ぴ~ひょろろろ~~
ものすーーーーっごい田舎もとい、長閑な自然の中に、私たちは居た。
さぁ今から親愛なる友の家でキムチ鍋をつつこうと、玄関を開けた先は……
「ななななーまずななまずーなまずーななままずー♪」
「なにそれ」
「ナマズの歌。なーなーななーななななななーなーなーなななななまずずー♪」
「ふーん……まぁ、目の前にでっかいナマズがいたら、歌いたくもなるか」
「うん。私はまだナマズだ~から~」
「同じ道には、ひきかえせーない~♪」
ナマズが眠る丘の上。
二人の少女の歌が響きわたる。
ここはすべてを受け入れる場所。
幻想郷。
幻想という名の……現実。
そして現実とは一冊の本。
黒い表紙につつまれた、運命の本。
そこに書かれている文字は。
ナマズ
<- メリーナマズ ->
~1時間前~
「うう~~~~~~~~~がぁぁぁぁぁ!!」
「パンツ一丁で叫ぶのが流行りなのね。蓮子?」
「そんなのが流行ったら全国の男の子が外に出れなくなるじゃない。テント的な意味で」
「その前に全国の女の子が外に出れなくなると思うわ。刑務所的な意味で」
少なくとも、この部屋から二人は出れないだろう。
だって二人ともパンツ一丁だから。
あ、紹介が遅れました。
私の名前はマエリベリー・ハーン。
京都一の美少女。でも大和撫子じゃないの。
そして目の前で大股開いてうだっているのが、宇佐見蓮子。
ただの変態ね。
「しかしそんな変態のおっぱいから目が離せないメリーでした」
「変なナレーションを入れないでほしいわ。目が離せないのは事実だけど」
「私もメリーのおっぱいから目が離せないから同点よ」
「ならサドンデスね。この試合に引き分けはないわ」
じーっと見つめあうこと私サクランボ。
ぴちぴちの若い果実に、じっとりと汗が浮き出してきた。
瑞々しさをたっぷりと含んだそれは、どんどん赤身を帯びていきそして……
「うう~~~~~~~~~がぁぁぁぁぁ!!」
「うう~~~~~~~~~がぁぁぁぁぁ!!」
「熱いわメリー!!」
「色気なんて投げ捨てるものよ蓮子」
「よし、ならば全裸だ!!」
すっぽーんと何気に大人な黒レースパンツを脱ぐ蓮子。
ちゃんとお手入れがされているデルタゾーンは、きっとムレムレだったはず。
むしろ私がムレムレ。
いまココの匂いはきっとゾウをも倒すことができるだろう。むんむん。
さて、すっぽんぽんになった蓮子のムレムレ加減をチェックしてみようではないか。
「でもねメリー。乙女として、人間として超えてはいけない線があると思うのよ」
「こ、これはまさか……前バリ!?」
「トップは絆創膏、ボトムは前バリ。これぞ夏の正装ね!」
「これは流行る! ノーベル平和賞は私たちが貰ったわ!!」
あっつー。
はい、脳が溶けてます。
もう適当なことをのたうちまわらないと、人生が終わりそうなくらい熱いですルキア。
それは蓮子も同じようで、クラブの活動とかそっちのけで暴れてます(ほぼ全裸で)
ちなみにここは蓮子の家。
冷房なし。
布団は一個。
水は止まってる。
電気も止まってる。
動かせるのはガスコンロくらい。
しかも西日がまっすぐ差し込む素敵な間取り。
死ぬから、普通に死ぬわこれ。
同じ文句をあと10回は言いたいくらい、熱気がこもっているの。
「なんでクーラーがつかないのよー」
「停電だからじゃないかしら」
「あぐー……蓮子、せめて水を頂戴」
「工事のため一時間ほど断水だって。業者め……」
「間違ってる! こんなの絶対間違ってるわ!」
「運命は常に非常なのよメリー。だから一緒の布団で寝ましょう?」
「汗臭い布団の中にこもったらどうなるか、考えたくもないわ」
「3秒で意識混濁に10ペガス」
あっつー。
脳が溶けて蓮子の脳と混ぜ合わさってしまうわ。
蓮子ちゃん遺伝子を交換しましょう。あなたの全てを私に頂戴。
私の全てを貴方にあげるから。うそだけど。
「あっつーい。もう前バリも取りたい気分」
「蓮子ちゃん蓮子ちゃん」
「なに?」
「キムチパーティをしましょう」
「脳が溶けるにも限度があるでしょう!?」
却下された。却下。
えーっと、何が却下されたんだっけ。
そうそうキムチパーティ。
寝○ソンがネトゲのサーバーにいつもぶっかけるアレ。
なんで、このクソ熱いのにキムチなんだっけ?
何も考えずにいきなり言った気がする。
あっつー。
「あ、でもその案もらい。メリー買い物に行くわよ」
「無理ー。この体力では髪の毛の毛先一本動かすこともできないわ」
「自分の意思で動かす事ができるの!?」
「蓮子はできないの?」
「できないわよ」
「奇遇ね。私もできないわ」
あ。蓮子がぴくぴくしてる。
ちょろっと遊びすぎたかしーら。だって暑いもの。
たまには私だって……はっちゃ蹴るのが許されるのはこの時期だけだし。
おっと、実は冷静だったなんて知られたらただの変態のレッテルを張られてしまうわ。
だって私は絆創膏つけてないしね?
お、蓮子が立ち上がった。本当に買い物に行くのかしら。
炎天下の中、この部屋より熱いと思われる外は本気で脳がとろけるのに。
「それじゃメリー留守番おねがいね。私はキムチ鍋の材料買ってくるわ」
「心得た」
「さーって、スーパーのクーラーで涼んでくるかー」
「な ん で す と!? 停電なのに動くのスーパーって!?」
「停電はここだけだもの。きっと工事で断水だけじゃなく断線もしたのね」
「業者ぁぁぁぁぁあぁあああ!!」
犯人はあいつらか。
これは許されない。
許すためには、蓮子にスーパーでお菓子を買ってもらわなくては。
「というわけで行くわよ蓮子」
「おーけー。帰ってきたらクーラーがんがんに付けてキムチパーティよ!」
いざ行かんレジェンディアへ。
れっつかーいもーん!!(開門と買い物をかけあわせ(ry)
「こんにちは宇佐見さん。ごめんなさいね。まさか工事でこんなことになるなん……て……」
こんにちは大家さん。そしてありがとう。
もうちょっとで、裸で表に出るところでした。
でも、その……熱っぽい視線でまじまじ見られると恥ずかしいですよ?
「びっくりしたわ。私の若いころにそっくりね。行動もふくめて」
「大家さんの昔に何があったの!?」
「それは、彼との熱いPLAYが・・・やだ何を言わすのよこのおませさんったら♪」
今日の教訓
服はちゃんと着て外へでましょう。
あと、おばさんの色っぽい声は死ねる。
まちがってもその気にさせてはいけません。
おねーさんとの約束だぞ!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
スーパーは天国だったわ。
「もう電気直ってるころかしら」
「メリー、それは希望的観測というものよ」
おかげで溶けた脳が元に戻ってくれたわ。
いつものカッコイイメリー復活よ。
あんな状態で冷静にいられるわけないじゃない。ねぇ蓮子?
「心配しなくても、いつものメリーだったわ」
「どういう意味!?」
蓮子視点では、私はギャグキャラだったらしい。
ショック、まさにショックよ。
こうなったら玄関になにやら結界っぽいのが見えるけど、だまっておいてやるんだから。
……え?
「中暑そうね。直ってなかったらもう一周まわってこようかしら」
「ねぇ蓮子。その玄関……」
「うおりゃーっとただいまー!!」
「今開けたら危険……あーーーー!!」
ぴ~ひょろろろ~~
ものすーーーーっごい田舎もとい、長閑な自然の中に、私たちは居た。
「なんでナマズ?」
「いやいや、普通はここ何所? でしょメリー」
「でも、だって、なんでナマズ?」
「たしかにナマズね。しかも、おおきぃ」
どこか分からない場所。
ちょろっとした丘らしい。
そこに、大ナマズが寝ていた。
気持ち良さそうに、クークーと。ぽんぽんぐーなの。
おお、もしかして。
「私たちが電気を御所望だったからかしら?」
「電気でナマズ? ナマズって地震じゃなかったっけ」
「そうだけど、このナマズなら電気出しそうじゃない?」
なぜかそんな気がする。
このナマズ、いやナマズ様なら私たちの願いを叶えてくれるはずだ。
ぴくぴくと動いている髭に蓄電されているはずだ。
「ねぇメリー」
「分かってるわ。ハサミなら常備しているから安心して」
「さすがメリー。ではさっそく、いただきます♪」
私からハサミを受けとった蓮子は、そっとナマズ様に近づいて……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
クーラーを作った人は天才ね!
結婚してあげてもいいくらいに好きよクーラー。
「実は私が作ったの」
「蓮子結婚しましょう」
「その前にまず、布団敷こう、な?」
「汗臭いからいや」
あついあつい水曜日。
ちょっと不思議な体験をした水曜日。
私たちの記憶からはすぐに消えてしまう水曜日。
第765巻 2890頁。
ナマズ
マエリベリーよ。私は悲しい。
君なら本を読み取ってくれると信じていたのだけどね。
まぁいいわ。貴方は貴方の生き方をすればいい。
運命の道にそって。
現実に生きて。
幻想へ還れることを。
夢の中だけで、信じつづけなさいな。
泣き崩れながら
舞い踊りながら
ずっとずっと一生。
ナ
マ
ズ
「わしの髭がぁぁぁぁぁぁ!!」
そしてナマズ様の髭がwwww