真っ白い壁に囲まれた部屋、そして私は河童に囲まれている
「…これからあなたを別の幻想郷へ飛ばします」
私は縛り付けられ、身動きがとれない
「怖がらないでください、痛みはありません、死にもしません」
私は死ねないから別に良いのだが
「では…サヨウナラ」
視界がぼやけ、体の底が迫り上がるような気持ち悪い感覚に襲われ私は気を失った
再び目を覚ましたとき、そこは開けた土地だった
「…ここは、何処だ?」
そのようなことを呟き、私は重い体を引きずって進み始めた、人里へ。
私は人里へ何とかして出ることが出来た、驚いたことに、そこは私のよく知る人里だった
「はは、河童の奴、何が飛ばすだよ、全く同じ幻想郷じゃないか」
しかし私は耳に入り込んだ会話に驚愕した
「魔理沙ー、在庫の整理しといてくれー」
「分かりました、お父様」
私の耳はおかしくなったんじゃないか、以前あの白黒と話したことはあるが、元の世界で彼女は彼女の父親を嫌っていたはずではなかったか?
「お父様、表に出す分の竹箒が足りないのですが」
「倉庫に束ねてある、それを出せ」
「分かりました」
元の世界の彼女とは思えない表情だ、微笑がよく似合う可愛らしい少女だ
小さな変化は所々に見られた、例えば山の上の巫女が居なかったり、博麗の巫女は参拝客が来ていてそれなりの生活を送っている、森の人形遣いが里で人形の店を開いていたり
「何が、どうなったんだ?」
私は頭に強烈な打撃を喰らったようだ
「しかし、小さな変化だけなら、私の家はどうなってるんだ?」
私は軽い恐怖感に襲われ、家路についた
家に着いた私は少なからず安堵した、家はちゃんとあった、そして見慣れた顔が居た
「何処行ってたんだ?妹紅、心配したぞ」
慧音が居た、見たところ変化はないようだ
「あ、あぁすまない、ごめんな」
「ふふ、まぁ良い、お腹減ってるだろ?ご飯、つくっておいたぞ」
慧音が作ってくれた料理は変わらなかった、暖かく、そして優しく
「…旨い」
「ありがと」
急に私は泣き出してしまった
「どうしたんだ?」
「怖い…」
「何が?」
「慧音はさ、それまで知っていた常識がいきなり変わったら、どう思う?」
「…それは、怖いな」
「そうか、怖いよな」
「どうしたんだ?今日はなんか変だぞ?」
「いや、何でもない」
「そうか、まぁいい、今日はゆっくり休め」
そう言われて私は眠りについた、明日は河童の所に行こう、そしてあの機械でもう一度元の幻想郷へ帰して貰おう
翌日目が覚めた私は河童の工場へ赴いた
「おい!私を元の幻想郷へ帰せ」
この文句はまずかったと思う
「どうなさったんです?お嬢さん」
問いかけてきたのは私をこちらの幻想郷へ飛ばした河童の一人だった
「どうなさったんですかじゃない、あの機械へもう一度乗せろ、異世界を行き来出来る機械だ」
「少し落ち着いて下さい、まずはその機械がどれくらいの大きさで、どのような形をしているのか、教えて頂けませんか?」
河童は本気で混乱していた様だった、つまり、こちらの世界ではあの機械が作られていないのか、ならばこちらにいた私はどうなったのか?
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「…す、すまない、少し錯乱していたようだ、迷惑掛けたな」
私は絶望した、つまりはもう二度と、あの世界へは帰れない
その日、帰宅した私は永遠亭へ赴き、永琳に相談した
「…つまり、あなたは河童達によって別の世界からこちらに飛ばされた、と言うわけね?」
私は無言で頷き、永琳の返答を待った
「では、ここを元の世界だと、思いこんでみない?基本的に元の世界と変わらないのよね?ならばどう?ここはあなたの言う異次元かしら?」
永琳の言っていることは最もだった
「…丁度、姫様もあなたと同じような事言ってるの、相談に乗ってあげて」
私は驚いた、まさか輝夜も河童達に飛ばされたのか
永琳に案内された部屋で輝夜は優れない顔だった
「なぁ、輝夜、お前も…」
「と言うことは、あなたも?」
「…あぁ」
私は俯いた、今私が出来る事は何もない、何もないのだ
「…良かった」
「え?」
「怖かった、元の世界を知る人が居なくて、怖かったの」
そうか、こいつは私よりもこの不可解な世界で過ごしていたのだ、寂しかったのだろう、ずっと一人で、ずっと孤独に、一緒だった永琳も変わってしまっている、そう、どの世界でも蓬莱人は孤独なのだが、それ以上に固まった価値観が打ち崩されたときは誰だって恐怖に戦くのだ、それをこいつは私が来るまで耐えていたのだ、そう思うと私はこいつが不憫に思えて仕方ない
「心配するな、私は私だ、輝夜」
「ありがとう、妹紅」
輝夜はその場に泣き崩れた、それを私は優しく抱きしめ、泣きやむまでそこにいた
それからというもの、私たちは月に一度会うことにしている、もちろん殺し合いではなく、少し変わった幻想郷からどこか別の所にある元の幻想郷へ思いを馳せる事にしている、二人で。
ベッドの位置変えたりしたら見てるのは同じ天井なのに寝れなくなるのと同じですよね。
え、違う?
でもどうしてもこれだけわからない
元の幻想郷(仮に幻想郷A)の河童はなぜ妹紅(と輝夜)を別の幻想郷(仮に幻想郷B)へ飛ばしたのか
よっぽどの恨みでもあったのか、あいつらなら死なないから実験台にしてもいいだろと思ったのか
幻想郷Bの慧音は妹紅を認識した、つまり幻想郷Aの妹紅(仮にもこたんA)が飛ばされる前から幻想郷Bには妹紅(仮にもこたんB)が存在したと思われるが
もこたんAが幻想郷Bに来たことで、もこたんBはどこに行ったのか
てか正直この方がしっくりするんで書き直してみたらどうだろうか。あとがきにそれとなく書くとか。
何故妹紅と輝夜が選ばれたか、これは推測通り、殺しても死なないためです。
作中でも述べているとおり、多少の違いはあれど、元の幻想郷とほぼ同じのため、慧音は妹紅を認識します
幻想郷Aではその転送する機械が完成されている、そしてその機械は転送先に同じ機械が無くとも受信させることが出来ると言うことです、もしもその飛ばされた先に同じ機械が完成していれば簡単に、そして安全に異次元旅行が可能に成りますし、わざわざ妹紅が実験台にされることはありません
そしてあの装置は肉体を別世界に飛ばす、と言う物ではなく、精神を取り替えるような機械だと思っていただければ幸いです、つまりは元の幻想郷から飛ばされた妹紅は妹紅Aであると同時に妹紅Bでもあります。
妹紅Aの精神というか人格のような物は装置で切り離され上手く行けば別の幻想郷へ飛ばされ妹紅Bの人格と取り替えられる、と言うことです
>>4様
私もその案を考えましたが、早苗達が幻想郷へ来ていない、魔理沙が家出をしていない、尚かつ親と仲が良い、これらを書いてしまっているためしっくりどころか不自然になってしまう気がしたんです。
面白かったです!