「これなーんだ」
「うわーい、犬耳だー」
「うわーい・・・・」
時は早朝7時半。場所は幻想郷、紅魔館。三人は揃いも揃って鬱々とした空気を纏っていた。理由は単純明快。それどころか、彼女達の容姿を見るだけでピンと来る。
端的に言えば、犬耳だ。
彼女達の頭からはひょっこりと三角の犬耳が出現していた。
なぜそうなったのか、これはどうして生えたのか、どうしたら直るのか。
余りにも情報が乏しく、そもそもこんなビックリ摩訶不思議犬耳に対する知識は全員が全員、知識皆無であった。
「パチュリー様、なにか情報はありませんか?」
「あるわけないでしょう、こんなワケ分からない現象、どんな本にも載ってないわよ。それよりも、あなたのほうが詳しいんじゃないの?巷で犬っぽいと評判のメイド長さん・・・?」
「なっ、べ、別に犬っぽいだなんて・・・・」と咲夜は犬耳をパタンと倒して俯く。なるほど、感情によって犬耳の動きにも差が出てくるのか。ところで、レミリアの尻尾がさっきから凄い勢いでパタパタ振られてるのはどういうわけだろう。
「ねぇ、咲夜咲夜、ちょっとワンって言ってくれるかしら!?」
「えー・・・」
「言いなさい」
「・・・・わん」レミリアの尻尾の動きが加速した。なるほどそう言うことか。とパチュリーは納得して、特殊な主従関係を築きつつある二人を見る。
まず分かっていることを、パチュリーは纏めてみることにした。そう、真実とは客観的な分析から得られる情報により解き明かされることも多いのだ。
1、昨日の夜まで誰一人として耳など生えているものは居なかった。
2、音は良く聞こえるといえばよく聞こえるが、気になるレベルではない。犬に順応した・・・・ということか?
3、犬耳は可愛い。
兎にも角にも、なぜこのような状態になってしまったのか余りにも私達だけでは情報が乏しすぎる・・・とパチュリーは考える。
「久しぶりに、外に出るかしらね・・・・」
「あら、パチェ、散歩?」
「犬耳がつくと活発になるんですかねぇ・・・・」とレミリアと咲夜が小首をかしげる。
「犬耳について・・・聞き込み調査、するだけよ・・・」と恥ずかしいやら余りの馬鹿さに腹が立つやらでパチュリーは歯軋りするのであった。
「うー・・・・わんっ!」鏡に向かって、霊夢は吼えていた。なぜってそりゃ犬耳が生えたからだ。犬耳が生えたらせっかくだから吼えても見たくなる。
「それにしても、犬耳とは意表を突かれたわね・・・」と霊夢は唸って自分の頭の上のもふもふした三角形を突っつく。どうやら神経が通っているらしく、今まで感じたことの無い言いようの無い心地良さが全身を駆け巡る。
「あー・・・・なんだろこれ・・・・んー・・・癒されるー・・・」と鏡の前に寝転がって霊夢は自分の耳を突付く。
「やっぱり霊夢にも生えてたか」と縁側の方から声をかけられて、霊夢は気だるげにその方向に視線を向ける。
「よっ」
「・・・・あんたも生えたの・・・?」頭から犬耳を生やしてさかんに尻尾をパタパタと振る魔理沙を見て、霊夢はため息をつく。霊夢の尻尾はといえば疲れたようにブランとぶら下がったままだ。
「いやー、朝起きたら犬耳が生えててさ、びっくりしたぜ」と魔理沙。
「あんたまで生えてるって事は私達だけじゃないんでしょうね、どうせ・・・」霊夢がつまらなそうに言ってストックしてあったお茶を湯飲みに注ぐ。ストックと言っても数分前に出来上がったばかりのお茶だ、まだホカホカと温かい。
「せっかく、犬耳+巫女って最強装備でバッチリお賽銭ゲットだわん!・・・・とか思ってたのに」と霊夢。半眼で境内を眺める様は、落ちぶれたアイドルのその様のようにも見える。
「空から眺めた感じだとあっちこっちで犬耳が生えてるヤツ等が居るみたいだな・・・」
「そう・・・・。異変・・・って言ったってこれしきじゃあねぇ・・・?別に害が出てるわけでもないし」霊夢は言ってお茶をズズズと飲む。
「あぁ、茶が美味い」
「幻想郷にご隠居が現れたぜ」
「引っ叩くわよ・・・?耳を」と霊夢が平手を用意すると、魔理沙はバッと両手で自分の耳を覆い隠した。
「ばっ!?馬鹿なこと言うなよ!凄く敏感なんだからな!?絶対止めろよ!絶対やめろよ!!」魔理沙は随分と必死な様子だ。そうか、この耳は敏感なのかとツンツンと自分で突付いて実感する。なるほど、確かに敏感だ。背筋を駆け抜ける快感とはまさにこのことか・・・。
「おい霊夢、とりあえず人前でそう言う表情をしないほうがいいと思うぜ」未だに両手で耳を押さえている魔理沙が、一条の不信感を表情から滲ませて言う。とりあえず、なにか癪に障ったので、頭を押さえている手を思いっきり引っ叩いてみた。
「ふぎゃんっ!」と大層な声を上げて魔理沙は縁側でひっくり返るのであった。
「いやいや、あんた誰よ」と永淋は自分の前に立つブレザーを来た長髪の女性・・・いや、少女?に問う。
「え?やっぱり分かりません?さっきも姫様に不審者が出たって逃げられたんですよ」と鈴仙ことうどんげは答える。普段は立派なウサギ耳が頭の上に生えている彼女であったが、今日は彼女の頭から生えているのは紛れも無い犬耳だった。
「それにしても、うどんげはウサギ耳が無くなるとホント誰だかわからなくなるわね・・・・」と永淋は言ってうどんげの犬耳を摘む。
「うひゃんっ!?」
「神経は通ってるようね・・・」
「自分の犬耳を触ってくださいよ!」とうどんげが抗議するが、永淋は首を振る。
「ダメよ、自分で触りだしたら止まらなくなっちゃうじゃない」
「師匠、その発言は大変に危険です。以後、言わないでくださいね」
「えー・・・」と永淋はつまらなそうに唇を尖らせる。
「大変ウサ!耳が犬耳に変わったウサ!」と部屋の障子がスパーンと開け放たれて、小さいクセっ毛の犬耳少女が現れる。
「・・・・誰?」鈴仙が少女を見つめて問う。
「お前こそ誰だウルァ!!」と犬耳クセっ毛の少女が鈴仙の後頭部を蹴った。鈴仙はあっさりと吹き飛んでいき、盛大に壁へと激突した。壁には血糊がベッタリと付着し、そりゃもうスプラッターなことになっていたが、残念ながらこの部屋に居る誰も、その手の惨状には慣れっこだった。故に、鈴仙の生死が危ぶまれているわけだが。
「全く、私が分からないとはとんだ馬鹿者ウサ」と鼻息も荒く腕組みした少女を見て永淋は小首をかしげる。
「お嬢ちゃん・・・・誰?」
「師匠も分からないウサか!?」とクセっ毛少女がショックを受けて永淋の服の裾を掴む。
「てゐウサよてゐ!分かるウサ!?分かるウサよね!?」と必死の形相で主張するてゐをどうにかなだめて、永淋は頷く。
「大丈夫、冗談よ、分かっていたわ」視線はあっちこっちへと泳ぎっぱなしだった。
「・・・・・・師匠、嘘、下手ウサね・・・」
「だってウサギ耳無かったら、判別できないでしょ?」永淋は素晴らしくいい笑顔で言った。
「ひ・・・・酷いウサ・・・・」
「文さん文さん!おそろいですね!」と嬉しそうに言うのは、犬走 椛である。
「いやー・・・・犬耳前線とは奇特なモノもあったもんですね」と文は言って永淋からの報告書を手に取る。その内容がまた奇怪極まりなく、文の多大な脳のキャパシティー(自称)を持ってしても全て解読することは不可能だった。
「それにしても、犬耳前線ってなんなんですか・・・?この報告書じゃ私、ちょっと分からないです」と椛が永淋の報告書をパラパラと読んで唸る。
「んー・・・・私も良く分からないんですけど・・・・なんでも、数百年単位で突発的に発生する前線の一種で、数週間一定の場所に留まるらしいですね・・・。要は梅雨前線とかと同じ類のものらしいんですけれども、実際の気候に影響は無く、ただその停滞している周辺の生物に犬耳や尻尾が生える・・・・ということらしいです」と文が掻い摘んで説明するも、あまりにも突拍子が無いものなので、なんとも理解に苦しむ。
「はぁ・・・・」と椛も不可解な表情をするばかりで、釈然としない様子である。
「なんにても・・・・どうにもコレは記事にはし難いですねぇ・・・・」と文は唸る。なんと言っても筆者までもが当事者である。新聞記者とは主観よりも客観であるべきであり、当事者たる文が書くのは間違いなく主観の記事となってしまう。故に、書き難い。
「・・・・まぁ、しばらくは様子見でしょうねぇ・・・」と文は呟く。暫くは様子見、周りの連中も、自分の犬耳も。
「へぇ・・・・・犬耳宴会とはまた奇特なものね」と紫は言って大きく広げられたムシロの上に座り込む。
「なるほどなるほど、犬耳が集まって宴会とは中々面白そうじゃないか・・・」と角の横に犬耳を生やした萃香が気楽に言って、瓢箪から自前の酒をグビグビと飲む。
「まぁ、異変にしちゃ、少し愉快すぎるからね」と霊夢が言って、徐々に集まりつつある面々を見渡す。誰も彼も、揃いも揃って犬耳ばかり。似合いな者も居れば、滑稽極まりないものまで。それは目にも楽しく、ムシロの彼方此方を埋め尽くそうとしていた。
「酒の肴は、夏の山菜と岩魚のから揚げ、塩焼きを私は用意しておいたわ」と霊夢が言ってムシロに置かれた皿の上にこんもりと盛られた色とりどりの料理を指差す。
「あとは、まぁ、皆が持ち寄ったモノで楽しんでもらおうかしらねぇ・・・」
「十分」と萃香がうなずいて、さらに一口酒を飲む。
「大体、肴なんて、そうもたくさん必要は無いだろう?」萃香が赤く染まった頬に笑みを浮かべて言う。
「なんてったって今日は話の肴がこんなに居るんだ。酒とネタがあれば何もかも十分。世は事もなしだ」そう言って、萃香は傍らグビグビと大杯を傾ける勇儀を見やる。
「そんなもんかしらね」と霊夢はあたりで「耳の所為で帽子が被れない」だの「耳がある方がキャラが立つ」だとの思い思いに語る面々を見渡す。
なるほど、確かに、酒の肴よりも話の肴があるほうが、宴会は盛り上がるようだ。
さぁて・・・・。と霊夢も微笑む。
「蔵に溜めた秘蔵の酒を、今日は振舞っちゃおうかしらね・・・・」
いままでは思い思いに話していた住人達が一斉に、期待に染まった表情で霊夢のほうを振り返った。
―なるほど、犬耳も存外、侮れない―
「うわーい、犬耳だー」
「うわーい・・・・」
時は早朝7時半。場所は幻想郷、紅魔館。三人は揃いも揃って鬱々とした空気を纏っていた。理由は単純明快。それどころか、彼女達の容姿を見るだけでピンと来る。
端的に言えば、犬耳だ。
彼女達の頭からはひょっこりと三角の犬耳が出現していた。
なぜそうなったのか、これはどうして生えたのか、どうしたら直るのか。
余りにも情報が乏しく、そもそもこんなビックリ摩訶不思議犬耳に対する知識は全員が全員、知識皆無であった。
「パチュリー様、なにか情報はありませんか?」
「あるわけないでしょう、こんなワケ分からない現象、どんな本にも載ってないわよ。それよりも、あなたのほうが詳しいんじゃないの?巷で犬っぽいと評判のメイド長さん・・・?」
「なっ、べ、別に犬っぽいだなんて・・・・」と咲夜は犬耳をパタンと倒して俯く。なるほど、感情によって犬耳の動きにも差が出てくるのか。ところで、レミリアの尻尾がさっきから凄い勢いでパタパタ振られてるのはどういうわけだろう。
「ねぇ、咲夜咲夜、ちょっとワンって言ってくれるかしら!?」
「えー・・・」
「言いなさい」
「・・・・わん」レミリアの尻尾の動きが加速した。なるほどそう言うことか。とパチュリーは納得して、特殊な主従関係を築きつつある二人を見る。
まず分かっていることを、パチュリーは纏めてみることにした。そう、真実とは客観的な分析から得られる情報により解き明かされることも多いのだ。
1、昨日の夜まで誰一人として耳など生えているものは居なかった。
2、音は良く聞こえるといえばよく聞こえるが、気になるレベルではない。犬に順応した・・・・ということか?
3、犬耳は可愛い。
兎にも角にも、なぜこのような状態になってしまったのか余りにも私達だけでは情報が乏しすぎる・・・とパチュリーは考える。
「久しぶりに、外に出るかしらね・・・・」
「あら、パチェ、散歩?」
「犬耳がつくと活発になるんですかねぇ・・・・」とレミリアと咲夜が小首をかしげる。
「犬耳について・・・聞き込み調査、するだけよ・・・」と恥ずかしいやら余りの馬鹿さに腹が立つやらでパチュリーは歯軋りするのであった。
「うー・・・・わんっ!」鏡に向かって、霊夢は吼えていた。なぜってそりゃ犬耳が生えたからだ。犬耳が生えたらせっかくだから吼えても見たくなる。
「それにしても、犬耳とは意表を突かれたわね・・・」と霊夢は唸って自分の頭の上のもふもふした三角形を突っつく。どうやら神経が通っているらしく、今まで感じたことの無い言いようの無い心地良さが全身を駆け巡る。
「あー・・・・なんだろこれ・・・・んー・・・癒されるー・・・」と鏡の前に寝転がって霊夢は自分の耳を突付く。
「やっぱり霊夢にも生えてたか」と縁側の方から声をかけられて、霊夢は気だるげにその方向に視線を向ける。
「よっ」
「・・・・あんたも生えたの・・・?」頭から犬耳を生やしてさかんに尻尾をパタパタと振る魔理沙を見て、霊夢はため息をつく。霊夢の尻尾はといえば疲れたようにブランとぶら下がったままだ。
「いやー、朝起きたら犬耳が生えててさ、びっくりしたぜ」と魔理沙。
「あんたまで生えてるって事は私達だけじゃないんでしょうね、どうせ・・・」霊夢がつまらなそうに言ってストックしてあったお茶を湯飲みに注ぐ。ストックと言っても数分前に出来上がったばかりのお茶だ、まだホカホカと温かい。
「せっかく、犬耳+巫女って最強装備でバッチリお賽銭ゲットだわん!・・・・とか思ってたのに」と霊夢。半眼で境内を眺める様は、落ちぶれたアイドルのその様のようにも見える。
「空から眺めた感じだとあっちこっちで犬耳が生えてるヤツ等が居るみたいだな・・・」
「そう・・・・。異変・・・って言ったってこれしきじゃあねぇ・・・?別に害が出てるわけでもないし」霊夢は言ってお茶をズズズと飲む。
「あぁ、茶が美味い」
「幻想郷にご隠居が現れたぜ」
「引っ叩くわよ・・・?耳を」と霊夢が平手を用意すると、魔理沙はバッと両手で自分の耳を覆い隠した。
「ばっ!?馬鹿なこと言うなよ!凄く敏感なんだからな!?絶対止めろよ!絶対やめろよ!!」魔理沙は随分と必死な様子だ。そうか、この耳は敏感なのかとツンツンと自分で突付いて実感する。なるほど、確かに敏感だ。背筋を駆け抜ける快感とはまさにこのことか・・・。
「おい霊夢、とりあえず人前でそう言う表情をしないほうがいいと思うぜ」未だに両手で耳を押さえている魔理沙が、一条の不信感を表情から滲ませて言う。とりあえず、なにか癪に障ったので、頭を押さえている手を思いっきり引っ叩いてみた。
「ふぎゃんっ!」と大層な声を上げて魔理沙は縁側でひっくり返るのであった。
「いやいや、あんた誰よ」と永淋は自分の前に立つブレザーを来た長髪の女性・・・いや、少女?に問う。
「え?やっぱり分かりません?さっきも姫様に不審者が出たって逃げられたんですよ」と鈴仙ことうどんげは答える。普段は立派なウサギ耳が頭の上に生えている彼女であったが、今日は彼女の頭から生えているのは紛れも無い犬耳だった。
「それにしても、うどんげはウサギ耳が無くなるとホント誰だかわからなくなるわね・・・・」と永淋は言ってうどんげの犬耳を摘む。
「うひゃんっ!?」
「神経は通ってるようね・・・」
「自分の犬耳を触ってくださいよ!」とうどんげが抗議するが、永淋は首を振る。
「ダメよ、自分で触りだしたら止まらなくなっちゃうじゃない」
「師匠、その発言は大変に危険です。以後、言わないでくださいね」
「えー・・・」と永淋はつまらなそうに唇を尖らせる。
「大変ウサ!耳が犬耳に変わったウサ!」と部屋の障子がスパーンと開け放たれて、小さいクセっ毛の犬耳少女が現れる。
「・・・・誰?」鈴仙が少女を見つめて問う。
「お前こそ誰だウルァ!!」と犬耳クセっ毛の少女が鈴仙の後頭部を蹴った。鈴仙はあっさりと吹き飛んでいき、盛大に壁へと激突した。壁には血糊がベッタリと付着し、そりゃもうスプラッターなことになっていたが、残念ながらこの部屋に居る誰も、その手の惨状には慣れっこだった。故に、鈴仙の生死が危ぶまれているわけだが。
「全く、私が分からないとはとんだ馬鹿者ウサ」と鼻息も荒く腕組みした少女を見て永淋は小首をかしげる。
「お嬢ちゃん・・・・誰?」
「師匠も分からないウサか!?」とクセっ毛少女がショックを受けて永淋の服の裾を掴む。
「てゐウサよてゐ!分かるウサ!?分かるウサよね!?」と必死の形相で主張するてゐをどうにかなだめて、永淋は頷く。
「大丈夫、冗談よ、分かっていたわ」視線はあっちこっちへと泳ぎっぱなしだった。
「・・・・・・師匠、嘘、下手ウサね・・・」
「だってウサギ耳無かったら、判別できないでしょ?」永淋は素晴らしくいい笑顔で言った。
「ひ・・・・酷いウサ・・・・」
「文さん文さん!おそろいですね!」と嬉しそうに言うのは、犬走 椛である。
「いやー・・・・犬耳前線とは奇特なモノもあったもんですね」と文は言って永淋からの報告書を手に取る。その内容がまた奇怪極まりなく、文の多大な脳のキャパシティー(自称)を持ってしても全て解読することは不可能だった。
「それにしても、犬耳前線ってなんなんですか・・・?この報告書じゃ私、ちょっと分からないです」と椛が永淋の報告書をパラパラと読んで唸る。
「んー・・・・私も良く分からないんですけど・・・・なんでも、数百年単位で突発的に発生する前線の一種で、数週間一定の場所に留まるらしいですね・・・。要は梅雨前線とかと同じ類のものらしいんですけれども、実際の気候に影響は無く、ただその停滞している周辺の生物に犬耳や尻尾が生える・・・・ということらしいです」と文が掻い摘んで説明するも、あまりにも突拍子が無いものなので、なんとも理解に苦しむ。
「はぁ・・・・」と椛も不可解な表情をするばかりで、釈然としない様子である。
「なんにても・・・・どうにもコレは記事にはし難いですねぇ・・・・」と文は唸る。なんと言っても筆者までもが当事者である。新聞記者とは主観よりも客観であるべきであり、当事者たる文が書くのは間違いなく主観の記事となってしまう。故に、書き難い。
「・・・・まぁ、しばらくは様子見でしょうねぇ・・・」と文は呟く。暫くは様子見、周りの連中も、自分の犬耳も。
「へぇ・・・・・犬耳宴会とはまた奇特なものね」と紫は言って大きく広げられたムシロの上に座り込む。
「なるほどなるほど、犬耳が集まって宴会とは中々面白そうじゃないか・・・」と角の横に犬耳を生やした萃香が気楽に言って、瓢箪から自前の酒をグビグビと飲む。
「まぁ、異変にしちゃ、少し愉快すぎるからね」と霊夢が言って、徐々に集まりつつある面々を見渡す。誰も彼も、揃いも揃って犬耳ばかり。似合いな者も居れば、滑稽極まりないものまで。それは目にも楽しく、ムシロの彼方此方を埋め尽くそうとしていた。
「酒の肴は、夏の山菜と岩魚のから揚げ、塩焼きを私は用意しておいたわ」と霊夢が言ってムシロに置かれた皿の上にこんもりと盛られた色とりどりの料理を指差す。
「あとは、まぁ、皆が持ち寄ったモノで楽しんでもらおうかしらねぇ・・・」
「十分」と萃香がうなずいて、さらに一口酒を飲む。
「大体、肴なんて、そうもたくさん必要は無いだろう?」萃香が赤く染まった頬に笑みを浮かべて言う。
「なんてったって今日は話の肴がこんなに居るんだ。酒とネタがあれば何もかも十分。世は事もなしだ」そう言って、萃香は傍らグビグビと大杯を傾ける勇儀を見やる。
「そんなもんかしらね」と霊夢はあたりで「耳の所為で帽子が被れない」だの「耳がある方がキャラが立つ」だとの思い思いに語る面々を見渡す。
なるほど、確かに、酒の肴よりも話の肴があるほうが、宴会は盛り上がるようだ。
さぁて・・・・。と霊夢も微笑む。
「蔵に溜めた秘蔵の酒を、今日は振舞っちゃおうかしらね・・・・」
いままでは思い思いに話していた住人達が一斉に、期待に染まった表情で霊夢のほうを振り返った。
―なるほど、犬耳も存外、侮れない―
いいですねぇ、魔理沙が特にもう。
私も魔理沙の耳をちょこんと触ってみたい…
紅魔主従とか、永遠亭とか・・・なかなか酷いことになってますねー
ほかにもまだまだリアクションの楽しそうな人妖はいます。
祭はまだまだ序の口ですよ!
続編お待ちしております~
しかしウサギのてゐを見るに、猫科なのに犬耳になった橙やお燐や星を見て各々の主はどう反応するのか、と思った。