「過剰睡眠摂取症候群ね。」
「は…………?」
その病名を聞いた時、私――――八雲藍は目をまるめた。
その異変がいつから起こっていたかは私は知らない。
ただ、とっくに春だというのに紫様が目を覚まさないということに違和感は感じていたのだ。
時は流れた。春分を過ぎ、桜は散りきって、梅雨まで通り過ぎた初夏。
そろそろ紫様が本気で埃をかぶりはじめた頃だ。
いくら何でも耐えかねた私は紫様を無理矢理起こすこととした。
否、起こすだけなら今まで何度もした。しかし、もはや強行手段もやむを得ないと、私は決意したのだ。
そこで気が付いた。
息をしていない事に。
最初は呼吸と脈拍を制御することにより肉体を若く保つという仮死の法でも実践しているのかと思い、1週間ほど放置してみたが、やはり呼吸している様子はない。
それから三十六時間ほど紫様の状態について思考し、ようやく"これはやばいんじゃないか"という仮説に行き当たり、永遠亭に連れてきたのが事のあらましである。
いい加減布団を被って寝るには暑い夏の日の事だった。
「過剰睡眠摂取症候群とは?」
「まあ、その名の通り睡眠の摂り過ぎで睡眠から覚めなくなった状態ね。現よりも夢にいる時のほうが多くなり、現と夢が逆転してしまった……。」
「そんなっ!?」
「……って言ったらシリアスだけど、実際は寝すぎると逆に寝起きがつらい現象の長期バージョンよ。」
「なんだ……驚かさないでくれ。」
「というか、私の検査結果だと三ヶ月も前からこの状態よ?何してたの貴方。」
「まぁ起きないならいっそ起きないほうが変な事件も起きないで済むかな、なんて。」
「それは同意ね。」
「過剰蘇生摂取症候群ね。」
その病名を聞いた時、私――――藤原妹紅は目をまるめた。
毎晩のお約束、輝夜との殺し合いの時、それは起こった。
輝夜が起きないのだ。
リザレクションをした反応はあった。間違いなく蘇生はしたにも関わらず、輝夜はさっぱり目を覚まさない。
息はしていないが、脈はあり、心臓も動いている。
輝夜は間違いなく生きているのだ。
どうしたものか困っていると、永琳が帰りの遅い輝夜を迎えに来たのが事のあらましである。
で、調べてみればそう言いだした。
「つまる所……なんだ?」
「まぁ早い話が仮死状態かしら。急激に死んでは蘇生死んでは蘇生を繰り返しすぎて、死んだときの精神的負担が溜まった結果、蘇生と同時にショック死。体は健全だけど、意識は死んだままなのね。流石の蓬莱の薬も精神の蘇生は無理よ。」
「で、輝夜はどうなるんだ?」
「殺せば治るわ。バグったゲームはリセットすればいい話でしょ?」
「その例えは正直どうかと思うんだが……」
「過剰緑茶摂取症候群ですね。」
「は…………?」
その病名を聞いた時、私――――霧雨魔理沙は目をまるめた。
霊夢が倒れているのを見たのは梅雨もあけた頃である。
確かに最近霊夢の元気が無かったのは知っていた。
しかし、いきなり倒れることがあるだろうか。
そもそも霊夢は前の日私からキノコを貰っていたばかりだ。
まさか毒に当てられたか?
いやまさかそんなはずはない。
なんたってキノコ狩りの一級ライセンス(発行元:霧雨魔理沙)を所持している私だ。食用と毒キノコを間違えるような素人ではない。
それに、あれは私と霊夢とアリスで鍋を囲った残りだ
毒キノコであるはずがない
ならば何故倒れた?栄養失調というのも考えにくい。
そうなれば、基本ポジティブな私でもさすがに心配になる。
最低限自分のせいではないことを祈りつつ、霊夢を永遠亭に運んだのが事のあらましである。
しかし、流石に過剰緑茶摂取症候群というのは予想外にも程がある。
「緑茶……?なんだよそれは?」
「聞くけど、霊夢は間違いなく最近緑茶を摂っていないわね。」
そういえば切れたとか嘆いていたのを思い出した。
「霊夢は緑茶の摂りすぎで、文字通り緑茶によって生きている状態にあるわ。今、彼女は実に体の栄養の90%を緑茶に含まれる成分から生成しているようね。」
「なにそれ怖い。」
「だから一日三食緑茶でも生きていたわけね。ただ、その代償としてその他の食物から栄養を摂れなくなっているみたい。長い間緑茶だけで生活していたから、その辺りが鈍ったのね。よって、すべてただの余分なカロリーとして処理された。つまりこれは栄養失調に近い状態にあるわね。」
「…………それで、治るのか?」
「安心しなさい。この生態についてもっとじっくり研究してから治療に……。」
「さっさとやれっ!!」
緑茶を飲ませたら起きました。
過剰食事摂取症候群。
過剰怠惰摂取症候群。
過剰巨乳摂取症候群。
過剰胡瓜摂取症候群。
過剰妹摂取症候群。
過剰ちゅっちゅ摂取症候群。
過剰酒摂取症候群……って、ただのアル中じゃねーか。
まったく、幻想郷の人妖達はつくづく偏ったところが見られる。
人も妖怪も柔軟に生きてこそだ。一辺倒ではいけない。
「永琳!!」
博麗霊夢だった過剰緑茶摂取症候群はもう治ったはずだが、いったいどうしたというのだろう。
「過剰賽銭摂取症候群になっちゃったわ!賽銭を入れてくれないと私死んじゃうわよ!?」
「…………」
良く考えてみれば、貧乏な霊夢にはむしろあのままの方が良かったように思う。
そうだ、あれは病気ではない。緑茶以外を得られない霊夢がその環境に適するために進化しただけの話だったのだ。
うーむ、やはりあれはもっと研究しておくべきだったか……。
「ちょっと、永琳?聞いてる?おーさーいーせーんっ!!早く!!」
私は黙って霊夢を摘みだした。
後日、霊夢は飢えで死線をさまよっていたところを八雲紫に保護されたという
めでたしめでたし
ただ、その人のPNによって難易度が変わってきそうだけどww(私は無理かなぁ
よし、俺も作者名で作品だ! ……無理ww
そしたらみんな摂取しすぎてた。
私は過剰創想話摂取症候群なんでしょうね。
ところでキノコ狩りのライセンス発行はどちらで(ry