その日、ルーミアは空を見上げていました。
木々に囲まれた森の中で、ルーミアが腰を下ろした岩の上だけが切り取られたように青空が広がっています。
瞬きもせずただ真っ直ぐ……時折、頭を上げ過ぎて岩から落ちそうになりながらも空を見続けています。
そしてずっと傍にいる私には見向きもしてくれません。
……だけど不思議と、嫌な気分にはなりませんでした。
それどころか嬉しそうなルーミアを近くで見ていられるだけで、私はすっごく幸せです。
──こいう気持ちを何と呼ぶのか?
私はその答えを知っています。
もう何百、何千回と自問自答を繰り返してきた結果辿り着いた答え。
そう。私はルーミアに恋をしているんです……!
「ルーミア? 楽しい?」
見ているだけでも幸せだけど、なんだか無性にルーミアの声が聞きたくなったので声を掛けてみました。
それとルーミアにずっと見つめてもらえる空をちょっぴり羨ましく思ったりして。
「うん。楽しいよーーー。」
間延びした、どこか幼げなその声を一言耳にしただけで私は胸の奥がキュンとなりました。
ああ……なんて可愛らしい声なのかしら……。
相変わらず空から目を離してくれないけど、反応を返してくれただけでも私は満足。
「…………どんなところが?」
邪魔しちゃ悪いかな? なんて思いながらもついつい口が出てしまいました。
満足だなんて真っ赤な嘘……だって一度声を聞いてしまったら、もっと聞かせて欲しくなっちゃう……。
好きなんだから、そう思うのは当然の事だと思います。
「えっとねぇ~、ほら! いまおにぎりがとんでる!」
どうやらルーミアが目で追っていたのは雲だったみたい。
ふふふっ、それにしてもおにぎりだなんて食欲旺盛なルーミアらしい発想ね。
「そうだわ! おにぎり作って来たんだけど……食べる?」
ついついルーミアに見惚れて忘れていました。
彼女に食べて貰おうと思って持ってきてたのに、私も思いの外うっかりさんです。
「おにぎり!? 食べるーーー!」
あんなに夢中になって見てた雲をあっさり見限って、キラキラと期待に光らせた瞳をまっすぐ私に向けてくれるルーミア。
ああぁ……なんて幸せなの……。
その無邪気な視線に捉えられるだけで、私の心は天にも昇る思いです。
はっ……! こうしちゃいられない!
折角期待してくれてるルーミアがよだれを垂らして待ってるんだからっ!
「今日のおにぎりはね、お店の八目鰻を入れて見たんだ──ほら!」
おにぎりを一つだけ包みから取り出してルーミアに見せてあげました。
でもそれだけじゃ中身なんて分からないだろうから、見易いように先ずは半分に割ろっかな? そう思った矢先──
パクッ!
「…………え?」
──ルーミアがおにぎりに齧り付いていました……私の手ごと。
「もぐもぐ……ごくんっ!」
「うひゃあ……!」
私は驚いてルーミアから飛び退きました。
だっ、だっていきなりあんな事をするんだもの! 誰だって驚きます!
だけどルーミアは全く気にする様子はなく、それどころかあっと言う間におにぎりを飲み込んでしまいました。
「うん! みすちーの(おにぎりの)味、とってもおいしのだー!」
…………おいしい?
何が?
…………私が?
「きゅー/////」
バタンッ!
「~ん? みすちー、お昼ねなのかー?……それじゃあ残りのおにぎり、ぜんぶ食べていいのかー?」
……もう好きにして。
幸福の真っ只中で私はルーミアの問いに辛うじてそう答えました……たぶん。
なんか胸がキュンキュンしていい言葉が出てこないので今の気持ちだけ表現してみました。
ここに、とんでもなく共感できました。
この雰囲気いいですねぇ…。
>奇声様 今回ちゅっちゅしてねえからwww