気味な程の笑みは、辺りのたいまつの灯りで尚更不気味に見えた。
しかし、こんな不気味な奴なんて幻想郷に山ほどいるのだ。
魔理沙は気にせず、仮面屋に話しかける。

「どんなお面があるか見せてくれないか?」
「いいですよ。私のお面をお見せしましょう」

そういって、リュックの隣についた小さなポッケから風呂敷を取り出すと、そこへお面を並べ始めた。
様々なお面がみるみる内に並べられていった。
人間の顔のようなお面や、髑髏のマークが書かれたお面、動物のお面などなど。
見ているだけでも楽しくなるようなお面達が並べられていく。

「わぁ~、おもしろ~い」

そう言いつつ、無邪気に笑いながらお面を手にするこいし。
霊夢や魔理沙達もそのお面を手にして、角度を変えては眺めている。
そんな彼女らを、お面屋は何も言わず、ただただ微笑みながら見ている。

「このお面はどういうものなのかしら」

さとりが手に取ったそのお面。
真っ白なお面に、中央に大きな目が付いており、にっこりと笑っているような口がついている。

「それは、まことのお面と言います。かぶると動物の心が読める、便利のようで恐ろしいお面です」
「そう、これは私の気持ちが他の人にも分かってもらえるお面なのね」
「と、いいますと……。あなたは、人の心が読めるということですか?」
「そう、私はさとりという妖怪。心が読めるのですよ」

そう言って、さとりは微笑んだ。
さとりは、二つ名にもある通り、怨霊にも恐れ怯えられた存在。
それほど、心を読む能力は恐れられ、嫌われてきたのだ。
その気持ちをわかるようになるお面。
さとりは、少し物悲しげな瞳で、そのお面と向き合った。





「このお面はどういうものなんだ?」

魔理沙が手にしたのは、真っ黒のお面に、真っ赤な瞳が二つついたお面。
ぱっちりと開かれた瞳は、妙に不気味である。

「こちらのお面は、夜更かしのお面と言います。どれだけ眠たくても眠れなくなるお面です」
「ほぉ。ってことは、寝ないように研究するのにはちょうどいいかもしれないな」

にやっと微笑む魔理沙を見て、お面屋は続ける。

「これは元々拷問道具に使われておりました。故に、拷問を受けた者の感情もそのお面には封じ込められています。なので、普段の生活で使うことはお勧めできませんよ」
「そ、そうなのか……。それを聞いて使う気が失せたぜ」

コトンとお面を静かに戻した。

「お面には、作った者だけでなく、被った者など、手にした者全ての感情が込められています」

そう言って、一つのお面を手に取った。
ハートのような形をしたお面だが、凄まじい形相のお面だった。
とげのようなものも生えており、いかにも怪しいお面である。

「このように、お面自体はとても軽い。しかし、そのお面にはとても大きく、そして重い気持ちが込められているのです。時にはそのお面が人を変えてしまうことだってあるのです」
「そうか。なんか、すまんな」
「いえいえ、いいのです。本当に分かってくれたようなので」

そういって、お面屋は微笑んだ。





「それじゃ、このお面は?」

こいしが手にしたお面は、灰色でどこか間の抜けた顔をしたお面だった。

「それは、石コロのお面と言います。被ると存在感が薄くなるお面です」
「私が被ったら尚更気付かれなくなるね~」

そう言って無邪気に笑うこいし。
そんな無邪気に笑うこいしを見て、お面屋は言った。

「あなたの本当の顔は、どんな顔ですか?」
「え?」
「そのお面の下の本当の顔は、どんな顔ですか?」
「何を言ってるの?」

困ったように首をかしげるこいしに、お面屋は失礼と頭を下げた。

「すみません。私は、お面屋ということもあり、たくさんの人の顔を見てきました。だから、その人の表情で、なんとなくわかってしまうのです。例えば……あなた」

そういって、霊夢を指さす。
突然の指名に、思わず間の抜けた声をあげてしまう。

「あなたは、今誰かに恋をしていますね?」
「え!? なっ、何言ってんのよあんた」
「どうなんでしょうか、さとりさん」
「見る限り、本当ね」
「ちょ、ちょっとさとり!!」

すると、お面屋は更ににっこりと笑って、一つのお面を手に持った。
真っ白なお面で、銀色の曲線が数本走っていた。

「こちらを、あなたへプレゼントしましょう」
「へ? いいの?」

お面屋が差し出したお面を、霊夢は素直に受け取った。
そのお面はとても軽くて、そして優しい温もりがあった。

「これは、めおとのお面と言います。人の心を和ませる力がある、幸せなお面です。ぜひこれをあなたに」
「な、なんか悪いわね……。でも、ありがたくもらっておくわ」

すると、お面屋はお面を片付け始めた。

「お、もう終わりか?」
「すみません。私も世界を旅してお面を集めているものでね。少しの時間も私は惜しいのです」

そう丁寧に答えると、風呂敷にそのまま包んで、リュックの中へと放り込んだ。
そして、ポッケから一つの紙を取り出し、霊夢に手渡した。
中を広げると、簡単な音符が書かれていた。

「癒されたいと思った時、その音楽を奏でてみて下さい。きっと、あなたに良いことが起こるでしょう」
「は、はぁ……」

霊夢の表情を見て笑うと、お面屋は背を向けた。




霊夢達が見送る中、お面屋は最後に一言、

「あなた方の被るお面が、誰が作ったものか。それがもし自分自身ならば、本当の不幸と呼ぶにはまだ早い」

と、意味深な言葉を残して、去っていった。
はいどうも、へたれ向日葵です。
今回はムジュラの仮面に出てくる、お面屋を幻想入りさせました。

私の推測なのですが、お面屋は出会う人々にいやしの歌を教えさせ、追い詰められ、その歌にすがりついた人物が、仮面になり、それを集めていると思っています。
まぁ、あの小さい姿のお面屋に上げたお面以外の話になるんですけどね。

最後まで読んでくださった方々には、最大級の感謝を……。
へたれ向日葵
[email protected]
http://twitter.com/hetarehimawari
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
元ネタは分からなかったけど面白かったです!
2.名前が無い程度の能力削除
なつい
3.夢中飛行士削除
ムジュラの仮面のイベント全てクリアしたけど話を進めるのが辛かった。
めおとのお面を貰った霊夢は幸せになれるのだろうか。
4.拡散ポンプ削除
ムジュラの仮面は名前しか知りませんが、不思議な雰囲気で良かったです。
5.名前が無い程度の能力削除
懐かしく、面白かったです。

幽々子にいやしの唄を聞かせるとどんな仮面ができるのだろうか。
いや、ほら霊だしさ。
6.名前が無い程度の能力削除
出たな、ゼルダシリーズでも随一の正体不明。
ムジュラの仮面を取られんようにしなよ、アレはヤバいから。
7.名前が無い程度の能力削除
霊夢に渡したのが鬼神の仮面だったら……いや何でもない
じゃあ次はメルランあたりに時のオカリナでも渡してください
8.名前が無い程度の能力削除
プレイしてみたくなったぜ
ちょっと怖い雰囲気だ
9.名前が無い程度の能力削除
ムジュラの仮面か・・・なつかしいなぁ・・・いやしの歌好きだったな~。
10.名前が無い程度の能力削除
うおお懐かしい!ムジュラ大好きだよ。
お面やは最後まで謎の存在だったなあ。
11.可南削除
自然過ぎて話しに違和感を感じませんでした。
凄く面白かったです。ありがとうございました。