ここは何処かの幻想郷。外と隔てる結界の端。山の上の博麗神社。
三方は森。鬱蒼と茂っている。入って来るな、と言わんばかりの暗い緑。
残る一方は麓へと続く階段だ。まっすぐの一本道、邪魔する物は何もない。
この山はあまり高くない。しかし低くもない。だからここから幻想郷を見渡せる。
青い空に白い入道雲、しかしそんなことより太陽だ。今日はいつにも増してはりきっている。
うだるような暑さ。いや、「ような」はいらない。うだる暑さ。
事実、博麗霊夢はうだっていた。
――いっそのこと、氷精と結婚してしまおうかしら。それよりも風が欲しいわね
障子を開け放ち、畳の上に転がってつぶやいた。
人に見せてよい姿ではないが、どうせこんな日に参拝客など来はしない。こんな日でなくても来ないのだから。
――でも、もうすぐあいつが来るかしら
ちょうどその時一陣の風が吹く。あいつが来た。
「来たわね、扇風機」
おっと、声に出てしまった。
「霊夢さん、こんにちは。清く正しい…」
「清く正しい、何なのよ」
「いやぁ、霊夢さん見事なだらけっぷりで」
「暑いんだもの、しょうがないじゃない。あんたはなんでそんなに元気なのよ」
「元気だけが取り柄ですから!」
「そういえばそうね」
即答。
両手を腰に当てて胸をはり、頭をおとした奇妙なポーズの出来上がり。
「ひどい。そこは否定してくださいよ…」
「あんたが言ったんじゃない。」
「…まあいいです。それより今日は何をしていたんですか?…と、聞くまでもないですか」
「失礼ね、あんたを待っていたのよ。それにプロポーズの言葉を考えてたわね」
「へっ? わ、私にプロポーズですか? …それは、その、うれしいですけど、そんな、いきなり言われても」
口ではそんなことを言うが、驚いたようには見えない。違うと分かっているのだろう。
「ばか。氷精がいたらなぁ、って思ってたのよ」
「なんだ、そういうことですか。残念」
全然残念そうには見えない。にやにやしている。
こいつが驚くところはあまり見たことがない。いつも余裕でいて、ちょっと癪だ。たまには驚かせてやりたい。
「ところで、氷精もいいですけど私もどうですか? ちょっとだけ冷たいでしょう」
ぴと、と寝転がったままの私の頬に手の甲をあててくる。
あ、冷たくて気持ちいい。
「妖怪ですから、人間よりも体温は低いんです」
「いいわね、それ」
「でも自分はちっとも涼しくないんですけどね」
おっと、せっかく扇風機が来たんだから…
「ねぇ、風起こしなさいよ」
「嫌ですよ。疲れますし」
まったく、使えない。
あついなあ、二人して呟く。
「そうだ、あんたの膝枕って冷たくて気待ちよさそうね」
「なんですか、突然」
「体温低いんでしょ。膝枕してよ」
「え? でも…」
「でも、何?」
「ほら、くっつくと暑いですし」
「私は涼しくなるわ」
「私は暑いですよ」
「嫌なの?」
「別に、嫌じゃないですけど…恥ずかしいじゃないですか」
なんか慌てている。してやったり。いつもの仕返しだ。
しかし、暑い。それに暇だ。本当に氷精を捕まえてこようか。
あれ? なんか文の目が据わっている。
「いいですよ。膝枕、してあげます」
「ああ、冗談だから」
「そうですか。で、しないんですか? 膝枕」
「だからさっきのは…」
「ほらほら、遠慮しないで」
むりやり頭が膝の上に乗せられる。
「ああ、冷たい、って違う! こら、離しなさいよ。」
「ちょ、暴れないで下さいって」
「はーなーせー! 誰かに見られたらどうすんのよ!」
「こんな神社に私以外誰も来ませんって」
「むがーっ」
頭を押さえつけられて、抜け出せない。こいつ絶対さっきの仕返しだ。
しかし、これは本当に恥ずかしい。顔が熱くなってくるのが分かる。
だって、文のふとももは白くてやわらかくて繊細で。それが私の頬に直接…
「おやおや霊夢さん、なんだか顔が赤いですよ」
「あ、暑さのせいよ!」
「ふふーん、そうですか。では、そういうことにしておきましょう」
「だからっ…」
「ああもう可愛いなぁ、ちくしょう」
「頭なでるなー!」
まだまだ日は傾かない。少し風が吹いてきたのだろうか。木々の葉がかすかにゆれている。
しかし、真昼間に障子を開け放って何をしているのか。まあ、どうせ見ているのは太陽くらいだ。太陽くらい…
「あらあら、霊夢ったら可愛いわね。ちょっと用事があったんだけど、邪魔しちゃいけないわね。ふふっ」
三方は森。鬱蒼と茂っている。入って来るな、と言わんばかりの暗い緑。
残る一方は麓へと続く階段だ。まっすぐの一本道、邪魔する物は何もない。
この山はあまり高くない。しかし低くもない。だからここから幻想郷を見渡せる。
青い空に白い入道雲、しかしそんなことより太陽だ。今日はいつにも増してはりきっている。
うだるような暑さ。いや、「ような」はいらない。うだる暑さ。
事実、博麗霊夢はうだっていた。
――いっそのこと、氷精と結婚してしまおうかしら。それよりも風が欲しいわね
障子を開け放ち、畳の上に転がってつぶやいた。
人に見せてよい姿ではないが、どうせこんな日に参拝客など来はしない。こんな日でなくても来ないのだから。
――でも、もうすぐあいつが来るかしら
ちょうどその時一陣の風が吹く。あいつが来た。
「来たわね、扇風機」
おっと、声に出てしまった。
「霊夢さん、こんにちは。清く正しい…」
「清く正しい、何なのよ」
「いやぁ、霊夢さん見事なだらけっぷりで」
「暑いんだもの、しょうがないじゃない。あんたはなんでそんなに元気なのよ」
「元気だけが取り柄ですから!」
「そういえばそうね」
即答。
両手を腰に当てて胸をはり、頭をおとした奇妙なポーズの出来上がり。
「ひどい。そこは否定してくださいよ…」
「あんたが言ったんじゃない。」
「…まあいいです。それより今日は何をしていたんですか?…と、聞くまでもないですか」
「失礼ね、あんたを待っていたのよ。それにプロポーズの言葉を考えてたわね」
「へっ? わ、私にプロポーズですか? …それは、その、うれしいですけど、そんな、いきなり言われても」
口ではそんなことを言うが、驚いたようには見えない。違うと分かっているのだろう。
「ばか。氷精がいたらなぁ、って思ってたのよ」
「なんだ、そういうことですか。残念」
全然残念そうには見えない。にやにやしている。
こいつが驚くところはあまり見たことがない。いつも余裕でいて、ちょっと癪だ。たまには驚かせてやりたい。
「ところで、氷精もいいですけど私もどうですか? ちょっとだけ冷たいでしょう」
ぴと、と寝転がったままの私の頬に手の甲をあててくる。
あ、冷たくて気持ちいい。
「妖怪ですから、人間よりも体温は低いんです」
「いいわね、それ」
「でも自分はちっとも涼しくないんですけどね」
おっと、せっかく扇風機が来たんだから…
「ねぇ、風起こしなさいよ」
「嫌ですよ。疲れますし」
まったく、使えない。
あついなあ、二人して呟く。
「そうだ、あんたの膝枕って冷たくて気待ちよさそうね」
「なんですか、突然」
「体温低いんでしょ。膝枕してよ」
「え? でも…」
「でも、何?」
「ほら、くっつくと暑いですし」
「私は涼しくなるわ」
「私は暑いですよ」
「嫌なの?」
「別に、嫌じゃないですけど…恥ずかしいじゃないですか」
なんか慌てている。してやったり。いつもの仕返しだ。
しかし、暑い。それに暇だ。本当に氷精を捕まえてこようか。
あれ? なんか文の目が据わっている。
「いいですよ。膝枕、してあげます」
「ああ、冗談だから」
「そうですか。で、しないんですか? 膝枕」
「だからさっきのは…」
「ほらほら、遠慮しないで」
むりやり頭が膝の上に乗せられる。
「ああ、冷たい、って違う! こら、離しなさいよ。」
「ちょ、暴れないで下さいって」
「はーなーせー! 誰かに見られたらどうすんのよ!」
「こんな神社に私以外誰も来ませんって」
「むがーっ」
頭を押さえつけられて、抜け出せない。こいつ絶対さっきの仕返しだ。
しかし、これは本当に恥ずかしい。顔が熱くなってくるのが分かる。
だって、文のふとももは白くてやわらかくて繊細で。それが私の頬に直接…
「おやおや霊夢さん、なんだか顔が赤いですよ」
「あ、暑さのせいよ!」
「ふふーん、そうですか。では、そういうことにしておきましょう」
「だからっ…」
「ああもう可愛いなぁ、ちくしょう」
「頭なでるなー!」
まだまだ日は傾かない。少し風が吹いてきたのだろうか。木々の葉がかすかにゆれている。
しかし、真昼間に障子を開け放って何をしているのか。まあ、どうせ見ているのは太陽くらいだ。太陽くらい…
「あらあら、霊夢ったら可愛いわね。ちょっと用事があったんだけど、邪魔しちゃいけないわね。ふふっ」
膝枕最高!
照れている二人がとても可愛かったです。
文の膝枕、確かに気持ちよさそうですねぇ…