朝、魔法の森、アリス亭
「アリス、アリス」
何者かがベッドの上で寝ているアリスを起こそうと体を揺する
「…んっ…ん?」
「起きて、起きて、朝だよ?」
アリスが薄く目を開けるとそこに居たのは青と白のエプロンドレスに白のケープを着た金髪の少女がアリスを起こそうとしてる。
(おや?)
普通ならここで起きて『誰?貴方』などと言うのだろうが現在アリスは徹夜続きのため、
「うーん…、あと五分と三十四万六千秒…」
「約四日じゃない!!早く起きて…ってそう言えば徹夜してたね、ゴメン。それじゃあ朝ごはん此処に置いておくから目が覚めたら食べてね」
そう言って少女はトテトテと部屋から出ていった。
「ん?んー…zzz」
アリスは疑問の前に意識を手放した。
机の上から美味しそうなポタージュの匂いがした。
昼、アリスの部屋
「ん、ん~~~っ。んぅ?」
アリスが目を覚ましてふとテーブルの上を見るとテーブルの上にはハムと野菜のサンドウィッチと少し冷めたポテトのポタージュ、そして魔法瓶(外の世界のモノ)に入っているまだ暖かい紅茶が在った。
まずは朝の紅茶を一口(もう昼だが気にしない)
そして少し遅れた朝ごはんを済ませる。
「ふぅ…やっぱりいつものいい味ね…にしてもよく寝たわ~」
体を上に伸ばして数秒ぼーっとする。
「そういえば…私は昨日作業場で寝ちゃったはずなんだけど…」
疑問が尽きないまま私は着替えてリビングへ下りた。
同刻、リビング
キッチンには先程の少女が何かを作っていた。
「おはよう、アリス」
「おはよう」
「ありす~、寝癖が酷いよー、涎の跡も残ってるし。ほら、ちょっと顔洗って来なよ」
「んー」
少し気だるそうに洗面所に向かって数分後、身だしなみを整えたアリスが戻ってきた。
「お帰り。それじゃあお昼ご飯にしようか」
「ただいま。えっと…さっき貴方が作ってくれた朝ごはん食べちゃったんだけど」
「大丈夫、そうだと思って軽めに作ってあるから。…それと、アリス?」
「ん?まだ何か付いてる?」
「もう…そうじゃなくて、貴方じゃなくて『上海』って呼んでよ」
頬をほんのり朱に染めぷぅと膨らませている『上海』。何処からどう見ても拗ねているご様子。
「…上海」
アリスは棚に入っているはずの人形の名前を呼んだはずなのだが…
「~♪何?アリス」
目の前の少女が嬉しそうに返事する。
「…蓬莱」
同じく、アリスは人形の名前を呼ぶが…
「蓬莱ちゃんならさっき出掛けたよ?」
「…オルレアン」
今度はアリスが呼ぶと棚から一体だけ出て来た。
間違いない、オルレアン人形である。
「あー、オルちゃん久しぶり~」
人形の手を取って嬉しそうにはしゃぐ上海(?)
アリスが人形の棚を調べると(最初からそうしろ?ナンノコトダカ…)やはり上海と蓬莱が無くなっていた。
「ねえ、聞きたい事があるんだけど」
「ん?」
いまだにオルレアンとはしゃいでいる上海に話しかける。
「貴女、上海なのよね?」
「そうだよ?」
「なんでそんな姿に?」
「あー…」
普通は最初に言うものじゃないのか?とアリスは思うがどっちもどっちである。
「アリス、九十九神って分かる?」
「ええ、小傘とかの事でしょ?」
「それです。ついでに蓬莱ちゃんもそれです」
「…マジ?」
「うん、てか正確的には違うけどね。アリスが私を手に入れた時の事覚えてる?」
「…うん」
そうそれは約2年前(魔界時間の10年前)
『今日はアリスちゃんになんとプレゼントをあげちゃう!!』
『わーい!!ありがとうしんき様!!!』
『この人形は上海ちゃんと蓬莱ちゃんって言って老禅って人が作ったすごい人形なんだよ!!』
『へえ~~』
『大切にしてあげるんだよ?アリスちゃん』
『うん!!』
ナニシテルンデスカ?シゴトハ?
ゲェッ!ユメコ!
「それで?」
「それからアリスが大切に使ってくれたりしてくれたお陰で私が作られて100年が経った昨日、何と自立できました!!」
わーい、と体全体で嬉しさを表す上海。
「それは分かったけど…、ちょっと違うって言うのは?」
「それはねー、実はまだ魔法回路が生きてるの」
「と言うと?」
「つまり…言うならば半分妖怪でもう半分が人形なの。だからその回路に自分でエネルギーを流して自分自身でスペルカードを撃つことも可能ってこと。蓬莱ちゃんも同じなはずだよ」
「三人同時スペルカード発動か…、使い方によっては魔理沙や霊夢より強力なものになるかもしれないわね…」
「んー、そうかもね」
「ところで蓬莱は?」
「アリスが二度寝した時にメディと雛が来て一緒に出掛けちゃった。明日には戻るって」
「…暢気ね」
「さて、そろそろ出来たはず…」
そう言って上海がキッチンから持ってきたのは…
「上海お姉さん特性!アップルパイ!!」
「…上海お姉さん?」
「いや、私百年生きてるし。普通にアリスより年上だよ?」
「まあ…いいわ。いただきます」
「めしあがれ~」
そう言ってアリスはパイを一切れ口に運ぶ。
「どう?アリス」
「とてもおいしいわ、ありがとね?上海。イイコイイコ」
「えへへ~」
とても嬉しそうに笑う上海は何処から見ても幼い子供だ。
それもそのはず、なんせまだ上海は生れたばかりなのだ。
(まあ、料理とか掃除はいつも任せてたから出来るんだろうけど)
「ありす、ありす、もう一個どう?」
「いただくわ」
そう言って二切れ目を口に運び咀嚼する。
「うん、やっぱり美味しい」
「~♪」
上海はもっと嬉しそうな顔になった。
アリス亭、風呂場
「~~~~~♪」
「何か上海、朝からずっとご機嫌ね」
わしゃわしゃと上海の頭を洗うアリス。
「だっていろんな事が初めてなんだもん、それにアリスが褒めてくれるし。しあわせだよ~~」
そう、昼ご飯を食べ終えた後何かにつけて「お姉ちゃんだから!!」と言って手伝いをねだって来たので任せ(例えば読書中に掃除するなど)終わって上海を褒めると今にも踊りだしそうなほど喜ぶのだ。
「…そんなに嬉しい?」
「うれしいよ~、自分の大好きな人に褒められて撫でられるなんて幸せすぎて死んじゃうよ~」
「…////」
「ありすが照れてる~、かわいい~」
「うるさいっ、ほら流すわよ」
バシャァ!!
「わふっ」
桶に汲んだお湯を上海にかける。
「今度はアリスの番!!」
「うわっ!!」
いきなり上海は立ち上がりアリスと場所を交換する。
「アリスの髪きれ~」
「あ、ありがとう…」
「………」
「………」
わしゃわしゃわしゃ
(何故無言?)
「………」
「………」
わしゃわしゃ
「アリス、お湯かけるよ?」
「あ、お願い」
「ほいな」
バシャァ!!
「…ふぅ、それじゃあ風呂に浸かって温まってから出ましょう」
「は~い」
「………」
「………」
数分後、上海が逆上せました。
「ちょっ!!上海大丈夫!!?」
「ふにゃぅ…」
十分後
「そろそろ寝るわよ?」
「はーい」
何とか上海を回復させることに成功したアリスは部屋に入ってすぐのベッドに潜り寝ようとしたが…
(あれ?上海は何処で寝るんだ?)
そう思っていると
「おじゃましまーす」
上海がアリスの寝室にやってきた。
モゾモゾと音がする、そう思っていると上海の顔が目の前に来た。
「ぷはっ、あーりす♪」
とりあえず上海を左腕で抱きよせ右手で上海の頭を撫でる。
「~~~ふにゅぅ♪」
すると上海は幸せそうに目を細めアリスの胸に顔を埋める。
(なるほど、上海は猫だったのか)
「全く、上海はお姉さんじゃなかったの?」
「いいもん、アリスに甘えられるなら妹でも娘でもいいもん」
そう言って上海はアリスにギュッと抱きつく。
「ありすあったかい…」
「上海もね」
そんな事を言ってる間に本格的に睡魔が襲ってきた、そろそろ限界だろう。
「上海、お休み…」
「うん、ありす…」
―――だーい好き。
その呟きを聞いたのは頬を赤く染める人形使いだけだった。
>ゲェッ!ユメコ!
吹いたwwwww
上海可愛いよ上海!!
>ゲェッ!ユメコ!
この後に銅鑼の音が脳内再生された俺は異端なのだろうか……
上海きゃわいいよ上海!!
>ゲェッ!ユメコ!
なんという伏兵w