「暑くて何もする気になれないねぇ船長」
「いや逃げようよ! 暑くてというか熱くてだから! 今船火事だから!」
聖輦船が燃えました。
もうそりゃごうごうと燃えている。目の前が真っ赤になるくらい。私の船が、燃えているんだってば!
「というかぬえあんたもっと慌てなさいよ! はっ! 聖、星、ナズーリンは一体……!」
ぬえの手を引っ張ってみても、ちっとも立って逃げるそぶりを見せない。
「多分皆のんびりしてるって。見てくるといいよ」
この非常事態にあまりにも平然としてるぬえに、そろそろいい加減腹が立ってきたのでぬえを置いてさっさと聖達の元へと向かうことにした。
どうせこんな火に焼かれた程度じゃあ死なないだろうとかそう思ってんだろう。このぬえのどあほうが。
「あちちちち」
燃え盛る炎に進路を阻まれ続けながらも、聖やら星やらナズーリンがそろって昼寝をしていたはずの部屋へとやってきた。
障子に手をかけ、開ける。
「オイイイイイ! なんで寝てんだよおおおおお!」
普通にもう逃げててもぬけの殻を想像したよ!
なーんで燃えてる布団にくるまって寝てるんだよおお!
「あ、ムラサ。なんです? 貴女も眠くなったんですか?」
星が体を起こして、目をこすって、可愛いのだけれど意味が分からないことを聞いてくる。
「だから、髪! 髪! 燃えてるって!」
「え、ああっと」
「やっと状況を理解してもらえたようで良かったです」
確かに私も妖怪やってるし、あんまり死ぬ程熱いとは感じなかったけれど、さすがに起きないってのはどうかと思う。
頭をぽすぽすと叩いて火を消す星。すると今度は頭を少し引っ込める感じで布団に潜ってしまった。
「だから何で寝るの!?」
「いや、だってほら、夏の午後って眠くなりませんかね」
「今この船火事なんですよ!?」
すると今度は聖がひらひらと手を振った。
「落ち着きを持つ事も大事ですよ。特に貴女は船長なのだから、どうすれば良いかを考えるのも貴女の役目です」
そうか。聖の言う通りかもしれない。この船の船長が私である以上、この船の火事を考えるのは私だ。
魔法で守られている船だから、大丈夫……。しかしそう思った矢先、轟音と共に目の前の柱が焼け落ちる。
つまり、この船は確実に燃えていてその寿命を減らしている。
ここから導きだされる答えは……。
やっぱり逃げるって選択肢以外あり得ないでしょうよ!
「だから寝てる場合じゃないんですよううう!」
私は必死に星の布団をはがしにかかる。
「ちょっとやめてください。ただでさえこの暑い日に火事で熱いとか、ちっとも面白くないですし踏んだり蹴ったりだと思ってるんですから、せめてゆっくりと寝かせてください」
「聖! 起きてください、逃げますよ!」
今度は聖の布団をはがしにかかった。
「あと五分だけ」
「一輪!」
一輪を必死に揺する。
「ウンザーン」
「ナズーリン! もはや貴女だけがたよりです! 賢将の英知を働かせて、この状況を打破して見せてください!」
ナズーリンに泣きついた。
「火事とかけまして、ムラサとぬえと解きます」
「その心は!?」
「どちらもアツイですね。ヘッ」
「ヘッって何ですかっ!」
「ぬえムラムラぬえばんざーい」
もう何言ってるかわけの分からない。
あぁもう一体どうすればいいんだ!
私が頭を抱えていると、聖がまっすぐに手を上げた。
「はい」
私はもうどうにでもなれといった気分で聖を指す。
「はい聖」
「ムラサの能力を使って水を操って火を消せばいいと思います」
「あの、そのー聖?」
いやぁこれは嫌な予感がしてきたぞ。
「もしかして皆がのんびりしてるのって、私が火を消せるからだと思ってます?」
「そうだけど、もしかして消せないの?」
わぁいこれもうだめだ。
「いいですか。確かに火は消えます。もうじき。でも、ここで私の能力を思い出してほしいんです。水難事故を起こす程度の能力。決して水を召還した上操れる能力とかじゃないんです。少しなら可能ですが、これだけの火を消すとなると……」
それを聞いてもいまだに頭の上からクエスチョンマークの消えない皆。
「いや、だから! さっきふとした拍子に能力使っちゃったんですって!」
ますます皆の顔が難しそうな顔になってくる。
すると廊下からどたどたと走ってくる音が聞こえて来た。
がらり、どしゃん。燃えていた扉がぼろぼろと倒れる。
「たたたた大変だ! なんかこの船落ちてる!」
ぬえが大慌てで部屋に飛び込んで来た。
それを聞いて聖が勢い良く起き上がる。
「燃えたくらいじゃこの船は落ちないはず。さてはなんらかの力が作用して……はっ! まさか!」
そこでようやく星やナズーリンも気がついたのか、私の方を見やる。
「えぇそうです。私が能力を発動させたのなら間違いなくここ聖輦船には水難事故が起こります。しかしここは上空。この幻想郷でこの船が水難事故を起こせる量の水がある場所と言えば」
「紅魔館のところにある……」
さすが賢将、ナズーリン。物わかりがいい。
「その通りです。間違いなく、この船は湖目指して一直線でしょう」
星が大慌てで両手をばたばたさせている。
「で、ではどうするのです!?」
「そんなもの、決まっているじゃないですか」
私はゆっくりと右手の人差し指を外に向けた。
「逃げるん……」
ザッブーンぼこぼこ。
星かわいい
船長はやっぱりすごいな
うわあああ。誤字ですね。完全に勘違いしていました。ありがとうございます。
>奇声を発する程度の能力様
ムラサも存外抜けた所がありますよね、きっと。
>3様
ありがとうございます。ギャグ慣れてないし、ちっとも思い浮かばない中必死にやってこれですが、そういってもらえると嬉しいです。
>4様
星は個人的にこんなキャラです。真顔で変なことをやるというか。宝塔なくしちゃうし。。。それを平気でナズーリンに探させるし。
>5様
船長はすごいですよ。なんたって船長ですからね。もう船長といったら長ですから。
>再開発様
ばんざーい。もっとはやれ。ムラサもぬえも他のキャラといちゃついてる場合じゃないですって。
暑いから仕方ないですよね。
・たぶん誤字じゃないかなー、報告(本文前から6行目)
「多分見んなのんびりしてるって。見てくるといいよ」
↓
「多分みんな~」では?
>燃え盛る炎に進路を拒まれ続けながらも
無生物だから、「こばまれる」じゃなくて「阻まれる(はばまれる)」じゃないでしょうか?
>8様
星はもーどうしようもないやつですからね。宝塔を無くすようなかわいいやつですから。おっちょこちょいだ。絶対おっちょこちょいですって。
誤字報告ありがとうございます!
>9様
まぁ鼠で探していて時間かかるわけですねぇ。きっとチルノ辺りが持ってたものを、昔見つけたキラキラ光ってる石ころとでも交換してもらったのでしょう。
誤字報告ありがとうございます! いやぁお恥ずかしい。