「静姉、見てー」
「なによそれ?」
「紅葉ー」
「枯れてるけどね……」
「……うん」
くしゃり。
「実はわたしも穣子に見せたいものがあったのよ」
「なーに?」
「ほら、これ。お芋ー」
「ああ、去年のだね。カピカピになってるね」
「……うん」
がりがりがり。
蝉が鳴いてる。
妖怪の山のどこかにある小さな家の中で、秋の神さまたちが茹っていた。
干上がっていた、と言ってもいいだろう。
二人ともが居間の小さなテーブルに頬をつけて、なんにもやる気が起きないかのように、沈んでいる。神さまだって暑いものは暑いのだ。
しかも姉妹しかいないものだから最低限の衣服しか身に着けず、姉はテーブルに突っ伏したまま、うちわを扇ぐ。妹は、姉と同じ格好のまま、がりがりと芋を食っていた。もちろん去年食べ損ねた芋だ。
テーブルの真ん中に、枯れた紅葉の破片が落ちていた。
がりがり。
乾燥芋を食べる音が、小さな部屋に響いていた。
「ねぇ」
と、姉。
「なに?」
「秋、遠いね」
「うん。一年で一番短いもの」
「そっか」
「うん」
がりがり。
ぱたぱた。
「ねぇ」
と、妹。芋うとではない。
「なんで私、芋食ってんの?」
「さぁ?」
「もったいないからかな?」
「知らんよ」
がりがり。
ぱたぱた。
じーわじーわ。
「あっついわぁ」
「静姉、はしたない」
「いいのよ。女しかいないんだし」
「……そうねぇ」
静葉はぐいっと下着のすそを持って、ぱたぱたとうちわで扇いだ。どっちの下着なのかは想像に任せる。
穣子は、ああ、扇風機欲しい、と小さく思った。
扇風機があったって、ここには電気がないのだが、そこは河童のスーパーパワーでなんとかなるのだろう。きっとたぶん、もしかしたら。
(河童すげえなぁ。もしかしたら、川ん中が熱湯になって沸騰するかもしんないのになぁ。茹で河童? なにそれ美味しそう)
妹の吹っ飛んだ思考が続く。
(もし川が熱湯になったら、魚とか全滅するね。そしたら山がやばいなぁ。あー、もしかしたらなんか進化するかも。スーパーなのが生まれる。熱に強いのとか)
なにそれカッコいい。
(進化進化、レヴォリューションだよ。カッコいい。進化まじカッコいい。私も進化したい。進化したらなんになるのかなぁ? 秋が進化したらハイパー秋になった。すげぇカッコいい。ハイパー穣子にジェネレーションシフト! おおうカッコいい。まじカッコいいよこれ)
机に突っ伏したまま、なんとなく考えた。
「静姉」
「うんー?」
ぱたぱた。
「私、ハイパー秋になりたい」
「ハイパー秋ってなによ?」
「ハイパー! って感じの秋」
「わけがわからない」
「ごめん。私もわからない」
ぱたぱた。
がりがりがり。
ごっくん。
みーんみーん。
「のど渇いたよ、静姉」
「そうかい。川に行ってくることをおススメしよう」
「私に溺れてこいというか!」
「頭を冷やしてこい」
「そういえば川には河童がいるよね」
「うん」
「じゃあ、茹で河童食べに行こう」
「茹で河童ってなにさ!?」
「茹でた河童」
「そのままね」
「さっき思いついた」
「……そう」
ぱたぱた。
「ジェネレーションしたいね」
「なにによ?」
「ハイパー穣子」
「聞いたわたしが馬鹿だったわ」
「そうね」
「うっさいわ」
頬をつけたまま視線をあげて、ここでようやく姉妹は目を合わせた。壁によりかかってぱたぱたしている静葉を見て、穣子はこう言った。
「静姉、襲っていい?」
「やっぱ、いっぺん頭を冷やして来い」
「やー、外暑いのよ」
「知るかい」
「暑い中、進化したいなぁ。触手モンスターとか。そしたら襲いたい放題だよね」
「ちょっとくらい自重してくれ」
はぁ。
ため息を吐いて、さらに沈む。
秋、来ないかなぁ?
秋が一番過ごしやすいのに、なんで短いんだろう?
暑い暑い。
そんなある日の昼下がり。
そうして、川では茹で上がった河童が大量生産されていた。
[おわる]
「なによそれ?」
「紅葉ー」
「枯れてるけどね……」
「……うん」
くしゃり。
「実はわたしも穣子に見せたいものがあったのよ」
「なーに?」
「ほら、これ。お芋ー」
「ああ、去年のだね。カピカピになってるね」
「……うん」
がりがりがり。
蝉が鳴いてる。
妖怪の山のどこかにある小さな家の中で、秋の神さまたちが茹っていた。
干上がっていた、と言ってもいいだろう。
二人ともが居間の小さなテーブルに頬をつけて、なんにもやる気が起きないかのように、沈んでいる。神さまだって暑いものは暑いのだ。
しかも姉妹しかいないものだから最低限の衣服しか身に着けず、姉はテーブルに突っ伏したまま、うちわを扇ぐ。妹は、姉と同じ格好のまま、がりがりと芋を食っていた。もちろん去年食べ損ねた芋だ。
テーブルの真ん中に、枯れた紅葉の破片が落ちていた。
がりがり。
乾燥芋を食べる音が、小さな部屋に響いていた。
「ねぇ」
と、姉。
「なに?」
「秋、遠いね」
「うん。一年で一番短いもの」
「そっか」
「うん」
がりがり。
ぱたぱた。
「ねぇ」
と、妹。芋うとではない。
「なんで私、芋食ってんの?」
「さぁ?」
「もったいないからかな?」
「知らんよ」
がりがり。
ぱたぱた。
じーわじーわ。
「あっついわぁ」
「静姉、はしたない」
「いいのよ。女しかいないんだし」
「……そうねぇ」
静葉はぐいっと下着のすそを持って、ぱたぱたとうちわで扇いだ。どっちの下着なのかは想像に任せる。
穣子は、ああ、扇風機欲しい、と小さく思った。
扇風機があったって、ここには電気がないのだが、そこは河童のスーパーパワーでなんとかなるのだろう。きっとたぶん、もしかしたら。
(河童すげえなぁ。もしかしたら、川ん中が熱湯になって沸騰するかもしんないのになぁ。茹で河童? なにそれ美味しそう)
妹の吹っ飛んだ思考が続く。
(もし川が熱湯になったら、魚とか全滅するね。そしたら山がやばいなぁ。あー、もしかしたらなんか進化するかも。スーパーなのが生まれる。熱に強いのとか)
なにそれカッコいい。
(進化進化、レヴォリューションだよ。カッコいい。進化まじカッコいい。私も進化したい。進化したらなんになるのかなぁ? 秋が進化したらハイパー秋になった。すげぇカッコいい。ハイパー穣子にジェネレーションシフト! おおうカッコいい。まじカッコいいよこれ)
机に突っ伏したまま、なんとなく考えた。
「静姉」
「うんー?」
ぱたぱた。
「私、ハイパー秋になりたい」
「ハイパー秋ってなによ?」
「ハイパー! って感じの秋」
「わけがわからない」
「ごめん。私もわからない」
ぱたぱた。
がりがりがり。
ごっくん。
みーんみーん。
「のど渇いたよ、静姉」
「そうかい。川に行ってくることをおススメしよう」
「私に溺れてこいというか!」
「頭を冷やしてこい」
「そういえば川には河童がいるよね」
「うん」
「じゃあ、茹で河童食べに行こう」
「茹で河童ってなにさ!?」
「茹でた河童」
「そのままね」
「さっき思いついた」
「……そう」
ぱたぱた。
「ジェネレーションしたいね」
「なにによ?」
「ハイパー穣子」
「聞いたわたしが馬鹿だったわ」
「そうね」
「うっさいわ」
頬をつけたまま視線をあげて、ここでようやく姉妹は目を合わせた。壁によりかかってぱたぱたしている静葉を見て、穣子はこう言った。
「静姉、襲っていい?」
「やっぱ、いっぺん頭を冷やして来い」
「やー、外暑いのよ」
「知るかい」
「暑い中、進化したいなぁ。触手モンスターとか。そしたら襲いたい放題だよね」
「ちょっとくらい自重してくれ」
はぁ。
ため息を吐いて、さらに沈む。
秋、来ないかなぁ?
秋が一番過ごしやすいのに、なんで短いんだろう?
暑い暑い。
そんなある日の昼下がり。
そうして、川では茹で上がった河童が大量生産されていた。
[おわる]
にとり(とその他諸々の河童達)いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!
聖とにとりとかどうだろう。
妖怪助ける人間と人間が盟友な河童。そして河童の技術力に聖の法力が合わさって最強のパワードスーツを装着したひじりんが(ry