Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

善と悪とは

2010/07/15 00:09:27
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※五音七音で構成しているつもりです。

 
 天へ逝け。
 地に沈め。
 白であれば左の示し。
 黒あるなら右を差す。
 この手一つで死を裁き。
 この棒一つで罪を見抜いた。
 
 私の元へ立つ人は、皆々怯えた顔をする。
 私がその目で見据えてやると、彼らは2つに分れうる。
 1つは凛と身を構え、1つはその身を震わせる。
 いつもとなれば白は前、黒は後者と見えてくる。
 さすれば私の思惑通り、力も白黒つけるのだ。
 白なら天へと救われて。
 黒なら地へと堕ちてゆく。
 それが私の日々だった。
 変わることなき日々だった。




 ある日流れた一人の男。見ればずぶ濡れ泥鼠。
 罪が重くば三途は長い。それほど悪の者だろう。
 ほとほと歩いて私を見据え、彼は私にこう言った。

 やぁやぁこれは閻魔様。私の罪を聞いてくだされ。

 言われなくとも罪など分かる。私は彼を突き離す。
 そんな言葉を聞いて聞かずか男は笑いてこう言った。

 村を焼き、数多を盗み、人を食べ、友を裏切り、誰も救わず、無学のままに、神を吐き捨て生きてきた。
 閻魔様、私は地獄へ落ちましょう。なれど心残りがございます。

 なんとも外道な男なり、そう思いながら私は問うた。
 お前は地獄に行くだろう。心残りはなんぞやと。
 すると男は小さく笑い、右の門を指さして。

 私は全ての悪事を成した。そう思いたり死んだのです。しかし私は尋ねたい。
 私の成さぬ悪事とは。まことに地獄に至るのは何の罪かと尋ねたい。

 私は呆れ棒を指す。無論右へと棒は向く。
 地獄へ行きやと棒は言う。されど男は声をあげ、
 何の罪かと問いかける。
 私は男の方を向き、小さく口を震わせて。
 彼に言葉を突き付けた。






 次の日流れた一人の女。見れば一縷も濡れてはいない。
 罪が軽くば三途の浅い。それほど善の者だろう。
 すらすら歩いて私の見上げ、彼女は私にこう問うた。

 閻魔様。懺悔を聞いてはくれまいか?

 そなたに罪などないだろう。私は彼女に聞き返す。
 そんな言葉を聞くや否や女は悲しみこう言った。

 愛を知り、救いを与え、友を愛し、学びを惜しまず、神を愛して生きてきました。
 閻魔様、私は天に召されたい。しかし心残りがございます。

 善に生きたる人である、私は思いて女に問うた。
 善たるお前は天へ行く。心残りはなんぞやと。
 すると女は悲しく泣いて、左の門を指さした。

 私は善を成したと思い、全てを賭して生き抜いた。されど善とは思えない。
 閻魔様。私の成せぬ善とは何か?まことに天に至るは何か?

 私は呆れて棒を指す、無論左へ棒は向く。
 天へ行きやと棒は告げるども、女は未だ声をあげ、
 善とは何かと問いかける。
 私は振り向き昨日のように、小さく口を震わせて。
 彼女に言葉を突き付けた。





 全ての悪に、全ての善に。
 かかりし言葉はひとつだけ。
 男も女も理解せず。
 地獄へ天へと歩いていった。
 かけた言葉はただひとつ。







 無知こそ罪で知らぬが仏。






 善と悪とは表裏で同じ。
 されど罪とは別にあり。
 救いの向こうで人が死に。
 盗んだ物で救われる。
 されど裁くは罪ひとつ。
 白と黒とはそこにあり。
 真に悪しきもないならば。
 真に善しもないだろう。
 死した前には善もなく。
 ただただ罪が見えるのみ。

 だから私はいつものように、小さく罪を裁くのだ。
 なぜなら今の私では、答えることなど無理だろう。
 
 全てが善とし悪として。
 白と黒に分けるなど。
ほんとの罪ってなんでしょう?ほんとの善ってなんでしょうかね?
白黒付ける、って言ってもその辺は曖昧かと思えます。

これはSSというより詩の部類なんだろうか?
ノ虱
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
おお!凄い!
こういう感じのお話は大好きです
2.削除
これは……いい……!
3.名前が無い程度の能力削除
確かに詩なのかも知れませんね。独り善がりという意味で。
4.名前が無い程度の能力削除
テンポがよく楽しめました