「アリスさん!アリスさん!」
今日も魔法の森に佇む、洋風の一軒家に舌っ足らずな声が響いています。
「アリスさん!アリスさん!アリスさん!アリスさん!」
「聞こえてるわよ、メディ」
縫い物をしていた手を止め、金糸の髪を揺らし、アリス=マーガトロイドが振り返りました。
ようやく、こちらを向いたアリスにメディスン=メランコリーは屈託の無い笑みを浮かべます。
「アリスさん!メディスンさんは退屈なのですよ?」
「刺すよ?」
縫い針をメディスンに向けます。それも目を狙って。
「ひゃああ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
アリスと同じ金の髪を持つ、メディスン。ふるふると頭を振り、謝りました。
「悪いけど、見ての通り忙しいのよ。後で遊んであげるから」
そう言う、アリスの前には、布や糸、火薬など様々ものが散乱しています。
新たな人形を製作中のようです。
「むー…。なら仕方ないですね」
「ほら、上海と遊んでなさい」
「あい!」
□ □ □
「アリスさん!アリスさん!アリスさん!アリスさん!アリスさん!アリスさん!」
「……」
幼い声で、何度もアリスに呼びかけるメディスン。
椅子に座っている、アリスを何度も揺さぶっています。
無視を決め込んだアリスでしたが、手元が狂い、指に針を刺してしまいます。
頭の血管が切れた音がしました。
「さっき、忙しいって言ったわよねぇ~!?」
「いたいでしゅ、アリスしゃん!やめてくらさい~!」
アリスはメディスンのほっぺを、お餅のように伸ばします。
「今度は何!?」
「アリスさん!メディスンさんは退屈なのですよ?」
「だから、さっき上海と遊んでなさいって言ったわよねぇ~!?」
「いたいでしゅ、アリスしゃん!やめてくらさい~!」
また、アリスはメディスンのほっぺを伸ばします。
「そもそも、上海はどこ行ったのよ?」
「あ、え、えと、『コンパロ、コンパロ』したら動かなくなったのです」
「『なったのです』じゃないわよ!!あれほど『コンパロ、コンパロ』は禁止って言ったじゃ……って、シャ、シャンハーイ!?」
メディスンの小さな手には、ピクリとも動かない上海が乗せられていました。
「ああ…こんなになって…。メディ、ごめんなさいは?」
「あう…ごめんなさい、アリスさん」
「もう、絶対しちゃ駄目よ?」
「あい…反省してるです」
やれやれ、とアリスは頭を抱えます。
上海に応急措置をとり、再び椅子に座り直します。
「あ、そうだった、メディ。出来たわよ」
「何がですか?」
アリスは勿体ぶりながら、背中から完成品を取り出しました。
「じゃじゃーん。メディのお嫁さん。可愛いでしょう?」
「……」
アリスが取り出したのは、メディスンと同じ位の背丈を持つ、可愛らしい人形です。
アリスは今までの自身の作品の中でも、かなりの自信があるようです。誇らしげに鼻を鳴らしました。
だが、メディスンは明らかに不服そうな表情を見せます。
ほっぺを膨らませ、怒っているようにも見えます。
「むー…」
「あら、気に入らなかったかしら?…もしかして、お婿さんが良かった?変わり者ねぇ…」
アリスは頭を捻り、人形を見返しました。
そこで、メディスンは突如、声をあげます。
「違うのですよ!メディスンさんはアリスさんが欲しいのですよ!」
「は!?」
「アリスさんをお嫁さんにしたいのですよ!」
「あ、そういう事。あーはいはい。メディがもうちょっと大きくなったらね」
「む!アリスさんはメディスンさんを子供扱いしてるです!」
「あら、そんな事ないわよ?」
「顔が笑ってるですよ!?メディスンさんは大きくなったら絶対アリスさんをお嫁さんにするのです!」
「はいはい。期待しないで待ってるわ」
「あ~!また、馬鹿にしましたね!」
魔法の森は今日も賑やかでした。
□ □ □
後日、メディスンはアリスに鈴蘭の花を差し出します。
「フランス流なのです」
「どういう意味?」
アリスは鈴蘭の花を受け取りました。
メディスンさんが可愛いです!
アリメディ、何か新しいものを見つけられた気がします。
まあ、いいやwとにかくメディスンが可愛いです!!
とっても面白かったです!(後、ウロさんの同人誌思い出した
「…もしかして、お婿さんが良かった?変わり者ねぇ…」それが通常だww
GJでした。