「その瞳貸してくれない?こいし」
「うん、いいよ。フランドールのお姉ちゃん」
ブチブチブチ…
「ありがとう」
「どういたしまして」
私の第3の瞳が覚醒した。
□ □ □
おお、世界が変わる。すごいな、この瞳は。
心の奥底は見えないものの、表層なら何もかもわかってしまうじゃないか。
…フランの心もね!
うふふ、うふふふふふ。愛しのフランは私の事をどう思ってるのかしら?
ああ、気になるわ。
そんな訳で現在位置はフランの部屋の前。
普段の口振りじゃ、いまいちどう思ってるかわからないものね。
フランの普段の口振り…。
昨日、フランの部屋に入った途端。
『生命活動を停止してから出直してきて』
一昨日、フランに紅茶を淹れてあげた時。
『…何この工業廃水。いや、廃水のほうがマシだね。茶葉と水でこんな物を生成するなんて、お姉様は随分とご立派な能力をお持ちのようで』
…あれ?悪口しか思い出せない。
ちょっと不安になってきた。
いやいやいやいやいやいや。大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫。
多分、多分平気。私は大丈夫。私は平気。
と、分厚い扉に頭を打ちつけていたら、扉越しに何かを感じ取れた。
(お姉様来ないかな…。寂しいなぁ…)
今のはフランの心?
意を決して、ノックして、部屋に入る。
「うわぁ。目障りな物体が侵入してきたよ…」
(お姉様来た!やった、やったぁ!あ!髪結うの忘れてた…どうしよう…身だしなみ整えてない…恥ずかしいな…)
汚物を見る目で見られた。
…よく、こんなにも正反対の言動ができるもんだ。
私はひとまず、安心する。どうやら嫌われていないようだ。
というか慣れないな、この感覚。実際口にしている言葉と心の言葉が混同する。
「なに突っ立ってんのさ。お姉様はトーテムポール?ああ、お姉様の脳みそじゃ、伝わらないね。言い換えてあげる。『この木偶の坊』」
(頭抱えてどうしたんだろう…。大丈夫かな?頭痛いのかな?)
「ああ…ごめんなさいね」
少し、目眩がする。慣れない第3の瞳のせいかしら。
たが、へばってはいられない。フランの気持ちを知りたい。
「フラン」
「なにさ」
(弱ってるお姉様も素敵…)
「お姉ちゃんの事…好き?」
「はぁぁっ!?」
(ななな何で急にそんな事を…)
我ながらど直球だと思う。まぁいいや。
「き、嫌いに決まってんじゃん!お姉様は馬鹿なの?死ぬ事をお勧めするよ。ああ、ここで死なないでね。死骸の処理がめんどくさいから」
(好き好き大好き超愛してるっ!一秒だって離れたくないっ!ずっと一緒がいいっ!)
「……ふむ」
……可愛いなぁ。
こんなに、冷え切った表情をしているのに、心の中はデレデレだ。
そのギャップが…いい。
「何にやにやしてるのさ。心底気持ち悪い。お姉様は首から上を付け替えた方がいいね。何の頭がいい?虫?魚?鳥?……面白いのは、どの下等生物もお姉様と脳のレベルが一緒って事だね」
(どうして、笑ってるんだろう?何か良い事あったのかな?)
「ああ、なんでもないわ」
心の声に返事してしまった。
いけない、怪しまれている。
話を変えなければ。
「フランはお姉ちゃんのどこが好き?」
「はあぁ?さっき、顔を捻り潰したいくらい嫌いだって言ったじゃん。もう、頭が劣化してるの?」
(格好いいとこ!優しいとこ!いつも一緒にいてくれるとこ!笑顔が好き!面倒見が良いとこ!私のためにいつも頑張ってくれるとこ!あと、全部!)
なるほど、なるほど。か~わ~い~い~!!
よし、フランの気持ちもわかった事だし、サードアイは外そう。
外したっと。
…ああ、でもまだ駄目だ。目眩がひどい。覚り妖怪でもないのに、無理やり長時間使用したからかしら。
仕方ないけど、一度私室に戻ろう。
目的は果たせたし、部屋で休みましょう。
そこで、フランがわざとらしく溜め息をつく。
「はぁ~あ、お姉様と会話をすると酷く疲れるね。お姉様の低脳に話のレベルを合わせなきゃならないから、かなぁ~?」
「…まっ!失礼ね」
どうせ、心の中は正反対だろう。
そう思うと自然と笑顔になる。
「早くこの部屋から出て行ってくれないかな?お姉様と同じ空気を吸ってるって考えただけで、気が狂いそうだよ」
「ああ、悪いけど、私はもう部屋に戻るわね」
「へっ!?」
「それじゃあ」
「なっ!なななんで!?いつもは、ゴキブリのようにしつこく、居座ろうとするじゃんっ!」
「あー…諸事情で」
慣れないサードアイのせいで、なんて言ったら、殺されるじゃ済まないわね。
本格的に気分が悪くなってきたから、早く横になりたいし…。
それ以上の追及を避けるため、私はそそくさと、部屋を出て行った。
「ま、待ってよ!ば、馬鹿」
フランが最後に何か言っていたような気がするが、目眩と閉まるドアの音で聞き取れなかった。
□ □ □
後日、レミリアはこいしに瞳を返す。
「ありがとう、こいし。なかなか楽しめたわ」
「どういたしまして」
「前に聞きそびれたけど、その瞳って、取り外し可能なのね」
「うん、覚り妖怪専門店で売ってるよ。色も36色から選べるの」
「あら、すごいのね」
「他にも、洋服とか売ってるよ。覚り妖怪の制服とか。お姉ちゃんのがそうだね」
「へぇ……(あの園児用スモックが…)」
「それじゃあ、こいし。また、よろしくね」
「は~い」
こうして、レミリアの第3の瞳は閉じたのであった。
□ □ □
「私の馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!どうして、いつもいつも素直になれないのさ!」
「お姉様いつもより、短い時間しか部屋に居てくれなかったし、こんなんじゃ、いつか来てくれなくなっちゃうじゃない…!」
「ぐすっ…。これ以上嫌われたくない…。次、来てくれたら絶っっ対、好きって言わなきゃ!」
ガチャリ。
「あ~ら、お姉様?また懲りずに来たの?ほんとに暇人なんだねぇ。虫けらのほうがまだ、働き者なんじゃない?一寸の虫にも五分の魂って言うけど、お姉様には五分も無いと私は思うんだ」
「あの…咲夜ですけど」
「……」
「……紅茶を」
「……」
「あ……えっと……」
「……」
「えーと…妹様は本当に面白い方ですね…あはは…」
「咲夜、何も言わないで」
「申し訳ございません…」
サードアイって売ってるのねw
目を瞑って下さいですか、こいしちゃんだけに
もうツンデレとかってレベルとは言えないと思うけどフラン可愛い。
36色カラーバリエに吹きましたw
そういえばソイツ、覚(NOTさとりん)に勝って、取り付いちゃうってストーリーだったなぁ…
一生ツンでもいいんじゃないか!お嬢様は気づいてるし
こっちのフランはツンツンしてんなwww
是、当ニ可。
制服と言う名の園児用スモックが幻想郷の少女達の間で流行らないかなあ