夏の風が幻想郷を駆け抜ける。
幻想郷の中心―――神社をゆるゆると駆けていく。
目を閉じてそれを感じながら縁側でお茶を啜っていた霊夢は最愛の人を待っていた。
まだ、こないか、まだ、こないか。と。
いつも、この風のようにゆらゆらと来ては、ゆらゆらと帰っていく。
あいつはそんなやつだ。いや、私が引き留めないのも悪いんだけど。
私達は、自由なのだ。お互いを縛ったりはしない。そもそも縛る気もない。
こんな関係が続いてるからこそ、何も変わらずにいられるのだ。
それは、すごく嬉しいことで。幸せなことで。
「こんにちわ、何考えてるの?」
突然の訪問者、それは聞き慣れた声。青空のように透き通っていて優しい声。
きっと私が待ち焦がれていた人物だろう。
嬉しくてつい顔が緩む。
腑抜け顔がばれないうちに、必死に普段の顔へと戻して、普段通りの返し方をする。
「別に、何でもないわよ」
「そう?あ、マフィン焼いてきたから食べる?」
「美味しそうね、頂くわ。適当に座って待ってて、お茶持ってくるから」
ありがとう、という言葉を後にして台所へ向かった。
今の自分はきっとだらしない顔をしているだろう。
しかし、嬉しいものは嬉しいのだ。
“アリスと同じ時間を共有する” それは私にとって一番幸せなときだと言ってもいい。
勝手に緩む顔を引き締めてお茶を入れる。
洋菓子に緑茶はどうかと思ったが、家にはこういうお茶しかないので仕方ない。
零さぬよう、それでも速足でアリスのもとへ向かう。
「アリスー、お茶入ったわよー」
「ありがとう、じゃあ頂きましょうか」
何故紅茶じゃないのかと指摘しないアリスのことだから、私はそんなもの飲まないって分かっているのだろう。
自分のことを分かってくれている、それだけでまた顔が緩みそうになる。
顔に出る一歩手前でいかん、いかん。と顔を引き締める。
「今日の霊夢は面白い顔ばかりするわね」
「なっ!?私はいつも通りよ!」
くすくすと笑うアリスに恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら言い返すが笑いながら頭を撫でられるだけだった。
よく、こんな恥ずかしいことができるわね、と問うと、だって霊夢が可愛いんだもの、と返された。
墓穴を掘ってしまった。恥ずかしいったらありゃしない。
ほんと可愛いわねー、と言いながら頭を撫でてくるアリスにそれよりお菓子食べましょ、と言って話を逸らす。
後ろで霊夢かわいいー、とかまだ言ってだけど気にしないことにした。
「味はどう?美味しい?」
「ん、美味しい。ってかアリスの作る物は全部美味しい」
「ふふ、ありがと」
にこにこしながらお礼を言われ、こっちまで笑顔になる。
笑顔のアリスは本当に可愛いのだ。
そんな顔をめったに見せないから尚更なわけで…。
個人的にもったいないと思う。今度いろんなことをして笑わせてやろう。
きっと…。いや、絶対可愛いだろう。そんなことを思い、霊夢は目の前の人に微笑んだ。
それからの私達はというと、他愛のない話をしたり、夏の風を浴びたり…、仕舞いには昼寝までした。
他人から見れば、暇人やら怠けものやらと言われるかもしれないが、私達にとればこれが、こうしているときが幸せなのだ。
第三者に理解してもらえなくてもいい。私達が好き好んでこうしているのだから。
日が落ち出し、夏の風が冷たくなった頃、アリスは口を開いた。
何を言うかは分かっている。きっと………
「そろそろ帰るわね」
やっぱりそうだ。
この時間帯になるとアリスは必ず帰る。
それが気になって一度、聞いたことがある。
何か用事でもあるのかって、でもアリスは、特に何もないようなことを言っていた気がする。
もっといればいいのに、と言おうとしたが、なんとなくやめた。
アリスが帰る支度をしている。
これはいつもの事、寂しくない。もう、慣れたことだ。
今日は7月16日、次に会えるのはいつだろう…。
そんな事を考える。そこでふと、今日が大切な日だという事を思い出した。
大好きな人の特別な日、それなのに今ここで帰したら――――――――
じゃあ、また来るから、と帰ろうとするアリスの腕をいつの間にか掴んでいた。
「霊夢…?どうしたの?」
「まだ、帰らなくてもいいじゃない。もっとここにいなさいよ」
え…?、と言いたげなアリスに、どうせ家に帰ってもやることないでしょ、と言って腕を強引に引っ張り、隣へ座らせる。
今、私達に距離はない。風も通れないほど、ぴったりと寄り添っている。
「やっぱり、今日の霊夢は面白いわね」
「何とでもいいなさい、今日は特別な日なんだから」
7月16日―――そう、今日は七色魔法使い、あなたの日なんだから。
幻想郷の中心―――神社をゆるゆると駆けていく。
目を閉じてそれを感じながら縁側でお茶を啜っていた霊夢は最愛の人を待っていた。
まだ、こないか、まだ、こないか。と。
いつも、この風のようにゆらゆらと来ては、ゆらゆらと帰っていく。
あいつはそんなやつだ。いや、私が引き留めないのも悪いんだけど。
私達は、自由なのだ。お互いを縛ったりはしない。そもそも縛る気もない。
こんな関係が続いてるからこそ、何も変わらずにいられるのだ。
それは、すごく嬉しいことで。幸せなことで。
「こんにちわ、何考えてるの?」
突然の訪問者、それは聞き慣れた声。青空のように透き通っていて優しい声。
きっと私が待ち焦がれていた人物だろう。
嬉しくてつい顔が緩む。
腑抜け顔がばれないうちに、必死に普段の顔へと戻して、普段通りの返し方をする。
「別に、何でもないわよ」
「そう?あ、マフィン焼いてきたから食べる?」
「美味しそうね、頂くわ。適当に座って待ってて、お茶持ってくるから」
ありがとう、という言葉を後にして台所へ向かった。
今の自分はきっとだらしない顔をしているだろう。
しかし、嬉しいものは嬉しいのだ。
“アリスと同じ時間を共有する” それは私にとって一番幸せなときだと言ってもいい。
勝手に緩む顔を引き締めてお茶を入れる。
洋菓子に緑茶はどうかと思ったが、家にはこういうお茶しかないので仕方ない。
零さぬよう、それでも速足でアリスのもとへ向かう。
「アリスー、お茶入ったわよー」
「ありがとう、じゃあ頂きましょうか」
何故紅茶じゃないのかと指摘しないアリスのことだから、私はそんなもの飲まないって分かっているのだろう。
自分のことを分かってくれている、それだけでまた顔が緩みそうになる。
顔に出る一歩手前でいかん、いかん。と顔を引き締める。
「今日の霊夢は面白い顔ばかりするわね」
「なっ!?私はいつも通りよ!」
くすくすと笑うアリスに恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら言い返すが笑いながら頭を撫でられるだけだった。
よく、こんな恥ずかしいことができるわね、と問うと、だって霊夢が可愛いんだもの、と返された。
墓穴を掘ってしまった。恥ずかしいったらありゃしない。
ほんと可愛いわねー、と言いながら頭を撫でてくるアリスにそれよりお菓子食べましょ、と言って話を逸らす。
後ろで霊夢かわいいー、とかまだ言ってだけど気にしないことにした。
「味はどう?美味しい?」
「ん、美味しい。ってかアリスの作る物は全部美味しい」
「ふふ、ありがと」
にこにこしながらお礼を言われ、こっちまで笑顔になる。
笑顔のアリスは本当に可愛いのだ。
そんな顔をめったに見せないから尚更なわけで…。
個人的にもったいないと思う。今度いろんなことをして笑わせてやろう。
きっと…。いや、絶対可愛いだろう。そんなことを思い、霊夢は目の前の人に微笑んだ。
それからの私達はというと、他愛のない話をしたり、夏の風を浴びたり…、仕舞いには昼寝までした。
他人から見れば、暇人やら怠けものやらと言われるかもしれないが、私達にとればこれが、こうしているときが幸せなのだ。
第三者に理解してもらえなくてもいい。私達が好き好んでこうしているのだから。
日が落ち出し、夏の風が冷たくなった頃、アリスは口を開いた。
何を言うかは分かっている。きっと………
「そろそろ帰るわね」
やっぱりそうだ。
この時間帯になるとアリスは必ず帰る。
それが気になって一度、聞いたことがある。
何か用事でもあるのかって、でもアリスは、特に何もないようなことを言っていた気がする。
もっといればいいのに、と言おうとしたが、なんとなくやめた。
アリスが帰る支度をしている。
これはいつもの事、寂しくない。もう、慣れたことだ。
今日は7月16日、次に会えるのはいつだろう…。
そんな事を考える。そこでふと、今日が大切な日だという事を思い出した。
大好きな人の特別な日、それなのに今ここで帰したら――――――――
じゃあ、また来るから、と帰ろうとするアリスの腕をいつの間にか掴んでいた。
「霊夢…?どうしたの?」
「まだ、帰らなくてもいいじゃない。もっとここにいなさいよ」
え…?、と言いたげなアリスに、どうせ家に帰ってもやることないでしょ、と言って腕を強引に引っ張り、隣へ座らせる。
今、私達に距離はない。風も通れないほど、ぴったりと寄り添っている。
「やっぱり、今日の霊夢は面白いわね」
「何とでもいいなさい、今日は特別な日なんだから」
7月16日―――そう、今日は七色魔法使い、あなたの日なんだから。
一本取られました。
今日という日を私は忘れない!!
霊夢も可愛いなぁ、可愛いなぁ。
引き止めようとして悩むとこなんか特に。
アリスが幸せならそれでいいですよ!