相変わらず、河童は夏が苦手だった。
「あーづーいー」
「はいにとり、ペプシアイスキューカンバー」
「おおきゅうり! きゅうり大好き!」
雛の家の庭、パラソルの下のテーブル。
差し出された緑色の液体を喉に流し込みつつ、にとりは呻いた。
乾燥した酷暑でないのが救いだが、じっとりとした体感温度の高さは如何ともしがたい。
「今年は暑すぎるよ~」
「本当ね」
そんなことを言う雛は、いつもの恰好で涼しい顔である。
雛のフリフリファッションは可愛いけれど、この季節には正直暑苦しい。
なんで平気なんだろう、とにとりとしては不思議で仕方ないわけで。
「雛はなんでそんな恰好で平気なのさー」
「私も暑いわよ」
「じゃあ脱げー!」
「だ、だめよにとり、……恥ずかしい、から」
身を竦めて顔を赤くする雛。ああもう可愛すぎる。
むくりと起きあがり、にとりはさささっと雛の背後に回り込んだ。
スカートの後ろに結ばれたリボンに手をかける。
「よいではないか、よいではないかー」
「あーれー」
リボンを引っぱると、雛はくるくると回り出した。
とにかく雛を脱がすのだ。さらににとりは思いっきりリボンを引っぱり、
――くるくるという回転が、やがてギュルルルという駆動音に変わり始めた。
「おおお?」
にとりが強くリボンを引きすぎたのか、雛の回転数がだいぶ厄いことになっていた。
ぎゅるるるる。雛が物凄い勢いで回りながら芝生の上を動き出す。
「ゴー、シューッ!」
ガキィン、とその進行方向に突然、割り込む影があった。
弾かれた雛はにとりの近くまで飛ばされて、どさりとその場に倒れ込む。
「ひ、雛! だ、誰だぁ!」
姿を現したのは、回転を止めたきつね色のモフモフを従える紫色の女性。
「お、お前は――八雲紫!」
「ごきげんよう」
悠然と微笑んだ紫の姿に、にとりは歯がみする。
ここで会ったが百年目、にとりにとって紫は積年の宿敵だ。
紫の使うベイ、八雲藍に何度煮え湯を飲まされてきたか――。
「直接やって来るとはいい度胸じゃないさ! 今度こそ決着をつけてやる」
「あら、相変わらずの身の程知らず。藍の左右両回転の怖ろしさ、教えて差し上げますわ」
扇子に口元を隠して笑う紫に、にとりは雛のリボンを手に構える。
「いくよ、雛。今度こそ、あいつを倒すんだ」
「ええ、にとり」
雛も頷いた。そう、私たちは熱いベイ魂で繋がった一心同体のパートナーなのだ。
紫も藍の尻尾を掴んで構える。一瞬の対峙、そして、
「スリー!」
「ツー!」
「ワン!」
『ゴー、シューッ!』
唸りをあげて回転する雛と藍が、芝生の上で交錯し火花を散らす。
「いくよ雛、必殺転技、疵符『ブロークンアミュレット』!」
「甘いわね! 必殺転技、式弾『ユーニラタルコンタクト』!」
火花を散らす雛と藍が、互いのスペルカードを煌めかせ、そして弾幕が周囲を包み込み――
雛の家は爆発した。
夏の暑さが悪いんですよねー
夏のせいですね!
夏だから仕方ないな
今日は厄の日だから特別だぜ・・・・・・?
が・・・。
まさか、八雲家とのバトルがあるとは!!
そして安心の爆発オチwww